日本薬理学雑誌
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74 巻, 8 号
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  • 大島 孝夫, 丸山 悠司
    1978 年 74 巻 8 号 p. 885-895
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Catecholamines are neurotransmitters produced and secreted by the central and autonomic nervous systems. In addition to being neurotransmitters, amines produced mainly by the adrenal medulla also act as hormones. Fluorometric measurements of amines yield variable results because of the poor sensitivity of the techniques, and the low concentration of these amines in tissues and biological fluids. The lack of specific and sensitive analytical methods has been an obstacle to resolving the mechanism of action of these neurotransmitters and hormones. The possibility of achieving qualitative and quantitative determination of picomole or femtomole amounts of these amines is a major need. Recently, radioenzymatic procedures for catecholamine assay have been developed and there has been a significant improvement in both sensitivity and accuracy of catecholamine assays. In this article, details of these radioenzymatic assay methods are reviewed.
  • 第1報広豆根成分イソプレニルカルコンの抗潰瘍活性
    笹島 道忠, 中根 貞雄, 佐直 隆一, 早乙女 秀雄, 畑山 勝男, 京極 和旭, 田中 一郎
    1978 年 74 巻 8 号 p. 897-905
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    広豆根の抽出画分およびそれより単離したisoprenyl chalconeのsophoradinとその異性体でflavanone体のsophoranoneの抗潰瘍作用および胃液分泌作用を検討した.広豆根の抽出画分のうち幽門結紮潰瘍およびストレス潰瘍実験で最も強い抗潰瘍作用を示した画分は脂溶性酸性画分[C-2]であった.画分[C-2]より単離したsophoradinとsophoranoneも抗潰瘍作用を示した.画分[C-2],sophoradinおよびsophoranoneの抗潰瘍活性はsophoradinが最も強く,sophoranoneと画分[C-2]は同程度の効果であった.つぎに,sophoradinとsophoranoneの胃液分泌作用を幽門結紮法にて検討した.Sophoradinおよびsophoranoneはともに胃液分泌量を有意に抑制した.遊離酸度および総酸度に対してsophoradinは有意の減少を示したが,sophoranoneは何ら影響をおよぼさなかった.Sophoradinについては急性胃痩管法にて各種の胃酸分泌刺激剤に対する作用を検討した.Sophoradinはtetragastrinおよびinsulinによる胃酸分泌刺激に対し抑制の傾向を示したが,methacholineおよびhistamineの刺激に対しては何ら影響をおよぼきなかった.以上より,sophoradinは強い抗潰瘍作用と胃酸分泌抑制作用を有することが明らかになった.
  • ―腫瘍免疫におよぼす影響―
    森 裕志, 済木 育夫, 江田 昭英
    1978 年 74 巻 8 号 p. 907-923
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    α-Mercaptopropionylglycine(α-MPG)およびsodium dipropylacetate(DPA)の腫瘍に及ぼす影響を検討した.1)C57BL/6マウスにsyngeneicな腫瘍であるE.L4lymphosarcoma(E.L.4)を皮下移植すると,4週令マウスの雄性は雌性に比して腫瘍の増殖が速やかであった.これに対してα-MPGまたはDPAは雄性の腫瘍増殖を明らかに抑制し,生存期間を延長したが,雌性では逆に促進と短縮を示した.7および10週令となるにしたがい腫瘍増殖の性差はみられなくなり,両薬物の影響も減弱した.2)E.L.4をα-MPGまたはDPAの共存下で24時間incubationした場合,残存細胞率および生細胞率にはほとんど影響がみられなかった.また,これらの処理をしたE.L.4をマウスに移植した場合,α-MPG処理E.L.4ではα-MPGの用量に依存して腫瘍増殖の促進がみられ,高濃度のDPA処理E.L.4では抑制の傾向がみられた.3)20-methylcolanthreneをマウスに皮下注射し,両薬物の5~20mg/kgを隔日に連続投与した場合,低用量のα-MPGは雄性における腫瘍発生を抑制する傾向を示し,低用量のDPAは雌雄ともに抑制傾向を示した.4)E.L.4を移植した4週令雄性マウスの脾およびリンパ節細胞のphytohemagglutinin-P(PHA)による幼若化能は12および16日後に減弱し,その減弱は両薬物の投与により回復の傾向を示した.また,リンパ節細胞のlipopolysaccharide(LPS)による幼若化能は両薬物により増強した.血清中にもE.L.4に対する補体依存性の細胞障害性がみられ,9日後に最大値を示した.この細胞障害性はα-MPGによってさらに増強した.また,脾細胞のE.L.4に対する細胞障害性の減弱は両薬物によって回復し,リンパ節細胞のそれは12および16日後に回復した.
  • 須賀 俊郎, 鈴木 政美
    1978 年 74 巻 8 号 p. 925-940
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    蟇毒およびDigitalis-Strophanthus属強心ステロイド(CS)を摘出モルモット盲腸紐に適用すると,初期に収縮,次いで弛緩が起こりほぼ完全に弛緩するに至り,この時CSを除去すると弛緩はさらに若干増強されて回復まで20~40分続く.これらの作用の機序を二重庶糖隔絶法により検索した.弛緩はbufalinが最も強力であり,ouabainがこれに次ぎ,cinobufagin,resibufogeninの順であった.適用後1~2分以内に漸増する脱分極とスパイク発射の増加が起り収縮が惹起された.さらに10~20分経過するとスパイク発射頻度の減少ないし欠落が起るようになり,次第に膜は再分極し,弛緩はこれらの変化に極めてよく対応しながら生起した.膜抵抗はCS適用後収縮とともに次第に減少し,その減少は弛緩時にも続き,CS除去後はさらに増強される傾向がみられた.Na,K,Caの膜コンダクタンスは収縮期,弛緩期ともに増加の傾向が認められたが,収縮期にはNaコンダクタンスの増加が相対的に大であり,弛緩期ないしCS除去後の弛緩時にはKコンダクタンスの増加が顕著であった.弛緩期にさらにCS適用を継続すると20~40分後に二次性の緩除な収縮が生起されたが,CS除去後は直ちに弛緩が起り,上述の弛緩期にCSを除虫した際と同様の経過で回復した.CS除去後の弛緩の持続は外液温度に依存し,この下降により顕著に延長された.外液のNa,K,Ca濃度を増加すると濃度依存性に弛緩作用が抑制され,二次性収縮が促進された.以上の結果からCS盲腸紐適用時の収縮は,Na pump抑制の結果によるものであり,弛緩は膜の再分極およびスパイク発射の減少等の膜の興奮性の低下ないし消失によるものであり,この膜変化には細胞内Naの極度の増加およびK透過性の増加が関与すると推定した.CS除去後の弛緩はelectrogenic Na pumpの活性化によるものであることが,膜の諸性質の変化からも推定された.
  • 長谷川 和雄, 田中 実, 小林 英幸, 菊野 正隆
    1978 年 74 巻 8 号 p. 941-950
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットの坐骨神経を圧挫し,腓腹筋とヒラメ筋のcholinesterase(ChE)活性の変化を調べた.次に,その変化と筋萎縮に及ぼすビタミンB1,B6,B12,合剤(3B)の作用を検討した.腓腹筋は1,000 × g沈渣(a画分),100,000 × g沈渣(b画分),100,000 × g上清(c画分)に分画し,ヒラメ筋はホモジネートとミクロゾーム画分について,ChE活性の測定を行なった.ChE活性はspecific activity,total activity (specific activity × 全蛋白量),whole tissue activity(各画分のtotal activityの合計)とで比較した.その結果,腓腹筋におけるChE活性はb画分において最も著明であった.また,各画分のChE活性は神経の障害度に応じて減少し,しかもb画分のChE活性が最も減少した.ヒラメ筋においても,ホモジネートよりもミクロゾーム画分の方が神経障害度をより良く反映した.一方,3Bは腓腹筋においては,ほとんど影響を及ぼさなかったが,ヒラメ筋においては効果をきたした.すなわち,圧挫側のヒラメ筋ChE活性は,3B投与群の方が生理食塩液投与群よりも高い傾向を示した.だが,有意差はなかった.対照側においては,3B投与群のChE活性の方が有意に高かった.筋萎縮に対しても,3Bは腓腹筋においては影響をほとんど与えず,ヒラメ筋において効果を示した.以上の結果から次のことが示唆される.調べた画分のうち,ミクロゾーム画分が最も著明なChE活性を有する.また,神経障害度を最も鋭敏に反映するのもミクロゾーム画分のChEである.一方3Bは,ChE活性ならびに筋重量ともに,腓腹筋においては影響をほとんど与えず,ヒラメ筋において効果を示す.
  • 永山 治男, 高城 昭紀, 櫻井 征彦, 吉本 静志, 西脇 健三郎, 高橋 良
    1978 年 74 巻 8 号 p. 951-957
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    向精神薬効果の概日変動を探る一連の研究の一つとして,haloperidolの鎮静効果の概日変動について実験を行なった.明暗・室温を厳密に統制した環境で飼育したラットを用いてhaloperidolを1日のうち,4つの異なった時刻に各種用量投与した.その結果haloperidolの鎮静効果は投与時刻によって有意に異なること,すなわち鎮静効果の概日変動が存在すること,しかも投与量によってこの変動パターンが相違することを明らかにした.そこでこの現象の発現機序を探る目的で,血漿中,脳内の同薬の濃度を経時的に測定したところこれには概日変動は見出されなかった.この事実から上記鎮静効果の概日変動は,脳における薬物感受性の概日リズムによることが判明した.そこで常同行動を示標にhaloperidolの抗apomorphine作用をみたところ,これにも概日変動が存在し,しかも鎮静効果の変動とほぼ同一パターンを示した.以上からhaloperidolの鎮静効果の概日変動の発現機序について2,3の考察を行なった.
  • 満島 隆, 植木 昭和
    1978 年 74 巻 8 号 p. 959-979
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新しいbenzodiazepine誘導体Flutazolam(MS-4101)の行動薬理学的特性をdiazepamのそれと比較した.MS-4101およびdiazepamは0.5%CMCに懸濁してマウスおよびラットに経口投与した.MS-4101は中隔野破壊ラットの情動過多抑制作用,長期隔離マウスの闘争行動に対する抑制作用,thiopental睡眠増強作用および抗pentylenetetrazolけいれん作用はdiazepamと同程度であった.しかし,自発運動抑制作用およびmethamphetamine運動興奮作用はdiazepamよりも強かった.一方,嗅球摘出ラットの情動過多抑制作用,muricideの抑制作用,ethanol麻酔増強作用,抗電撃けいれん作用および抗strychnineけいれん作用はdiazepamよりも弱く,MS-4101の筋弛緩作用はdiazepamの約1/3であった.また,Ms-4104はdiazepamと同様に抗confict作用を有し,その程度はdiazepamの約1/2であった.他方,MS-4104は自発運動量の指標とした連続投与実験で,diazepamに見られる運動抑制に対する耐性の出現を認めずむしろ増強を示した.またmescalineによる異常行動に対してMS-4104はdiazepamと異なる作用態度を示した.すなわち,MS-4104は用量増加に従ってhead-twitch,scratching両者の著明な抑制を示し,diazepamではscratchingを小量で増加し,大量で抑制した.またhead-twitchは逆に小量で抑制され,大量で増加された.以上,MS-4101の作用は全般的にはdiazepamと類似し,diazepamと同程度の作用を有するが,ある種の作用はむしろdiazepamより弱いものもあり,また作用態度を異にする点も見られた.
  • 柳 義和, 黒川 寛, 永尾 泰子, 犬飼 利也
    1978 年 74 巻 8 号 p. 981-990
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    SL-573(1-cyclopropylmethy1-4-phenyl-6-methoxy-2(1H)-quinazolinone)の解熱作用に関する新たな知見を紹介した.本剤の解熱作用は発熱動物の生後週令,性差に関係なく発揮され,それらの条件のいずれかで効力が弱いということはなかった.本剤の臨床使用時に併用の可能性のある化合物を中心として,それら他剤併用時のSL-573の解熱効果の検討を行なった.単独でも解熱効果のみられたdiazepam(minor tranquilizer)併用時に相加的な解熱効力の増強がみられた以外には,抗生物質,鎮咳剤,利尿剤,major tranqunizerの併用は本剤の解熱効力に有意な影響を与えなかった.本剤はyeast発熱マウスでも明確な解熱作用を示した.また,本剤はbacterial endotoxinおよびleucocytic pyrogenの発熱を抑制し,DNPの発熱は抑制しなかった.SL-573は末梢血自血球のendotoxinによる活性化の過程ならびにその後の生理食塩水中でのleucocytic pyrogenの遊離の過程に作用を示さず末梢白血球からのleucocytic pyrogenの放出には影響を及ぼさないものと考えられた.SL-573はprostaglandin E2(PGE2)脳室内投与時の発熱には抑制効果を示さず,その前駆物質であるarachidonic acid投与時の発熱を有意に抑制した.本剤はaracidnic acidからのPG生合成を抑制する性質を有することが知られており,このPG生合成阻害作用がSL-573の解熱作用の作用機序の1つとなり得る可能性が強く示唆された.
  • 小口 江美子, 岡崎 雅子, 保原 怜子, 豊島 良枝, 坂本 浩二
    1978 年 74 巻 8 号 p. 991-1004
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    oxythiamine(OT),pyrithiamine(PT)投与によるラット脳に及ぼす影響を検討する為に,OT,PT,thiamine deficient diet(TDD)によって作成したT欠乏ラット脳の光顕および電顕による組織学的変化の観察を行い,同時に全脳T含量を生物学的に定量した.1)光顕的観察では,延髄,橋の第四脳室底,特に前庭神経核,下小脳脚付近に海綿様変化が認められ,しばしば小出血,神経細胞の変性,microgliaの増生を伴った.2)微細構造は,各群ともほぼ同部位においてかなり類似した所見が得られたが,障害程度はTDDに比べ,TDD飼育時OT投与(OTD),同じくPT投与(PTD)では同程度か,やや増強していた.その変性像としては,(1)血管周囲腔の拡大と結合織の増加,内皮,周皮両細胞内変化 (2)microgliaの増殖,(8)astrocyteの腫大と空胞化 (4)myelin sheathの解離,膜変化および軸索周囲腔の拡大 (5)神経細胞体,軸索の空胞化,mitochondoriaやGolgi apparatusの変形,粗面小胞体の配列の乱れ,(6)細胞外浮腫等があった.3)全脳T含量はTDDで対照の56%に低下したが,OTDでも同程度の低下を示し,OT投与による影響はregular diet(RD),TDD飼育時とも認め難かった.一方,PT投与では著明な影響が認められ,PTで43%に,PTDで17~23%にまでT含量は低下した.以上の結果から,OT,PTによる脳病変ではTDDによるT欠乏状態と同じ選択的な易損性部位を持ち,変性像は各T欠乏群で多少異なることから,細胞の感受性の差異が示唆された.PTでは,組織変化が著明であり,同時にT含量との相関もみられたが,血液脳関門を通過しないといわれるOTでも組織変化は著明であり,T含量低下はごくわずかであった.このことから,T欠乏状態での脳血液関門の選択的透過性の変化と,それにより脳内に侵入したOTの影響が考えられ,同時に,OT,PTの作用機序の相違が,脳T含量低下に影響していると思われる.
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