日本薬理学雑誌
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144 巻 , 5 号
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電位依存性Caチャネルの時間・空間的制御の分子機構
  • 伊藤 淳平, Andrés Daniel Maturana
    2014 年 144 巻 5 号 p. 206-210
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    ステロイドホルモンは,ヒトの発達,生殖,炎症,ストレス反応,血圧,心血管ホメオスタシスを制御する.しかし,臨床研究はステロイドホルモンの暗い側面を明らかにしてきた.ステロイドホルモンは,心臓収縮力,自動能を変え,心筋細胞死さえ誘発して心臓の脅威となりえる.ステロイドホルモンの心臓への作用は,特に心臓病を有する患者の治療に影響する.一方で,17-β エストラジオールのように心保護因子として機能するステロイドホルモンもある.ステロイドホルモンは,遺伝的および非遺伝的双方の作用を介し心臓イオンチャネルの活性と発現を修飾して心臓の電気的リモデリングを促進する.L 型膜電位依存性カルシウムチャネルとT 型膜電位依存性カルシウムチャネルは,心筋細胞におけるステロイドホルモンの主たる標的である.両チャネルはカルシウムの細胞内流入の主経路であり,カルシウム流入は心臓の収縮と自動能双方を引き起こす.この総説で我々は,ステロイドホルモンの心筋細胞内の両膜電位依存性カルシウムチャネルに対する遺伝的および非遺伝的作用の最新知識をまとめることを目的とする.
  • 赤羽 悟美
    2014 年 144 巻 5 号 p. 211-216
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    心筋細胞において,電位依存性 L 型Ca2+ チャネルは,細胞膜の電気的興奮を細胞内 Ca2+ シグナルに変換するトランスデューサーとして,心拍リズムと心収縮力の制御における中心的役割を担っている.近年,L 型 Ca2+ チャネルを取り巻く分子複合体の解明が急速に進み,心筋 L 型 Ca2+ チャネルの制御機構が明らかにされるとともに,新たな治療薬の標的が見出されつつある.一方で,多くの問題が今後解決されるべき課題として残されている.
  • 中田 勉, 山田 充彦
    2014 年 144 巻 5 号 p. 217-221
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    横紋筋のL 型カルシウムチャネル(LTCC)は,筋収縮において電気信号をカルシウム信号に変換する重要な役割を担っている.LTCC と筋小胞体膜上に存在するリアノジン受容体(RyR)は,形質膜と筋小胞体膜が近接する結合膜構造で,機能的複合体を形成している.LTCC が結合膜構造に集積してクラスターを形成することは,筋の正常な興奮収縮連関に必要不可欠であるが,その詳細なメカニズムには不明な点が多く残されている.近年,骨格筋芽細胞株であるGLTを用いた研究により,骨格筋型LTCC の結合膜への局在化には,LTCC のポアを形成するCaV1.1 サブユニットのC末端配列が重要な役割を果たしていることが明らかになった.一方,成熟心筋細胞の培養が困難なため,心筋型LTCC の結合膜局在化の分子機構については,全く解析が進んでいなかった.我々はGLT 細胞を用いて,心筋LTCC の結合膜局在化機構を明らかにするための検討を行った.心筋LTCC のCaV1.2 サブユニットの各細胞内ドメインを,結合膜非局在性である神経型CaV2.1 サブユニットに置換した変異体を作製し,GLT 細胞に発現させた.その結果,近位C 末端の配列が結合膜への集積に必須であることが明らかになった.さらに,この部位に変異を導入すると,局在のみでなく,興奮収縮連関の効率も大きく低下することが分かった.また,LTCC の結合膜局在化に関係する分子として,ジャンクトフィリンに注目した検討も行った.C2C12 細胞のジャンクトフィリンをノックダウンすると,LTCC の結合膜への局在の阻害や,カルシウムトランジェントの減弱が認められた.また,共免疫沈降法によってLTCC のCaV1.1 サブユニットとジャンクトフィリンが結合していることが確認された.これらの結果は,ジャンクトフィリンがLTCC の正常な局在や機能に関与することを示唆している.
  • 亀山 正樹, 蓑部 悦子, 徐 建軍, 韓 冬雲, Hadhimulya Asmara, 亀山 亜砂子, 封 瑞, 劉 書源, 郝 麗英
    2014 年 144 巻 5 号 p. 222-226
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    電位依存性 Ca2+ チャネルの CaV1.2 型は,神経系や心筋,平滑筋などに広く分布し,細胞の興奮や細胞内 Ca2+ シグナリングを介する筋収縮や遺伝子発現調節などに関与している.同チャネルの活性(脱分極時の開口確率)は,細胞内Ca2+ により促進(Ca 依存性促通,CDF)と抑制(Ca 依存性不活性化,CDI)の二面的調節を受けている.CDF にはカルモジュリン(CaM)のチャネルへの直接結合と Ca2+/CaM 依存性タンパク質キナーゼⅡの活性化によるチャネルタンパク質のリン酸化が関与し,CDI にはCaM のチャネルへの直接結合,Ca2+ のCaM を介さない直接作用,タンパク質フォスファターゼによる脱リン酸化が関与すると考えられる.また,同チャネルの活性は,細胞内ATP によっても調節されている.このことは,同チャネルの活動が細胞の代謝状態とリンクしていることを示している.このように CaV1.2 型 Ca2+ チャネルの活動は細胞内 Ca2+ やATP によって複雑に調節されている.
総説
  • 大谷 悟
    2014 年 144 巻 5 号 p. 227-233
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    前頭前野皮質は作業記憶の働く座として注目されてきた.しかしこの皮質領域は「行動の組み立て」「ルール」といった,行動構造を決定する高次認知機能にも関与している.この種の認知は長期記憶の一種として捉えることができ,この行動構造についての長期記憶は,前頭前野ニューロンにシナプス可塑性の形で貯蔵されている可能性が高い.これらの理由から我々は,長期記憶の細胞メカニズムである長期増強longterm potentiation(LTP)と長期抑圧long-term depression(LTD)とに注目し,ラット前頭前野におけるこれら可塑性の誘発とその調節メカニズムについて研究してきた.我々の結果によれば,前頭前野シナプスにおけるLTP/LTD 誘発は,この皮質機能に重要な役割を持つ伝達物質ドパミンによる逆U字型濃度依存性調節を受けている.まず高頻度反復刺激によるLTP 誘発には,適度なレベルの背景ドパミンtonic/background dopamine が持続的に存在することが必要であり,このドパミン濃度が高すぎても低すぎてもLTP は誘発されない.適度なレベルの背景ドパミンはD1 型およびD2 型ドパミン受容体を刺激し,LTP 誘発を促進する.適度なレベルの背景ドパミンは細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)を活性化し,LTP の誘発を促進する.一方,低頻度反復刺激によるLTDの誘発は,背景ドパミン濃度には依存しないと思われるが,このLTD 誘発には,誘発刺激中,短時間にphasic に放出される内因性ドパミンがD1 型およびD2型ドパミン受容体を刺激することが必要である.この内因性ドパミン細胞外濃度をドパミントランスポーター活性阻害によって過剰上昇させると,LTD 誘発は阻害される.このLTD誘発阻害は,過剰上昇した内因性ドパミンがD1 型受容体を過剰刺激し,その結果ERK 活性の過剰亢進を引き起こすことで生じると考えられる.最後に,背景ドパミン濃度が極度に低いか極度に高い条件では,本来LTP を誘発すべき高頻度反復刺激はLTD を誘発する.これを我々は異常LTDと呼び,低頻度反復刺激により誘発される生理的LTD と峻別する.
  • 服部 竜弥, 向井 秀仁
    2014 年 144 巻 5 号 p. 234-238
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    生体は,その個体内で様々な情報を伝達することにより,「いのち」を維持している.それらの情報伝達は,アセチルコリンやアドレナリンなどの小分子化合物,インスリンやグルカゴンをはじめとする生理活性ペプチド,ケモカインやサイトカインなどのタンパク質など,多種多様な化学物質によって担われている.このような情報伝達物質のうち生理活性ペプチドは,ホルモンや神経伝達物質,あるいはパラクライン因子などとして,血糖や血圧,摂食・消化吸収,情動行動など,多くの生体調節において中心的役割を果たして いる.このため,様々な生理活性ペプチドを同定し,その多彩な機能を解明する研究が,特に我が国において精力的に行われてきた.その結果,神経伝達に関わるニューロキニン類やオレキシン,血圧調節に関わる心房性利尿ペプチドやエンドセリン,摂食や消化吸収に関わるグレリンやボンベシン様ペプチドなど,多数の生理活性ペプチドが同定され,その機能が明らかにされた.これら,いわゆる“古典的”生理活性ペプチドは,リボゾームで合成され,小胞体やトランスゴルジネットワークで成熟化し,分泌小胞を経て分泌されることが知られている.これに対し最近我々は,細胞内に存在する機能タンパク質由来の内因性断片ペプチドが,高い生物活性を持つことを明らかにした.すなわち我々は,白血球のひとつである好中球を高く活性化する一群の新しい生理活性ペプチドを生体から単離・同定し,それらがミトコンドリアタンパク質由来の断片ペプチドであることを明らかにした.そして,このような機能タンパク質に隠された,もとのタンパク質と全く異なる生物作用を持つ断片ペプチドを総称して「クリプタイド」と命名した.本稿では,これら好中球を活性化するミトコンドリアタンパク質由来の一群のクリプタイド,マイトクリプタイドの発見と,それらの生体機能ならびに病態との関わりに加えて,生体に存在するクリプタイド―機能タンパク質由来の生理活性断片ペプチド―に関する研究の現状と今後の展望を概説する.
新薬紹介総説
  • 杉立 収寛, 栗原 厚, 谷澤 公彦, 井上 孝司
    2014 年 144 巻 5 号 p. 239-249
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    プラスグレルは第三世代のチエノピリジン系抗血小板薬であり,他のチエノピリジン系抗血小板薬と同様に活性代謝物を介して抗血小板作用を発現するが,作用発現が早く,強力で安定した抗血小板作用を示す.また,プラスグレル活性代謝物は,血小板上のADP 受容体の一種であるP2Y12 に選択的かつ非可逆的に結合して作用を発現し,強力な抗血栓,病態モデル改善作用を示す.プラスグレルの代謝を第二世代のクロピドグレルと比較すると,いずれの薬剤もチオラクトン中間体を経て活性代謝物が生成されるが,チオラクトン中間体の生成には両剤で大きな違いが存在する.プラスグレルは小腸での吸収時に速やかに加水分解を受けチオラクトン中間体へと代謝されるのに対し,クロピドグレルは小腸では殆ど代謝を受けずに,肝臓において加水分解を受け,大部分は活性のないカルボン酸体へと変換してしまうため,プラスグレルの方が活性代謝物の産生効率が高い.また,クロピドグレルでは,加水分解を免れた化合物のみチトクロームP450(CYP)による酸化代謝を受けチオラクトン中間体が生成するが,この酸化代謝にはCYP2C19 の寄与が大きいため,その遺伝子多型の影響を受けやすい.プラスグレルの臨床試験は,海外において先行して実施され,“強力な効果,迅速な作用発現,一貫した反応性”というコンセプトのもと,クロピドグレルを対照薬とした差異化試験が実施され,最終的に,大規模なイベント試験である第Ⅲ相試験(TRITON-TIMI 38 試験)において,平均15 ヵ月の観察期間で心血管死亡,心筋梗塞ならびに脳卒中の複合エンドポイントは19%有意に低下(12.1% vs. 9.9%)した.国内では,海外用量とは異なる日本人に適した用量を慎重に選定し,第Ⅲ相試験としてPRASFIT-ACS およびPRASFIT Elective 試験が実施され,これらの試験成績に基づき 2013 年6 月に承認申請が行われ,2014 年3 月に国内に於ける製造販売承認を取得し,現在上市されている.
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