日本薬理学雑誌
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113 巻, 3 号
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  • 平 英一
    1999 年 113 巻 3 号 p. 133-143
    発行日: 1999年
    公開日: 2007/01/30
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    Recent studies identified a novel cell adhesion molecule, gicerin, that exists on the surface of developing neurons. Determination of the amino acid sequence revealed that this molecule has five immunoglobulinlike structures in its extracellular domain and a short cytoplasmic tail. Gicerin binds in a homophilic manner and also displays heterophilic binding activity to NOF (Neurite Outgrowth Factor), which belongs to the laminin family extracellular matrix molecule. We clarified that there are two subtypes of gicerin that differ only in the cytoplasmic domain. S-gicerin, which has smaller tail, has stronger activity in cell aggregation or NOF binding. This suggests a physiological difference in the activity of each subtype. In the nervous system, gicerin is expressed during its developmental stage when neurons migrate or extend neurites to form a neural network. Gicerin promotes neurite extension from embryonic neurons by both homophilic adhesion and heterophilic adhesion to NOF. These data suggest. that gicerin participates in the formation of neural tissues. Gicerin is also expressed in other tissues such as the kidney and trachea. In these tissues, gicerin expression is also observed during the regeneration process and in tumors in addition to being present during the developmental stage. We believe that gicerin plays an important role in the histogenesis of the nervous system as well as other tissues.
  • 金子 茂, 中野 大三郎, 大原 雅弘, 西森 司雄
    1999 年 113 巻 3 号 p. 145-156
    発行日: 1999年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    propiverine llydmohloride(プロピベリン)は,尿失禁・頻尿の治療薬である.ラットおよびイヌ摘出膀胱標本において,プロピベリン(10-6 ?? 3×10-5M)はacetylcholine chloride(アセチルコリン)用量反応曲線を右方へ平行移動し,最大収縮を抑制した.ラットおよびイヌにおけるpA2値はそれぞれ,5.97および6.62であった.プロピベリンは100mM KCl収縮を用量依存的に抑制し,ラットおよびイヌにおけるIC50値は,それぞれ3.9×10-6Mおよび3.8×10-6Mであった.テロジリンのラットアセチルコリン用量反応曲線から求めたpA2値は6.08であり,100mM KCl収縮から求めたIC50値は6.6×10-6Mであった.一方,オキシブチニンのラットアセチルコリン用量反応曲線から求めたpA2値は7.69であり,100mM KCl収縮から求めたIC50値は4.5×10-6Mであった.このようにオキシブチニンでは,抗ムスカリン作用および抗KCl作用の作用濃度に明らかな相違が認められたが,プロピベリンおよびテロジリンでは両作用が同濃度域で発現していることが示唆された.次に経壁電気刺激収縮に対する被験薬の作用について検討した.ラットおよびイヌ膀胱におけるテトロドトキシン(10-7g/ml)による抑制率は,それぞれ76.6%および92.6%であった.プロピベリンおよびベラバミルにおいて本収縮の用量依存的な抑制が認められた濃度(それぞれ10-5M以上および3×10-6M以上)では,抗KCl作用が明瞭に観察された.一方,ラット膀胱ではアトロピン(3×10-5M)による抑制は認められず,またイヌ膀胱ではアトロピン(10-5M)により14.9%の抑制が認められたに過ぎなかった.以上の結果から,ラットおよびイヌ摘出膀胱標本において,プロピベリンの抗ムスカリン作用および抗KCl作用の両作用が認められるが,本薬のアトロピン抵抗性部分の収縮抑制には,主として抗KCl作用が関与することが示唆された.
  • 長尾 光啓, 金子 茂, 広田 富夫, 磯貝 光孝, 清水 和
    1999 年 113 巻 3 号 p. 157-166
    発行日: 1999年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    propiverine hydrochloride (プロピベリン)は,主として過活動性膀胱に起因する尿失禁および頻尿の改善薬として臨床的に用いられている.プロピベリン,ヒト血漿中に認められるプロピベリンの活性代謝物 1-methyl-4-piperidyl benzilate N-oxide (DPr-P-4 (N→O)),オキシブチニンおよびテロジリンのモルモット膀胱,唾液腺,大脳皮質,回腸縦走筋および心臓の各組織ムスカリン受容体との結合親和性について比較検討した.プロピベリンおよびDPr-P-4 (N→O) は,各組織膜画分への3H-quinuclidinyl benzilate(3H-QNB)の特異的結合を競合的に阻害した.オキシブチニン,テロジリン,ピレンゼピンおよびアトロピンも同様に3H-QNBの結合を競合的に阻害した.被験薬の膀胱ムスカリン受容体への結合親和性は,アトロピン>オキシブチニン>ピレンゼピン,DPr-P-4 (N→O),テロジリン>プロピベリンの順であった.プロピベリンおよびDPr-P-4 (N→O) は,アトロピンと同様に各組織ムスカリン受容体に選択性を示さなかった.一方,M1選択性のピレンゼピンの大脳皮質ムスカリン受容体への結合親和性は,膀胱の10.1倍高かった.オキシブチニンの唾液腺および大脳皮質ムスカリン受容体への結合親和性は,それぞれ膀胱の10.9倍および13.9倍高かった.またテロジリンの大脳皮質ムスカリン受容体への結合親和性は,膀胱の4.4倍高かった.本研究においてはプロピベリンおよびオキシブチニンのピロカルピン(1mg/kg,s.c.)刺激による唾液分泌に及ぼす影響についても無麻酔下のイヌを用いて比較検討した.プロピベリン(5mg/kg,i.v.)では唾液分泌に及ぼす影響は観察されなかった.一方,オキシブチニン(0.1~0.5mg/kg,i.v.)により用量依存的かつ有意な唾液分泌抑制が観察された.またこれらの被験薬投与後20分間の唾液分泌抑制率のID50値(95%信頼限界)は,プロピベリンおよびオキシブチニンでそれぞれ,6.88mg/klg,i.v.(4.71∼15.67),0.154mg/kg,i.v.(0.115∼0.205)であった.以上の結果から,プロピベリン,その代謝物であるDPr-P-4 (N→O),オキシブチニンおよびテロジリンは,いずれも膀胱のムスカリン受容体を競合的に阻害するが,これら被験薬のムスカリン受容体への結合親和性は,組織により異なることが明らかとなった.またプロピベリンは唾液分泌に及ぼす影響がオキシブチニンより少ないことが示唆された.
  • 土井 康子, 森 由紀夫, 浦田 紀子, 水尾 美登利, 庄司 美保子, 丸淵 茂樹, 荒井 博敏
    1999 年 113 巻 3 号 p. 167-176
    発行日: 1999年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    ラット低温焼灼胃潰瘍モデルを用いて新規抗潰瘍薬T-593の潰瘍部位における組織修復に及ぼす影響をファモチジンと比較検討した.実体顕微鏡による評価では,T-593は30mg/kgの1日2回経ロ投与により潰瘍の治癒を有意に促進し,投与開始2,4および8週目における潰瘍の縮小率は同投与量のファモチジンとほぼ同程度であった.組織学的評価では,新生血管に対してファモチジンは作用を示さなかったが,T-593は投与2週目に新生血管数の有意な増加を,投与8週目に有意な減少を示した.また,炎症性細胞浸潤に対してファモチジンは投与4週目に浸潤の程度を有意に軽減したが,投与2および8週目には明らかな軽減を示さなかった.一方,T-593は投与2および4週目に炎症性細胞浸潤の程度を有意に軽減し,投与8週目には軽減傾向を示した.さらに,潰瘍が瘢痕化した例について,組織の修復度を比較するため,再生粘膜の厚み,腺管の配列と密度,粘膜下組織中の新生血管数および炎症性細胞浸潤の程度について検討した.ファモチジンは各項目に対して有意な差を示さなかったが,T-593は均一な厚さの再生粘膜を形成するとともに粘膜下組織中の新生血管数を減少させ,炎症性細胞浸潤の消退を有意に促進した.以上の結果より,T-593は潰瘍の治癒過程で再生粘膜および粘膜下組織の修復を促進し,良質な瘢痕を形成すると考えられた.
  • 上田 順久, 前川 祐理子, 大谷 尚也, 内山 浩之, 柏原 早苗, 越山 良子, 織田 実, 来海 正輝
    1999 年 113 巻 3 号 p. 177-184
    発行日: 1999年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    TO-193(TachoComb®)は,フィブリン接着剤と支持体であるコラーゲンシートを組み合わせた新しいタイプのシート状フィブリン接着剤である.TO-193の止血効果について,種々の実験モデルを用い,フィブリン接着剤であるBeriplast®P,微線維性コラーゲン止血剤であるAvitene®およびNovacol®ならびにTO-193の支持体であるスポンジ状コラーゲンシートと比較検討した.血液が綿布より漏出する in vitro 出血モデルにおいて, TO-193 は Beriplast® P, Avitene®, Novacol® およびスポンジ状コラーゲンシートに比較し有意に強い耐圧力を示し,血液漏出面への強い接着力を有する可能性が示唆された.ラットの腎部分切除創において,TO-193は Beriplast®P およびスポンジ状コラーゲンシートより有意に強い耐圧力を示し,生体において十分に止血効果を発揮し得るものと推察された.さらに,ラットの肝部分切除創において,TO-193は正常動物での出血量をNovacol®に比較し有意に減少させ,凝固能低下動物での出血量をNovacol®と同等にあるいは Beriplast® P の約1/2に減少させた.これらの結果から,TO-193は出血創面に対して強い接着力を示し,正常状態のみならず,血液凝固能が低下した状態においても確実に止血することが可能であることが示唆され,臨床における有用性が期待された.
  • 原 久仁子, 秋山 康博, 富宇賀 孝, 小林 正敏, 川島 英敏
    1999 年 113 巻 3 号 p. 185-192
    発行日: 1999年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    血栓治療薬ワーファリン(WF)はビタミンKの拮抗薬であり,骨粗鬆症治療薬ビタミンK2(K2)と処方上禁忌である.しかし適応対象患者の年齢層が重なることから誤って同時に服用した場合のビタミンK2による血栓形成の促進が懸念されている.そこで,動物での血栓形成モデルにおいてWFの血栓形成抑制作用にK2がどの程度影響を及ぼすかを検討した.ラットの腹部下行大動脈にポリエチレンチューブを挿入しループ状に体外に露出させる方法で血栓形成モデルを作製した.このモデルにワーファリン(WF)0.58,0.82,1.16mg/l各溶液を飲水として7日間与えた.7日後の血栓形成率はWF非投与群83%に対し,WFO.58,0.82,1.16mg/t投与群ではそれぞれ73,33,10%であり,死亡率は非投与群13%に対しWF投与群ではそれぞれ13,40,76%と投与量に応じた増加傾向を示した.次にWF O.8mg/l投与ラットを用いてK2との相互作用を検討した.WF投与ラットに手術2日後からK2 3 用量(1.5,14,145mg/kg)を混餌投与し,手術7日後の血液凝固時間と,7日間の血栓形成を観察した.その結果,血液凝固時間はWF投与によりWF非投与群の2.9倍にまで延長し,このWFによる延長はK2 1.5mg/kg投与によりほぼWF非投与群の値に低下した.血栓形成率はWF投与により有意に抑制され,K2 1.5, 14mg/kg群ではWF対照群との間に差を認めず,145mg/kg群のみで有意な血栓形成率の上昇を認めた.しかしこのK2 145mg/kg群もWF非投与群の血栓形成率との間には差を認めなかった.すなわち,K2はWFの血栓形成抑制作用を減弱するものの,血栓形成を異常に充進させる可能性は低いことが推察された.
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