日本薬理学雑誌
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87 巻, 3 号
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  • 今枝 一男, 大沢 敬子, 渡辺 卓穂
    1986 年 87 巻 3 号 p. 253-257
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    皮膚の表面に存在する皮表脂質を分析することは,正常および病的皮膚や,皮表脂質の機能についての研究手段となる.すでに皮表脂質の採取法として,吸着法,湿式清拭法,カップ法,浸潰法がある.その中でも,一番良く用いられているカップ法は精度や再現性は良いが,皮膚へのガラスカップの圧迫する時間が長いため,被検者への負担が大きくしかも,小動物に対して使用しにくいという欠点がある.今回,被検者に対する負担を少なくし,また,小動物にも適用出来る吸引型皮表脂質採取装置を考案製作し,従来法と比較検討した.本装置はセルと捕集容器とからなり,セルを被検者採取部位に装着させ,吸引することにより,セル下面の2.25cm2の部分を脂質採取用溶媒が流れ,これを捕集し皮表脂質を採取した.本採取法をカップ法と比較した場合,採取時間が1/10以下であるにもかかわらず,精度および再現性は同等の結果が得られた.また,この装置は,採取が短時間に行なえ,被検者の負担が少なく,しかも被検部位が水平位置でなくても使用ができる.さらに,小動物を用いた実験にも適している.
  • 森下 信一, 齋藤 隆, 三島 泰宏, 水谷 睦, 平井 康晴, 小山 節子, 川上 萬里
    1986 年 87 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    ddY,C57BL,BALB,ICR系のマウスおよびWistar系ラットを用いて実験的高脂血症モデルの検討を行なった.2週間の高脂肪食(HCD)摂取あるいは1週間の高脂肪乳濁液投与により血漿総cholesterol濃度(TC)はこれらすべての動物で増加したが,ラットに比べマウスの増加の程度は少なかった.血漿triglyceride濃度(TG)はラットで増加したがマウスではすべての系で減少し,血漿HDL-cholesterol濃度(HDL-C)はBALB系マウス以外で減少した.相対肝重量はHCD飼育によりラットおよびマウスで増加した.ラットではclofibrate(CF)100mg/kg/dayによりTC,TGの減少,HDL-Cの増加が,nicotinic acid 100mg/kg/dayによりTCの減少,HDL-Cの増加が認められたが,マウスではCFによりHCD飼育したICR系でTCが減少したのみであった.gemfibrozil,LK-903およびpirozadi1の抗高脂血症作用についてもラットとICR系マウスによって比較した.
  • 須藤 敦子, 湯浅 聡, 梅津 浩平, 斎藤 光実
    1986 年 87 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    tritoqualine(TRQ)連投による胆汁分泌亢進作用をラットを用いてphenobarbital(PB)の作用と比較検討した.14日間の連投により胆汁分泌速度はTRQ(25,50,100mg/kg/day),PB(50mg/kg/day)投与群共に対照群に比べ有意に増加した,体重あたりの肝重量はPB投与群で有意に24%増加していたが,TRQ投与群では100mg/kg群に5%の増加が認められたにすぎなかった.胆汁酸濃度はTRQ投与群,PB投与群共に低下していたが,肝重量あたりの胆汁酸排泄量ではTRQ群は対照群と差がなく,PB群では17%減少していた.肝重量あたりの胆汁中コレステロール,リン脂質量も胆汁酸と同様の傾向を示した.Na+,K+,Cl-濃度はTRQ,PB投与群共に対照群と差がなかったが,肝重量あたりの排泄総量はTRQ投与群の方がPB投与群よりも多かった.TRQは静注後速やかに胆汁中に排泄されるが,この時胆汁量の増加は見られず,TRQまたは代謝産物の胆汁への排泄に伴なう胆汁分泌量の亢進は認められなかった.以上の様にTRQによる胆汁分泌亢進作用はPBと同様に胆汁酸非依存性の胆汁分泌の亢進であったが,肝重量あたりの排泄成分の量がTRQ群とPB群では異なることや薬物代謝酵素の誘導もTRQ群では弱いこと等から,TRQの薬理作用はPBと異なることが推察された.TRQによる胆汁分泌促進作用はTRQによる肝細胞の賦活作用と関係ある可能性が示唆された.
  • 田辺 昭, 近藤 康博, 鳥海 徹
    1986 年 87 巻 3 号 p. 273-279
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    ニワトリのロイコチトゾーン症に対するsulfamonomethoxine(Smm)3: Ormetoprim(Omp)1の混合投与の予防効果を自然感染条件下で試験し,以下の結果を得た.Smm 12 ppm,Omp 4 ppm連続投与群とSmm 15 ppm,Omp 5 ppm連続投与群では感染は完全に予防された.Smm 9 ppm,Omp3 ppm連続投与群ではある程度原虫発育抑制効果が認められたが,感染率については対照群との間に有意の差がなかった,Smm 18 ppm,Omp 6 ppm隔週投与群でも感染はほゞ予防されたが,Smm l5 ppm,Omp 5 ppm隔週投与群では効果は認められなかった.各群の体重増加率の間には顕著な差がなかった.
  • 池ノ上 晃一, 河北 成一, 戸田 昇
    1986 年 87 巻 3 号 p. 281-290
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    冠動脈攣縮の重要な因子と考えられているhistamine,serotonin,norepinephrineおよびthromboxane A2の安定な誘導体(9, 11-epithio-11, 12-methano TXA2: S-TXA2)の血管反応性を摘出ブタ冠動脈条片を用いて検討した.イヌやサル等では拡張作用を起こすことが知られているhistamineおよびacetylcholineは,ブタ冠動脈をヒト冠動脈と同様に収縮させた.この様に,ブタ冠動脈は冠動脈収縮および攣縮を検討する上でヒト冠動脈に極めて類似した薬物反応性を示すために有用である.histamineの収縮作用はchlorpheniramineで,serotoninの収縮作用はmethysergideとketanserinで,norepinephrineの収縮作用はprazosinで拮抗されたことから,これら薬物の収縮作用にはそれぞれH1受容体,S1とS2受容体およびα1受容体が関与するようである.histamine,serotoninおよびS-TXA2は相乗的に収縮作用を増強させた.内膜を除去する事によりhistamine,serotoninおよびnorepinephrineの収縮作用が著明に増強された.このserotonin収縮作用の増強は主として内膜のS1受容体を介する拡張作用の消失と考えられる.これらの事実より,histamineやserotoninおよびTXA2などの収縮物質が相乗的に作用することおよび内膜の障害によりその収縮作用が増強される事が冠動脈攣縮の発生に重要な因子として働いている可能性が示唆される.
  • 梅津 浩平, 湯浅 聡, 須藤 敦子, 稲垣 三重子
    1986 年 87 巻 3 号 p. 291-300
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    TRQの肝線維化亢進時に対する作用を調べるためにラットにCCl4を連続投与して(CCl4 0.5ml/kg, s.c., 2回/週)肝硬変を誘発させた.CCl4処置開始後12週間でラット肝臓中のハイドロキシプロリンは増加を始め第14週では対照群の1.9倍になった.肝臓中ヒスタミンも14週目では2倍に増加した.肝臓切片を光顕下で調べると肥満細胞数の増加が膠原線維増生域に観察され,両者によい相関が認められた.13週始めより2週間に亘るTRQ投与の結果,肝臓中のハイドロキシプロリンとヒスタミン量はCCl4処置対照群に比べ有意に且つ,投与量依存的に抑制された.組織病理学的観察によれぽ,膠原線維の増生と肥満細胞数の増加も又TRQの投与量に依存して抑制されていた.又肝臓中の肥満細胞数の減少がハイドロキシプロリンおよびヒスタミン量の減少に統計学的に有意に相関していることが確認され,肥満細胞が膠原線維の生合成に関与していることが示唆された.TRQ投与群では血清トランスアミナーゼ値の改善や,アルカリホスファターゼおよびロイシンアミノペプチダーゼ値の上昇の抑制も著明に観察されたが,血清総コレステロール値の改善作用は弱かった.この結果より,TRQはラット肝線維化の進行を強く且つ特異的に抑制することが分った.この線維化抑制の薬理作用の1つとしてTRQの有する肥満細胞の刺激に対する反応の抑制作用が関与している可能性が考えられた.
  • 白崎 康文, 増村 秀三, 明石 章
    1986 年 87 巻 3 号 p. 301-311
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    SHRを用いて糖尿病合併高血圧モデルの作製を試み,このモデルに対するbudralazine(Bud)の糖および脂質代謝に及ぼす影響を検討し,以下の成績を得た.1) SHRに10%蔗糖液を3ケ月間飲水させることによって血清インスリン値の上昇(Δ70%)および耐糖能異常が認められた.また,ΣΔ4IRI/ΣΔBSは低値を示したことから,このモデルが臨床でのインスリン非依存型糖尿病(NIDD)合併高血圧症の病態に類似していることがうかがわれた.一方,SHRにstreptozotocin(30 mg/kg, i.v.)を投与すると,血清インスリン値の低下(Δ−60%),耐糖能異常およびΣΔIRI/ΣΔBSの低下が認められインスリン依存型糖尿病(IDD)合併高血圧症に近い病態の得られることがわかった.2) 正常血圧ラット(NR),SHR,IDD-SHRおよびNIDD-SHRにBud(15,30および60 mg/kg/day)を連投しても,耐糖能血清インスリン値,血清脂質レベルおよび血清電解質に異常は認められなかった.その際,Budの連投によってSHRにおいて用量依存的な血圧下降がみられ,糖尿病合併高血圧モデルにおいても有意な降圧活性が認められた.3) NRにおいて耐糖能異常誘発が知られているfurosemide(FM,50および100 mg/kg/day)を連投すると用量依存的な耐糖能異常,ΣΔIRI/ΣΔBSの低下および血清K値の低下が認められた.さらに,FMの耐糖能異常誘発作用は,IDD-SHR>SHR>NRの順により著明に発現した.これらのFMの作用は,0.1%KClの飲水あるいはtriamtereneの併用によって抑制された.従って,FMによる上記用量での耐糖能悪化作用には,K喪失によるインスリン分泌不全が部分的に関与していることが示唆された.一方,BudはSHRおよび糖尿病合併高血圧ラットにおいて明らかな降圧作用を示すが,糖および脂質代謝には何ら影響を及ぼさないことが判明した.
  • 亀田 治子, 門間 芳夫, 田辺 恒義
    1986 年 87 巻 3 号 p. 313-321
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    α-およびβ-両アドレナリン受容体遮断薬であるlabctalolのモルモット呼吸器官に及ぼす影響をin vivoとin vitroで検討した.in vivoでは,ヒスタミン吸入モルモットの喘息症状は,labetalol(1~5 mg/kg腹腔内投与)によって大多数に明らかな軽減効果が見られたが,少数例には悪化作用も見られた.propranolol投与は明らかにヒスタミン喘息症状を悪化させた.但し,phentolamineおよびdiphenhydramine投与では明らかに喘息を軽減させる結果が得られた.in vitroのモルモット摘出気管標本を用いた実験において,labetalolはtonusの弛緩作用を示し,ヒスタミンの用量反応曲線を右下方に移動させた.この作用はpapaverincよりも遥かに少量で起り,しかも用量依存的にその作用は強まりpropranolol前処置によって消失したので,β2-受容体に対する直接刺激作用(内因性交感神経刺激作用,ISA)によるものと推察された.なお,labetalolにはphentolamineおよびdiphenhydramineと同様なヒスタミン用量反応曲線の右方平行移動(競合的拮抗作用)も認められ,α-受容体遮断の他にヒスタミン拮抗作用も加わっているものと推察された.
  • 友利 正行, 藤井 儔子
    1986 年 87 巻 3 号 p. 323-329
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    成熟ラットにおけるl-アドレナリン血圧反応の性差(友利,1986)について正常ラットと去勢ラットを用いて検索した.血圧はtail-cuff法により測定した.雄ラットのl-アドレナリン50 μg/kg皮下注射による持続的血圧上昇は,フェントラミン50 μg/kg皮下投与によりほぼ完全に拮抗され,雌の血圧は低下傾向となった.プロプラノロール200 μg/kg皮下注射前処置によりl-アドレナリン投与後の昇圧反応が増強されたが,雌においてより著明であった.クロニジン20 μg/kg皮下注射前処置後,l-アドレナリンにより雄の血圧は上昇,雌では下降した.去勢後3週で雄の血圧は有意に低下したが,l-アドレナリン昇圧反応パターンの変化は小であった.しかし,クロニジン前処置後のl-アドレナリンにより,去勢雄ラットの血圧は下降に転じた.ヨヒンビン1 mg/kg皮下注射前処置後のl-アドレナリン血圧反応は,雄は血圧の持続的上昇,雌は一過性の上昇を示した.去勢ラットにおいては,ヨヒンビン前処置後l-アドレナリンにより,雄の血圧は下降,雌は30分以降わずかに上昇した.これらの結果から,l-アドレナリン血圧反応の性差に中枢性機序の関与する可能性,これにエストロゲンよりもアンドロゲンの関与が大きいことが示唆された.
  • 高田 豊和, 中田 勝彦, 山内 秀泰, 磯 正
    1986 年 87 巻 3 号 p. 331-337
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    ACE阻害薬である(2R, 4R)-2-(o-hydroxyphelly1)-3-(3-mercaptopropiony1)-4-thiazolidinecarboxylic acid(SA446)とhydrochlorothiazideあるいはpropranololとの長期併用投与による高血圧発症抑制作用を自然発症高血圧ラット(SHR)において検討した.高血圧発症前(8週齢)のSHRにSA446(45 mg/kg, p.o.)を17週間連続投与することにより,高血圧発症は著明に抑制された.また,hydrochlorotlliazide(20 mg/kg, p.o.)の長期単独投与によっても明らかな高血圧発症抑制作用が認められたが,この作用はSA446単独投与による作用よりも軽度であった.一方,propranolol(20 mg/kg, p.o.)の長期単独投与による抗高血圧作用はきわめて軽徴であった.SA446とhydrochlorothiazideとの長期併用投与により高血圧の発症はほぼ完全に抑制され,抗高血圧作用における明らかな併用効果が認められたが,SA446の抗高血圧作用はpropranololとの併用によりほとんど影響を受けなかった.また,hydrochlorothiazide投与群では血漿レニン活性の上昇が認められ,明らかなrenin-angiotensin系の亢進が示された.以上の結果から,SHRでのSA446長期投与による抗高血圧作用においては,renin-allgiotcnsin系を賦活させるhydrochlorothiazide等の降圧利尿薬との併用投与がより効果的であることが示唆された.
  • 岡部 進, 竹内 孝治, 上木 茂, 井上 弥生, 砂本 美恵
    1986 年 87 巻 3 号 p. 339-350
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    prostaglalldin E1誘導体であるmisoprostol, (±)-methyl(11α, 13E)-11, 16-dihydroxy-16-methyl-9-oxoprost-13-en-1-oateのラットの胃および十二指腸損傷に対する効果,および作用機序について検討した.雄性SD系ラット(230~280 g,実験前15~24時間絶食,または非絶食)を使用した,misoprostol(3~300 μg/kg, p.o.)は,塩酸·aspirin,塩酸·ethanol,aspirin,prednisolone胃損傷およびmepirizole十二指腸損傷の発生を有意に抑制した.indomethacinおよび,mepirizole胃損傷の発生に対して,misoprostol(30~300 μg/kg, p.o,)は有意の抑制を示さなかった.misoprostol 30 μg/kgは,幽門結紮ラットの胃液分泌に対し影響を及ぼさなかったが100,300 μg/kgでは,胃液量,pepsin排出量は有意に増加し,酸排出量も増加の傾向を示した.misoprostol 30 μg/kgは,正常胃運動を約40分間ごく僅かに抑制したが,300 μg/kgではindomethacin誘発胃運動の亢進に対し,約1時間半抑制した.十二指腸HCO3-分泌は,misoprostol 300 μg/kgで有意に増加した.対照薬としてcimetidine(100 mg/kg)および16,16-dimethyl prostaglandin E2(1~100 μg/kg)を使用したが,いずれも,各種急性胃・十二指腸損傷を抑制したが,前者はmepirizole胃損傷に対して効果を示さなかった.以上よりmisoprostolは,胃液分泌に対し抑制作用を示さぬ用量で各種急性実験胃・十二指腸損傷を抑制し,胃損傷に対する作用機序は,今回の実験からでは不明であるが,十二指腸損傷の発生の抑制にはHCO3-分泌の刺激等が関与していることが推定される.cimctidilleの作用機序としては,胃液分泌の抑制,亢進した胃運動の抑制等が考えられ,16,16-dimcthyl prostaglandin E2の作用機序としては,正常または亢進した胃運動の抑制,およびHCO3-分泌の刺激等が推察された.
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