日本薬理学雑誌
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119 巻 , 6 号
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総説
  • 北村 佳久, 荒木 博陽, 五味田 裕
    原稿種別: 総説
    2002 年 119 巻 6 号 p. 319-325
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/21
    ジャーナル フリー
    従来よりうつ病の発症機序についてはモノアミン欠乏説,受容体感受性亢進説などが提唱されてきた.しかし,これらの仮説には矛盾する点も多く,現在においても明確な発症機序についての結論はない.一方,うつ病は中枢神経系の異常のみならず視床下部-下垂体-副腎(hypothalamic-pituitary-adrenal:HPA)系の機能異常を含む中枢神経系-内分泌系の機能異常が深く関与しているといわれている.本稿では抗うつ薬の作用機序およびうつ病の病態に深く関与しているserotonin(5-HT)-HPA系の相互作用とうつ病との関連性について紹介する.動物に反復のストレス負荷およびHPA系の活性化により5-HT2受容体機能は亢進し,うつ病の病態との類似性が考えられる.ACTH反復投与によるHPA系過活動モデルではイミプラミン反復投与による5-HT2受容体ダウンレギュレーションが消失し,さらに抗うつ薬スクリーニングモデルである強制水泳法におけるイミプラミンの不動時間短縮作用も抑制される.つまり,HPA系過活動モデルは三環系抗うつ薬治療抵抗性うつ病の動物モデルとしての可能性が考えられる.これまでコルチコイド受容体や5-HT受容体サブタイプの神経化学的および分子生物学的研究は進んでいるが,今後トランスジェニックマウスまたはノックアウトマウスなどを応用し,行動薬理学的研究および神経科学的研究によりうつ病の病態メカニズムおよび抗うつ薬作用機序の解明などの重要性が増すと思われる.
テーシス
  • 宮本 嘉明, 鍋島 俊隆
    原稿種別: テーシス
    2002 年 119 巻 6 号 p. 327-335
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/21
    ジャーナル フリー
    NMDA型グルタミン酸受容体は,中枢神経系における興奮性シナプス伝達,シナプス可塑性,神経発達および神経変性など種々の神経活動において,重要な役割を担っている.NMDA受容体は,高いCa2+透過性を有したイオンチャネルを内蔵しており,GluRζ1(NR1)サブユニットおよび4種類のGluRε1-4(NR2A-D)サブユニットによってヘテロ複合体として形成されている.標的遺伝子改変法によりGluRε1サブユニットを欠損させたマウスでは,海馬CA1領域でのNMDA受容体依存性シナプス電流や長期増強(LTP)の誘導,前脳での非競合的NMDA受容体アンタゴニスト[3H]MK-801の特異的結合量およびNMDA受容体を介する45Ca2+取り込み量が低下しており,NMDA受容体の機能低下を示した.GluRε1欠損マウスの前頭皮質および線条体においては,ドパミンおよびセロトニンの代謝回転の亢進が観察され,ドパミンおよびセロトニン作動性神経系の機能亢進を示した.この線条体におけるドパミン作動性神経系の機能亢進は,NMDA受容体の機能低下によって,ドパミン作動性神経系に対するGABA作動性神経系の抑制機能が低下することが原因であった.また,GluRε1欠損マウスでは,ドパミン作動性神経系の機能亢進による新奇環境下での運動過多が観察された.さらに,モーリス水迷路試験,恐怖条件付け試験および水探索試験において,それぞれ空間,文脈および潜在学習などの記憶·学習機能の低下が観察された.以上のことから,NMDA受容体がグルタミン酸作動性神経系のみならず,間接的にGABA作動性神経系やドパミン作動性神経系を調節することによって,各種の行動変化をもたらすことが示唆された.また,GluRε1欠損マウスが,NMDA受容体の機能低下とドパミン作動性神経系の機能亢進に関連する精神分裂病の新たなモデル動物となりえることが示唆された.
実験技術
  • 沖米田 司, 甲斐 広文
    原稿種別: 実験技術
    2002 年 119 巻 6 号 p. 337-344
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/21
    ジャーナル フリー
    多くの製薬企業において,大量の化合物を一度にハイスループットスクリーニング(HTS)により薬効評価を行うようになった現在,HTSに適した評価系の確立が,企業における薬理学研究者の大きなテーマとなってきている.その確立には,目的の受容体や酵素の遺伝子を細胞内に導入し,機能性タンパク質を,大量かつ全ての細胞に安定的に高発現させる技術が必要である.一般に,安定発現株を作成するために,プラスミドやレトロウイルスベクターなどの発現ベクターを用いているが,遺伝子が染色体にランダムに組み込まれることにより予定外の結果が現れたり,その発現量をコントロールすることが困難であることから,特に,毒性のある遺伝子などには応用が難しい.しかしながら,プラスミドの発現ベクターを用いた一過性の遺伝子発現では,全ての細胞に発現させるのは困難であるだけでなく,HTSの際には大変な労力と資金が伴うことなどから問題が多い.このような問題を解決する一つの有用な手段として,アデノウイルスベクターによる遺伝子導入法がある.アデノウイルスベクターは,どのような細胞でも応用可能で,一過性であるにも関わらず比較的長時間(細胞によっては,2週間から2カ月)かつ全ての細胞に高発現させることができる.近年,毒性の少ない改良型アデノウイルスベクターが種々開発されてきているが,特許や共同研究などの制約があるものが多い.そこで,本稿では,誰でも容易に入手できる市販のアデノウイルス作成キットを用いてアデノウイルスを作成した際の我々の経験について,特に,その作成過程における注意事項について実際の知見も交えて概説する.
  • 茶珍 元彦, 倉智 嘉久
    原稿種別: 実験技術
    2002 年 119 巻 6 号 p. 345-351
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/21
    ジャーナル フリー
    近年,医薬品による催不整脈作用,特に心電図におけるQT間隔延長が注目を集めている.薬物によるQT延長は,頻度は低いが稀にtorsades de pointes型の心室頻拍や突然死といった重篤な副作用を誘発する可能性があるため,その作用の検出は医薬品開発において非常に重要である.QT延長を誘発する薬物の多くが,心筋細胞の遅延整流K+チャネル(IK)の速い成分(IKr)を抑制し,心筋細胞の活動電位延長および心電図におけるQT間隔の延長を起こすことが知られている.IKrは,心筋細胞の活動電位の第2相(プラトー相)中に活性化され,活動電位を終了し再分極させる重要な役割を担っている.また,機能の発現実験や電気生理学的検討から,HERG(human ether-a-go-go related gene)がIKrを形成するK+チャネルサブユニット分子であると推定されている.HERGチャネルは,1200あまりのアミノ酸からなる6回膜貫通型の電位依存性K+チャネルであり,遺伝性QT延長症候群の原因遺伝子の1つ(LQT2)でもある.HERGチャネルを培養哺乳動物細胞あるいはアフリカツメガエル卵母細胞に発現させると,心筋細胞で観察されるIKrと類似したK+電流が観察される.この系を用いて,種々の薬物のHERGチャネルに対する作用の詳細な検討が可能である.ある薬物が心臓の電気活動に影響するか否かを判定するためには,動物心臓での心電図測定や心筋細胞の活動電位測定が必要であるが,さらに種々の薬物による心臓副作用における重要性が認識されてきているHERG電流に対する作用があるかどうかを高感度に検出することは,新規医薬品の開発における効果的な催不整脈作用検出法として必須の検討項目になると予想される.
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