日本薬理学雑誌
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77 巻, 1 号
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  • 唐木 英明
    1981 年 77 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    平滑筋の収縮時における細胞内 Ca イオン濃度の上昇は外液 Ca の流入あるいは細胞内結合 Ca の遊離によるものであることが主に張力実験の成績から推測されている.45Ca を用いた tracer 実験の成績は必ずしも張力実験から得られた仮説とは一致せず,これは平滑筋における Ca 分画が 45Ca movements の kinetics からは明らかに区別されないため実験成績の解釈があいまいであることが一つの大きな原因と考えられる.この総説は血管平滑筋材料として広く用いられているウサギ大動脈における 45Ca の動態に関する最近の報告をとりまとめ,その問題点を整理すると共に,この血管平滑筋における Ca 分画を最近多く用いられている La イオンおよび Scatchard Plot を利用して分類し,これらと収縮張力との関連を求めることを目的としたものである.
  • 西尾 晃, 加納 晴三郎
    1981 年 77 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    ウサギを用いて内毒素による発熱に対する aminopyrine の解熱作用が中枢性であるか否かについて sodium acetylsalicylate のそれと比較検討し以下の成績を得た.1)aminopyrine(50または 100mg/kg)の静注はウサギ正常体温を下降させたが,大槽内投与(0.5または5mg/body)ではその度合はきわめて弱いものであった.sodium acetylsalicylate の静注(140mg/kg)は正常体温に影響を与えなかったが,大槽内投与(0.7 または 7mg/body)では正常体温を下降させた.2)内毒素の静注(0.5μg/kg)または大槽内投与(0.01μg/body)による発熱に対して aminopyrine の静注(50mg/kg)は著しい解熱効果を示した.解熱効果の度合は内毒素による発熱がほぼ最高に達する3時間後において顕著であった.しかし,aminopyrine の大槽内投与(5mg/body)は内毒素の静注または大槽内投与による発熱に対してきわめて弱い解熱効果を示すにすぎなかった.3)sodium acetylsalicylate の静注(140mg/kg)または大槽内投与(0.7mg/body)は内毒素の大槽内投与(0.01μg/body)による発熱に対して同程度の解熱効果を示した.4)aminopyrine の主な代謝産物である 4-aminoantipyrine の静注(50mg/kg)は解熱効果を示したが大槽内投与(5mg/body)では解熱効果を示さなかった.4-aminoantipyrine の代謝産物である N-acetyl-4-aminoantipyrineの静注(50mg/kg)は解熱効果を示さなかったが,大槽内投与(5mg/body)では aminopyrine(5mg/body)の大槽内投与時とほぼ同程度の弱い解熱効果を示した.以上の成績より aminopyrine の解熱効果は主に末梢性に発揮される可能性が示唆された.
  • 亀山 勉, 鍋島 俊隆, 伊藤 治朗
    1981 年 77 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    薬物による聴器毒性の検定に,shuttle box 法による条件反応を利用してラットの聴覚閾の測定を試みた.物理的に聴覚障害を惹起させたラットの聴覚閾を,この試験法によって測定したところ,外耳道に綿栓をしたラットでは約 15dB,鼓膜を損傷したラットでは約 20dBの聴覚閾の上昇が認められた.一般的に臨床において聴器毒性をもつ薬物として知られている dihydrostreptomycin,kanamycin,neomycin および ethacrynic acid をラットに投与して,聴覚障害が検出できるかどうかを検討した結果,これら4種類の薬物に聴覚閾の上昇することが観察された.この試験法は,ラットの聴覚閾の測定方法に条件反応を利用した聴器毒性の試験法の中では,従来の方法より簡単で,短期間に多数のラットの聴覚閾を測定することが可能であった.
  • 藤村 一, 鶴見 介登, 野崎 正勝, 今井 浩達, 丹生 一三, 村松 弥生
    1981 年 77 巻 1 号 p. 27-39
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    phenothiazine 系抗炎症薬である protizinic acid(PZA)について生体高分子との相互作用ならびに血小板機能に対する作用を metiazinic acid(MZA)および他の弱酸性抗炎症薬と比較検討した.BSA 熱変性抑制作用,赤血球熱溶血阻止作用において PZA,MZA はindomethacin(IM),ibuprofen(IP)よりも強い作用を示したが,両者の間に有意な差は認められなかった.in vitro ラット血小板を用いた ADP ならびに collagen 凝集に対しては PZA,MZA は IM とほぼ同等の作用を示したが,家兎血小板の arachidonic acid(AA)凝集においては PZA は IM とほぼ同程度の強力な作用を示したのに比して,MZA は弱い作用しか有しなかった.また AA 家兎急性致死阻止試験においても PZA は MZA よりも少量で有効であった.さらに被験薬の作用点を明らかにするために 3H-serotonin の取り込み,放出反応に対する作用を検討したところ,取り込み反応に対しては PZA,MZA はいずれも無影響であったが,放出反応に対しては PZA は MZA および IM よりも強力に抑制した.ADP 静脈内投与による in vitro 血小板凝集に対する被験薬の作用は,いずれも比較的弱いものであったが,その中でも PZA はやや強い抑制作用を示した.さらに,薬物の脂質膜との相互作用を検討するために,血小板膜モデルとして,血小板膜脂質と同様の組成に調製した liposome を用いて,その Ca2+ による凝集に対する被験薬の作用を検討したところ,liposome 凝集は用量依存的に抑制され,その作用強度は PZA,MZA,IM,IP の順であった.この結果,PZA の脂質膜に対する強い相互作用が示された.以上のことから,PZAの血小板に対する作用点の1つとして,従来考えられている PG 生合成系に対する作用以外に,血小板膜脂質に対する相互作用の関与が示唆された.
  • 萩原 彌四郎
    1981 年 77 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    熱電効果による組織血流測定法により,クラーレ化・人工呼吸下のネコの脳内各部ならびに脳外頭部血流を測定し,これに対する budralazine の作用および作用機構について検討した.1,大脳皮質および海馬の血流は budralazine によって増加し,血圧が下降したときでも血流レベルが低下することはなかった.2.視床下部および扁桃核の血流は budralazine の作用を受けることが少なかった.3.筋血流は budralazine により明らかな増加を示し,作用は緩徐で持続的であった.4.皮膚血流は budralazine により著明に増加することはなく,血圧の下降につれて血流レベルも低下した.5.血圧は budralazine の静注により下降する.これは1回投与での持続はそれほど長くないが,くりかえし投与すると長時間持続性となり,血圧下降の程度は中等度であった.6.以上の作用のうち血流増加作用と血圧下降作用とは主として budralazine の血管平滑筋弛緩作用によるものであるが,その作用機構は papaverine ともhydralazine ともやや異なるものと思われる.7.本薬物は脳表面に近い部位の血流を,深部にある脳部位の血流より比較的明らかに増加させ,かつ筋血流増加と緩和な降圧作用を有する点で特異的な薬物であると考えられる.
  • 成田 寛, 池沢 一郎, 佐藤 匡徳, 中島 宏通, 清本 昭夫
    1981 年 77 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    diltiazem(Dil)の心機能に対する作用を,麻酔開胸犬ならびにイヌ心肺標本を用いて検討した.麻酔開胸犬に Dil(0.03~0.3mg/kg)を静脈内投与すると左心室内圧最大変化率(max dp/dt)は増加し,左心室内圧拡張終期圧(LVEDP)は上昇し,心拍出量および冠血流量は増加した.一方,血圧は低下し,心拍数(HR)は減少した,この max dp/dt の増加は両側星状神経節切除ならびに両側頸部迷走神経切断によって減弱したが,完全には抑制されなかったので,イヌ心肺標本を用いてさらに検討を加えた.イヌ心肺標本で動脈圧(AP)と静脈圧(VP)を一定にした条件下で,spontaneously beating と atrial pacing(心房ペーシングにより HR を一定とした)いずれの場合も Dil(1mg)は max dp/dt を減少させ,LVEDP を上昇させた.また,心機能曲線(一回仕事量 対 LVEDP)を右に移動させた.一方,AP と HR を一定にした条件下で VP を増加させると max dp/dt は増加するが,この増加は Dil 存在下でも同様に認められた.以上の結果から,Dil は心筋直接には negative inotropic action を示すが,麻酔開胸犬で認められた max dp/dt 増加作用は,降圧反射による交感神経活動の亢進と静脈還流量の増加による二次的な作用によることが示唆された.
  • 井上 敦郎, 白石 武昌, 望月 徹, 矢内原 昇
    1981 年 77 巻 1 号 p. 61-71
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    bombesin の中枢性胃酸分泌に対する作用をラットを用いて検討した.bombesin 単独50~150ng/kg(i.v.)では胃酸分泌促進作用は認められなく,200~300ng/kg(i.v.)で僅かに酸分泌を認め,この作用には tachyphylaxis を伴った.bombesin の小量(200ng/kg i.v.)投与により insulin によって惹起される胃酸分泌の潜時の短縮,持続時間の延長,総酸量の増加といずれも有意(p<0.001)であった.bombesin 単独の酸分泌最小有効量以下の50または100 ng/kg(i.v.)前投与により insulin の酸分泌作用を増強した.bombesin 10~20 ng/0.1μlを視床下部外側野(LHA)内に直接投与しても胃酸分泌には何らの作用も認めないにも拘ず,insulin の作用を増強した.bombesin を電気浸透的に LHA ニューロンに直接投与した結果は殆んどニューロンへの直接の影響はなかった.しかし,LHAのブドウ糖感受性ニューロンに対しては,insulin や 2-DG によって賦活化された場合に於てのみ,その作用を増強するという特異な現象を認めた.またこの LHA 内の特定の胃酸分泌を直接統御するブドウ糖感受性細胞の活動に対しても同様に特異的で,bombesin 単独では殆んどニューロン活動にも,胃酸分泌にも作用を及ぼさなかったが,insulin や 2-DG によって賦活されてニューロン活動が増加し,それに伴って並行的に酸分泌も増加したときには bombesin のそのニューロンへの直接投与の場合,その作用が明らかに増強するという極めて興味ある所見を得た.以上の成績などから bombesin の酸分泌作用はガストリン分泌細胞賦活の末梢性であると思われるが,視床下部が直接統御する中枢性胃酸分泌機序に対して,bombesin は重要な影響を及ぼしていることが示唆された.従って bombesin そのものやその受容体が脳内,特に視床下部内に高濃度に存在することから,neurotransmitter としてよりも neuromodulator の候補物質としての役割が大きいと推定した.
  • 久木 浩平, 渋谷 具久, 鶴見 介登, 藤村 一
    1981 年 77 巻 1 号 p. 73-85
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    dexamethasone(DX)のエステル体である dexamethasone 17-valerate(DV-17)について,軟膏剤として外用適用による抗炎症作用を,既存の軟膏剤である betamethasone 17-valerate(BV-17),bcclomethasone 17,21-dipropionate(BE)および hydrocortisone 17α-butyrate(HC)と同一基剤を用いて比較した.DV-17は,histamine や bradykinin 皮内注射による血管透過性亢進,croton 油滴下によるマウス耳浮腫など浅在性炎症に対しては,顕著な抑制効果を示した.また,各種起炎物質によって惹起した急性亜急性の,皮下組織にまで及ぶラット足蹠浮腫に対しても著明な抑制作用を呈し,比較に用いた DX や BV-17 とほぼ同等の抗炎症効果が認められた.経口投与で検した carrageenin 足蹠浮腫の抑制効果は,DX が DV-17 より有意に強いにもかかわらず,軟膏皮膚塗布では,同等の効果が認められ,エステル体としての DV-17 は外用剤に適するものと思われた.皮下組織よりもさらに深部に埋没した炉紙による肉芽増殖や,adjuvant 関節炎での反対足の効果など,軟膏塗布部位から離れた場所での炎症に対しても,有意な抑制効果を呈したものの DV-17 の効果は弱く,DX より有意に弱いものであった.また副腎や胸腺重量の減少,さらに体重増加の抑制など全身性副作用についても,DV-17 軟膏の方が DX よりも明らかに弱かった。従って DV-17 は適用皮膚から透過し,その局所の炎症に対しては十分強力な抑制効果を呈するが,組織から血行への移行量は少なく,外用グルココルチコイド剤としての有用性が示唆された.創傷部に直接塗布した場合は顕著な肉芽増殖抑制作用があり,またアレルギー性炎症にも明らかな抗炎症作用が認められ,DV-17 は外用抗炎症剤として有効でかつ安全性が高く,臨床上有用な薬物であると考えられた.
  • 久保 信治, 森川 宏二, 松原 一誠, 山崎 光雄, 加藤 日出男
    1981 年 77 巻 1 号 p. 87-98
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    新しい鎮痙薬3-(di-2-tkienylmethylene)-5-methyl-trans-quinolizidinium bromide(HSR-902)の胃腸管,胆道系および尿路系の平滑筋臓器に対する鎮痙作用を atropine,butylscopolamine bromide,timepidium bromide,prifinium bromide および diphemanil methylsulfate と比較検討した.胃腸管および胆道系臓器に対して,摘出標本における抗 acetylcholine(ACh)作用の序列は HSR-902>atropine>prifinium bromide>timepidium bromide≥diphemanil methylsulfate ?? butylscopolalmine bromide となり,また生体位標本における鎮痙作用も被検薬間でほぼ同程度の胆のう内圧低下,Oddi 筋弛緩作用を示した胆道系臓器を除いて摘出標本における抗 AGh 作用の序列にほぼ一致し,HSR-902 の強い鎮痙作用が確認された.一方,尿路系臓器に対して摘出膀胱における HSR-902 の抗 ACh 作用は他の被検薬に比べて最も強かったが,胃腸管に対する抗 ACh 作用の選択比は atropine および diphemanil methylsulfate と同様に他の被検薬に比べて小さな値を示した.また,生体位における骨盤神経刺激による膀胱攣縮抑制作用においては各被検薬とも弱く,その序列は timepidium bromide>prifinium bromide>butylscopolamine bromide=HSR-902 ?? diphemanil methylsulfate ?? atropineとなり,さらに回腸の抗ACh作用に対する選択比においては HSR-902 が atropine に次いで小さな値を示した.以上の結果から,HSR-902 は atropine と同様に他の被検薬に比べて膀胱に対する作用選択性の弱いことが明らかとなった.また,その原因として 1)膀胱と他の臓器との ACh 受容体の質的相違あるいは 2)被検薬の神経節に対する遮断作用の相違が考えられた.
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