phenothiazine 系抗炎症薬である protizinic acid(PZA)について生体高分子との相互作用ならびに血小板機能に対する作用を metiazinic acid(MZA)および他の弱酸性抗炎症薬と比較検討した.BSA 熱変性抑制作用,赤血球熱溶血阻止作用において PZA,MZA はindomethacin(IM),ibuprofen(IP)よりも強い作用を示したが,両者の間に有意な差は認められなかった.
in vitro ラット血小板を用いた ADP ならびに collagen 凝集に対しては PZA,MZA は IM とほぼ同等の作用を示したが,家兎血小板の arachidonic acid(AA)凝集においては PZA は IM とほぼ同程度の強力な作用を示したのに比して,MZA は弱い作用しか有しなかった.また AA 家兎急性致死阻止試験においても PZA は MZA よりも少量で有効であった.さらに被験薬の作用点を明らかにするために
3H-serotonin の取り込み,放出反応に対する作用を検討したところ,取り込み反応に対しては PZA,MZA はいずれも無影響であったが,放出反応に対しては PZA は MZA および IM よりも強力に抑制した.ADP 静脈内投与による
in vitro 血小板凝集に対する被験薬の作用は,いずれも比較的弱いものであったが,その中でも PZA はやや強い抑制作用を示した.さらに,薬物の脂質膜との相互作用を検討するために,血小板膜モデルとして,血小板膜脂質と同様の組成に調製した liposome を用いて,その Ca
2+ による凝集に対する被験薬の作用を検討したところ,liposome 凝集は用量依存的に抑制され,その作用強度は PZA,MZA,IM,IP の順であった.この結果,PZA の脂質膜に対する強い相互作用が示された.以上のことから,PZAの血小板に対する作用点の1つとして,従来考えられている PG 生合成系に対する作用以外に,血小板膜脂質に対する相互作用の関与が示唆された.
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