1) トリチウムでラベルしたesculin (*esculin) をラットおよびモルモットに静注し,臓器内分布を調べた.その結果,血中濃度は経時的な減少を示したが,肝臓,副腎では投与4
h後に高値を示した.臓器1g当りの放射活性は副腎が圧倒的に高かった,腎臓や睾丸では放封活性の経時的な減少を示したが,比較的長時間臓器内にとどまった.また臓器1g当りの放射活性は腎臓は副腎に次いで高かった.これにたいして心臓,大脳,小脳および延髄では放射活性は一般に低く,しかも急激な減少を示した.
2) *esculin静注ラットの肝臓,副腎,睾丸および腎臓のそれぞれの核 (N), ミトコンドリア (Mt), ミクロゾーム (Ms) および上清 (S) の各画分における*esculinの経時的分布を調べた.
肝臓では投与30
m後にはMs, S-画分に, 1
h後にはMt-画分に高いとり込みがみられた.副腎では1
h後はS-画分が最も高く,次がN-画分であった, 4
h後ではMt-画分が高く次がMs-画分であった.睾丸では1
h後MtとN-画分が高かったが, Mt-画分はその後急激に減少した. N-画分ではその後でもなお比較的高い放射活性を示した.腎臓の皮質では30
m後のS-画分のみが最も高い値を示し,その他の画分はいずれも低値であった.髄質では4
h後のMt-画分が最も高く,次がN-画分であった.その他の画分は皮質の場合と同様であった.
3) *esculinをラットおよびモルモットの静脈内または胃内に投与したのち,尿および糞に排泄される代謝物をペーパークロマトグラフィーで分離した.
ラット尿への排泄は静脈の場合,1
hおよび4
h後ともesculinが一番多く,次がesculin (Rf=0.49±0.03) よりRf値の低い物質であった. 20
h後ではesculetin (Rf=0.75±0.03) よりRf値の高い物質 (Rf=0.84) が多かった.また胃内投与の場合, 4
h後ではesculinが一番多かった.しかし静注の場合と異なりesculetinが次に多く排泄された.モルモットの尿の場合もラット尿と同様な傾向を示したが,静注4
hおよび20
h後ではesculinのほかにesculinよりRfの高い物質の排泄が多かった.
ラット糞への排泄は静脈,胃内投与ともesculin, esculetinおよびこれよりRf値の高い物質が排泄された.これにたいしてモルモットの静脈内投与の場合は4
h後ではラット糞と同様な傾向を示したが, 20
h後ではRf値の極めて低い物質 (Rf=0.18) が最も多く,次がesculinよりRf値の高い物質 (Rf=0.67) とesculetinとであった.
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