日本薬理学雑誌
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73 巻, 8 号
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  • 向後 博司, 相澤 義雄
    1977 年 73 巻 8 号 p. 871-876
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット子宮内のprostaglandin(PG)代謝に対する卵胞ホルモンの作用を検索する目的で,3H-PGFおよび3H-PGE2を用いin vitroでの子宮への摂取ならびにPGFとEとの相互変換におよぼす卵胞ホルモンの影響について検討した.その結果,卵胞ホルモン投与6時間の子宮では3H-PGFの摂取および3H-PGE2の摂取は充進を示した.特にPGFの摂取においてはホルモン投与24時間子宮で亢進が一層著明に認められた.さらに3H-PGFのPGEへの変換と3H-PGE2のPGFへの変換に対する卵胞ホルモンの作用に相違があることが解った.すなわち,3H-PGFからPGEへの変換はホルモン投与後,時間の経過につれ増大したが,3H-PGE2からPGFへの変換は3H-PGFのPGEへの変換ほどホルモンの作用が認められなかった.次にPGFの代謝に対するindomethacinの作用をin vitro,in vivoで検討した.その結果in vivo実験において,indomethacinは卵胞ホルモンのPGFへの摂取亢進作用を阻止することを観察した.以上の結果から,卵胞ホルモンはラット子宮でのPGFおよびE2代謝にも大きく関与し,かつその代謝に対するホルモン作用に違いのあることを認めた.
  • 田村 俊吉, 前橋 浩, 小澤 玲子, 後藤 和義
    1977 年 73 巻 8 号 p. 877-885
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ヒ素慢性中毒を発生きせたclosed colony(田村,1950)のWistar系albino ratの臓器,糞便,尿のヒ素量をarsenic analyzer unitで測定した.動物は約100匹に粉乳を主成分とする飼料および雑殻飼料の2種類を与えた.ヒ素剤はヒ素混合物(As2O3として100ppmに調整)とAs2O3 100ppmを両飼料にそれぞれ添加した.実験はヒ素添加飼料を6ヵ月,以後ヒ素無添加飼料を6ヵ月与えてヒ素量を測定した.体重の増加は両飼料群とも対照群との間に差異はなかった.臓器のヒ素量はヒ素無投与群でも僅かながら増加した.脳のヒ素量は粉乳飼料群では雑殻飼料群よりも6,12ヵ月の蓄積は少なかった.両ヒ素剤を添加した場合も同じ傾向であった.しかし12ヵ月では両飼料群は対照群と差異ないまでに減少した.肝,脾,肺についても粉乳飼料群は雑殻飼料群より蓄積は少なかった.しかし両飼料群とも12ヵ月後も対照群より高かった.腎は粉乳飼料群では雑殻飼料群より著しく少なく,12ヵ月では対照群と差異はなかったが雑殻飼料群では高かった.糞便のヒ素量は両ヒ素剤とも雑殻飼料群では粉乳飼料群より数値的に高い傾向を示した.また尿のヒ素量はこれとは反対に雑殻飼料群では粉乳飼料群より少ない傾向を示した.12ヵ月後の糞便,尿のヒ素量はヒ素剤投与停止の6ヵ月に比べてかなり減少したが対照群に比べて遥かに高かった.
  • 島田 力, 布浦 由樹, 北中 英良, 岩上 正蔵, 水田 泰子
    1977 年 73 巻 8 号 p. 887-894
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    カネクロール500(KC-500,55%の塩素を含むPCB混合物)を週2回,15週間,ラットに1,10,100mg/kgの用量で経口投与し,その毒性学的,生化学的変化を検討した.その後投与を中止して15週間動物を観察し,回復度を調べた.KC-500を15週間投与して得られた血液学的・血清生化学的変化は,主に100mg/kg投与群でみられ,10mg/kg投与群ではわずかにヘモグロビン含量の低下を認めるにとどまった.他方,肝ミクロゾームに及ぼす影響はより鋭敏で,pentobarbltalによる睡眠時間は,KC-500投与期間中1mg/kgの投与群にあっても対照群より有意に減少した.肝ミクロゾームの他の変化は,薬物代謝に関与する電子伝達系の成分の含量・活性の増大ならびglucose 6-phosphatase活性の低下であった.さらに病理組織学的には,壊死を伴なった肝細胞変化がKC-500の投与量を増すごとに強くなった.投与を中止して15週間経過したラットにあっては,種々の血液学的,生化学的,病理学的変化は回復傾向を示すが,投与量の多い100mg/kg群では,その回復は遅れる結果であった.組織中のPCB濃度は脂肪組織に最も高く,次いで肝臓の順となる.KC-500の投与を中止すると組織中のPCB濃度は減少するが,その減少割合は肝臓あるいは脂肪組織では緩やかで,また脂肪組織では投与量の多いほど残留度は高くなる.さらにKC-500中に含まれるPCBのなかには,肝ミクロゾーム酵素誘導作用により代謝を受けやすいと考えられる成分がみられ,今後PCBの代謝と毒性の関係を究明することが必要であると述べた.
  • 藤村 一, 鶴見 介登, 野崎 正勝, 久木 浩平
    1977 年 73 巻 8 号 p. 895-905
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新たに合成された抗炎症ならびに鎮痛作用の強いindan誘導体,TAI-284について生体高分子との相互作用をin vitro試験を中心として検討した.pH5.3におけるBSA熱変性に対してTAI-284の抑制作用はphenylbutazoneより弱かったがindomethacinと同等であった.また赤血球熱溶血に対するTAI-284の抑制作用は,indomethacinより約2倍強力であった.In vitroにおけるADPおよびcollagenによるラット血小板凝集に対してTAI-284は高濃度で抑制作用を示したが,indomethacinより弱く約1/5の効果であった.ラットに被検薬を経口投与して採取した多血小板血漿のADPによる凝集に対してTAI-284はindomethacinの約1/5,およびibupro琵nと同等の抑制作用を,またcollagenによる凝集に対してはindomcthacinの約1/4,およびibupro琵nの2倍の強い抑制作用を示した.以上のことからTAI-284はindomethacin,ibuprofenなどより膜に対する親和性が強力であり,膜安定化作用が顕著と考えられた.なおTAI-284の血小板におけるprostaglandin生合成阻害作用はindomethacinより弱いものと推察される.
  • 鍋島 俊隆, 伊奈 みどり, 亀山 勉
    1977 年 73 巻 8 号 p. 907-917
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Difenamizole(DFZ)の鎮痛作用にmonoamine関連薬物がどのような影響をおよぼすかmorphine(MOR)の鎮痛作用と比較検討した..鎮痛作用は,マウスを使用して酢酸writhing抑制法により測定した.Monoamine関連薬物として以下の薬物を使用した.5-hydro-xytryptophan(5-HTP),5-hydroxytryptamine(5-HT),p-chlorophenylalanine(p-CPA),5,6-dihydroxytryptamine(5,6-DHT),L-dihydroxyphenylalanine(L-DOPA),dopamine(DA),norepinephrine(NE),methamphetamine,α-methyl-p-tyrosine(α-MT),6-hydroxy-dopamine(6-OHDA),diethyldithiocarbamate(DDC),phenoxybenzamine,reserpine(RSP),なお,これらの薬物のみではwrithingにほとんど影響しない用量を用いた.5-HTPはDFZのwrithing抑制作用を減弱した.5,6-DHTの前処置によってもDFZのwrithing抑制作用は有意に減少した.しかし,他の5-HT関連薬物はDFZのwrithing抑制作用に対して有意な影響をおよぼさなかった.Catecholamine関連薬物ではDA,i.c.りDFZの鎮痛作用が有意に減少し,6-OHDA,i.c.,phenoxybenzamineおよびreserpineによりDFZの鎮痛作用は有意に増加した.NE,i.c.,DDCでは変化がみられなかった.5-HTP,5-HT,i.c.はMORの鎮痛作用を有意に増大し,5,6-DHT,i.c.は有意に減少した.また,p-CPAは減少傾向を示した.NE,i.c.はMORの鎮痛作用を有意に増加し,6-OHDA,i.c.はMORの鎮痛作用を有意に減少した.他の薬物は有意な影響を与えなかった.以上の結果より,DFZの鎮痛作用にはDA系の関与が大きいものと考えられMORの鎮痛作用には5-HT系およびNE系が関与していることが示唆される.また,DFZとMORとでは,その鎮痛作用に対するmonoamineの関与の機構が異なっているようである.
  • 旭 哲也, 福原 道雄, 長谷川 通規, 後藤 匡代, 田中 修一
    1977 年 73 巻 8 号 p. 919-929
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    できうる限り抗原性を除去した代用血管を得る目的で,ブタの頸動脈を次記の方法で順次処理した3種の検体を作製し,これらの検体について免疫薬理学的な検討を行なった.検体I;ブタ頸動脈より,付着した脂肪や外部組織を剥離,除去したもの.検体II;検体Iをchymotrypsinを含む処理液で3時間処理したもの.検体III;検体IIを3%glutaraldehydeで14日間固定したもの.この3検体より水溶性蛋白質を抽出,それぞれE-I,E-IIおよびE-IIIとし,これらを抗原としてモルモット,ウサギを感作し,active systemic anaphylaxis,passive systemic anaphylaxis,passive cutaneous anaphylaxis,感作平滑筋の抗原によるcontractionおよびArthus反応などを指標として抗原性の低下を観察した.その結果,E-IとE-IIの間には免疫学的交叉反応が認められ,重層法やゲル内沈降反応でも検体Iと検体IIの間に共通抗原の存在することが確かめられた.E-IIIは上記のすべての実験系で反応を示さなかった.また,ウサギ背部に検体Iを細切して移植し,3および5ヵ月後にE-Iを静注したところ,anaphylactic shockを起こして死亡した.同様にウサギに検体IIIを移植してE-IIIを静注したが,反応は誘発されなかった.以上の成績から,ブタ頸動脈をchymotrypsin処理,3%g1utaraldehyde固定することにより,その抗原性の除去されることが推定された.
  • 柴田 健介, 林 茂寛, 戸田 昇
    1977 年 73 巻 8 号 p. 931-938
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ウサギの摘出左心房および大動脈条片を用いて,hexobendineにCa++の細胞内流入阻害作用があるか否かを検討し,以下の実験成績を得た.1)K+で脱分極し,isoproterenolを適用した左心房標本のCa++流入による収縮に対し,hexobendine10-5M以上の用量は明らかな抑制作用を示した.抑制の強さはverapamil»prenylamine=hexobendineの順であった.2)心筋細胞膜のK+による脱分極はhexobendineによって影響をうけなかった.3)大動脈条片においてもCa++流入による収縮をhexobendineは強く抑制した.その強さはverapamil>prenylamine>hexobendineの順であった.4)大動脈条片において,hexobendineはnoradrenalineによる収縮よりもK+による収縮をより強く抑制した.以上の成績から,hexobendineの収縮力抑制作用にCa++細胞内流入抑制の関与することが強く示唆される.
  • 大森 健守, 渡辺 繁紀, 植木 昭和
    1977 年 73 巻 8 号 p. 939-954
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    慢性電極植え込みウサギを用い,行動観察と同時に脳波を測定し,Hurazepamの脳波作用をdiazepamのそれと比較検討した.HurazepamO.5~5mg/kgの静脈内投与でウサギは鎮静状態を示し,これにともなって,脳波は全般的にdrowsy patternとなり,皮質,扁桃核では高電圧徐波,海馬ではθ波の脱同期化がおこった.この場合,とくに皮質において高電圧徐波の上に速波成分が重畳するのが特徴であった.音刺激および中脳網様体,後部視床下部,視床内側中心核電気刺激による脳波覚醒反応はflurazepamによって抑制された.これらの作用はdiazepamでも全く同様であった.Physostigmine投与によって惹起する脳波覚醒反応はflurazepamによって抑制されたが,diazcpamではほとんど変化しなかった.視床内側中心核刺激による漸増反応はflurazepamおよびdiazepamにより増強される傾向を示した.閃光刺激によって後頭葉皮質に誘発される電位(photic driving rcsponse)および視床後外腹側核刺激による増強反応はflurazepamによってごく軽度に抑制されたが,diazcpamではかかる変化は見られなかった.海馬,扁桃核の電気刺激による大脳辺縁系後発射はflurazepam,diazepamのいずれによっても抑制されたが,flurazcpamは扁桃核後発射を比較的小量で抑制した.後部視床下部あるいは中脳網様体刺激による昇圧反応はflurazepamおよびdiazepamによって抑制されたが,両薬物とも中脳網様体刺激による昇圧反応に比べ後部視床下部刺激による昇圧反応をより強く抑制した.以上,flurazepamの中枢作用は全般的には,質的にも,量的にもdiazepamの作用に類似しているが,2,3の点において異なる作用も有することが示唆された.
  • 安藤 隆一郎, 小野寺 憲治, 嶋 啓節, 木皿 憲佐, 高橋 三雄, 大沢 啓助
    1977 年 73 巻 8 号 p. 955-959
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ネコを用い視床内側核の単一ニューロン活動に対するcapsaicinの作用を検討したところ次の結果が得られた.1)視床内側核より21個のニユーロンを単離したが,このうち10個は侵害刺激(皮膚のツメ付き鉗子によるpinch)および非侵害刺激(毛吹き,tapping)に反応し,6個は非侵害刺激のみに反応し,さらに残りの5個は刺激に全く反応しなかった.2)これら単離したすべてのニューロンについてcapsaicinの効果を検討したところ,侵害刺激と非侵害刺激の両方に反応する10個のニューロンは1個を除きすべてcapsaicinおよびbradykininに反応した.非侵害刺激のみに反応する6個のニューロンのうち5個はcapsaicinおよびbradykininに全く反応しなかったが,1個はニューロンの発火頻度が増加した.さらに刺激に対して全く反応を示さないニューロン5個はcapsaicinおよびbradykininにも全く反応しなかった.3)Bradykininに反応するニューロンはすべてcapsaicinに反応するが,ニューロンの反応潜時は著しく異なり,bradykininでの反応潜時は7.64±1.12秒,capsaicinのそれは0・97±0.07秒であった.4)Capsaicinによる発火頻度の増加はmorphineによって抑制され,naloxoneによって回復した.
  • 鍋島 俊隆, 亀山 勉
    1977 年 73 巻 8 号 p. 961-972
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    鎮痛用量のdifenamizole陽控強化条件行動に対する作用について,aminopyrine,aspirin,morphineおよび向精神薬の作用と比較検討した.雄性Wistar系のラットを固定比率食餌強化スケジュール(FR-10およびFR-30)および低反応率分化食餌強化スケジュール(DRL-15)下で訓練し実験に供した.Difenamizole(200および400mg/kg,p.o.)はFR-10スケジュール下の反応率を用量依存的に減少した.Difenamizoleによる反応抑制効果は,aminopyrine(400mg/kg,p.o.)やchlordiazepoxide(25および40mg/kg,p.o.)の作用と似ていた.FR-30スケジュール下の反応率はdifenamizole(100~400mg/kg,p.o.)およびaminopyrine(200~400mg/kg,p.o.)で影響を受けなかったが,chlordiazepoxideにより減少した.一方,DRL-スケジュール下の反応では,レパー押し反応と平均反応間時閲は,difenamizole,aminopyrine,aspirinのほとんど全ての用量で有意な作用を受けなかったが,餌獲得は有意に抑制された.これら薬物のDRL-スケジュール下の行動に対する効果は,chlorpromazine(5mg/kg)の作用と似ていた.Methamphetamine(1および2mg/kg,p.o,),diazepam(1および2mg/kg,p.o.)およびmorphine(20mg/kg,p.o.)はDRL-スケジュールでのレバー押し反応の平均反応間時間を短縮し,反応率を上昇した.以上の結果から,FRおよびDRL-スケジュール下での条件行動に対するdifenamizoleの作用はmorphineよりもaminopyrineのそれに似ているものと考えられる.
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