日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
75 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 篠沢 真哉, 荒木 泰典
    1979 年 75 巻 3 号 p. 207-214
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    生体膜にhydrophobicに親和性を有するBiscoclaurin型アルカロイドのcepharanthine,Coclaurin型アルカロイドのpapaverineおよびcholesterolのEhrlich腹水ガん細胞に対する作用を比較検討した.シアニン系の螢光色素diS-C3-(5)を用いての膜電位に与える変化ではcepharanthineおよびpapaverineはともに膜電位を低下させたが,その作用はcepharanthineの方が強い.酸素消費速度によるエネルギー代謝に与える影響ではpapaverineは濃度依存的に強く抑制したがcepharanthineはわずかに抑制作用が認められ,cholesterolにはほとんどその作用がなかった.Lysolecithinによる細胞膜のK+イオンの透過性亢進に対してはpapaverine>cholesterol>cepharanthineの順で抑制効果が認められた.さらに膜流動性に対してはcholesterol>cepharanthine>papaverineの順に低下作用を示した.これらの成績よりpapaverineの作用機序としてはガン細胞膜ATPase阻害と細胞内ミトコンドリアの代謝を調節することによって膜の区画性を維持し,流動性を調節しているのに対して,cepharanthineのATPase作用に対する阻害作用は弱く,cholesterolとともにそのhydrophobicな性質のため脂質2重層に作用して膜流動性を低下させ膜安定化作用を示すことが示唆される.ただし,cepharanthineはCon Aなどのレクチンのreceptorに関係のある脂質2重層に作用し,cholesterolは膜表面のcholesterol層に入り込み流動性を調節するものと考えられる.
  • 九鬼 基翁
    1979 年 75 巻 3 号 p. 215-225
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    投与期間を10日間とし,投与量は漸増法に従いmorphine(Morph)依存ラットを作成した.Morph投与間隔を6時間としたものをMorph依存状態とし,この時の視床下部-下垂体-副腎(HPA)系機能を検討した.ラットの体重は朝に高く,夕方に低い日内変動を示したが,Morph依存状態においても同様の日内変動が認められた.ラットの体温は3時に高く,9~15時に低い日内変動を示したが,Morph依存状態では体温の日内変動は認められず,Morph依存ラットの体温は終日一定値を示した.ラットの血漿corticosterone値は9時に低く,21時に高い日内変動を示し,Morph依存状態でも同様の日内変動が認められた.しかし,Morph依存状態ではpentobarbital麻酔(80mg/kg i.p. 45分間)によって血漿corticosterone値の日内変動は消失し,15および21時の血漿corticosterone値は低値を示した.Formalin stressに対するhypothalamo-pituitary-adrenal(HPA)系の反応性はMorph依存ラットがnaiveラットよりも大であった.HPA系のformalin stress反応に対するdexamethasone(Dex)抑制作用は,naiveラットではDex 0.1mg/kg s.c.によってほぼ完全な抑制作用が認められたが,Morph依存ラットではDex 4mg/kg s.c.によってはじめて有意の抑制が認められ,10mg/kg s.c.の大量によっても完全抑制には至らなかった.ACTHに対する副腎の反応性(in vivo,in vitro)に日内変動は認められず,また対照およびMorph依存群の各時刻における反応性に有意差は認められなかった.今回明らかにされたMorph依存状態におけるHPA系機能の変化は,Morph依存形成におけるHPA系の関与を示唆するものであると考えられる.
  • 伊藤 千尋, 山口 和夫, 渋谷 靖義, 鈴木 和男, 山崎 好雄, 小町 裕志, 大西 治夫, 藤村 一
    1979 年 75 巻 3 号 p. 227-237
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    蛋白分解酵素であるbromelain(BR),trypsin(TR)およびそれらの混合製剤(KT)の抗炎症作用を主にウサギを用い,種々の試験法に従って検討した.Carrageenin足蹠浮腫に対して,KTの経口投与により用量依存的な浮腫抑制作用が認められた.このKTの浮腫抑制作用はBRおよびTRのそれよりも著明であり, 両者の協力的な作用によるものであることを示唆していた.また, 非ステロイド性の抗リウマチ剤であるphenylbutazone(PB),indomethacinおよびacetylsalicylic acidでも浮腫抑制作用が認められた.KTの経口投与により,dextran,histamineおよびegg albuminによって惹起された足蹠浮腫, 抗ウサギ血清および熱刺激によって惹起された皮膚浮腫のいずれにおいても明らかな抑制あるいは抑制傾向が認められた.またhistamineおよびbradykininによる血管透過性亢進の抑制, さらにCMC-pouch法における蛋白滲出量の抑制傾向なども観察された.一方,formalin炉紙法およびcotton pellet法における肉芽腫や持続性炎症であるmustard浮腫に対しては有意な作用は認められず,PBの作用とは異なっていた.以上のことから,KTの浮腫抑制作用は主に血管透過性亢進抑制作用に依存するもので,その抗炎症作用も急性的な滲出性炎症に対するものと考えられた.
  • 成実 重彦, 永井 康雄, 名川 雄児
    1979 年 75 巻 3 号 p. 239-250
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット線条体切片からのTRHのdopamine(DA)遊離促進の作用機序を主にCa2+およびcholinergic系の関与を中心に検討した.TRH(10-5~10-3M)は,ラット線条体切片への14C-DAの取り込みを濃度に依存して軽度ながら有意に促進した.一方,対照に用いたmethamphetamine(10-6~10-4M)は,顕著に濃度に依存して同取り込みを阻害した.TRH(10-7~10-3M)は,incubation液中へのDA遊離に対して影響を与えなかったが,monoamine取り込み阻害剤,desipramine(5×10-5M)の共存下ではTRH(10-7~10-5M)は有意に同遊離を促進した.ラット線条体切片を表面灌流すると,TRH(10-5~10-3M),methamphetamine(10-6~10-4M)およびKCl(2.5~5.0×10-2M)はいずれも有意に灌流液中へのDA遊離を促進した.TRHによるDA遊離促進作用は,Cholinergic阻害剤(Scopolamine,hexamethoniumあるいはhemicholinium)および灌流液中のCa2+の除去,Ca2+chelator(EGTA),Ca2+拮抗剤(CoCl2),Ca2+流入阻止剤(D-600)等のいずれの処置によっても完全に消失した.Methamphetamineの作用は上記のいずれの処置でもほとんど影響をうけず,灌流液中のCa2+除去+EGTA(10-3M)で,はじめてその作用が部分的に減弱した.またラット大脳皮質切片への3H-norepinephrine(NE)の取り込みに対してTRH(10-4M)添加は軽度ながら有意に促進し,methamphetamine(10-6~10-4M)は顕著に同取り込みを阻害した.大脳皮質切片からのNE遊離に対してTRH(10-6~10-4M)およびmethamphetamine(10-7~10-5M)添加はおのおの濃度に依存して同遊離を促進した.以上の成績より,TRHはin vitroのラット線条体切片の表面灌流法において,cholinergicな系を介して外液Ca2+の流入を促進し,その結果,DA遊離を促進したと思われる.これは対照に用いたmethamphetamineが外液Ca2+に依存せずに同促進作用を示すのとまったくその作用機序を異にしていた.
  • 福田 尚久, 宮本 政臣, 成実 重彦, 永井 康雄, 島 高, 名川 雄児
    1979 年 75 巻 3 号 p. 251-270
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Thyrotropin-releasing hormone(TRH)によるdopamine(DA)agonist旋回運動の増強作用ならびにTRH自体の旋回運動誘起作用について検討した.6-OHDA注入による一側線条体破壊マウス,ならびに吸引除去による一側線条体破壊かつreserpine前処置マウスにTRH2.5~20mg/kgを腹腔内投与すると,apomorphineまたはL-DOPAによる旋回運動は明らかに増強された.また,reserpine前処置,非破壊マウスにおいても,TRHはapomorphineの常同行動誘起作用を増強した.上記TRHのDA agonistの旋回運動増強効果はα-methyl-para-tyrosine(α-MT)またはGABA関連薬物の処置により修飾された.すなわち,6-OHDA破壊マウスではα-MTおよびGABA関連薬物により抑制され,吸引破壊マウスではα-MTによりさらに増強され,GABA関連薬物では影響されなかった.上記6-OHDA破壊マウスにおいて,TRHの前処置はDAまたはapomorphine添加による破壊側線条体スライスのcyclic AMP生成を増強したが,健側スライスのそれには無影響であった.これらの結果はTRHのDA性旋回運動増強はそのcyclic AMP生成の増加と密接に関連していることを示唆する.一方,6-OHDA注入による一側黒質・線条体DA経路を破壊したラットにTRHの大量100mg/kgの腹腔内投与または50μgの健側尾状核内注入は破壊側に向う旋回運動を誘起し,この作用はhaloperidolまたはα-MTの前処置により著明に抑制された.また,TRH10-5~10-3Mの添加はラット線条体スライスからの14C-DAの遊離を促進した.従って,TRHの少量はDA受容体の増感状態下,cyclic AMP生成を増加し,DA postsynaptic transmissionを促進するとともに,大量では線条体神経終末からのDAの遊離促進を介してDA neuron活性を高めるものと考えられる.
  • 第一報中枢作用について
    橋本 虎六, 新谷 成之, 山下 修司, 鄭 正聰, 高井 正明, 筒井 正博, 河村 公太郎, 大川 直士, 桧山 隆司, 薮内 洋一
    1979 年 75 巻 3 号 p. 271-289
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    選択性の高い新β2アドレナリン作働薬procaterol(PRO)の一般薬理作用をsalbutamol(SAL)およびisoproterenol(ISO)と中枢作用について比較検討した.マウス,ラット,ウサギでは皮下投与(s.c.)15~50mg/kgで運動量の減少,1,000mg/kgで脱力状態を示すが4~8時間で回復,イヌでは経口投与(p.o.)100mg/kg以上で嘔吐が観察された.自発運動量は用量依存的に減少し,そのED50はs.c.およびp.o.でPRO:20.2および245mg/kg,SAL:51.1および133mg/kg,ISO:2.37および143mg/kgであり,methamphetamineによる強制運動の抑制はs.c.でPRO:200mg/kg,SAL:100mg/kg,ISO:20mglkgで観察され,p.o.では800mg/kgまで作用がなかった.斗争行動の抑制(ED50)はs.c.およびp.o.でPRO:129および313mg/kg,SAL:112および240mg/kg,ISO:51および185mg/kgであった.協調運動および筋弛緩作用,halothane麻酔増強作用,抗痙攣作用には100mg/kg s.c.および800mg/kg p.o.までいずれも影響が認められず,hexobarbital睡眠はs.c.およびp.o.でPRO:200および400mg/kg,SAL:100および800mg/kg,ISO:10および200mg/kgで延長し,鎮痛作用はHaffnerおよびRandall-Selitto法では認むべき作用がなかったが,酢酸writhingの抑制はs.c.およびp.o.でPRO:100および400mg/kg,SAL:100および200mg/kg,ISO:20および400mg/kgで認められた.正常体温はPRO:200mg/kg s.c.で降下,ISO:20mg/kg s.c.で上昇,SALでは影響なく,発熱状態の体温はPROおよびSALは10,ISOは1mg/kg i.v.まで影響がなかった.脳波に対しては自発脳波および刺激による覚醒反応閾値にも著明な影響を与えなかった(血圧変動による影響は除く.1mg/kg i.v.以上).以上のように中枢神経系に対しては作用弱く,著しい高用量によってのみ行動反応に対する抑制をおこすに過ぎなかった.
  • 第3報一般薬理作用
    佐藤 誠, 石塚 泰博, 谷沢 久之, 福田 保, 由井薗 倫一
    1979 年 75 巻 3 号 p. 291-307
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新しい非ステロイド性鎮痛抗炎症薬4-ethoxy-2-mcthyl-5-morpholino-3(2H)-pyridazin-one(M73101)の一般薬理作用を,主に薬効の類似しているaminopyrine(AP)と比較検討した.M73101の静脈内投与により,ラット(0.05mg/kg),ウサギ(5mg/kg),ネコ(5mg/kg),イヌ(5mg/kg)において呼吸興奮と血圧下降がみられ,心拍数は軽度増加したが,心電図上にはR-R間隔の変化以外に著変は認められなかった.またM73101はepinephrineによるウサギ耳介血管の収縮を抑制した.モルモット摘出気管筋をM73101の高濃度は単独で弛緩させ,またhistamine(His)による収縮も抑制した.さらにKonzett-Rössler法1こおいてHisによる気管筋収縮をM73101 10mg/kg p.o.は抑制したが,bradykininによる収縮に対しては作用を示さなかった.このようなM73101の呼吸循環系に対する作用はAPに極めて類似したものであった.M73101はマウスの腸管内容輸送能を抑制し,ラットおよびイヌの胃腸運動も抑制したが,その作用はAPと同程度のものであった.またM73101は各種spasmogenによるモルモット摘出回腸の収縮を抑制したが,その50%抑制量はいずれも10-4g/ml以上の高濃度であり,この抑制は平滑筋に対する非特異的な弛緩作用に基づくものと思われた.M73101 100mg/kg p.o.はラットの尿量を軽度ながら増加させ,同用量のAPおよびphenylbutazoneはこれを減少させた.その他,自律神経活動,生殖器運動,血液凝固,血糖値に対する作用,局所刺激作用,局所麻酔作用,メトヘモグロビン形成作用などは認められなかった.以上の結果から,M73101は軽度な利尿作用を有する点でAPとは異なるが,それ以外の作用においては極めて類似した化合物であることがわかった.またM73101の鎮痛および抗炎症作用に間接的に関与する薬理作用は本研究では見い出すことができなかった.
feedback
Top