クエン酸モサプリド(モサプリド)はモルホリン環をもつ新規なベンズアミド系の消化管運動促進薬である.モサプリドはラットの固形物および液体物の胃排出を促進し,それらの効力はシサプリドと同程度で,メトクロプラミドより強かった.ラットの胃十二指腸境界部を切開縫合した後の胃排出遅延モデルに対してモサプリドは有意な改善作用を示した.覚醒イヌにおいてモサプリドは用量依存性に胃および十二指腸運動の促進作用が認められ,この作用はシサプリドと同程度で,メトクロプラミドより強かった.モサプリドはモルモット摘出回腸縦走筋標本の電気刺激により誘発される収縮を増大し,この増大作用は5-HT
4受容体遮断作用を示すトロピセトロンによって拮抗された.また,モサプリドはモルモット回腸標本のホモジネートで5-HT
4受容体選択的なリガンドの[
3H]GR-113808の結合を濃度依存的に阻害した.さらに,覚醒イヌにおいてモサプリドの胃運動促進作用はGR-113808や高用量のトロピセトロンによって完全に遮断された.モサプリドはラット脳シナプス膜のドパミンD
2受容体に親和性を示さず,マウスの一般症状,マウス条件回避反応やラットの餌強化レバー押し反応に対して影響を及ぼさなかった.一方,シサプリドやメトクロプラミドはいずれの試験においても有意な抑制作用を示した.モサプリドは高濃度の10 μMにおいてもモルモット摘出乳頭筋活動電位の持続時間に作用を示さなかったが,シサプリドは0.1~3 μMにて濃度依存的に活動電位の持続時間を著明に延長させた.また,麻酔ウサギのtorsades de pointes発現評価モデルにおいて,モサプリドは作用を示さなかったが,シサプリドは心電図QT間隔の延長と共にtorsades de pointesを発現させた.以上の結果から,モサプリドは選択的な5-HT
4受容体アゴニストで,従来の薬剤とは異なりドパミンD
2受容体遮断作用やQT延長作用のない新世代の消化管運動促進薬であると考えられる.
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