視丘が催眠およびその持續に軍要な關係があることは, 古くより考えられていることで
Trõmner, Ecomonoも申腦から間腦への移行部に眠りの調節申樞があるとし,
Hessは猫の視丘下部を電氣刺戟して眠りの成立を賓驗している.しかし
Horrisonはこの部の剖見で傷害がないときはむしろ興奮が來ることを證している.
Demoaeの實驗でも, この部位へCaCl
2を注入、するときは催眠作用があるが, KClでは興奮が來, 眠りが生じて來なかつたという.また
BerggrenらはKClでも催眠あり, 視丘下部の漏斗部に中樞があるとしている.一方
Marainescoらは第三脳室壁を陽極刺戟し, または機械的に傷害して催眠を證明している.
これらの研究から推して, 精確な位置を想定するに困難であるが, 中腦間腦菱腦が, 特にまた視丘下部が眠りに對して重要な機關であることに意見が一致していて, 更に覺醒と催眠との拮抗的機能がこの部にあるらしいことが想像できる.
Pickらの研究で, 催眠藥の一部は主に親床下部に作用し眠りをおこすことが證されている.この際體位反射が浩えることが自然の眠りと相違しているが, 視床下部以外の脳部分にも麻痺的に作用するために, 反射消失を考えることができるにしても, 藥物催眠では自然の眠りほど突然覺醒させることが難しいから, 兩者が本態的に異ることは確かであろう.つまり義應自然催眠をおこす部位を催眠藥作用部位と別に想際することができよう.後者の麻痺と同様な前者の興奮による抑制的機序があり得ると考えられる.中樞興奮作用的藥物のカフエイン, コカイン, によつて時に人に眠りがおきることが知られているが, カンフアーの興奮的作用によつても催眠が見られることが臨床醫家がら屡々報告されている.これには心臓機能の恢復, 血液循環の促進のための身體的精神的快感が眠りを與えることも考えられるが, 實驗的にこの事實を檢計するために以下の實驗を行つた.
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