日本薬理学雑誌
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96 巻, 5 号
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  • 大隅 義継
    1990 年 96 巻 5 号 p. 205-216
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    Central neurotransmitter and/or neuromodulator candidates reported to affect gastric acid secretion are: (excitatory) acetylcholine, thyrotropin releasing hormone, GABA, oxytocin; (inhibitory) noradrenaline, adenosine, bombesin, calcitonin-gene related peptide, corticotropin releasing factor, beta-endorphin, neurotensin, neuropeptide Y, insulin-like growth factor II and prostaglandins. Regulation of gastric acid secretion by central administration of these substances in experimental animals such as rats and dogs are briefly reviewed, and central inhibitory mechanisms of this function are discussed based on our studies with noradrenaline and bombesin. Roles of hypothalamic nuclei such as the ventromedial nucleus and the lateral hypothalamus in regulation of autonomic nerve activities are also described as an introductory note.
  • 名倉 純
    1990 年 96 巻 5 号 p. 217-225
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    頻度-収縮関係から変力作用物質わけても強心薬の作用発現に関与するイオンを推定するため,モルモット摘出心室筋の頻度-収縮関係(FFR)の変動因子の解析を種hの作用機序が解明されている薬物を用いて検討した.このFFR曲線は細胞外液中のCa2+濃度の上昇及びNa+濃度の減少により上方へ平行移動し,〔Ca2+o/〔Na+o2が一定の条件下では移動しなかった.Na+流入を増加する薬物veratridine及びasebotoxin-IIIは中頻度で陽性変力作用(PIE)を示し,FFR曲線を左方へ平行移動させた.一方Naチャンネルを遮断するtetrodotoxinは高頻度で陰性変力作用(NIE)を示しFFR曲線を下方へ移動させた.Na+,K+-ATPase阻害剤ouabainの高濃度は全ての頻度でPIEを示し,FFR曲線を上方へ移動させた.心筋内c-AMPを増加させる3-isobutyl-1-methylYanthine及びhistamineはほぼ全ての頻度でPIEを示しFFR曲線を上方へ移動させた.Caチャンネルブロッカー,nifedipine及びverapamilはほぼ全ての頻度でNIEを示しFFR曲線を下方へ移動させた.verapamilは特に高頻度で強いNIEを示した.一方Caチャンネルアゴニスト,BAYK8644では全ての頻度でPIEを示したが,特に中頻度で明確にみられ,FFR曲線を左方へ移動させた.以上の様に種々の薬物は刺激頻度に依存して変力作用を示しFFR曲線を移動させた.この移動はいくつかのパターンに分類できた.特にNa+及びCa2+に依存する収縮変化は極く低頻度のRSCでの収縮波形の特徴から分類することが可能となった.頻度-収縮関係の変化パターンから逆に変力作用を有する未知物質の作用機序の方向を推定する時に利用可能と考える.
  • 藤澤 茂樹, 立川 信成, 村上 英司, 増田 匡志, 水谷 貞文, 水谷 真理, 広瀬 幸弘, 山田 博明, 藤田 和彦, 長谷部 徒公子 ...
    1990 年 96 巻 5 号 p. 227-242
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    塩化レボカルニチン(LC-80)の心筋梗塞巣拡大防止作用について,ビーグル犬の左冠状動脈前下行枝を6時間閉塞することにより作製した急性心筋梗塞モデルを用いて検討した.LG-80は閉塞5分後より静脈内に100mg/kgを単回投与し,その直後より50mg/kg/hrの割合で心臓を摘出する直前まで持続投与した.心臓を摘出する直前v'左心房よりThioflavin S(TS)を注入するin vivo法および摘出した心臓をMonastral blue(MB)で灌流するin vitro法によって冠血流遮断領域(リスク領域)を,また2,3,5-triphenyltetrazolium chloride(TTC)で染色する方法によって梗塞領域を測定した.これら3種類の色素による染色の有無によって,冠血流非遮断領域で正常な心筋細胞の存在するゾーン1,冠血流遮断領域(リスク領域)で側副血行路からの血液供給と壊死までは陥っていない心筋細胞の存在するゾーン2,側副血行路からの血液供給は無いが壊死までには陥っていない心筋細胞の存在するゾーン3a,および壊死に陥った心筋細胞の存在するゾーン3bをそれぞれ区画した.その結果,LC-80は心血行動態に対して明らかな影響を及ぼさなかったが,閉塞後5~15分頃に頻発する心室性不整脈に対しては有意な抑制を示した.そして,LC-80は各ゾーンにおける遊離カルニチン濃度の減少を有意に抑制するとともに,リスク領域におけるゾーン3bの占める割合を有意に減少させ,逆にゾーン2の占める割合を有意に増加させた.また,各ゾーンにおける病理組織細胞学的検索においても同様な結果が認められ,特にゾーソ2における細胞内および細胞外浮腫,ミトコンドリアの形態変化などはLC-80投与群において明らかに軽度であった.以上の結果から,LC-80は心筋梗塞巣の拡大を防止する作用を有することが明らかとなり,そのメカニズムとして虚血心筋に対する保護作用とともに,側副血行路からの血液供給を増加させる作用も考えられた.
  • 大久保 つや子, 柴田 学, 高橋 宏
    1990 年 96 巻 5 号 p. 243-253
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    formalin(0.5%),crotonoil(1%),mustardoil(1%),carrageenin(1%),dextran(1%),eggwhite(15%)のマウス(25μl)及びラット(100μl)足臆への皮下投与による浮腫形成において,知覚神経の関与とりわけsubstance P(SP)含有神経の役割を中心に検討した.1)formalin浮腫は,坐骨神経を大腿部で切断したラットにおいて,起炎後4時間目まで有意な抑制を見たが,伏在神経切断では逆に増強する傾向を認めた.しかし,carrageenin浮腫では,両神経切断による有意な変化は認められなかった.2)3日前にcapsaicinを坐骨神経に処置したマウスでは,formalin,crotonoil,mustardoilによる足浮腫の初期が有意に抑制され,carrageenin,dextran,eggwhiteによる浮腫では有意な変化はみられなかった.起炎5分前にspantideo.1mg/kgをi.v.投与したマウスにおいても,それぞれの起炎剤による足浮腫において同様の結果を得た.3)血管透過性を観察すると,formalin,crotonoil,mustardoilで,0~10分を最大値とする強い色素漏出が認められ,これはspantide0.lmg/kg,i.v.によって拮抗された.しかし,carrageenin,dextran,eggwhiteでは,色素漏出は非常に少なく,spantideによっても影響を受けなかった.4)マウス足蹠のlicking,bitingを指標とする痙痛反応では,formalin,croton oil,mustard oilの場合,二相性に経過する強い反応が見られ,これらはspantideによって抑制された.carrageenin,dextran,eggwhiteでは,疹痛反応は殆ど見られなかったが,eggwhiteを除く全ての起炎において疹痛過敏を認めた.以上のことから,formalin,ctotonoil,mustardoilでは,一次知覚神経末梢端から遊離するSPが,強い血管拡張,透過性充進などの血管反応や,疹痛反応を発炎初期に生み出すが,carrageenin,dextran,eggwhiteで,これらの機序とは違った経過で炎症反応が進行することが示唆された.
  • 大林 繁夫, 三崎 則幸, 坂東 和良, 内田 勝幸, 河野 修
    1990 年 96 巻 5 号 p. 255-263
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    ラットの胃内に2%NaOHを貯留させて広範囲な粘膜障害を発生させ,その修復過程に生ずる慢性胃炎の形成について観察した.さらにこの胃炎形成に対するaldioxaおよびcetraxate hydrochlorideの作用を検討した.胃損傷作製翌日よりaldioxaおよびcetraxate hydrochlorideを混合した固形飼料を与え,6週間後に胃粘膜の肉眼的および組織学的観察を行った.胃炎対照群では,広範囲の粘膜傷害が惹起され,胃底腺粘膜の肥厚,幽門腺粘膜部の細胞浸潤および腸上皮化生がみられた.これらは慢性胃炎初期像と考えられる.aldioxa投与群では,胃炎対照群に比べ粘膜肥厚および細胞浸潤を抑制した.cetraxate hydrochloride投与群では,肉眼的に粘膜表面の灰白色変化,瘤状隆起等の強い変化がみられ,これらは組織学的には粘膜表層の細胞浸潤,嚢胞形成によるものであった.また腸上皮化生も高率にみられ,慢性胃炎の悪化像が観察された.これらの結果から,NaOH惹起胃炎形成過程に対してaldioxaは質的に良好な粘膜再生を促進し,慢性胃炎改善薬として有用であることが示唆された.
  • 峰松 澄穂, 滝 昌之, 渡辺 正比古, 高橋 睦, 和久井 容子, 石原 一寿, 竹田 秀一, 藤井 祐一
    1990 年 96 巻 5 号 p. 265-273
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    小柴胡湯合桂枝加芍薬湯(TJ-960)の催奇形性作用及びsodium valproate(VPA)との併用作用をラット胎仔を用いて検討した.妊娠7~17日に1日1回経口投与したところ,TJ-960の3,000mg/kgまでの用量で催奇形性作用は認められなかった.VPA400mg/kgとTJ-960の併用投与では,VPAによる胎仔生存率,胎仔体重の抑制が回復ないし回復傾向を示した.また,VPAで誘発された中手骨の骨化数の低下が回復し,14肋骨(腰肋)の発現が低下した,さらにVPAによる胸椎椎体化骨核発育不全,痕跡13肋骨,胸椎の半椎・椎体分離・椎弓癒合,腰椎椎体分離及び肋骨癒合の骨格変異あるいは異常がTJ-960により低下した.一方,TJ-960の併用投与はVPAの母獣血中及び胎芽中濃度に有意な変化を与えなかった.以上によりTJ-960は,催奇形性作用のない抗てんかん薬であり,かつ他の抗てんかん薬の催奇形性作用を抑制する働きを併せ持つ漢方処方であることが明らかとなった.
  • 高木 邦格, 渡辺 泰雄, 渋谷 健
    1990 年 96 巻 5 号 p. 275-288
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    強磁性体のキューリー点を利用したキューリーポイント型(誘導加熱炉型)熱分解GC/MS法による脳内アセチルコリン(ACh)定量法を確立し,β,β'-imino-dipropionitrile(IDPN)誘発ジスキネジアモデルラットの脳内コリン作働性神経活性の変動を検索した.AChの微量定量法を確立するために,1)注入口と試料管との距離を短縮し,4級アミンから3級アミンへの脱メチル化の際,生成ガスが収率よく,しかも副分解や再合成の少ない状態で分析系へ瞬時に移行できるようにした.2)適切な熱分解温度(333°C)を確立した.3)333°Cにキューリー点をもつパイロホイルに試料を包み,200kgf/cm2の圧力下で成型した.4)充填カラムではなくキャピラリーカラム(DB5)使用の利点を確認した.これらの改良の結果,最高検出限界は1pmol,変動係数は4.7%であり,しかもキャピラリーカラム使用により理論段数で約75倍,分離能で約2.6倍の高い性能が得られた.さらに,ACh,プロピオニルコリン(PCh)は,それぞれ固有の擬分子ピークで,かつフラグメントイオンの少ないピークを示し,従来のACh微量定量法をより精度の高い検出方法に導き得た.しかも,GCIMS法は特異性や再現性が優れていることから,改良型熱分解GCIMS法を応用することにより,ラット脳内微小部位コリン作働性神経活性の,より精緻な測定が可能となった.すなわち,IDPN誘発によるジスキネジアモデルラットの尾状核では約50%(P<0.01),淡蒼球では約30%(P<0.05)のACh含量の著明な低下が認められた.しかも,これらの部位のPCh含量の著明な低下から,ジスキネジア発症時の尾状核や淡蒼球におけるコリン作働性神経活性の低下が明らかとなった.
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