日本薬理学雑誌
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120 巻 , 2 号
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総説
  • 高橋 泰夫, 永田 俊人, 中山 智祥, 石井 敬基, 石川 紘一, 浅井 聰
    原稿種別: 総説
    2002 年 120 巻 2 号 p. 73-84
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    数千種類にも及ぶプローブについて同時にハイブリダイゼーションを行い,解析を行う方法を,一般にアレイテクノロジーと呼んでいる.プローブを直径1 mm未満のアレイ状スポットとして作成した場合をマイクロアレイまたはチップと呼ぶ.マイクロアレイテクノロジーが汎用されだして数年が経過した.GeneChipTM(米国Affymetrix社)は他のDNAチップとはDNAプローブをチップ上にスポットする方法が異なっており,サンプル調整からデータ作成,データ解析に至るまで包括して完成されている.GeneChipシステムは,遺伝子の発現を解析するGene expression analysisと,ゲノムDNAの変異を解析するGenomic mutation analysisの両者が可能であり,今後ヒトゲノム解析などにも応用されると考えられる.世界的な視野に立って考えれば,GeneChipシステムの一方の大きな柱であるデータ作成技術(いわゆるウエットな実験技術)は1stスクリーニングにおいて多くの研究室でルーティーン化されている.研究者の実験によって得られたデータと刻々と追加されるパブリック,コマシャールベースの遺伝子·ゲノム情報を互換させ,意味のある遺伝子発現情報を抽出するかが大きな鍵となった.最近では,データを処理するコンピューティング技術(いわゆるバイオインフォマティクス)にその研究の中心が推移している.今回の論文は,バイオインフォマティクスを中心として遺伝子発現解析とゲノム解析に分け,遺伝子発現スクリーニングデータから,標的遺伝子を絞り込んでいく過程,ゲノムDNAの変異を解析するP53 Probe Arrayを用いた研究内容,HuSNP Mapping Assayなど我々の現在行っている実験例などを提示しながら解説した.
実験技術
  • 今西 武, 小比賀 聡
    原稿種別: 実験技術
    2002 年 120 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    標的とする一本鎖RNAに対して,現在世界で最も強固に結合するオリゴヌクレオチド,それが我々の開発したBridged Nucleic Acid(BNA)である.本稿では,このBNAを用いたアンチセンス研究の一例として,C型肝炎ウイルス(HCV)のInternal Ribosomal Entry Site(IRES)を標的とした実験結果を取り上げた.BNAオリゴヌクレオチドは,現在アンチセンス分子として広く用いられているホスホロチオエート型オリゴヌクレオチド(S-oligo)に見られる非特異的な遺伝子発現抑制効果が少なく,標的とする遺伝子の発現のみを効果的に抑制する.さらに,BNAオリゴヌクレオチドを用いることにより,従来アンチセンス法を実施する際に大きな障害となっていた「標的配列の選択」という問題をも解消できるのではないかという興味深い知見が得られたので併せて紹介する.
  • 押海 裕之, Nasim A. Begum, 松本 美佐子, 瀬谷 司
    原稿種別: 実験技術
    2002 年 120 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    ヒト遺伝子のノックアウトはターゲッティングされた細胞をスクリーニングする必要があったため,時間がかかり,簡単に行うことはできなかった.しかし,最近,線虫で発見された二重鎖RNAを用いるRNA interference(RNAi)法が,哺乳類の培養細胞でも可能になり,ヒト遺伝子の機能阻害は非常に簡単かつ迅速に行えるようになった.我々は,T. Tuschlらの報告をもとに,培養細胞に対しRNAiを行ったところ,細胞内に存在する遺伝子の発現を効率よく抑えることができた.この方法は,合成された約20 bpの二重鎖RNAを形質導入するだけであり,形質導入後,約1週間で結果を得ることができる.また,最近,K. Tairaらによって報告された方法では,RNA polymeraseIIIにより転写されるU6プロモーターを使うことで,細胞内で二重鎖RNAを発現させることで,RNAiを行い,合成されたRNAを形質導入する方法と同程度の阻害効率を達成している.この場合は,合成したRNAを用いる場合とは異なり,ゲノム中に20 bpのRNAを発現させるコンストラクトを挿入することで,恒常的に遺伝子の機能阻害を行うことが可能であるため,非常に有用である.このように哺乳類細胞で遺伝子のノックダウンが簡単に行えるようになったことから,DNAマイクロアレイなどの網羅的な解析から得られた数百の候補遺伝子の機能をRNAiを用い網羅的に調べることも現実的になってきた.RNAi法が以前から確立している線虫では,最初の報告から数年でRNAiが日常的に行われるようになっており,哺乳類細胞でのRNAiは昨年に報告されたばかりの新しい技術であるため,この技術を使った解析を行っている論文は,まだ少ないが,ほとんど全ての遺伝子に対し効果があることや,簡単に行えることから,今後,数年の内に,頻繁に行われるようになると推測される.
  • 村岡 修
    原稿種別: 実験技術
    2002 年 120 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    ゼブラフィッシュの世界では新技術の応用·導入が積極的におこなわれ,これまで不可能と思われていた実験が簡単にできるようになってきた.ここに紹介する「morpholinoアンチセンスオリゴ」はマイクロインジェクションするだけで遺伝子の翻訳を阻害してノックアウトに近い状態を作り出し,その日の内にその効果を解析できる.また「caged RNA」は任意の遺伝子を任意の時間に任意の細胞で発現させることを可能にする最新の技術であり,今後の普及が見込まれる.
  • 石井 敬基, 石川 紘一, 浅井 聰
    原稿種別: 実験技術
    2002 年 120 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    ラット肝切除モデルを用いて,13C標識アミノ酸で,肝機能障害が定量的に測定可能かどうかを検討した.ネンブタール麻酔下に,肝切除(30%,70%,90%)を施行し,30 mg/kg L-[1-13C]phenylalanine,40 mg/kg L-[1-13C]methionine,20 mg/kg L-[1-13C]alanineを大腿静脈より投与し,呼気中13CO2の変化を15分間連続測定した.投与した総ての13C標識アミノ酸の呼気テストの結果で,30%以上の肝臓切除であれば,コントロールに比べ,呼気中13CO2は有意に低下した.肝切除後,残存肝と呼気テストの結果では,測定時間内の13CO2の総排出量と肝重量/体重比の相関がL-[1-13C]フェニルアラニンr=0.883,L-[1-13C]メチオニンr=0.922,L-[1-13C]アラニンr=0.902と高い相関を示した.13C標識アミノ酸呼気テストで肝機能障害を定量的に測定できる可能性が示唆された.
新薬開発状況
  • 廣内 雅明, 鵜飼 洋司郎
    原稿種別: 新薬開発状況
    2002 年 120 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    虚血性脳梗塞急性期における内科的治療は,脳血流量を確保するため血栓溶解薬,抗トロンビン薬および抗血小板薬を用いた血栓溶解療法を中心として行われてきた.昨年,本邦にてエダラボンが脳保護薬として登場したことから,血栓溶解療法と脳保護療法との組み合わせが可能となってきている.発症早期からの脳保護薬の使用は神経細胞の保護に寄与し,致死回避あるいは梗塞抑制による神経症候,精神症状などの改善効果が高まることが期待されている.この事は,脳循環の改善しか治療上の要点が置かれていなかったところに,神経保護という観点からも注目されてきていることを意味している.事実,エダラボンの臨床現場での使用例が急速に拡大しており,この分野の治療薬に対する要求性が高いのは明らかである.一方,以前より神経保護を目的にした治療薬の臨床試験で有効性が証明されず,開発を断念してきた例が多いのも現状である.しかしながら,神経科学的に脳虚血性の神経障害の発生機構が解明されつつあり,また臨床面からも他の疾患と異なる要因に注意する必要も理解されてきている.すなわち,発症後からの治療可能な時間範囲(therapeutic time window)が存在し,脳血管が閉塞されてから梗塞が完成するまでの間に治療を開始する必要があるということである.現在でもそれぞれ作用機序の異なる戦略で前臨床段階を含め,多くの化合物が開発中であり,臨床での診断技術の進歩,医療体制の充実を含め,最新の情報をもとにした研究の更なる進展が期待されるところである.
新薬紹介総説
  • 沖山 雅彦, 河嶋 浩明, 福西 左知
    原稿種別: 新薬紹介総説
    2002 年 120 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    核酸構成成分のプリンヌクレオチドのアナログであるジダノシン(ddI)の活性代謝物ddATPは,E.coliのDNAポリメラーゼの作用を阻害することが知られていたが,1985年にNCIの満屋らにより,ジダノシンおよびddAがヒトT細胞においてヒト免疫不全ウイルスの複製の阻害作用を示すことが報告され,臨床応用への道が開かれた.ジダノシンは細胞内に取り込まれた後,活性代謝物ddATPとなりHIVの逆転写酵素を阻害する.本剤はジドブジンに比較しin vivoおよびin vitroにおける細胞毒性は弱い.本邦のHIV感染症治療ガイドラインで初回治療選択薬として推奨されている本剤は,1992年6月に1日2回投与のヴァイデックス錠およびドライシロップ剤の承認を取得し発売された.その後2001年3月には,1日1回投与のヴァイデックスECカプセル剤の承認を取得し発売したことにより,HIV/AIDS患者におけるヴァイデックスのアドヒアランス向上が期待できるようになった.
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