日本薬理学雑誌
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75 巻, 5 号
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  • 馬屋原 敬民, 鈴木 邦彦, 大幡 久之, 中村 哲也, 山田 重男
    1979 年 75 巻 5 号 p. 419-423
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    従来の自記分光光度計のセル試料添加攪拌装置の欠点を克服する目的で,新しくインペラーと試料添加装置を一体化した,往復型インペラーによるセル自動試料添加攪拌装置を工夫した.ブレード型インペラーの往復運動回数21 strokes/sec, 往復運動距離8mm,ブレード面積0.5cm2の実験条件において, メチレンブルー10μl添加時のmixing timeは0.6secであった.ウサギ白筋より抽出したmyosin Bの超沈殿の実験に本装置を応用した.ATPの添加と攪拌を,a)手による振り混ぜ,b)manual mixing plunger, およびc)本装置によりそれぞれ行ない比較した.a,bいずれも初期反応の記録が中断されたが,cの場合は連続記録された.測定値の再現性の点でも手動式に比較してよい結果が得られた.本装置は材料が簡単に入手でき, 自作も容易でしかも費用も低廉である.インペラー駆動部を試料室外部に設置すれば, ほとんどの既製の自記分光光度計に応用が可能である.
  • 酒井 兼司, 只野 武, 木皿 憲佐, 木村 行雄
    1979 年 75 巻 5 号 p. 425-432
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    犬の勃起および射精に対するdiethyldithiocarbamate(DDC)の影響について観察し,DDC投与時の申枢と生殖臓器および副性腺のモノアミンの定量を行なった.また,後部尿道圧曲線に対するDDCの影響も検討した.得られた成績は次の通りである.1)勃起および射精が正常な犬にDDC50,75,100mg/kgをi.p.投与した結果, 投与1時間後において,勃起は維持されたが射精は著明に抑制された,抑制された射精は投与8時間において, ある程度の回復傾向が認められ,投与24時間後において全例が回復した。2)DDC100mg/kg i.p.投与1時間後の脳内モノアミンを定量したところ, 尾状核においてnoradrenaline(NA)の,視床下部後部においてserotonin(5-HT)の有意な減少が認められたが,射精に重要といわれている脳領域でのモノアミンの変動は認められなかった.3)DDC100mg/kg i.p.投与1時間後,生殖に関与する腹部臓器中のモノアミンを定量したところ,副睾丸において,adrenalineおよびNAの有意な減少と5-HTの有意な増加が認められ,前立腺および後部尿道においてNAの有意な減少が認められた.4)後部尿道圧測定の1時間前にDDC100mg/kgをi.p.投与しておくと後部尿道内へ精液が分泌してくることを示すseminal emissionと,後部尿道の律道的収縮を示すejaculationによる圧の上昇は現われてこなかった.
  • 第1報 四塩化炭素肝障害に対するTiopronin(2-Mercabtopropionylglycine)の障害抑制作用
    堀内 正人, 高瀬 謙二, 野村 正行, 千葉 剛久
    1979 年 75 巻 5 号 p. 433-445
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    四塩化炭素(CCl4)の腹腔内投与によって生じる急性CC4肝障害に対し,tiopronin(2-mercaptopropionylglycine)を経口投与してその影響を検討した.tioproninは生化学的にはCCl4による血清transaminase活性の上昇, 肝triglycerideの蓄積, 肝glucose-6-phosphatase活性の低下を抑制した.また,CCl4投与24時間後に肝の非たんぱく性チオール(NPSH)量の著しい減少をひきおこしたが, これは肝の非たんぱく性ジスルフィド量の増加をともなうものではなかった.tioproninはこのCCl4による肝NPSH量の減少を抑制したが,正常ラットにtioproninを投与しても, 投与24時間後の肝NPSH量に変動はみられなかった.また, これら生化学的所見と一致して,tioproninは組織学的にもCCl4による壊死, 糖原の減少などを抑制することが認められた.tiopronin以外の化合物としてcystamine,cysteine,glutathioneもtioproninと同様にCCl4肝障害に対し抑制作用のあることが認められた.また, これら化合物の障害抑制作用の程度は血清transaminase活性や組織学的所見のみならず,肝NPSH量とも関連することが認められた.
  • 中村 秀雄, 横山 雄一, 元吉 悟, 石井 勝美, 清水 当尚
    1979 年 75 巻 5 号 p. 447-458
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    tolmetin sodiumの抗炎症作用の特徴を明らかにする目的で,急性および亜急性の浸出性炎症モデル病態に対する作用および抗炎症作用の機序との関連が推察されるin vitro試験による作用について検討した.マウス酢酸誘発血管透過性亢進反応に対するtolmetinsodiumの抑制効力(ED50=0.75mg/kg,p.o.)は,ibuprofen(Ibu),phenylbutazone(Phe)およびaspirin(Asp)の約6~93倍,indomethacin(Ind)の約0.4倍であり,モルモットにおける紫外線誘発血管拡張-透過性亢進(紅斑)に対する抑制効力(ED50=18.2mg/kg,p.o.)は,Indの約0.3倍であった.kaolin-carrageeninにより誘発した持続性ラット後肢足浮腫に対して,被検薬を2日間に5回連続投与するとき,tolmetin sodiumは,2.5mg/kg,p.o.の低投与量から浮腫の消退を有意に促進させ,その効力はIbuとほぼ同等,Aspよりもやや強く,Indよりも弱かった.croton油誘発亜急性浸出反応に対して,tolmetin sodiumの80mg/kg/day,p.o.以上の投与量で有意な抑制作用を示し,その効力は,Ibu,PheおよびAspよりも優れ,Indの約1/40であった.Indとの相対的効力からみると,tolmetin sodiumは,肉芽形成反応およびadjuvant関節炎に対するよりも,急性浸出性炎症反応に対してより強い抑制作用を有することが示唆される.一方,tolmetin sodiumは,in vitro試験で,ラット赤血球膜安定化作用,血清蛋白質熱変性阻止作用を有し,その強さは,Ibu,Pheと同等,salicylicacid(Sal)よりも優れ,Indより劣るかまたは優れた.また,mitogen刺激によるラット胸腺リンパ球の芽球化反応に対して,Salと同等の抑制作用を示した.in vitroにおけるこれらの結果および既報結果から,tolmetin sodiumが他の抗炎症剤とは相違した作用機序を有するとの示唆は得られなかった.以上の結果から,tolmetin sodiumは,急性の血管透過性亢進―浸出反応に対して特に強い抑制作用を有し,その作用は他の酸性の非ステロイド性抗炎症剤と類似した機序に基いて発現すると推察される.
  • 柳原 行義, 江田 昭英
    1979 年 75 巻 5 号 p. 459-475
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    BWDの即時型アレルギー反応に及ぼす影響を免疫薬理学的に検討し, 以下の成績を収めた.1)BWDはBWND感作モルモット肺からのanaphylactic mediator遊離および回腸のSD反応を抑制せず, また, これらの反応を惹起しない.2)BWDは抗そばウサギ血清によるモルモットのheterologous PCAおよび抗そばラットIgE血清によるhomologous PCAを抑制する.homologous PCAの抑制はそばに対して特異的である.3)BWDは抗そばラットIgE血清を用いて感作したラット腸間膜mast cellのdegranulationおよびhistamine遊離を抑制するが, 抗DNP-ASラットIgE血清による反応は抑制しない.また,BWDを含むラットIgE血清を用いて感作したラット腸間膜mast cellの抗原によるdegranulationは,抗そばラットIgE血清による感作の場合には軽度抑制されるが, 抗DNP-AsラットIgE血清による場合には抑制されない.4)抗そばウサギγ-globulinとBWDをincubationすると,そのIgG分画のheterologous PCA活性は低下するが, 感作能は消失しない.5)BWDをそば過敏症患者血清に添加すると, そのRASTはdosc-dependentに抑制されるが,125I-anti-IgEに添加した場合には抑制されない.BWDのRAST抑制作用の強さはBWNDの約1/104であるが,pol-BWDをcoupling抗原としたRASTはBWDによって強く抑制される.また,BWDはそば過敏症患者血清によるPK反応を明らかに抑制する.6)BWDとBSAの不溶性copolymerをimmunoadsorbentとして種々のIgE血清をin vitroで吸収すると, 動物およびヒトのIgEの力価は明らかに低下し, その吸収はそばに対して特異的である.7)免疫電気泳動法において,BWDは抗そばIgGと沈降線を形成せず, また,CFAとともに動物を免疫しても,IgGを産生しない.したがって,BWDは抗体のFab部分と反応するそばに特異的なhapten様物質を含むことが明らかである.
  • 尾崎 幸男, 佐藤 初夫
    1979 年 75 巻 5 号 p. 477-486
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    16mM K+ Tyrode Ringer中でモルモット乳頭筋に強い刺激(持続10および400msec)を与えることにより, 立ち上りの緩徐な電位が得られた.この電位は,1)刺激強度に応じて段階的に振巾を増大すること.2)活動電位を抑制する濃度のTTX(4×10-6M)で影響されず,Mn2+(3×10-3M)で消失することおよび,3)細胞外Ca2+濃度とovershootおよび立ち上り速度とはかなり直線的な関係があるなどの特徴を有することから,Ca2+依存電位(slow response)と結論した.外液Ca2+とslow responseの関係を種々の条件下で実験するとともに, あわせて両者の関係に対するdobutamine(DOB),dopamine(DA),norepinephrine(NE)およびisoproterenol(ISO)の作用を比較検討した.種々の濃度のCa2+を含む16mM K+ Ringer中での刺激強度とslow responseの振巾との関係はそれぞれsigmoidal curveを示した.このcurveは, 細胞外Ca2+の増加およびNEの各濃度で左方に移動した.すなわち, 細胞外Ca2+を高濃度に, あるいはNEを投与することにより, 弱い刺激でもresponseが現れ, かつresponseの最大値が高くなる.このように,NEはslow responseに対してCa2+濃度を上げたと類似の効果を示した.このことから,NEは明らかにCa2+-influxの増大を惹起すると思われる.DOB,ISOおよびDAもNEと同じような作用を示した.摘出乳頭筋を16mM K+ Ringer中に浸し400msecの外向き通電によって発生したslow responseはISO>NE>DOB>DAの順で増強された.またslow responseの振巾とそれを引き起こすに要する刺激強度の解析からDOBおよびNEは両者に同程度の変化を生ぜしめるが,ISOとDAは前者よりむしろ刺激強度の減少に寄与している可能性を示唆した.
  • 中村 政記, 横山 融, 白沢 義〓, 平井 恵二, 佐野 宣之
    1979 年 75 巻 5 号 p. 487-494
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    回転刺激後に誘発される眼振と,streptomycin長期投与により惹起される前庭機能障害に対するATPの効果を,diphenidolを対照薬として検討した.1)回転刺激後に誘発されるウサギの眼振(平衡反射)に対して,ATP(ATP-2Na)は3および10mg/kg i.v.でほとんど影響を与えず,30mg/kg i.v.で軽度に眼振数を減少せしめた.一方,diphenidol(diphenidol hydrochloride)は3mg/kg i.v.で著明に眼振数を減少せしめた.2)Streptomycin sulfateの1日量200mg/kg i.m. 9日間処置によって惹起せしめたモルモットの前庭機能障害に対して,ATP(1日量3および10mg/kg i.p.,100mg/kg p.o.)あるいはdiphenidol(1日量50mg/kg p.o.)の併用処置は明らかな軽減効果を示した.以上のように,ATPは前庭機能障害(平衡反射障害)に対してdiphenidolと類似する軽減効果を示したが, 正常の前庭機能に基づく平衡反射に対する影響が少ない点がdiphenidolと異なった.
  • 広橋 正章, 萩原 彌四郎
    1979 年 75 巻 5 号 p. 495-506
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    熱電効果による組織血流測定法により, クラーレ化・人工呼吸下のネコの脳内各部ならびに身体諸器官の血流を測定し, これに対する1-[(1-pyrrolidynylcarbonyl)methyl]-4-(3,4,5-trimethoxycinnamoyl)piperazine maleate(cinepazide)の作用および作用機構について検討した.1.cinepazideは小脳皮質血流を著明に, 大脳皮質血流を明らかに増加させたが, 視床,視床下部および扁桃核の血流に対する作用は不定であった.2.cinepazideは心筋血流を最も著明に増加させ, 筋血流も明らかに増加させたが, 肝血流に対する作用は不定であった.また腎血流および皮膚血流は減少させた.3.cinepazideは血圧を緩徐に持続的に下降させた.ただし椎骨動脈内注射の場合には, 血圧を一過性に軽度に上昇させた.4.cinepazideは末梢循環系においては, 弱いadrenergic α型ならびにβ型の効果を有する可能性があるが,cholinergicな効果は持たないものと思われる.5.cinepazideの血流増加作用はpapaverineに似てこれとは異なる平滑筋弛緩作用を主体とするものと思われ, おそらくは代謝系を介する作用があるものと考えられる.
  • 明石 章, 広橋 正章, 鈴木 育夫, 芝村 誠一, 笠原 明
    1979 年 75 巻 5 号 p. 507-516
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    cinepazideの循環器作用をcinnarizineおよびpapaverineのそれと比較検討し次の成績を得た.cinepazide(3~30mg/kg)の静脈内投与によって, 麻酔イヌの椎骨, 総頸, 上腸間膜, 腎および大腿の各動脈血流量ならびに心拍出量は用量依存性に増加し, 総末梢抵抗は減少した.これらの作用のうち上腸間膜動脈血流の増加は大きくかつ持続性であり, 腎動脈血流量は高用量では増加後の減少も散見されたが, その他の変化は一過性であった.心筋収縮力は用量依存性で一過性の増強を示したが, 心拍数は軽度の増加に止まり高用量では減少相が優位となり, 心仕事量は減少した.血圧は用量依存性に下降し高用量では持続性であった.cinnarizine(0.3~3mg/kg)およびpapaverine(0.1~1mg/kg)の静脈内投与による作用もこれとほぼ類似していたが, 前者では椎骨動脈血流量は比較的大きく増加する一方, 腎動脈血流量は減少し心拍数も減少した.また, 後者では総頸動脈血流の増加が大きく, 腎動脈血流量は減少し心拍数および心仕事量は増加した.cinepazide(30mg/kg)は麻酔イヌにおいてadenosineおよびcyclic AMPの椎骨動脈血流の増加作用を持続的に増強したが,cinnarizine(3mg/kg)では両者の作用を減弱した.cinepazide(1~10mg)の椎骨動脈内投与は同血流量を用量依存性に増加し, この作用はaminophyllineの静脈内前処置によって部分的に抑制されたがその他の拮抗薬では修飾されなかった.cinnarizine(0.1~1mg)およびpapaverine(0.1~1mg)の同血流増加作用はaminophyllineによっても影響をうけなかった.cinepazideはcinnarizineおよびpapaverineと同様,KClあるいはnorepinephrineによるウサギ摘出大動脈標本の収縮を抑制し,Ca2+による同標本の収縮も抑制した.以上の結果,cinepazideの心臓血管作用は概ねcinnarizineおよびpapaverincのそれと類似していたが,adenosineおよびcyclic AMPに対する作用態度はcinnarizineと異なっていた.
  • 舛本 省三, 井上 久男, 丸山 洋一
    1979 年 75 巻 5 号 p. 517-525
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    befunolol hydrochloride(BFE-60)のヒトにおける主要代謝物metabolite I(MI)とイヌおよびラットにおける主要代謝物MIIを中心に, それらのグルクロン酸抱合体(MI-PG,MI-2G,MII-4G)やその他の確認された代謝物MIII,MV,MVII,MIXについてβ-受容体遮断作用および抗不整脈作用を検討した.isoproterenolによるラット血圧下降に対して,MIおよびMIIはBFE-60より弱いがpropranololに匹敵する拮抗作用を,MIIIはpropranololの1/10の作用を示した.ラット摘出子宮の自動運動におけるisoproterenol拮抗作用では,MIIおよびMIはpropranololのそれぞれ約1/2, 約1/7,MIII,MVおよびMVIIは1/100であった.麻酔犬の心拍数および血圧におけるisoproterenol拮抗作用は,MIおよびMIIともにBFE-60より弱いがpropranololと同等の効力を示した.局所麻酔作用はMIがMIIより強くBFE-60よりやや弱かった.麻酔犬におけるl-adrenaline不整脈をMIはBFE-60と同等に抑制し,MIIとpropranololはこれらより弱い抑制作用を示した.麻酔犬におけるouabain不整脈をMIはBFE-60およびpropranololと同等に抑制したが,MIIの抑制作用はやや弱かった.
    以上の結果より,MIはBFE-60より弱いがpropranololに匹敵するβ-受容体遮断作用とBFE-60と同等の抗不整脈作用を有し,MIIはpropranololに匹敵するβ-受容体遮断作用とやや弱い抗不整脈作用を有することが示され,BFE-60を経口投与したときの薬効には,BFE-60の他にMIあるいはMIIが関与していることが示された.またMIII,MV,MVIIのβ-受容体遮断作用はpropranololより10~100倍弱く,MIX,MI-PG,MI-2G,MII-4Gはほとんど作用を示さなかった.
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