日本薬理学雑誌
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94 巻, 5 号
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  • 大賀 晧, 伊藤 茂男
    1989 年 94 巻 5 号 p. 257-268
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    The smooth muscles of the gastrointestinal tract and blood vessels are innervated by nonadrenergic, non-cholinergic (NANC) inhibitory neurons. The transmitter (s) in relation to NANC inhibitory neurons remains unknown, but there are two main working hypotheses, the purinergic and VlPergic nerve hypotheses, at present. Although there is a large amount of data supporting the purinergic hypothesis, definitive evidence is still lacking. VIP seems to be regarded as a likely candidate for the neurotransmitters of some NANC inhibitory neurons. However, the data presented are still incomplete. For the purinergic hypothesis, the discrepancies seem to be greater in the stomach and oesophagus and those for the VlPergic hypothesis, in the guinea pig taenia coli. Moreover, there are many examples of the co-existence of peptides or of peptides and synthesizing enzymes of amines or acetylcholine in the gastrointestinal tract. Therefore, it is possible that NANC inhibitory neurons liberate more than one active inhibitory substance and/or there are different types of NANC inhibitory neurons in the gastrointestinal tract. Much more evidence seem to be needed before the neurotransmitter (s) of NANC inhibitory neurons in the gastrointestinal tract and blood vessels can be identified.
  • 福田 武美, 森本 保人, 森本 敏彦, 正路 英典, 村上 修, 田原 哲冶, 瀬戸口 通英
    1989 年 94 巻 5 号 p. 269-280
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    benzofurancarboxamide 誘導体,Y-20024 の中枢ドーパミン受容体に及ぼす影響を sulpiride および haloperidol を対照薬として行動薬理学的に検討し,以下の成績を得た.1)apomorphine によるマウスの自発運動亢進に対して拮抗作用を示し,経口投与,静脈内投与および脳室内投与での効力は sulpiride のそれぞれ10倍,2倍および1/3倍であった.2)apomorphine によるマウスの低体温に対してY-20024 および sulpiride は拮抗作用を示したが,haloperidol は拮抗しなかった.3)apomorphine によるラットの常同行動(gnawing behavior)に対して Y-20024 および sulpiride は haloperidol とは異なり,拮抗作用を示さなかった.4)apomorphine によるイヌの嘔吐に対して Y-20024 は拮抗し,その効力は sulpiride とほぼ同等,haloperidol の約1/2倍であった.5)Y-20024 は sulpiride と同様にラットでの methamphetamine 毒性増強作用を示したが,haloperidol は示さなかった.6)Y-20024 は 500mg/kg でカタレプシー惹起作用を示した.7)Y-20024 は sulpiride と同用量で同等のプロラクチン分泌亢進作用および乳腺刺激作用を示した,以上より,Y-20024 は sulpiride の有する特徴的な薬理学的性質を併せもつとともに,sulpiride よりも消化管からの吸収および血液―脳関門の透過性が改善されており,有用性の高い抗精神病薬になり得ることが期待される.
  • 梅本 充男, 中村 滋, 奥村 重年, 関口 珠代, 西原 亨, 西村 正, 林 信一
    1989 年 94 巻 5 号 p. 281-287
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    現在繁用されている実体顕微鏡を用いた実験潰瘍の肉眼的測定法は,非常に時間を要し,また熟練を必要とするために客観的な測定が困難であると思われる.従って,実験潰瘍を客観的に測定する新しい手段として,画像解析システムによる方法を開発した.すなわち本システムは,潰瘍領域を明度,色相,純度の3要素により解析し機械的に潰瘍発生部位を選択させる方式を用いているため,短時間に潰瘍の個数,面積,長さなどのデータを客観的に得ることが可能である.本システムを用いて aldioxa を配合した製剤(NNP)の抗潰蕩作用を水浸拘束ストレス,ethanol,幽門結紮潰瘍モデルで評価したところ,いずれのモデルにおいても102.5mg/kg の経口投与での抗潰瘍作用は若干弱かったものの,2,562mg/kg の投与ではほぼ完全に潰瘍の発生を抑制しその有効性が認められた。このことより,本システムが抗潰瘍薬の評価に非常に有用であり,さらには抗潰瘍薬の開発の助長となるものと考えられる.
  • 中山 貞男, 児玉 恭子, 小口 勝司
    1989 年 94 巻 5 号 p. 289-297
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    正常ならびに四塩化炭素(CCl4)肝硬変ラットの部分肝切除(PH)を行い,残存肝の再生に対するヒト胎盤水解物(ラエンネック)の作用を静脈および皮下投与で比較検索した.正常ラットのPHによる肝再生において,ラエンネックの静脈および皮下投与は肝再生率を増加した.ラエンネックの静脈投与は肝蛋白の減少を抑制し,血清トランスアミナーゼ(GOT,GPT)を減少させた,CCl4 肝硬変ラットのPH(CCl4-PH)による残存肝の再生率はラエンネックの静脈および皮下投与で増加した.ラエンネックは CCl4-PH による血清 GOT の増加も抑制した.再生肝の組織学的検索において,ラエンネックの静脈投与は正常 PH ならびに CCl4-PH による肝細胞の空胞化,壊死を改善した.ラエンネックの皮下投与による肝細胞空胞化抑制は軽度であった.ラエンネックの静脈投与はCCl4-PHによる肝への脂肪沈着を改善した.ラエンネックはCCl4による肝の偽小葉形成を抑制しなかった.PHラットの肝再生に対するラエンネック静脈投与の作用は皮下投与のそれよりも強く認められた.
  • 櫛来 和司, 阿部 正義, 守下 秀治, 古川 達雄
    1989 年 94 巻 5 号 p. 299-307
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    CN-100 の循環器ならびに自律神経系に対する作用について,イヌおよびモルモットを用いて検討を加えた.1)pentobarbital 麻酔イヌでの静脈内投与で,血圧は 20mg/kg で変化がなく,40mg/kg で一過性下降;心拍数は20,40mg/kg で軽度の増加後の徐々の減少,呼吸は 20mg/kg で変化がなく,40mg/kg で血圧下降に伴った一過性軽度の興奮,心電図は波形には変化がなく周期の延長がみられた.2)モルモット摘出心房標本では,10-5,10-4g/ml で収縮力には変化がないが,濃度に依存した心拍数の軽度減少がみられた.3)pentobarbital 麻酔イヌでの静脈内投与で,椎骨動脈および内頸動脈血流量は,5,10,20mg/kg で軽度の持続性増加,40mg/kg の大量投与で血圧下降に伴った減少が認められた.また股動脈血流量は,20mg/kg で軽度の持続性増加が現われた.4)pentobarbital 麻酔イヌでの 40mg/kgの静脈内投与により,tyramine および isoprenaline の血圧・心拍数作用は影響を受けなかったが, noradrenaline および adrenaline では心拍数作用には変化はないが,昇圧作用は noradrenaline では増強,adrenaline では増強の傾向がみられた.5)同様の処置により,迷走神経中枢あるいは末梢断端刺激効果は影響を受けなかったが,頸動脈洞反射による昇圧ならびに脊髄切断イヌにおける星状神経節前・節後刺激による拍数増加は増強された.6)モルモット摘出気管筋標本では,3×10-6g/ml で同濃度の indomethacin と類似に静止張力を低下させ,また acetylcholine および経壁刺激による収縮反応を軽度増強させるが,noradrenaline の弛緩作用を消失させた.7)以上の結果から,CN-100は大量では軽度の血圧下降・心拍数減少ならびに自律神経作用などを有する薬物と考えられる.
  • 村山 光雄, 並木 理乗
    1989 年 94 巻 5 号 p. 309-317
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    生薬附子を減毒し,製剤化した医薬品加工ブシ末(S-01)の鎮痛作用を ibuprofen,indomethacin および aspirin と比較検討し,またS-01 の急性毒性試験を試みた.S-01 の経口投与により,用量依存的に酢酸および phenylquinone による writhing が抑制された.indomethacin は酢酸 writhing 抑制作用の ED50 値よりも phenylquinone writhing 抑制作用の ED50 値の方が低い値を示し,ibuprofen および aspirin も同様の傾向が観察された.S-01 は酢酸 writhing および phenylquinone writhing に対して同程度の抑制作用を示した.tail pressure 法では,S-01 は ibuprofen と同程度の強さの鎮痛作用を示した.Randall-Selitto 法では,炎症足において S-01 の疼痛閾値上昇作用が認められたが, ibuprofen より弱かった.非炎症足では,ibuprofen の疼痛閾値上昇作用は認められなかったが,S-01 では用量依存的な作用が観察された.Adjuvant 関節炎疼痛では,S-01 は用量依存的な鎮痛作用を示し,その作用は ibuprofen より弱かった.S-01 の急性毒性試験では,10g/kg(p.o.)の投与量で雌雄のマウスおよびラットともに死亡例は観察されなかった.以上より,S-01 は鎮痛作用を有し,その作用機序はibuprofen,indomethacin および aspirinと は異なるものであることが示唆された.
  • 大谷 弘一, 嶋 典子, 堤内 正美
    1989 年 94 巻 5 号 p. 319-328
    発行日: 1989年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    S-145((±)-5(Z)-7-〔3-endo-〔(phenylsulfonyl)amino〕bicyclo〔2.2.1〕hept-2-exo-yl〕heptenoic acid)の諸種平滑筋に対する影響について検討した.1)ラット摘出胸部大動脈において,PGH2 アナログである U-46619 によって惹起される収縮に対し,S。145 は濃度依存的に抑制し,IC50 値は 1.4nM であった.この抑制は SQ-29548 および ONO-3708 より 10~40倍強かった.また,S-145 は高濃度のPGE1,PGE2 および PGF による摘出胸部大動脈の収縮に対しても抑制したが,KCl,norepinephrine,serotonin.CaCl2 および angiotensin II による収縮には全く影響しなかった.2)モルモット摘出気管および摘出肺実質において,S-145 は U-46619 による収縮を濃度依存的に抑制した.しかし,histamine および leukotriene D4 による気管収縮には影響をおよぼさなかった.3)U-46619 で収縮を示さないモルモット摘出回腸において,S-145 は PGE2 や PGF による収縮を抑制しなかった.4)S-145 の光学異性体である S-145-(+)は,S-145 の TXA2 拮抗作用より強く,S-145-(-)は S-145 より弱かった.以上の結果から,S-145 はトロンボキサン A2 レセプターに対し特異的に拮抗することが明らかとなり,また,血管平滑筋ではトロンボキサン A2 レセプターは高濃度の PGs に反応することが示唆された.
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