日本薬理学雑誌
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81 巻, 4 号
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  • 金戸 洋, 小坂 信夫
    1983 年 81 巻 4 号 p. 267-274
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    薬物の精神的依存性の検定を目的に,マウスのmorphine,barbital,ethanol,cocaine,amphetamineおよびchlorpromazine溶液選択摂取行動を検討した.マウスは水道水に対し薬液とその濃度を識別し,強制的に薬液のみを摂取させると濃度に応じてこれを忌避した.薬液摂取量とその毒性を基にして薬液濃度を定め(morphine,cocaine,amphctamine,chlorpromazineはそれぞれ0.01%,barbital 0.1%,ethanol 10%),その強制摂取あるいは注射による全身投与(morphine 40mg/kg,barbital 100mg/kg,ethanol2g/kg,cocaine 10mg/kg,amphetamine 2mg/kg,chlorpromazine 5mg/kgを1日2回腹腔内投与),きらに両者併用による6日間の前処置後の薬液に対する選択摂取行動を比較した.強制摂取による前処置ではmorphine,cocaineで薬液選択摂取率が増大したが,他薬ではいずれもこれが低下した.一方,注射による前処置ではcocaine,amphetamineで著明に薬液に対する選択摂取率の増大が認められ,また,強制摂取に注射による前処置を併用するとmorphine,cocaine,amphetamineで薬液への嗜好が増大した.barbital,ethanolでは本実験の条件下,薬液選択摂取率の増加はみられなかったが,実験結果の延長によってこれが上昇する傾向がみられた.対照としたchlorpromazineでは薬液そのものの摂取率が低く,どの前処置によっても選択摂取率の増大はみられなかった.各薬物の選択摂取実験での成績は,従来のこれら薬物の精神的依存駐の強度に関する報告と平行するものであり,本法の一次screening法としての可能性とその問題点について述べた.
  • 国友 勝, 高岡 和代, 松本 純子, 岩井 ひとみ, 阪東 芳雄
    1983 年 81 巻 4 号 p. 275-283
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    モルモットに1%cholesterol+vitamin D2(75万単位/kg飼料)添加飼料を与え6週間飼育すると,肉眼的に明らかな動脈硬化病変が誘発した.病理組織学的には大動脈や腸間膜動脈などの囚膜の細胞浸潤および細胞増殖,内,中膜の石灰化が主な変化として認められた.アテローム変性は認められなかった.大動脈にはcholesterolおよびcalciumの著明な増加が認められ,cholesterolは主にcholesteryl esterであった.また,大動脈calciumとphosphorus含量との間に相関性が認められたことから,calcium-phosphate complexの形で蓄積されると考えられた.大動脈のsulfateとかhydroxyproline含量には変化がなかった.このような動脈硬化病変は1%cholesterolまたはvitamin D2(75万単位/kg飼料)添加飼料単独負荷ではほとんど認められないか,認められても極めて軽症であった。ついで,今回作製したモルモットの動脈硬化モデルを用いて薬効評価を試みたところ,sodium 4-(hexadecylamino)benzoate(cetaben)(90mg/kg/day,p.o.)およびtrisodium ethane-1-hydroxy-1,1-diphosphonatc(EHDP)(5mg/kglday,s.c.)に著明な予防効果が認められた.cetabenは血清および大動脈のcholesterol低下作用およびHDL-cholesterol上昇作用により,EHDPは大動脈へのcalcium沈着抑制作用によって抗動脈硬化作用を示すと考えられた.すでに形成した動脈硬化の治療実験においてはEHDPに大動脈calcium除去作用の傾向が認められた程度で,cetabenやclofibrate投与による影響は認められなかった.一旦大動脈に沈着したcholestcrolやcalciumは除去されにくいと考えられる.
  • 岡部 進, 竹内 孝治, 池西 浩子, 近江 扶紗, 高岡 明子
    1983 年 81 巻 4 号 p. 285-294
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    健胃生薬複合末,SM末は1g中にオウレン末167.8mg,ケイヒ末250mg,ウイキョウ末67.1lmg,チョウジ末33.6mg,ショウキョウ末82.1mg,サンショウ末3.4mg,および甘草末396mgを含有する.SM末の胃液分泌,各種急性胃または十二指腸損傷に対する効果をラットを用いて検討した,幽門結紮法を使用した結果,SM末2g/kgのi.d.投与で胃液分泌の抑制が認められたが,p.o.投与では効果は弱く発現した.SM末1g/kgまたは2g/kgのi.d.またはp.o.投与でShay潰瘍,indomethacin胃損傷の発生を有意に抑制した。その機序は,SM末の胃液分泌に対する抑制作用に基づくと推定きれる.SM末30または100mg/kgのp.o.投与は,無水ethanol,0.2N NaOHで発生する胃粘膜損傷を著明に抑制した.SM末の100mg/kgは,i.d.またはp.o.投与で胃液分泌に対して殆んど影響を及ぼさないため,このSM末の作用の一部は,cytoprotective作用によると考えられる.indomethadn前処置ラットでも同様の抑制効果が得られているために,このcytoprotectionには内因性のprostaglandinsは関与していないと思われる.水浸ストレス胃損傷,aspirin胃損傷,mepirizole十二指腸潰瘍に対して効果は殆んど認められなかった.対照薬として使用したgentiana末もSM末と同様に胃液分泌抑制作用を有し,Shay潰瘍,aspirin胃損傷,無水cthanolおよび0.2N NaOH胃損傷に対して著明な抑制作用を示した.しかし水浸ストレス胃損傷,indomethacin胃損傷,mepirizole十二指腸潰瘍に対して効果は殆んど認めなかった.
  • 永松 正, 小島 良二, 鈴木 良雄
    1983 年 81 巻 4 号 p. 295-303
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ラット血清病腎炎に対するPGE1の治療効果および大量の抗原との併用による影響について検討した.抗原としてウサギ血清アルブミン3mg/ratをcomplete Freund's adjuvantでエマルジョンとし,抗原の静脈注射開始の前後に,2回感作を行い,隔日で8週間,抗原(1mg/rat)を静脈注射して腎炎を惹起した.PGE1は400μg/ratを1日2回に分けて30日間皮下投与した.抗原併用群においては,同時に抗原40mg/rat/dayを静脈注射し,30日間経過を観察した.採尿は,治療実験開始後10,20,30日目に,そして採血,腎摘出は30日目に行った.治療効果の判定は尿および血中の生化学的パラメーターならびに腎組織学的所見により行った.蛋白尿に対して,PGE1単独投与群で治療の後半に,そしてPGE1大量抗原併用群で治療の前半に,それぞれ無処置腎炎群と比較して抑制傾向が示された.特に400mg/day以上の蛋白尿を有したラットについてはPGE1単独投与群では,蛋白尿の経日的な減少がより著明に示された.一方,PGE1大量抗原併用群では治療開始20日目以後,逆に蛋白尿の増加が認められた.腎組織光顕所見のうち,糸球体への免疫複合体の沈着,毛細血管壁の肥厚およびスパイク形成に対して,PGE1単独投与群は対照群に比して抑制傾向を示したが,PGE1抗原併用群ではむしろ悪化させた.糸球体における白血球やメサンジウム細胞の増加に対してはPGE1単独投与群で有意に減少した.以上よりPGE1は抗腎炎作用を有することが示され,また大量の抗原の併用により一時的には有益な効果を示したが,長期間では逆に腎炎が悪化する可能性を示した.
  • 木村 一成
    1983 年 81 巻 4 号 p. 305-313
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    犬肝mitochondria MAOの複数性を基質特異性および各種阻害剤の作用の相違および酸素に対する親和怪の相違から検討した.犬肝mitochondria MAOはtyramineを特に強く酸化したが,他の基質はいずれも僅かしか酸化されなかった.犬肝MAO活性はA-MAOの特異的阻害剤であるclorgylineまたはharmineではいずれの基質を用いてもほとんど阻害をうけなかったが,B-MAOの特異的阻害剤であるdeprenylまたはpargylineはtyramineの酸化を強く阻害した.すなわち犬肝MAOはB-MAOに近いものである.MAO反応はアミン類が第1の基質で酸素が第2の基質となるピンポン機構により進行する,犬肝のMAOはこの第2の基質である酸素に対する親和性(Ko2)の相違から3つのグループに分類された.すなわちbenzylamineを基質としたときは親和性が最も高く,tyramine,tryptamine,hexylamine,β-phenylethylamineの場合は最も低く,serotonin,amylamhle,butylamineを基質としたときは中間の親和性を示した.この酸素に対する親和性の順序は基質特異性のそれとは無関係であった.この酸素に対するMAOの親和性に前記MAO阻害剤clorgyline,harmine,deprenyl,pargylineが如何なる影響を及ぼすかを検討したところ,犬肝mitochondria MAOの酸素に対する親和性はそれら阻害剤によって影響を受けないことが判明した.以上の結果より犬肝mitochondria MAOは特異的阻害剤の作用の強さや第1の基質であるアミン類での基質特異性の実験結果に関する限り主としてB-MAOであるが,そのB-MAOも決して単一なものではなく,酸素に対する親和性すなわちKo2の違いから判定するとさらに3つのグループに分類された.
  • 柳浦 才三, 西村 友男, 三澤 美和
    1983 年 81 巻 4 号 p. 315-322
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    codeineおよびmorphincの気道における体液性免疫におよぼす影響を検討した,雄性モルモットにヒツジ赤血球(SRBC)をi.P.および気道内(i.t.)投与し産生される脾臓と気管気管支リソパ節(TBL)の溶血斑形成細胞(PFC)を測定した.(I)SRBCのi.p.免疫による脾PFCの産生のピークは5日目であった.SRBC i.t.免疫による脾PFC,TBL-PFC産生のピークは共に6日目であった.(II)SRBC i.p.免疫の場合,codeineおよびmorphineは免疫前5日間あるいは免疫後4日間i.p.投与した.morphine(5mg/kg)は脾臓細胞数を減少させた.codeine(15mg/kg)とmorphine(5mg/kg)の免疫前投与は,脾PFG産生を著明に抑制し,免疫後投与でも,脾PFC産生は抑制傾向を示した.(III)SRBCi.t.免疫の場合,codeineとmorphineは免疫前5日間あるいは免疫後5日間i.p.投与した.この場合にもmorphine(5mg/kg)は脾臓細胞数を減少させた.codeine(15mg/kg)とmorphine(5mg/kg)の免疫前投与で,脾PFC産生は著明に抑制された.codeine(3~15mg/kg)とmorphine(1~5mg/kg)はi.t.免疫前投与および免疫後投与共に,用量依存的にTBL-PFC産生を著明に抑制した.TBLは気道での主要な局所免疫の場であり,codeineとmorphi皿eはそのTBLでの抗体産生を著明に抑制することから気道感染症の場合は,これら薬物の使用は免疫学的立場から考えると好ましくないことが示唆される.
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