ラット血清病腎炎に対するPGE
1の治療効果および大量の抗原との併用による影響について検討した.抗原としてウサギ血清アルブミン3mg/ratをcomplete Freund's adjuvantでエマルジョンとし,抗原の静脈注射開始の前後に,2回感作を行い,隔日で8週間,抗原(1mg/rat)を静脈注射して腎炎を惹起した.PGE
1は400μg/ratを1日2回に分けて30日間皮下投与した.抗原併用群においては,同時に抗原40mg/rat/dayを静脈注射し,30日間経過を観察した.採尿は,治療実験開始後10,20,30日目に,そして採血,腎摘出は30日目に行った.治療効果の判定は尿および血中の生化学的パラメーターならびに腎組織学的所見により行った.蛋白尿に対して,PGE
1単独投与群で治療の後半に,そしてPGE
1大量抗原併用群で治療の前半に,それぞれ無処置腎炎群と比較して抑制傾向が示された.特に400mg/day以上の蛋白尿を有したラットについてはPGE
1単独投与群では,蛋白尿の経日的な減少がより著明に示された.一方,PGE
1大量抗原併用群では治療開始20日目以後,逆に蛋白尿の増加が認められた.腎組織光顕所見のうち,糸球体への免疫複合体の沈着,毛細血管壁の肥厚およびスパイク形成に対して,PGE
1単独投与群は対照群に比して抑制傾向を示したが,PGE
1抗原併用群ではむしろ悪化させた.糸球体における白血球やメサンジウム細胞の増加に対してはPGE
1単独投与群で有意に減少した.以上よりPGE
1は抗腎炎作用を有することが示され,また大量の抗原の併用により一時的には有益な効果を示したが,長期間では逆に腎炎が悪化する可能性を示した.
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