日本薬理学雑誌
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108 巻, 2 号
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  • 藤倉 直樹, 横山 達朗, 増田 幸則, 鹿田 謙一, 田中 作彌
    1996 年 108 巻 2 号 p. 39-48
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    麻酔開胸イヌを用いて,ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の塩酸エホニジピンの心筋酸素需給バランスにおよぼす効果をニフェジピンおよびニソルジピンと比較検討した.麻酔開胸イヌにおいて塩酸エホニジピン(30μg/kg)はニフェジピン(3μg/kg)およびニソルジピン(3μg/kg)と同程度平均血圧を低下させたが,その降圧効果はニフェジピンおよびニソルジピンよりも持続的であった.そのとき心拍数は塩酸エホニジピンおよびニソルジピンにより減少したのに対しニフェジピンでは逆に増加した.心筋酸素消費量は塩酸エホニジピン(30μg/kg)により投与初期に軽度増加したが,その後は有意な変化は認められず一過性の反応であった.一方,ニフェジピン(1および3μg/kg)では投与直後に有意な増加が認められたのに対しニソルジピン(3μg/kg)では有意な変化は認められなかった.しかし塩酸エホ=ジピン,ニフェジピンおよびニソルジピンはともに冠状静脈洞血流量を増加させ動静脈酸素濃度較差を減少させたことより,これらの薬剤はともに心筋への酸素供給を増加させることが示唆された.また塩酸エホニジピン,ニフェジピンおよびニソルジピンによりダブルプロダクトが減少したことより,これらの薬剤は心筋の酸素需要を減少させることが示唆された.以上の結果から,塩酸エホニジピンは心筋酸素消費量を一過性に増加させたが,持続的な酸素供給増加作用および持続的な酸素需要減少作用を示したことより,心筋酸素需給バランスを改善する可能性が示唆された.
  • 莚井 武, 芝原 利佳, 鵜飼 洋司郎, 吉國 義明, 木村 喜代史
    1996 年 108 巻 2 号 p. 49-63
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    新規TRH誘導体montirelin hydrate(NS-3)の静脈内投与による正常および後部視床下部(PHA)破壊ラットの脳波に対する作用をTRHのそれと比較検討した.正常ラットでは,NS-3 0.01mg/kgおよびTRH 1mg/kgは睡眠覚醒周期に影響をおよぽさなかった.NS-3 0.1mg/kgでは,投与後2時間にわたって覚醒期が有意に増加し,徐波睡眠発現潜時も有意に延長した.TRH lOmg/kgでも徐波睡眠発現潜時の有意な延長がみられたものの覚醒期の増加はみられず,むしろ投与後2-4時間において覚醒期の減少と徐波睡眠期の増加が認められた.NS-3およびTRHのいずれの投与によっても異常脳波は認められなかった.PHAの電気的破壊によりラットは鎮静ないし睡眠症状を呈し,大脳皮質脳波の徐波成分の増加ならびに海馬律動波の消失が認められた.このPHA破壊ラットにおいて,NS-3 0.01mg/kgあるいはTRH 1mg/kgにより海馬律動波が持続的に発現し,NS-3 0.1mg/kgおよびTRH 10mg/kgにより海馬律動波の発現に加え,大脳皮質脳波の徐波成分が減少し,代って低振幅速波成分が増加するようになった.以上,正常およびPHA破壊ラットにおいて,NS-3はTRHの約100分の1の用量で,明確な意識水準の賦活作用を示した.
  • 島村 美智枝, 西沢 幸二, 山下 明
    1996 年 108 巻 2 号 p. 65-75
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    更年期には閉経に伴い,のぼせやほてり,憂欝,知覚異常,不眠など多種多様の症状が出現し,これらは総称して更年期症候群あるいは更年期障害と呼ばれている.我々は,加味帰脾湯がこれらの更年期症候群に対して臨床的に用いられていることに着目し,その有用性を確認するため,卵巣摘出ラットを更年期のモデルに見立て,痛覚,記憶学習能および循環機能に対する作用についていくつかの検討を行った.卵巣摘出または偽手術後,加味帰脾湯および他の被験薬は,試験開始までの7あるいは8日間1日1回経ロ投与した.電気刺激感受性試験において,卵巣摘出により痛覚閾値が有意に上昇し,感覚鈍麻が認められた.加味帰脾湯は痛覚閾値を用量依存的に回復させた.にステップ・スルー型受動的回避学習反応において,卵巣摘出ラットのST潜時は有意に短縮し,記憶学習能力の低下が認められた,加味帰脾湯はこれを有意に延長させた.また,八方向放射状迷路課題において,卵巣摘出ラットは正選択数の減少および誤選択数の増加を示した.これに対し加味帰脾湯は,用量依存的に正選択数を増加させ,誤選択数を減少させた.さらに卵巣摘出により血圧は有意に上昇し,加味帰脾湯はこれを用量依存的に回復させた.これらの結果から,加味帰脾湯は更年期症候群に有効であることが示唆された.また,加味帰脾湯が卵巣摘出による子宮重量の減少に対して影響を与えなかったことから,その作用はホルモン剤がエストロゲンを補うような直接作用よりも,むしろ卵巣摘出によってもたらされる中枢神経系の変化を正常化する作用によるものと推測された.
  • 柳瀬 晃子, 西沢 幸二, 井上 治, 洲加本 孝幸, 齋藤 雄二
    1996 年 108 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    加味帰脾湯(KMK)の抗侵害受容作用機序を明らかにする目的で,マウスを用いて,KMKの酢酸ライジング反応抑制に対する各種受容体遮断薬,生体モノアミン合成阻害薬あるいは澗渇薬処置および脊髄切断の影響について調べた.KMKは750mg/kg以上の経ロ投与により有意な酢酸ライジング反応抑制作用を示した.KMKの酢酸ライジング反応抑制作用は,オピオイド受容体拮抗薬ナロキソン前処置の影響を受けず,アドレナリンα2-受容体遮断薬ヨヒンビンやセロトニン受容体遮断薬シプロヘプタジン処置により消失した.したがって,KMKの作用にオピオイド受容体は関与せず,α2受容体やセロトニン受容体が関与していると考えられた.また,KMKの酢酸ライジング反応抑制作用は,生体モノアミン合成阻害薬あるいは洞渇薬であるα-メチル-p-チロシン,ジエチルジチオカルバミン酸,レセルピンおよびp-クロロフェニルアラニンの処置によって消失したことから,生体モノアミンが関与していることが示唆された.さらに,KMKの酢酸ライジング反応抑制作用は脊髄切断により消失したため,その作用部位は脊髄より上位であると考えられた.これらのことから,KMKIの抗侵害受容作用には脊髄より上位のノルアドレナリン系やセロトニン系神経等の下行性痛覚抑制機構が関与していると考えられた.
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