日本薬理学雑誌
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97 巻, 2 号
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  • 五十嵐 康, C. Le Roy BLANK, 伊藤 康一, 佐藤 裕久, 井上 洋, 丸山 悠司
    1991 年 97 巻 2 号 p. 51-64
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    多次元液体クロマトグラフィー開発の目的は,できるだけ多くの神経系関連物質を同一生体試料より分離測定することによりその測定値が示すプロファイルから中枢系作用薬の機序,動物行動の影響,精神疾患による機能的変化など,いわゆる中枢神経系に生じた変化の動態を総合的に把握し,その根拠の解明に役立てることである.本報の開発機器は,電気化学検出器を用いた液体クロマトグラフィー(HPLC)を基調とし,以下の構成と機能的特徴とを有する.すなわち,検出器の構成としてはクーロメトリーに対するアンペロメトリー法を採択した.まず28種類の神経系標準物質の保持時間を検討し,同一時間内に全物質が溶出するよう独立した4系統(システム)のHPLCをオンラインで自動化した.システム1-3ではカテコールアミンおよびセロトニン作動性物質の測定,4はコリン作動性物質専用の測定系である.4本のカラムの溶出液は,それぞれ直列式に固定した4個の電極(システム4は1個)を通過し,各電極に印加された電位に呼応して得られる反応ピークの比率から物質の同定が可能である.すなわち,本システムはナートインジェクターと増幅器を4台のHPLCに連動しコンピューターベースで統合した4系並列の同時分析システムである.本法の機能性および有用性を評価するため,1)ラット脳線条体組織における神経系関連物質のレベルを断頭群,マイクロ波照射群で比較し,これら物質の死後変化の影響を数値化して従来の結果と比較検討した.さらに2)パーキンソン病および本態性痙攣を有する患者の脳室液物質を同時測定した.以上の結果から1)における再現性の確認,2)では従来の6物質の検出結果に対し11物質のプロファイルが得られた.これら物質群は,S/N=3の条件下で100~400fmolの高感度で22分以内で分離同定され,従来の方法に比べ抽出測定時間は1/4に短縮された.
  • 田村 智昭, 谷口 登志悦, 宮本 鉄雄, 青城 優, 脇 功巳
    1991 年 97 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    マウス,ラットを用いた各種虚血性脳障害モデルにおいて,中枢性鎮痛薬eptazocineの脳保護効果について検討した.1)マウス断頭負荷試験,頭部打撲負荷致死試験(20g,30cm)においてeptazocine(3,10mg/kg)は開口運動持続時間,生存時間を各々用量依存的に延長した.2)ラット両側総頸動脈結紮(BLCO)負荷試験においてBLCO処置直後にeptazocine(3,10mg/kg),ethylketo-cyclazocine(EKC,3mg/kg)を投与すると,6時間後の虚血性発作発現率,死亡率および24,48時間後の死亡率に有意な低下を認めた.また,BLCO処置3時間後に認められる脳水分含量,Na/K比の上昇をeptazocineは抑制した.3)マウスBLCO負荷試験においてBLCO処置5,30,120分後の死亡率はeptazocine(3,10mg/kg)の30分前投与により有意に低下した.一方,EKC(3mg/kg)では5分後の死亡率においてのみ改善効果が認められた.BLCO処置2分後に脳エネルギー代謝物の含量を測定したところ,phosphocreatine,ATP含量の減少,AMP,乳酸含量の増加が認められ,ECPは約34%低下し,L/P比は5.8倍に上昇した.これら虚血急性期において認められるエネルギー代謝に関する変化はeptazocine,EKCによって改善されることが認められた.4)マウス脳ミトコンドリア呼吸能のグルタミン酸,コハク酸両基質条件における測定において,eptazocine10mg/kgはState3呼吸活性,呼吸調節率(RCI)を有意に上昇させた.断頭頭部を3分間室温に放置する虚血負荷によるグルタミン酸基質条件のRCIの低下をeptazocineは3mg/kgから有意に抑制した.以上の結果から,eptazocineは虚血急性期の脳障害に対して保護効果を惹起し,その機序の一つとしてミトコンドリア呼吸機能の保護あるいは賦活化を介した脳エネルギー代謝改善作用が関与する可能性が示唆された.
  • 山田 利光, 富岡 健一, 間瀬 年康, 村瀬 清志
    1991 年 97 巻 2 号 p. 75-84
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    2-(m-carboxyacetoxyphenyl)imidazo〔2,1-b〕benzothiazole(YM-13650)のI型~IV型アレルギー反応および抗体産生に対する作用を種々の動物モデルを用いて検討した.マウスのpicryl chloride(Pc)による遅延型過敏症(DTH)モデル(IV型アレルギー)において,YM-13650はinduction phaseに対してPc感作前あるいは感作後のいずれの時期に投与しても抑制作用を示した。また,effector phase,すなわち抗原誘発16時間後に経口投与した場合も有意な抑制作用を示した.さらに,YM-13650はcyclophosphamideの前処理によって増強されるDTHを抑制し,両側副腎摘出マウスにおいてもDTH反応を抑制した.マウスの皮膚移植実験において,YM-13650の25mg/kg,p.o.はazathioprineの30mg/kg,p.o.と同程度の生着期間延長作用を示した.しかしながら,マウスにおける抗DNP-ovalbumin抗体の産生およびヒツジ赤血球に対する抗体産生に対し,YM-13650は10~300mg/kg,p.o.の用量で有意な影響を及ぼさなかった.I型~III型アレルギー反応のうちYM-13650はモルモットの受身Arthus反応およびラットの逆受身Arthus反応(III型アレルギー)を10および30mg/kg,p.o. で有意に抑制した.しかしながら,ラットの受身皮膚アナフィラキシー(I型アレルギー)およびモルモットのForssmanショック(II型アレルギー),また,ラットのカラゲニン足浮腫に対して,YM-13650は300mg/kg,p.o. の用量で有意な影響を及ぼさなかった.すなわち,YM-13650は液性抗体産生には影響を及ぼさないが細胞性免疫の関与するアレルギー反応を抑制し,さらにIII型アレルギー反応をも抑制することが示された.
  • 近藤 真
    1991 年 97 巻 2 号 p. 85-95
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    歯胚の器官培養を用いて,chlorpromazineの石灰化に対する効果を,retinoic acidおよび1-hydroxyethylidene-1,1-bisphosphonate(HEBP)の効果と比較検討した.石灰化を評価するため,歯胚のアルカリホスファターゼ(ALP)活性およびカルシウム量の測定と組織学的検索を行った.胎生17日目のddY系マウスより摘出した下顎第一臼歯歯胚を,2,3,7,10および12日間培養した.培養歯胚のALP活性およびカルシウム量は共に培養日数に依存して増加したが,ALP活性の増加はカルシウム量の増加に先行していた.retinoic acid(1μM)を処理した歯胚において,ALP活性は培養7日目において,カルシウム量は培養10日目で有意に減少した.しかし,このretinoic acidの抑制効果は摘出後2日間の培養により成熟させた歯胚においては認あられなかった.HEBP(0.1mM)は培養7日目において歯胚のカルシウム量を有意に減少させたが,ALP活性に対しては著明な増加を示した.chlorpromazine(1μM)は明らかな石灰化抑制を示し,歯胚のALP活性およびカルシウム量を共に培養7日目において著明に減少させた.また,選択性の高いcalmodulin阻害薬であるW-7およびその誘導体であるW-5もchlorpromazineと同様に,歯胚のALP活性およびカルシウム量を減少させた.W-7はW-5よりも強力な作用を示した.また,chlorpromazineおよびHEBPの効果は,摘出後2日間の培養により成熟させた歯胚においても認められた.これらの結果より,chlorpromazineが歯胚の石灰化に対し抑制効果を有している事,この作用様式がretinoicacidおよびHEBPとは異なっている事,さらに歯胚の石灰化にcalmodulin系の機構が介在している可能性を示した.
  • 高瀬 英樹, 巽 義男, 三浦 治, 弓岡 栄三郎, 鈴木 章
    1991 年 97 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    黄連解毒湯の胃酸分泌に対する影響を麻酔下で胃内灌流法を用いて検討した,黄連解毒湯(10~100mg/kg)は,TRH(thyrotrqpine releasing homone)誘導体のDN-1417(0.1μg/rat,i.c.v.)誘発による酸分泌を用量依存的に抑制したが,GABA誘導体のbaclofen(0.3μg/rat,i.c.v.)によるそれを抑制しなかった.atropine(0.05mg/kg)は,DN-1417およびbaclofenの酸分泌刺激をともに明らかに抑制した.黄連解毒湯のDN-1417刺激酸分泌に対する抑制作用は,dopamine受容体遮断薬のhaloperidol(0.3および1.0mg/kg)およびsulpidde(100mg/kg)ならびにα受容体遮断薬のphentolanine(1および5mg/kg)およびα2-受容体遮断薬のyohimbhle(0.3mg/kg)によって拮抗されたが,β受容体遮断薬のpropranolol(4mg/kg)およびα1-受容体遮断薬のprazosin(1mg/kg)によって拮抗されなかった.これらのことから,黄連解毒湯の胃酸分泌抑制作用には,dopamine受容体およびα2-受容体が関与していることが示唆された.
  • 若林 修一, 望月 誠一郎, 小坂井 一宏, 関口 仁美, 松本 真, 冨山 格, 竹内 雅也, 竹内 孝治, 岡部 進
    1991 年 97 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットの胃に酢酸潰瘍およびclamping-cortisone潰瘍を作成し,新規抗潰瘍剤azuletil sodiumの治癒促進作用につき検討した.またclamping-cortisone潰瘍Yこついては感染を防止するためspecific pathogen free(SPF)動物を用いSPF施設においても検討し,コンベンショナルで行った場合と比較した.その結果,以下の事が明らかになった.1)酢酸潰瘍においてazuletil sodiumは90mg/kg/day以上の経口投与で有意に潰瘍面積を縮小した.2)酢酸潰瘍においてさらに3段階の分類(潰瘍期,治癒過程期,癩痕期)により評価すると,azuletil sodiumはより低用量の30mg/kg/day以上で有意な治癒促進作用を示した.3)clamping-cortisone潰瘍においてコンベンショナル施設で行うと,azuletil sodiumは100mg/kg/dayの投与で治癒指数および粘膜再生指数を増加させたが有意な作用ではなかった.しかし組織学的所見として,azuletil sodiumおよびsucralfateの投与により有意な血管新生作用が認あられた.一方,azuletil sodiumはSPF施設で行ったclamping-cortisone潰瘍において30mg/kg/dayの経口投与で有意な治癒促進作用を示し,100mg/kg/day以上で粘膜再生指数を有意に増加した.4)clamping-cortisone潰瘍をSPF施設で実施するとコンベンショナル施設でみられたような感染例は全くみられなかった.さらに癒着の程度も小さくなり,自然治癒の促進がみられた.また治癒係数等の各指数の標準誤差も小さくなった.以上の結果から,新規抗潰瘍剤azuletil sodiumは30mg/kg/day以上の経口投与で酢酸潰瘍あるいはclamping-cortisone潰瘍の治癒を有意に促進させることが判明した.
  • 山中 教造, 鈴木 真, 宗蓮 司朗, 石河 醇一
    1991 年 97 巻 2 号 p. 115-126
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    新規1,4-dihydropyridine誘導体であるamlodipineの経口投与による抗高血圧作用を各種高血圧動物を用いて検討した.単回投与実験において,amlodipine 1,3,10mg/kgは高血圧自然発症ラットの血圧を用量依存性に低下させた.この血圧低下は投与後ゆっくり発現し,4~6時間で最大となり,10時間後も持続した.一方,nifedipineによる血圧低下は1時間で最大となり,持続時間は短かった.心拍数はnifedipine 3,10mg/kg投与後一過性に著しく増加したが,amlodipineでは10mg/kgでのみ緩徐に増加した.amlodipineが血圧を30mmHg低下させる用量(ED30)は2.3mg/kgであり,その効力はnifedipineと同等であった.腎性高血圧及びDOCA高血圧ラットにおいてもamlodipineは持続的な降圧作用を示し,ED30は各々2.4及び2.2mg/kgであり,nifedipine(2.4及び2.1mg/kg)とほぼ同等の効力であった.腎性高血圧犬において,amlodipineは0.1,0.3,1mg/kgで収縮期及び拡張期血圧(ED30は各々0.3,0.4mg/kg)を同程度に低下させ,この作用も4~6時間後最大となり,長時間持続した.心拍数は1mg/kgで増加した.高血圧自然発症ラット(1,3mg/kg/日,15日間)または腎性高血圧犬(0.2mg/kg/日,20日間)に連続経口投与した実験では,amlodipine投与開始後,数日以内に投与前血圧の低下及び投与後の降圧効果の増大がみられ,その後降圧作用は安定し耐性は生じなかった.投与中止後血圧はゆっくりと投与前値の血圧に復し,心拍数は試験期間中変化しなかった.以上の結果より,amlodipineは各種高血圧動物において,nhledipineと異なり,緩徐に発現しかつ持続的という特徴ある降圧作用を示し,その効力はnifedipineと同等またはそれ以上であること,連続投与でも耐性発現はなく,心拍数の変化も少ないことが示唆された.
  • 服部 智久, 伊藤 幹雄, 鈴木 良雄
    1991 年 97 巻 2 号 p. 127-134
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    S.D.系雄性ラットに抗糸球体基底膜血清を静注して,オリジナルタイプ抗GBM腎炎を惹起し,同時に粗ジンセノシド(0.5,1.0ならびに5.0mg/kg,i.p.)および,その分画であるジンセノシドRb1とRg1(0.5ならびに1.0mg/kg,i.p.)を腹腔内に投与した.粗ジンセノシドの1.0ならびに5.Omg/kg投与群では抗血清静注緩,1日目において,蛋白尿の有意な抑制が認められたが,5日目ならびに10日目には認められなかった.また,ジンセノシドRg1投与群でも1日目と5日目に抑制作用が認められた.さらにこれらの群には血清コレステロールの抑制や病理組織学的な変化の抑制がみられた.一方,Rb1投与群では病理組織学的パラメーターにおいてのみ抑制作用が認められた.粗ジンセノシドならびにRg1では血小板凝集能の抑制作用はジピリダモールより,弱いが,腎血流量の低下に対して著明な増加作用がみられた.また,Rb1にはin vitroならびにin vivoにおいて強力な抗血小板作用が認められた.以上の結果からジンセノシド類は抗腎炎効果を有し,その作用には主に腎血流量の増加作用が関与し,それにはRg1の作用が重要である.またRb1は血小板凝集能抑制作用を介して組織学的な病理変化を抑制したことが示唆された.
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