日本薬理学雑誌
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77 巻, 4 号
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  • 松岡 出
    1981 年 77 巻 4 号 p. 337-346
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    The paper deals with recent advances in anatomical, physiological, biochemical and pharmacological studies on the vestibular system. Fiber connections and characteristics of neurons in the vestibular nuclei were discussed in relation to regulation from other structures such as the cerebellum, oculomotor nuclei, reticular formation and spinal cord. In addition, a review was made of the actions on the vestibular system of antivertigo drugs including anticholinergic and antihistamine drugs, tranquilizers and barbiturates. All the obtained data show that the vestibular nuclei are devoid of noradrenergic, dopaminergic and serotonergic innervation, in contrast to other brainstem nuclei. Acetylcholine is apparently a neurotransmitter in the afferent transmission from the vestibular nerve to the vestibular nuclei. Antivertigo drugs produce modification in the neuron activity in the medial and lateral vestibular nuclei.
  • 清水 隆雄
    1981 年 77 巻 4 号 p. 347-360
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    マウスの尾根部から加えた持続的な末梢の電気刺激によって,中枢神経内 monoamine 特に 5-hydroxytryptamine(5-HT)がどのように変化するかを,生化学的および行動の両面から検討を加え鎮痛効果を併せて観察した.1)刺激電流 0.45mA,パルス巾 5msec,刺激頻度 20Hz で末梢刺激を2時間行ったとき全脳の 5-HT 量はほとんど変化がみられなかったが,5-hydroxyindoleacetic acid(5-HIAA)量は有意に増加した.2)末梢刺激は全脳で probenccid(200mg/kg,i.p.)投与による 5-HIAA 量の蓄積を増加し,p-chlorophenylalanine methylester-HCl(pCPA: 500mg/kg,i.p.)投与による 5-HT 量の減少を促進した.probenecid による 5-HIAA 量の蓄積は末梢刺激により大脳皮質,脳幹で有意な増加が観られたが,脊髄では増加の傾向にとどまった.3)末梢刺激群の血漿 corticosterone 量は拘束群と比べて有意に低い値を示した.4)この末梢刺激は 5-mcthoxy-N,N-dimethyltryptamine による head-twitch の発現を著明に増強した.末梢刺激による head-twitch の増加作用は α-methyl-p-tyrosine(200mg/kg,i.p.)の投与では変化がなかったが,pCPA(500mg/kg×2,i.p.)および 5,6-dihydroxytryptamine(40μg/5μl,i.vent.)の投与により消失した.5)この末梢刺激には鎮痛効果があることが hot plate 法および酢酸 writhing 法で確認できた.その鎮痛効果は hot plate 法によると刺激開始1時間後に有意な発現を示し,2時間の刺激終了時まで続いたが,刺激終了1時間後には消失した.6)末梢刺激による鎮痛効果は単独では効果をあらわさない量の L-5-hydroxytryptophan(20mg/kg,s.c.)投与によりさらに増強され,methysergide (6mg/kg,s.c.)投与により完全に消失した.また naloxone(1mg/kg,s.c.)の投与によっても完全に抑制された.7)この実験から末梢刺激によって,中枢神経内 5-HT の代謝回転促進を伴った機能的亢進状態が発現すること,末梢刺激による鎮痛効果の発現には内因性モルヒネ様ペプチドと共に中枢 5-HT 系の関与があることが明らかとなった.
  • 河野 弘之, 桜田 司, 木皿 憲佐, 佐藤 洋子
    1981 年 77 巻 4 号 p. 361-370
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    生体内 polyamine の1つである spermine(SPM)の摂食・飲水行動および血清 glucose(Glc)・遊離脂肪酸(FFA)濃度に対する影響を検討した.また,肝毒性についても検討を加えるために,血清glutamic oxaloacetic transaminase(GOT),glutamic pyruvic transaminase(GPT)および cholinesterase(ChE)活性の測定も同時に行なった.SPM 腹腔内投与により,用量依存的かつ二相性の摂食行動抑制作用が認められた.この抑制作用は,投与直後から発現し,2日後にはほとんど消失したが,3日後から再び認められ,数日間持続した.投与3日後における50%抑制用量は,64.9μmol/kg であった.一方,飲水行動は,投与1日後までは抑制が認められたものの,2日後からは促進された.spermidine も SPM と同様な作用を惹起したが,その強度は,SPM の1/3以下であった.また,putrescine も非常に弱いながら,投与1日後までの摂食行動を抑制した.SPM 80μmol/kg 投与により,Glc および FFA 濃度は増加し,3時間後に対照群のそれぞれ116%,156%を示した.この増加は,副腎髄質摘出によりほぼ消失した.投与4時間後にこれらの濃度は,無処理群の値にまで減少したが,3日後から4日後にかけて,Glc 濃度は減少し,FFA 濃度は増加した.SPM 80μmol/kg投与により,GOT と GPT 活性は上昇,ChE 活性は低下し,投与2時間後には,対照群のそれぞれ264%,142%,44%を示した.これらの酵素活性は,3時間後に無処理群のレベルにまで回復し,1日後から4日後にかけて再び不規則な変動を示した.以上の結果は,SPM が副腎髄質のcatecholamine 遊離作用と肝毒性を有していることを示唆しており,これら腹部臓器に対する作用が摂食行動抑制の一因を成しているものと思われる.また,二相性作用は,それぞれ異なる作用機序により生じている可能性もある.
  • 亀井 清光
    1981 年 77 巻 4 号 p. 371-381
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    著者は Gaasch らが用いた方法にもとづいて超音波診断装置により,左室壁厚エコー図を記録し,急性心筋虚血作成犬での虚血部の左室の壁厚に及ぼす nitroglycerin(NTG)の効果を調べた.対象は14頭(平均15kg)の麻酔開胸犬で,左室の心膜上の左前下行枝の分枝,対角枝(以下 DB と略す)の灌流領域に小型の超音波トランスデューサー(minitransducer)(直径5mm,厚さ3mm)を縫合し,DB を結紮した.結紮90~120分後,同部の左室壁エコーが一定状態になった時点で,NTG をはじめ30γ/kg,次に30分間おいて100γ/kg を投与し,おのおの15分間,経時的に左室壁エコーを記録し,その効果を観察した.血行動態的変化は,大動脈基部にカテーテルを留置して,大動脈圧を記録した.一部の犬については,前下行枝に電磁流量計をかけ,冠血流量(3頭)を測定し,さらに小型の超音波トランスデューサーからの心外膜心電図(5頭)も同時に記録した.結紮前および後90~120分の時点では拡張末期壁厚(Thd),収縮末期壁厚(Ths)は,それぞれ9.2±1.4mm(平均±1標準偏差)から8.4±1.1mm,14.1±2.2mm から 12.7±2.2mm と有意の減少を示し(P<0.05,P<0.05),拡張期最大壁厚変化率(Max dth/dt(D)),収縮期最大壁厚変化率(Max dth/dt(S))も62.2±20.6mm/sec から48.7±22.8mm/sec,45.6±15.5mm/sec から37.0±16.7mm/sec と有意に減少した(P<0.02,P<0.05).この間血圧は不変であったが,心拍数の有意の減少をみた(P<0.001).次に急性虚血犬での NTG 投与前後の左室壁エコー図からの計測では,Thd,Max dth/dt(D)は不変であったが,Ths は12.7±2.2mm から13.7±2.0mm(P<0.05)(30γ/kg投与時)12.5±2.5mmから13.9±2.5mm(P<0.05)(100γ/kg投与時)と有意の増加を認め,またMax dth/dt(S)も37.0±16.7mm/secから55.0±26.5mm/sec(P<0.01)(30γ/kg投与時),41.0±27.8mm/sec から56.0±33.7mm/sec(P<0.01)(100γ/kg投与時)と有意の増加をみとめた.一方 NTG の投与により,血圧は下降し,心拍数は増加したにもかかわらず冠血流量の増加をみとめた.これらのことから,NTG 投与による Ths,Max dth/dt(S)などの局所虚血部心筋機能の改善には側副血行路からの供血,冠動脈拡張作用が大きく寄与しているものと推測した.
  • 金子 武稔, 尾崎 覚, 山津 清実
    1981 年 77 巻 4 号 p. 383-395
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    benzodiazepine 誘導体である flunitrazepam の麻酔導入剤としての有効性を動物レベルで実証するため,マウスおよびラットを用いて flunitrazepam を静注した際の各種麻酔剤あるいは鎮痛剤の作用に対する併用効果を調べた.flunitrazepam 単独では 0.01~1mg/kg i.v. により用量依存的に鎮静,筋弛緩作用が認められたが,大量の lmg/kgでも麻酔作用(正向反射の消失)は認められなかった.flunitrazepam を各種麻酔剤と併用するとそれらの麻酔作用を著明に増強した.即ち,無作用量の pentobarbital,thiopental,ketamine および thalamonal は flunitrazepam 0.01mg/kg 以上の併用で麻酔作用を示し,麻酔量の作用は著明に延長された.また,吸入麻酔剤においても麻酔発現時間の短縮および麻酔からの回復時間の延長が認められた.一方,flunitrazepam 単独では,マウス酢酸 writhing に対して 0.1mg/kg i.v. 以上で用量依存的に抑制が認められ,ラット tail pinch 法では1mg/kg でのみ刺激閾値は50%上昇したが,その他の鎮痛試験ではほとんど無作用であった.flunitrazepam を各種鎮痛剤と併用すると,morphine,pentazocine および thalamonal の酢酸 writhing 抑制作用は増強され,各 ED50 値は flunitrazepam の用量増加とともに低値を示した.マウス hot plate 法では morphine の反応時間延長作用は flunitrazepam 0.01mg/kg 以上の併用により増強され,morphine の無作用量 2mg/kg とflunitrazepam 0.1mg/kg の組み合わせでmorphine 4mg/kg より強い鎮痛作用を示した.ラット tail pinch 法では,morphine やpentazocine の刺激閾値上昇作用は flunitrazepam 0.1mg/kg 以上で増強された.ラット bradykinin 侵害反応に対する morphine の抑制作用は flunitrazepam 1mg/kg によって著明に増強された.以上の結果から flunitrazepam は麻酔導入剤としての臨床応用が期待できる.
  • 岡部 進, 国見 春代, 大槻 浩
    1981 年 77 巻 4 号 p. 397-406
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    新しい histamine H2-受容体拮抗薬,ranitidine は100~200mg/kg(i.d. または p.o.)の用量でラットの Shay 潰瘍,indomethacin 胃潰蕩,phenylbutazone 胃潰瘍,histamine-carbachol 十二指腸潰瘍およびモルモットの histamine 胃潰瘍の発生に対し著明な抑制効果を示した.ラットの水浸 stress 胃潰瘍,モルモットの histamine 十二指腸潰瘍に対しても有意の抑制は認められたが,抑制率は70%以下であった.cimetidine もラットの水浸 stress 胃潰瘍,indomethacin 胃潰瘍,phenylbutazone 胃潰瘍,モルモットの胃および十二指腸潰瘍の発生に対し,有意な抑制効果を示した、しかし Shay 潰瘍,histamine-carbachol 十二指腸潰瘍に対しては有意な抑制効果を認めなかった.histamine 投与モルモットの胃酸分泌に対してranitidine および cimetidine は抑制的に作用した,ラットの幽門結紮法による酸排出量に対しても ranitidine および cimctidine の100mg/kg(i.d.)はおのおの 79.6% および 50.7% 抑制した.しかし両薬物ともに胃液量,pcpsin 排出量に対しての効果は弱かった.ranitidine および cimetidine の抗潰瘍効果は主として胃酸排出量の抑制に基くと考えられる.但し,ranitidine は Shay 潰瘍は抑制したが,胃酸分泌は殆んど抑制していないことから,他の機序の関与も推定された.機序はともかく,ranitidine は cimetidine と同様に消化性潰瘍の治療薬として有用性が期待される.対照薬として使用した gefarnate は,phenylbutazone 胃潰瘍の発生に対しては 300mg/kg の用量で46.5%の有意の抑制をしたが,それ以外の潰瘍モデルに対しては,ほとんど効果は認められなかった.以上の結果から見て,諸種の実験潰瘍モデルにおける抗潰瘍作用の強さは,ranitidine≥cimetidine>gefarnate の順であった.
  • 鈴木 良雄, 永松 正, 鬼頭 利宏, 高村 俊史, 伊藤 幹雄
    1981 年 77 巻 4 号 p. 407-417
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    ラット腎より糸球体基底膜(GBM)を分離し,その trypsin 消化物を抗原として抗ラット GBM ウサギ血清(抗血清)を作製した.抗血清 0.25ml 宛をラットの尾静脈に注射して腎炎を惹起し,病理組織および生化学的パラメーターを測定して,既報の馬杉腎炎および改良型馬杉腎炎の場合と比較した.光学顕微鏡的観察においてヒトの腎炎の組織像とよく類似した像が観察され,なかでも静注後30日目で最も顕著な富核,半月体形成,ゆ着,硝子化および間質への浸潤等が認められた.螢光抗体所見として静注後1日目からウサギ IgG の“GBM への線状の沈着”(linear pattern)が認められ,全経過を通して一定の強さであった.一方,ラット IgG は10日目から認められ同じく linear pattern を呈した。flbrinogen の沈着も10日目から認められたが,螢光は係蹄壁のほか Bowman's space においても認められた.蛋白尿は一日目から有意に増加し,10日目にピークに達し正常の12倍であった.その後次第に減少したが60日目においても認められた.alkaline phosphatase および N-acetyl-β-glucosaminidase 活性もほぼ蛋白尿と同じパターンを示し,ピーク時には正常の約10倍と約3倍であった.血漿尿素窒素は抗血清注射後5日目に一過性の著明な上昇を示し,30日目以後は正常値を示した.cholesterol は注射後5日目から20日目にかけて正常値の約150%という有意な増加が見られた.今回のデーターを馬杉腎炎や改良型馬杉腎炎の場合と比較すると糸球体病変の程度は激しく,いわゆる腎炎型であり,より長期間の持続性を示した.
  • 伊藤 幹雄, 横地 英治, 鬼頭 利宏, 鈴木 良雄
    1981 年 77 巻 4 号 p. 419-425
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    糸球体腎炎の発症および増悪において,血液凝固系の役割を明らかにするために,liquoid(Liq)を正常あるいは腎炎ラットに反復投与した場合の影響について検討した.正常ラットに Liq 10mg/kg 毎日1回計22回 i.v. 投与(I群)した場合,尿中への蛋白,N-acetyl-β-glucosaminidase の排泄,血中尿素窒素含量は正常対照群と比較して,ほとんど変わらなかった.また,抗ラット糸球体基底膜ウサギ血清(AGS)[0.5ml/150g体重]のi.v. 投与後15日目から Liq を 10mg/kg,3日目毎に計8回 i.v. 投与(III群)しても,毎日1回計22回 i.v. 投与(IV群)しても,これらの生化学的パラメーターは AGS のみを投与した腎炎対照群(II群)との間に有意差を認めなかった.螢光抗体法による糸球体への fibrin あるいは fibrinoids の沈着は弱かったが,10匹中I群およびII群では2匹,III群では8匹,そしてIV群では10匹に認められた.光顕所見ではI群においても係蹄壁とボウマン嚢との癒着,富核,半月体形成や硝子化を示す糸球体が少数例認められた.腎炎ラットに対する Liq の影響に関して,特に硝子化が顕著となり,硝子化を示す糸球体はII群ではわずか17%であるのに対してIII群では14%,IV群では55%であった.他の糸球体変化は富核を除いてII群に比しIII群では変わらなかったがIV群では明らかに増加を示した.しかし富核は逆にIII群,IV群では減少した.糸球体毛細管腔閉鎖はI群でも軽度ながら認められた.また腎炎群においてはII群に比しIV群ではその閉鎖の程度は明らかに強度であった.以上の結果から,糸球体内の血液凝固亢進が,糸球体腎炎の発症,増悪の主要な因子と考えられる.
  • 竹内 久米司, 向後 博司, 相澤 義雄
    1981 年 77 巻 4 号 p. 427-434
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    急性の食塩および水負荷ラットにおける methylxanthine 類の尿中 PGE 排泄と利尿効果との関係について検討した.等張食塩水負荷ラットにおける尿中 PGE 排泄は,methylxanthine 類の経口投与(25,50,100mg/kg)で有意に増加した.その効果は theophylline で最も強く,theobromine およびcaffeine では,ほぼ同等の強さを示した。次に theophylline の尿中 PGE 排泄効果を無負荷ラット,急性の食塩水および水負荷ラットにおいて比較検討した.theophylline(25,50,100mg/kg)は無負荷および等張食塩水負荷ラットの尿中 PGE 排泄を著明に増加させた.また,同時に利尿作用として特に Na および Cl の排泄増加が顕著であった.なお,theophylline の末投与群でも,尿中 PGE 排泄は等張,高張(9%)食塩水および水負荷の刺激だけで,有意に増加した.特に高張食塩水負荷ラットで著明に増加し,以下,水,等張食塩水負荷の順であった.しかしながら,高張食塩水および水負荷ラットでは,theophylline の尿中 PGE 排泄の有意な増加効果は認められなかった,さらに theophylline による尿中 PGE 排泄増加効果と利尿作用との関係について検討した結果,無負荷ラットにおいては,theophylline による尿中 PGE 排泄増加効果は,尿量および Na,Cl の排泄と有意に相関した,また,等張食塩水負荷ラットでは,Na および Cl 排泄の増加と有意に相関した.以上,theophylline の利尿作用発現に腎内 PGE が積極的に関与している可能性を強く示唆すると共に,腎内 PGE が電解質および水排泄の調節に複雑に関与していることを示唆する成績を得た.
  • 仲川 義人, 武田 敬介, 桜井 浩, 三富 明夫, 今井 昭一
    1981 年 77 巻 4 号 p. 435-445
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたβ遮断薬である labetalol は従来のβ遮断薬と異なりα遮断作用も兼ね備えた新しいタイプの薬物である.われわれは Iabetalol の降圧作用につき,三つの高血圧モデル(高血圧自然発症ラット(SHR),DOCA 高血圧ラットおよび,一側腎動脈 clipping による腎性高血圧ラット(RHR)を用いて検討した.ラットは無麻酔下に4分間予熱し,尾容積法にて非観血的に血圧を測定した.また,血圧の脈波より心拍数も測定した.SHR;labetalol 25,50,100mg/kg を高血圧発症前(5週令目)より1日1回経口投与したところ,非投与群に比し,心拍数は投与日より減少を示した.血圧上昇も投与1.5週目頃より抑制きれ従来われわれのところで実験した他のβ遮断薬に比し,抑制の発現がやや早い傾向を示した.DOCA 高血圧ラット:labetalol 10,30,100mg/kg を経口投与したところ,10mg/kg では降圧作用の傾向が1時間目よりみられた.血圧は5時間でもとのレベルに戻った.一方,30,100mg/kg では5時間以上の著明な降圧作用がみられ,24時間でほぼ元のレベルに戻った.そこで,同じ量を1日1回1週間にわたって連日経口投与したところ投与1時間后には確実に血圧下降が認められた.一方,心拍数は持続的に減少し,24時間後にもなお持続していた.そのため連日経口投与の実験では,2回目投与以降の心拍数減少は初回程著明でなかった.RHR:labetalol 10,30,100mg/kg の1日1回の経口投与により降圧の傾向と心拍数減少作用が認められた.血圧は24時間でほぼ元のレベルに回復したが,心拍数減少は24時間後でもなお持続していた.6日間の連日投与実験では,10,30mg/kg では有意な降圧作用をみとめる事ができなかったが,100mg/kg では有意な降圧効果をみとめた.心拍数の減少も薬物投与1時間後に毎回認められたが,100mg/kg ではその作用が翌日まで有意に持続しているため2回目以降の投与では1時間後の心拍数減少作用はごく僅かしか認められなかった.これらの結果から labetalol がこれら全ての病態モデルにおいて降圧作用を示すことが明らかとなった.これまでわれわれの教室で検討してきたいくつかのβ遮断薬では SHR 以外では降圧作用は認められていないから labetalol のこの作用にはβ遮断作用の他にα遮断作用も関与しているものと考えられ,新しい降圧薬となる可能性が示唆された.
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