日本薬理学雑誌
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81 巻, 2 号
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  • 原田 伸雄
    1983 年 81 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ツツジ科植物アセビの有毒成分であるasebotoxin III(ATX-III)2~8μgをモルモットの側脳室内に投与すると,出血性肺水腫が起こり死亡する.その出血性肺水腫の機序を検討した.剖検上,肺に著しい出血がみられるが,他の臓器にはみられず,むしろ虚血性であった.この肺出血による致死は,phentoloamine mesylate 1mg/kg i.v. 前投与によって完全に抑制されたが,chlorpromazine hydrochloride 10mg/kg i.v.,guanethidine sulfate 20mg/kg i. v.,reserpine 5mg/kg i.m.,hexamethonium bromide 5mg/kg i.v. 前投与では有意に死に至るまでの時間を延長した.urcthane麻酔下のモルモットの側脳室にATX-IIIを投与すると全身血圧は2峰性の昇圧反応を示し,胸部レントゲン像および胸部インピーダンスプレチスモグラムにより第2峰の頂点に出血がおこることが明らかになった。心電図の所見で第2峰の昇圧反応の極を中心に不整脈が現われ,その後,出血性肺水腫の発現に伴うST,Tの下降が著明に観察された.この2峰性の昇圧反応における第2峰は,6-hydroxydopamine前処置で発現が遅延し,抑制された.また,ATX-IIIの脳室内投与後に視床下部より誘導した脳波は,投与前に較べて著しく高頻度化,低振幅化が,次いで棘波の群発が観察された,以上により,ATX-III側脳室内投与によって生ずる肺出血の機序を次のように推定する.すなわち,側脳室に投与されたATX-IIIが視床下部に拡散して視床下部の交感神経性反応のニューロンを脱分極せしめ,交感神経の急激な発射を引きおこす.その結果,カテコールアミンの放出による血管収縮とそれに伴う血圧上昇が起こる.さらに血圧に対する血管抵抗の差から,体部循環系から肺循環系へ血液の移動が生じ,肺胞上皮の毛細血管圧の著しい上昇となる.これらを経て肺水腫を生じ,血管が損傷して出血がおこるものと思われる.
  • 福田 英臣, 後藤 正義, 近藤 満, 内ケ崎 哲, 関野 裕子
    1983 年 81 巻 2 号 p. 115-126
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    Iorcainideの抗不整脈作用をイヌの梗塞性不整脈,モルモットのouabain誘発不整脈,aconitine誘発不整脈およびacetylcholine誘発不i整脈を用いて調べた.イヌにおける冠血管結紮による梗塞性不整脈において,lorcainideおよび対照薬として使用したdisopyramideはほぼ同等の抗不整脈作用を示した.モルモットにおけるouabain誘発不整脈では,lorcalnideの作用はdisopyramideより弱かった.また,aconitineによる心停止に至るまでの各種の不整脈に対しlorcainideとdisopyramideは弱い抑制を示した.しかし,心停止を起こすaconitine量には影響を与えなかった.モルモットの右心耳上にacetylcholhleを塗布するときP波の消失とR-R間隔の延長が発現した.disopyramideはこれらの不整脈を抑制したが,lorcainidcは影響をおよぼさなかった.しかし,両薬物ともにacetylcholineの塗布によっておこる心房細動は抑制した.なお,Iorcainideとdlsopyramideおのおのの大量投与ではモルモットに不整脈の発現をみた.
  • 鈴木 崇彦, 木皿 憲佐, 小野寺 憲治, 小倉 保己
    1983 年 81 巻 2 号 p. 127-134
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    1%phenolの皮下投与により,マウスに誘発される振戦に対するコリン作動性神経系の関与について,薬理学的に検討した.cholinesterase阻害薬のうち,physostigmine腹腔内投与では,振戦に対してほとんど影響しなかった.しかし,neostigmine腹腔内投与では,振戦発現までの時間が短縮し,かつ振戦の強きが増加した.一方,muscarinic receptorに対する作用の強い,methacholine,atropine,methylatropineおよびscopolamincは,いずれも振戦に対して著明な影響は与えなかった.他方,nicotineおよびcarbacholの脳室内投与は,振戦発現までの時聞を延長し,nicotineはさらに,腹腔内投与および脳室内投与において,軽度の振戦抑制を示した.これに対して,mecamylamineの腹腔内投与および脳室内投与は,用量依存的に振戦を増強し,hexamethonium脳室内投与によっても振戦は著明に増強された.以上の結果から,phenol振戦に対して,末梢でのacetylcholine量の増加は,振戦の増強をもたらす基調を形成し,中枢では逆に,末梢運動系の興奮に対してnegative feedback制御を行っている可能性が示唆され,また,これに関与するのは,主に中枢性nicotinic receptor systemであると考えられる.
  • 吉村 裕之, 小川 暢也
    1983 年 81 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    闘争が敵対動物の特性と密接な関係を有することに着目し,攻撃側あるいは被攻撃側の動物にethylalcohol(0.5,1.0,2.0g/kg,p.o.)を処置した場合,闘争場面における攻撃と逃走の行動様式が如何に変容するかを検討した.実験には,動物習性学の観点から考案され,比較的自然に近い状態で高頻度に同種内闘争を惹起できるresident-intruder paradigmを用いた.ethylalcoholを攻撃側の居住マウスに投与した場合,二相性の作用が発現し,0.5~1.0g/kgの用量ではsideways postureやattack bitingなどの攻撃行動が増加したが,2.0g/kgでは蒸留水投与の対照と差異がないか,むしろ,抑制傾向が認められた.一方,被攻撃側の侵入マウスにethylalcoholを投与すると,防御行動のupright postureが減少し,無処置居住マウスによるattack bitingは用量依存的に増加した.ethylalcoholの各用量は,居住マウスおよび侵入マウスいずれのlocomotor activityにも有意な影響を与えなかった.本実験で設定した闘争場面には,他集団からの侵入者を居住区域から排除しようとする動因と先住者の縄張りから逃走しようとする動因が存在する.換言すれば,侵入者に対する敵意と攻撃を含めた環境の新奇性に対する不安が行動に表出されている.ethylalcoholは,これら2つの動因に薬理学的効果を有し,行動変容を惹起するものと考えられる.
  • 木村 文男, 深沢 晶子, 齊藤 文子, 庄内 香代, 竹内 節弥
    1983 年 81 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    先に報告されたラットの生体内膵分離灌流標本を用いて,noradrenalineおよびisoproterenolのinsulin分泌におよぼす影響を検討した.noradrenaline: 標準灌流液(0.1%glucose含有)灌流下,1μg/0.1mlを膵灌流液中に投与したが,insulin分泌反応は一定の傾向を示さなかった.高濃度のglucose(0.2~0.3%)を含有する灌流液(以下,高糖灌流液と略す)灌流下では,insulin分泌は低下した.高糖灌流液灌流下でのnoradrenalineのinsulin分泌低下作用は,phentolamine(10μg/ml,灌流液中添加)前処置により逆転され,propranolol(10μg/ml,灌流液中添加)前処置により有意(P<0.05)に増強された.isoproterenol: 標準灌流液灌流下,1μg/0.1mlを灌流液中に投与したが,isoproterenol投与前後のinsulin分泌量に変化はみられなかった.高糖灌流液灌流下では,insulin分泌は促進された.高糖灌流液灌流下でのisoproterenolのinsulin分泌促進作用は,phentolamineおよびpropranolol前処置で有意(P<0.01)に増強された.atropine(100μg/ml,灌流液中添加)の前処置は,isoproterenolのinsulin分泌促進作用に無影響であった.以上のように,noradrenalineおよびisoproterenolがinsulin分泌に対して相反する2様の作用を有しているということは,insulin分泌の抑制はα-受容体を介して,またinsulin分泌の促進はβ-受容体を介して惹起されるという在来の模式によっては解決されない.そこには膵「ラ」氏島内のB,D細胞のそれぞれにadrenergic α-およびβ-受容体の存在,およびその生理的役割についてのいくつかの可能性が示唆された.
  • 笠間 俊男, 藤井 祐一, 会田 陽子, 黛 清, 黛 洋子, 後藤 真千子, 五味田 裕, 森山 峰博, 市丸 保幸
    1983 年 81 巻 2 号 p. 149-165
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    マウス,ラットを使用し,bromazepamの直腸内投与の有効性を経口投与の薬理作用と比較検討した.1)thiopental-Na,ether,ethanolにょる睡眠に対し,直腸内投与および経口投与により,用量に依存した睡眠増強作用を示した.2)鎮痛作用は,hot-plate法,algolytic法にて検討したが,両実験法ともbromazepamのED50値は直腸内投与の方が低値を示した.またhot-plate法では,両投与法ともmorphine,pentazocineの鎮痛作用を増強した.3)筋弛緩作用では,rotarod法,inclined screen法ともbromazepamのED50値は,薩腸内投与が経口投与に比べ約1/2の値を示すと共に,作用時間が明らかに長かった.4)抗最大電撃けいれん,抗pentylenetetrazolけいれん,抗picrotoxinけいれん作用を見ると,bromazepamのED50値は両投与聞に著しい差はなかった.5)嗅球摘出ラットでのhyper-emotionalityとmuricideに対する作用は,両投与間に著しい差はなかったが,有意に抑制した.またbromazepamの作用は,diazepamに比較してかなり強い作用であった.6)脳自己刺激行動に対し,bromazepamの直腸内投与において,0.2mg/kgで有意にレバー押しの増加を示し,高用量では抑制した.一方経口投与ではレバー押しの有意な増加はなかった.7)methamphetamineによるhyperactivityに対し,bromazepam 5mg/kgの直腸内投与のみが有意に抑制した.一方自発運動に対し,bromazepam 0.5mg/kg直腸内投与で抑制した.8)体温下降作用は両投与間に著しい差はなかった.以上の結果,bromazepamの直腸内投与は経口投与と比較すると,特に鎮痛作用,筋弛緩作用が強くかつ,作用時間も長く,臨床的に有効な投与法である事が示唆された.
  • 府川 和永, 三崎 則幸, 河野 修, 内田 勝幸, 大林 繁夫, 入野 理
    1983 年 81 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ラット酢酸潰瘍の治癒過程を内視鏡で経日的に観察し,以下の成績を得た.1)潰瘍の大きさは注射した酢酸の濃度・容量に依存した.2)胃底腺・幽門腺境界部潰瘍と胃底腺大彎部潰瘍の潰瘍縮小速度・治癒率は著しく異なり,胃底腺大彎部潰瘍の治癒経過の方が有意に速かった.3)7週令と25週令ラットの治癒経過に大きな差は認められなかった.4)潰瘍縮小速度は雄に比べ雌の方が速い傾向を示した.5)aldioxa(ALD),sucralfate(SUC)の投与による潰瘍縮小速度は対照群に比べ有意に速かった.しかし,cimetidine(GIM)は対照群との間に差を認めなかった.6)ALDとSUCの併用およびALDとCIMの併用では20日目で対照群より有意に小さいulcer index(UI)を示した.それぞれ単独投与では50日目以後で対照群との間に有意差が認められるのに比べ,併用投与では著しく潰瘍縮小期間が短縮きれた.とくに,ALDとSUCの併用では治癒率が著しく高く,治癒促進作用が認められた.7)潰瘍作製後日数(x)とUI値(y)とを対数にとると両者は直線性を示し,log y=a log x + bの式で表わすことが出来た.この式で勾配aは潰瘍の縮小速度を表わす指数として用いられることがわかった.
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