日本薬理学雑誌
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84 巻, 2 号
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  • 450191-Sと他の中枢作用薬との相互作用に関する行動薬理学的研究
    伊比井 信廣, 堀内 裕一, 山本 研一
    1984 年 84 巻 2 号 p. 155-173
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    マウスを用い,新しい睡眠導入剤450191-Sと臨床的に併用が予想される代表的な薬物haloperidol,imipramine,phenytoin,morphineまたはaminopyrineとの相互作用を行動薬理学的に検討し,nitrazepam,estazolamおよびtriazolamと比較を行なった.450191-Sおよびnitrazepamの抗pentetrazol痙攣作用の効力はaminopyrineとの併用によって著明に減弱し,一方estazolamの効力はphenytoinとの併用によって著明に増強された.さらに,nitrazepamの場合はaminopyrine以外の薬物との併用によって,またestazolamの場合はhaloperidolとの併用によって,作用パターンが変化することが示唆された.しかし,triazolamの抗pentetrazol作用は他剤によって何ら影響を受けなかった.haloperidolの抗apomorphine作用(climbing行動抑制作用)の効力はnitrazepamとの併用によって有意に減弱し,またhaloperidolの作用パターンはestazolamあるいは450191-Sとの併用によって変化することが示唆された.しかし,triazolamはhaloperidolの作用に何ら影響を及ぼさなかった.imipramineのreserpine低体温拮抗作用はnitrazepamによってほとんど影響を受けなかったが,450191-S,estazolalnおよびtriazolamによって軽度に減弱された.phenytoinの抗最大電撃痙攣作用の効力は450191-Sおよびtriazolamによって有意に減弱され,またnitrazepamはphenytoinの作用パターンを変えた.しかし,estazolamはphenytoinの作用に有意な影響を及ぼさなかった.morphineおよびaminopyrineの鎮痛作用の双方あるいは何れか一方は,estazolam,triazolamおよびnitrazepamによって有意に増強されたが,450191-Sによっては何れも影響を受けなかった.以上の成績から,450191-Sの抗pentetrazol痙攣作用は,その強さおよび安定性において,triazolamより劣るが,nitrazepamおよびestazoiamよりは優れていること,また450191-Sはmorphineおよびaminopyrineの何れの鎮痛作用に対しても増強作用を示さないことで,他の睡眠導入剤とは区別され得ることが示唆された.
  • 山本 研一, 上田 元彦, 黒沢 淳, 広瀬 勝己, 堤内 正美, 中村 益久, 尾崎 幸男, 松村 彰一, 松田 三郎, 佐藤 初夫, 宮 ...
    1984 年 84 巻 2 号 p. 175-212
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    1H-1,2,4-triazolyl benzophenone誘導体45019LSの一般薬理作用をマウス,ラット,モルモット,ウサギ,ネコおよびイヌを用いて検討した.450191-Sはウサギの体温に対して軽度の下降作用を示しその強度は450191-S>triazolam>nitrazepamの順であった.麻酔ネコの呼吸運動に対する450191-Sの抑制作用は,diazepamおよびtriazolamより有意に弱く,無麻酔イヌでは対照薬と同様に呼吸数と心拍数は増加した。450191-Sは麻酔ネコと無麻酔イヌの血圧および心電図には影響をおよぼさなかった.450191-Sおよび対照薬はモルモットの摘出心臓において冠状血管拡張作用と軽度の心運動抑制作用を示したがその作用強度はdiazepam>nitrazepam>450191-Sの順であった.450191-Sは自律神経系の機能を反映する各種パラメーターに対して影響をおよぼさず,またウサギ摘出回腸の自動運動やモルモット摘出回腸における各種拘縮薬の作用に影響をおよぼさなかった.450191-Sはラット摘出非妊娠・妊娠両子宮の自動運動を僅かに抑制したが,生体位子宮の自動運動に対しては非妊娠子宮においてのみ弱い抑制作用が認められたにすぎない.これらの平滑筋臓器に対する450191-Sの作用はすべてdiazepamやnitrazepamよりも弱かった.450191-S 25mg/kg以下の投与では食塩負荷ラットの尿量と電解質の尿中排泄に影響をおよぼさなかった.450191-Sはラットとマウス脳のNE,DA,5HT含量に影響をおよぼさなかったが,ラットではNE代謝回転を,マウスではNEおよびDA代謝回転を抑制した.これらの作用はnitrazcpamより弱かった.各薬物の大量投与時のみnitrazepam>diazepam>estazolam>450191-Sの順位で,鎮痛作用が認められた.ウサギ眼粘膜に対する450191-Sの一次刺激性はminimally irritatingでnitrazepamやestazolamよりわずかに強かったが,胃腸粘膜に対する刺激性は認められなかった.以上の試験項目において450191-Sの作用強度は,その血中活性代謝物M-1,M-2またはM-3のそれよりも弱く,特に麻酔ネコの呼吸運動に対する抑制作用は450191-Sが明らかに弱かった.
  • 田中 真, 小島 浩, 明石 章
    1984 年 84 巻 2 号 p. 213-219
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    gallamine非動化,人工呼吸下のネコを用いて,timiperoneの脳波に対する作用を対照薬として用いたkaloperidolのそれと比較検討し以下の成績を得た.1)坐骨神経,中脳網様体および視床下部後部の電気刺激による脳波覚醒反応はいずれもtimiperone(1mg/kg,i.v.)によって抑制された。それらの抑制パターンとしては,坐骨神経刺激による脳波賦活閾値の上昇に比較して中脳網様体刺激によるそれは軽度であった.また,視床下部後部刺激による覚醒反応におけるtimiperoneの抑制効果は大膨皮質系脳波についてのみ認められ,辺縁系脳波活動には影響がなく,新皮質と辺縁系の脳波活動に対する作用の解離が観察された.一方,haloperidol(1mg/kg.i.v.)によっても坐骨神経および中脳網様体刺激による脳波覚醒反応に対してtimiperoneと同様の抑制パターンが認められた.また,視床下部後部刺激による覚醒反応に対しても同様の抑制作用を示した.2)視床正中中心核の刺激による漸増反応および視床後腹側核の刺激による増強反応に対して,timiperoneおよびhaloperidolの1mg/kg(i.v.)はいずれも影響を及ぼさなかった.3)尾状核の単一電気刺激により誘発されるcaudatespindleに対してtimiperone(0.3mg/kg,i.v.)は誘発を有意に増強させたがhaloperidol(0.3mg/kg.i.v.)はその誘発を増強させる傾向にとどまった.以上の成績から,timiperoneの自発脳波活動の同期化作用には,haloperidolと同様に,軽度ではあるが上行性網様体賦活系の抑制が関与することが推察され,また,意識水準ならびに睡眠,覚醒周期に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 吉村 裕之, 小川 暢也
    1984 年 84 巻 2 号 p. 221-228
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    雌雄マウスを同居飼育し生活居住域を確立させると,雄居住マウスは他集団に属する雄マウスが侵入した場合,激しい攻撃性を示す.この居住者と侵入者間の闘争には,みずからの縄張りを守るため侵入者を居住区域から排除しようとする動因(敵意)と居住者のそれから逃れようとする動因(不安)が存在する.本実験は,向精神薬を攻撃側あるいは被攻撃側の動物に投与した場合,闘争場面での行動様式の変容を検討するために企てられた.薬物は,chlordiazepoxide(5,10,20mg/kg,i.p.),haloperidol(0.25,0.50,0.75mg/kg,i.p.),imipramine(5,10,20mg/kg,i.p.)および対照として0.9%生理食塩水を用いた.chlordiazepoxideを攻撃側の居住マウスに投与すると,sideways posture,attack bite,tail rattleなどの攻撃行動は用量依存的に抑制されたが,一方,被攻撃側の侵入マウスに投与した場合は,居住マウスのattack biteの発現頻度は有意に増加し,逆に,侵入マウスのupright postureは減少していた.haloperidolあるいはimipramineを居住マウスに投与すると,攻撃行動は用量依存的に抑制された.しかし,haloperidolの場合は,各用量ともにlocomotionを有意に抑制した.また,両薬物を侵入マウスに投与しても,居住マウスの攻撃行動に有意な影響は認められなかった.これらの実験成績から,向精神薬のうち抗不安薬であるchlordiazepoxideのみが抗うつ薬や抗精神病薬と異なった挙動を示すことが明らかとなった。chlordiazepoxideは,敵意と不安の二つの動因に薬理学的効果を有し,闘争場面での行動様式を変容させるものと考えられる.このように,闘争場面における二者間の相互関係に注目したアプローチは,向精神薬の効果を検討する方法論として有用と思われる.
  • 渡辺 敏樹, 松橋 邦夫, 高山 敏, 森田 遙
    1984 年 84 巻 2 号 p. 229-241
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    妊娠20日のラット母体静脈内または踏帯および胎盤循環を維持した胎仔の腹腔内に自律神経作用薬を投与し,主としてその胎仔の心拍数の変化から,胎生期における心臓の交感神経系の機能的発達について検討した.その結果,isoproterenol,epinephrine,norepinephrine,tyramineおよびdopamineの胎仔投与は胎仔心拍数を増加させ,一方propranololおよびmethacholineは胎仔心拍数を減少させた.このisoproterenolによる胎仔頻脈およびmethacholineによる胎仔徐脈が,それぞれpropranololおよびatropineの胎仔前投与によって阻止された事から,心臓β-アドレナリンおよびムスカリン性コリン受容体が胎生期に機能的に存在することが明らかになった.またpropranololを胎仔に前処置してepinephrineを投与すると胎仔に徐脈および低酸素症が惹起されたが,これらの作用は断頭仔,hexame-thoniumおよびatropineによって阻止できなかったが,phentolamineおよびyohimbineなどのα-アドレナリン受容体遮断薬によって阻止されたことから,胎生期にα-アドレナリソ受容体も機能的に存在することが明らかとなった.一方epinephrine,norepinephrineおよびmethacholineの母体投与時にみられた胎仔徐脈は,母体の循環器系の変化に基づく間接的影響によることが示唆された.tyramineの心拍数増加作用よりラット胎仔心臓の交感神経終末の機能的成熟をみたところ,胎仔心拍数は妊娠20および19日目ではtyramineの投与によって有意に増加したが,18日目では有意でなかった.このことから,ラット心臓交感神経終末とシナップス後部受容体との機能的な神経支配が妊娠18~19日目に形成されることが明らかとなった.
  • 樋口 昭平, 長田 祐子, 塩入 陽子, 田中 伸子, 小友 進, 相原 弘和
    1984 年 84 巻 2 号 p. 243-249
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    0.5% Mycobacterium tuberculosis 0.1mlをラット後肢足臆に皮下注射すると急性炎症に伴って炎症足の疹痛閾値が低下し,動物は炎症足を床から離し,三足歩行(以下,破行と略)を示した.この炎症足破行反応に対し,酸性非ステ目イド系抗炎症薬(ANSAID)はpmstaglandins生合成阻害作用の強さに相関した抑制作用を示したが,prostaglandins生合成阻害作用がないかあるいは弱い塩基性非ステロイド系抗炎症薬(BNSAID)の作用は弱いものであった.炎症部位へのprostaglandin E2,1μg/siteの注射により,ANSAIDの作用は消失したがBNSAIDの作用は消失しなかった.bradykinin,5μg/siteの注射では,いずれのタイプの抗炎症薬も作用が消失しなかった.adjuvant急性足浮腫ラットにおいて炎症足肢行反応を指標とした方が,炎症部位への加圧によるstraggling,escapeおよびvocalization反応を指標とするよりも著しく低用量でANSAIDの鎮痛作用を検出でき,このことはyeast足浮腫および硝酸銀関節炎ラットでも同様で,それぞれ加圧および屈曲・伸展刺激によるよりも破行反応を指標とした方が低用量で薬物の作用を検出できた.morphlne,pentazocineおよびacetaminophenも肢行反応を抑制し,これらの作用は炎症部位へのprostaglandin E2の注射で消失しなかった.diazepam,mephenesin,cyprohcptadineおよびimmipramincは破行反応を抑制しなかったが,haloperidolとatropineが抑制した.以上のことは,炎症性疼痛においてはprostaglandinsが重要な役割を果たしており,ANSAIDは炎症部位でprostaglandins生合成を阻害して鎮痛作用を発揮し,BNSAIDは主に中枢神経系に作用して鎮痛作用を発揮するという従来の考えを支持しており,炎症足破行反応を指標とした本法は,抗炎症薬の炎症性疼痛緩解作用を評価する方法として有用と考えられる.
  • 武田 弘志, 下山 潔, 三澤 美和, 柳浦 才三, 山崎 光雄, 久保 信治
    1984 年 84 巻 2 号 p. 251-257
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    brovanexine(BvX)およびBR-227の去疾効果を検索する目的で,これら両薬物の連続経口適用時の気管腺に含有される酸性糖蛋白(AGP)の動態を含めた分泌活性に及ぼす影響について,bromhexine(BH)と比較検討を行った.実験には,Wistar系雄性ラット(体重152~160g)を用いた.BvXとBR-227の10,20mg/kgならびにBHの10mg/kgを1日1回,1,3,7および14日間連続経口適用した.最終適用後,pentobarbital-Na麻酔下で,潟血致死し,気管を摘出して,光顕用組織標本を作製した・気管腺の活性は,先に報告した組織学的/組織化学的指標に従い計量的に解析した.BvX,BR-227およびBH適用群に於いて,気管腺腺房外径は大きな変化が生じなかったが,腺房内径(AI)は,適用第1日目から増加傾向を示し,3日間以上の適用では,著明な増加が認められた.気管粘膜固有層の厚さに対するAIの比率(AIWR)は,BvXおよびBR-227の20mg/kg適用群で,適用第1日目より,また,10mg/kg適用群では,3日間適用から増加が生じた.一方,BH適用群に於いては,1,3日間適用でcontrol群との間に差は見られず,7および14日間適用で増加が認められた.また,alcian blue-periodic acid染色で青の色調を示すAGP高含有腺房細胞数は,各薬物の適用第1日目から減少を生じ,これら薬物の7および14日間適用では,alcian blue染色陰性の細胞も出現した.これらの組織化学的変化は,各薬物間に於いて,発現時期および作用強度に差が認められなかった.以上の結果より,BvXおよびBR-227の連続経口適用は,気管腺の分泌活性を充進すると共に,腺房細胞に含有されるAGPに対して溶解作用を示すことが明らかとなった.そして,これら両薬物は,気管腺分泌亢進作用に比較して,粘液溶解作用をより惹起しやすいことが示唆された.
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