日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
100 巻, 5 号
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  • 山口 明夫, 五井 孝憲, 北島 政樹
    2003 年 100 巻 5 号 p. 533-539
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    癌転移形成における分子機構が明らかになるにつれて, その過程で関与する多くの分子に注目が集まっている. 特に運動能に関与する低分子量G蛋白質, 主に基底膜破壊に作用するmatrix metalloproteinase, 細胞間や血管内皮との接着を担ういくつかの接着分子および血管新生因子は転移形成に果たす役割が大きく, それらを分子標的とした転移抑制に関するtranslational researchも多くみられるようになった. これらに関する最近の知見を紹介するとともに, 転移制御に向けた臨床応用の現況を概説する.
  • 胃MALTリンパ腫の病理
    冨田 茂樹, 小野 祐子, 藤盛 孝博
    2003 年 100 巻 5 号 p. 540-545
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    胃MALTリンパ腫は, marginal zone B-cellを起源とする悪性リンパ腫である, Helicobacter pylori除菌療法によって改善することが報告され, 比較的予後良好な腫瘍として認識されている. 胃MALTリンパ腫に対する除菌の試みについては異論のないところであるが, 最近の研究成果から, 予後に関する諸因子が明らかになり, それにともなって治療法の選択も考慮されつつある. 本稿では, 内視鏡下で生検される微小な胃生検組織に対する, 的確な臨床病理学的診断の必要性もさることながら, MALTリンパ腫における免疫組織学的解釈や分子生物学的検索の重要性について強調した.
  • 胃MALTリンパ腫
    千葉 勉
    2003 年 100 巻 5 号 p. 546-554
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    胃MALTリンパ腫はExtranodal marginal zone B cell lymphoma(Low-grade B cell lymphoma of MALT type)に分類される,かなり分化したBリンパ球の腫瘍である. 本腫瘍は抗原刺激に反応性のT細胞のヘルプによって,あるB細胞クローンが増殖したものであり,胃MALTリンパ腫の場合,抗原刺激の大半はH.pylori感染である. H.pylori感染によるMALTリンパ腫の多くは,その除菌によって治癒する. しかしH.pylori陰性でも除菌療法が奏効する例があるため,胃MALTリンパ腫はH.pylori感染の有無にかかわらず一度は除菌療法を試みるべきである. またhigh grade成分をともなった例はMALTリンパ腫に分類されなくなったが,完全なDiffuse large lymphoma(DLBL)でない限り, H.pylori陽性なら一度は除菌を試みることが推奨される. 一方H.pylori陰性の胃MALTリンパ腫の多くにAPl2-MALT1キメラ遺伝子が証明されるが,本遺伝子陽性例ではH.pylori除菌は無効である. しかし一方本遺伝子はDLBLでは陰性で,またhigh grade成分のある例でもほとんど陰性のため,予後良好のマーカーでもあり得るかも知れない.
  • 木山 輝郎, 田尻 孝, 吉行 俊郎, 水谷 崇, 奥田 武志, 藤田 逸郎, 増田 剛太郎, 加藤 俊二, 松倉 則夫, 徳永 昭
    2003 年 100 巻 5 号 p. 555-561
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    目的;胃切除患者に対するクリニカルパス(パス)の費用分析を行う. 研究方法;2001年に当院で胃切除術を行った76例(パス群44例,対照32例)を対象とした. パスは同一の指示書を用いた. 費用は診療報酬明細書を集計した. 分析は直接的医療費の支払い者の立場から行った. 結果;在院日数はパス群で27.1±5.9日で,対照よりも8.3日減少した(p<0.001). 費用はパス群で145,290±23,773点であり,対照よりも19,278点減少した(p<0.005). 1病床当たりの手術はパス群で30%,費用は15%増加した. 結語;パスにより在院日数と費用が減少し,病床が有効利用された.
  • 山根 建樹, 大村 光浩, 中村 眞, 櫻井 俊之, 佐藤 泰弘, 小井戸 薫雄, 新谷 稔, 藤瀬 清隆, 荒川 廣志, 小林 正之, 戸 ...
    2003 年 100 巻 5 号 p. 562-566
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 男性, 嚥下時不快感のため施行された内視鏡検査で頸部食道に小豆大で白苔をともなう発赤調の表面がやや凹凸不整な亜有茎性ポリープがみられ, 生検にて上皮下に毛細血管の増生が認められた. 1カ月後のポリペクトミー施行時には増大, 分葉し白苔は縮小, 有茎性となっていた. 摘出標本で組織学的にびらん性の上皮下に浮腫状の間質と炎症細胞浸潤をともなう毛細血管の著明な増殖が認められpyogenic granulomaと診断された.
  • 池端 敦, 山川 暢, 北川 正基, 藤原 隆雄, 三浦 達也, 小野 満, 村上 晶彦, 小野 貞英, 佐熊 勉
    2003 年 100 巻 5 号 p. 567-571
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は19歳女性. 潰瘍性大腸炎の再燃に対して1カ月間のステロイド強力静注療法が無効なため, 当科に紹介入院となった, ステロイドを漸減しながら低用量ヘパリンと5アミノサリチル酸の併用療法を6週間施行した. 治療開始後は症状の増悪や合併症をみとめることなく経過し, 臨床的, 内視鏡的, 組織学的な緩解が得られた. 本治療法はステロイド抵抗性の難治例に対して有効な方法と考えられる.
  • 岸本 美也子, 北垣 一成, 三條 みどり, 佐竹 信哉, 本迫 洋一郎, 安藤 章文, 中田 吉彦, 村尾 真一, 廣田 誠一
    2003 年 100 巻 5 号 p. 572-577
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性, 発熱と左腹部腫瘤を認めた. 小腸内視鏡検査にて空腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)と術前診断した. 摘出腫瘍標本の免疫染色ではCD34, S100蛋白およびdesmin陰性, α-SMA―部陽性,c-kitおよびvimentin陽性であり, またc-kit遺伝子には突然変異もみられた. 腫瘍径が大きく, 核分裂像著増, 肝転移をともなっていたことから, 悪性のGISTと考えられた.
  • 高梨 訓博, 高柳 典弘, 西堀 佳樹, 藤井 重之, 堀本 正禎, 小野寺 義光, 村瀬 和幸, 古川 孝広, 長岡 康裕, 新津 洋司郎
    2003 年 100 巻 5 号 p. 578-582
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性. 平成10年11月直腸癌, 肝転移(S2)に対しMiles手術および肝動脈力ニュレーションを施行した. その後, 外来にて動注化学療法を持続していたところ, 平成12年の上部消化管内視鏡検査で動注用力テーテルの十二指腸球部への逸脱を認めた. その機序としては, カテーテルによる十二指腸壁の外側からの圧排, 穿破が推測された, 今後, 動注症例の増加と予後の改善による経過の長期化にともない, 同様な症例を経験することが多くなると予想され, 報告した.
  • 関川 修司, 長尾 泰孝, 辰巳 菜津子, 大西 直樹, 小林 紀明, 原田 義規, 前田 利郎, 丸山 恭平, 岡上 武
    2003 年 100 巻 5 号 p. 583-586
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は, 17歳, 女性. 黄疸と全身倦怠感を主訴に受診した. 肝胆道系酵素の著明な上昇を認めたが, 各種肝炎ウイルスマーカー, 抗核抗体などはすべて陰性であった. 梅毒血清反応強陽性で, 扁桃梅毒, 足底にバラ疹を認め, 二期梅毒と診断した. 早期梅毒性肝炎を疑い, amoxicillin(AMPC)内服を開始後, 肝機能検査値, 黄疸, 梅毒症状は速やかに改善した. 肝生検所見も早期梅毒性肝炎に矛盾しないものであった. 早期梅毒性肝炎で黄疸の出現する例は少なく, 若干の考察を加え報告する.
  • 加藤 貴司, 清野 康生, 高田 弘一, 丸谷 真守美, 大久保 俊一, 中村 英明, 井上 善之, 目黒 高志, 堀田 彰一, 押切 太郎 ...
    2003 年 100 巻 5 号 p. 587-592
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は80歳男性. 2000年9月より肝工キノコックス症と診断されていた. 翌年2月のCTにて肝S7,S8に石灰化をともなう嚢胞性病変を認め, さらにS8病変に接して15mm大の腫瘤を認めた. 9カ月後のCTで腫瘤は30mm大に増大した. 同腫瘤はCT-Aにて造影され, ダイナミックMRlでは早期相で造影効果を認めた. 以上より肝細胞癌の併発と診断し肝右葉切除術を施行した. 病理診断は肝工キノコックス症と高分化型肝細胞癌であった.
  • 川田 一仁, 竹平 安則, 岩泉 守哉, 和田 朋彦, 岩岡 泰志, 川村 素子, 室久 剛, 花島 一哲, 山田 正美, 北川 陸生, 池 ...
    2003 年 100 巻 5 号 p. 593-598
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性. 1997年に黄疸が出現, 各画像検査など行うも原因不明であったが自然軽快した. 2001年7月再度黄疸が出現, 腹部CT, ERCP, 胆汁細胞診より中下部胆管癌と診断, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 切除標本では中部胆管と乳頭部胆管に結節隆起を認めた. 病理組織標本にて胆嚢管内と乳頭部に乳頭状構造を示す腺癌が認められ,総胆管内は表層性に連続していた. 1997年のERCPでは胆嚢管内に欠損影が認められ,4 年の経過を追えた胆嚢管癌と考えられた.
  • 伊田 明充, 長島 郁雄, 稲葉 毅, 田中 文彦, 今村 哲夫, 沖永 功太
    2003 年 100 巻 5 号 p. 599-603
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 女性. 急性腹症にて緊急入院し, 同日救急手術を施行した. 開腹所見では, 脾膿瘍破裂による化膿性腹膜炎と診断し, 脾門部の線維性組織を含めた脾摘出術と, 腹腔内ドレナージ術を施行した. 病理組織学的には脾梗塞と, その一部の膿瘍形成の他に, 脾門部には萎縮した膵組織と, 粘液産生の強い管状腺癌の組織を認めた.しかし, 脾動脈の閉塞所見は認められなかった. 膿性腹水からはStreptococcus pneumoniaeが検出された. 以上から, 本症例は膵尾部癌の進展にともない, 脾梗塞から脾膿瘍の形成, さらにそれが破裂に至ったものと推察された.
  • 上川 健太郎, 多田 修治, 今村 治男, 廣田 和彦, 須古 博信, 神尾 多喜浩
    2003 年 100 巻 5 号 p. 604-609
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性. 上腹部正中の腫瘤を自覚し来院した. 腹部超音波検査にて腹壁に6.0×2.6cm大の楕円形の腫瘤を認めた. CT, MRIの所見より炎症性の腫瘤を第一に考え, 腫瘤摘出術を行った. 切除標本では腫瘤は6.3×2.8cmで被膜を持たず炎症性の肉芽腫を形成しており, 組織学的検査にて特徴的な菌塊(Druse)が認められ,放線菌症と診断した. 腹壁に腫瘤を形成した放線菌症は極めてまれであり, 画像所見と病理所見の対比を中心に報告する.
  • 野崎 みほ, 鈴木 剛, 高橋 秀和, 西村 秀司, 櫻林 眞, 吉野 克正, 平野 正憲, 河内 伸夫, 小川 真紀, 鈴木 恒道
    2003 年 100 巻 5 号 p. 610-612
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
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