日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
120 巻, 9 号
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今月のテーマ(総論):肝疾患とサルコペニア
  • 寺井 崇二, 上村 博輝
    2023 年 120 巻 9 号 p. 701-708
    発行日: 2023/09/10
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル 認証あり

    骨格筋は運動機能に関わる運動器としてだけでなく,さまざまなホルモン様の生理活性物質を分泌する内分泌臓器としての役割も果たしている.肝における代謝を考える場合に,臓器間ネットワークの視点から肝の代謝をとらえることはきわめて重要で,糖・脂質代謝には,肝,脂肪組織(内臓・皮下),筋肉(骨格筋)のネットワークのなかでとらえていく必要がある.2022年10月より日本肝臓学会の社会保険委員会にて肝臓リハビリテーションワーキンググループが作られ,その指針が2023年4月に公開された.サルコペニアにともなう,肝臓疾患における身体的・精神的影響を軽減させ,症状を調整し,生命予後を改善するため,今後この分野は肝臓分野のなかでも注視される領域である.

今月のテーマ(総説):肝疾患とサルコペニア
  • 清水 雅仁, 華井 竜徳, 三輪 貴生
    2023 年 120 巻 9 号 p. 709-716
    発行日: 2023/09/10
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル 認証あり

    サルコペニアは肝硬変の重篤な合併症であり,QOLの低下や予後と関連するため,適切な評価と対策が必要である.サルコペニアの予防および治療として,分岐鎖アミノ酸製剤を使用した栄養療法と運動療法が期待されているが,特に運動療法に関してはエビデンスの蓄積が期待される.「肝疾患におけるサルコペニア判定基準」(2021年に改訂第2版が公開),「肝硬変診療ガイドライン2020」(年次改訂あり),「高齢者肝硬変診療ガイドライン」は,サルコペニア合併肝硬変患者の診療において有用である.サルコペニア対策は「肝硬変のトータルマネージメント」の基本であり,その実践は患者のQOLや長期予後の改善につながる.

  • 徳本 良雄, 日浅 陽一
    2023 年 120 巻 9 号 p. 717-725
    発行日: 2023/09/10
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル 認証あり

    肝硬変の治療の基本は栄養療法である.わが国のガイドラインでは,低アルブミン血症,Child-Pugh分類B/C,サルコペニアを合併する肝硬変を積極的な栄養療法の対象としている.サルコペニアの発症抑制に就寝前捕食や分岐鎖アミノ酸製剤が有効であり,亜鉛,カルニチンなどを併用した栄養療法が肝疾患患者の予後改善に必要である.一方,わが国ではウイルス性肝硬変が減少し,アルコール性肝硬変,脂肪性肝疾患の増加が著しい.肝疾患の病態に直接的な傷害を引きおこすアルコールについて,早急な対策が必要とされている.近年発売された飲酒量低減薬を含めたアルコール対策を,有効に実施する必要がある.

  • 川口 巧, 松瀬 博夫
    2023 年 120 巻 9 号 p. 726-737
    発行日: 2023/09/10
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル 認証あり

    運動療法はさまざまな疾患の基本治療である.サルコペニアは脂肪肝の重要な要因であり,運動療法は脂肪肝の改善に有用である.また,サルコペニアは肝硬変や肝がん患者の予後や生活の質に関わる要因であり,運動療法によりサルコペニアや生活の質が改善することも報告されている.このように,肝疾患患者の診療においてサルコペニアの改善を目指したリハビリテーションは不可欠であり,2023年,日本肝臓学会は「肝臓リハビリテーション指針」を作成している.本稿では,脂肪肝,肝硬変および肝がん患者に対する運動療法について,日本からの報告を中心に概説する.また,実際に運動療法を行う際の注意点についても合わせて論述する.

  • 海道 利実
    2023 年 120 巻 9 号 p. 738-745
    発行日: 2023/09/10
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル 認証あり

    肝臓外科手術は,原発性肝癌や転移性肝癌などに対して施行される肝切除術と非代償性肝硬変や急性肝不全などに対して施行される肝移植に大別される.これら肝臓外科手術患者は一次性サルコペニアや二次性サルコペニアを有していることが多く,術前サルコペニアや筋肉の質低下,内臓脂肪肥満などの体組成異常は術後予後不良因子である.しかし,術前低骨格筋量症例であっても,周術期栄養療法により予後が改善し,肝移植患者でも術前リハビリテーション・栄養介入により筋力や身体活動が改善するため,サルコペニアや低栄養の是正をターゲットとした周術期リハビリテーション・栄養介入が肝臓外科手術成績向上のブレークスルーになると期待される.

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