日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
112 巻, 11 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総説
  • 安藤 朗
    2015 年 112 巻 11 号 p. 1939-1946
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル フリー
    ヒトは進化の段階で4つの門に属する細菌を選択し,腸内細菌として備えている.腸内細菌はヒトには備わっていない機能を通してヒトの生命維持に重要な役割をはたしている.われわれは,腸内細菌が食物繊維を分解して生じる短鎖脂肪酸(酢酸,プロピオン酸,酪酸)を利用してエネルギーホメオスタシスを維持している.一方,ヒトは腸内細菌と共生するために,複雑かつ巧妙に制御された免疫機構を発達させてきた.われわれのからだはヒトと細菌からなる超生命体と呼ばれるが,分子生物学的解析法の進歩によりヒトと腸内細菌の共生関係の詳細が明らかにされつつある.今回の特集に当たり,腸内細菌とその機能について概説する.
今月のテーマ:腸内細菌と消化器疾患
  • 南木 康作, 水野 慎大, 長沼 誠, 金井 隆典
    2015 年 112 巻 11 号 p. 1947-1955
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル フリー
    ヒトの腸管内には100兆個もの細菌が存在しており,腸内細菌叢を形成している.炎症性腸疾患(IBD)の詳細な病因はまだ解明されていないが,腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が病態に重要であると考えられている.メタゲノム解析やノトバイオート技術の革新により,IBD患者の腸内細菌叢でどのような役割の菌の増減があるか,という点や,個々の菌種がTh17細胞や制御性T細胞あるいはマクロファージなどの免疫担当細胞の挙動に影響を与えるメカニズムについても解明されつつある.さらに,腸内細菌叢をターゲットとしたIBDの治療法についても研究が進められている.
  • 福土 審
    2015 年 112 巻 11 号 p. 1956-1965
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル フリー
    過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)とは,腹痛・腹部不快感に代表される内臓知覚過敏と下痢,便秘,あるいは両者が混合した便通異常が持続する状態である.本稿においては,腸内細菌がどのようにIBSの発症,病態,診断,治療に関わるかを述べる.IBSにおける腸内細菌の役割は,感染性腸炎後の発症,感染性腸炎後IBSの遺伝子多型分析,ストレスによる細菌叢の変化,粘膜透過性亢進へと解明が進んでいる.また,IBSにおける腸内細菌異常増殖,腸内細菌の特徴とその産物の役割が検討されている.腸内細菌の役割は治療研究においても証明され,脳腸相関を介して生体を変化させる.IBSと腸内細菌の関係を証明する報告は増加しており,それがIBS診療に大いに役立つことが期待される.
  • 中島 淳, 本多 靖, 結束 貴臣, 小川 祐二, 今城 健人
    2015 年 112 巻 11 号 p. 1966-1972
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル フリー
    腸内細菌はNASH病態の1st-hitである単純性脂肪肝において,リポ蛋白リパーゼの活性化などを介して肝臓や脂肪組織に脂肪蓄積を増加させ,脂肪肝の形成に重要な役割を果たす.また,NASH病態の2nd-hitである肝炎の病態形成では腸内細菌は,1)腸内細菌の質的量的異常,2)腸管透過性亢進,3)肝臓におけるエンドトキシン応答性亢進,の3つの機序で重要な役割を果たすと考えられている.治療においては種々のプロバイオティクス,プレバイオティクスの投与が有効であることが臨床試験で示されている.今後はNASH病態に強く関与する腸内細菌の同定と治療への応用が求められている.
  • 長田 太郎, 石川 大, 渡辺 純夫
    2015 年 112 巻 11 号 p. 1973-1981
    発行日: 2015/11/05
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル フリー
    近年,糞便移植療法(FMT)がClostridium difficile感染症(CDI)に対し高い有効性を示す論文が相次いで報告されている.古くから糞便が病気を治すという概念は存在したが,FMTは再発性・難治性CDIでは投与経路にかかわらず高率に治癒させることが可能になっており,さまざまな疾患で臨床応用が期待されている.炎症性腸疾患や機能性胃腸症に関するFMT治療報告例は少ないが,2015年に潰瘍性大腸炎に対し2編のランダム化比較試験(RCT)が報告された.現時点ではCDIに比べ有効性は必ずしも高くないが,今後ドナーの選定や方法を改良することにより有効性が上昇すれば安全,安価な治療法として期待される.
症例報告
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