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金丸 龍之介, 鈴木 貴夫
1999 年 96 巻 2 号 p.
131-136
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
大腸癌発がんに関与する遺伝子群の中で胚細胞レベルの異常で家族性大腸腫瘍の原因遺伝子となっているものがあり,これらの遺伝子の異常を明らかにすることは,より多くの孤発大腸癌発生のメカニズムを知り分子病理学的診断を行う上で重要である.出芽酵母を遺伝子診断に用いて酵母内で標的遺伝子産物を生合成させ機能診断することで,がん発生に本質的に関わる癌関連遺伝子異常を見つけることが可能となっている.現在までに開発された
APCと
hMSH2に対するストップコドンアッセイ法,
p53や
hMLH1に対する機能診断法は,現在,少なくともスクリーニング法として,従来の遺伝子診断法に比して時間,コスト,労力のすべての面で有利であると考えられる.
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秋山 博, 赤尾 周一, 小島 誠人, 石川 宏
1999 年 96 巻 2 号 p.
137-141
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
目的; 胃切除後の残胃胃炎は胆汁の逆流が原因とされてきたが,
Helicobacter pylori(HP)の影響も無視できない.残胃のHPと胆汁酸を検索し,胃切除後の残胃胃炎への関与について検討した.方法: 胃切除Billroth I法再建後に内視鏡を施行した56例を対象として術前・術後のHP感染,残胃胃炎の程度,総胆汁酸濃度を検索し,関連を検討した.結果: 術後経過5年以上ではHPは5年以下に比して陽性率は減少していた.HP陽性群では陰性群に比してリンパ球主体の炎症細胞浸潤が強かった.HP陽性群の総胆汁酸濃度がHP陰性群に比べ低値であった.結論: 残胃胃炎は術後5年までは主にHPが起炎因子と考えられた.
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星田 有人, 池田 健次, 斎藤 聡, 小林 瑞, 小林 正宏, 鈴木 義之, 坪田 昭人, 鯉田 勲, 荒瀬 康司, 村島 直哉, 茶山 ...
1999 年 96 巻 2 号 p.
142-146
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
肝細胞癌の初回治療に肝動脈塞栓術を施行した421例のうち32~69歳の若年者群340例(男:女=266:74),高齢者群74例(男:女=44:30)を比較検討した.両群間で治療効果には有意差を認めなかった.各群の1年生存率はそれぞれ83.2%,79.7%,3年生存率は47.2%,36.5%,5年生存率は22.9%,14.5%であり有意差を認めなかった.多変量解析では前者で臨床病期III,腫瘍壊死率70%未満,肝癌進行度IIIおよびIV,中央値を超えるAFP値が,後者では中央値を超えるAFP値,肝癌進行度IIIおよびIV,共存疾患の存在が有意に生存期間に寄与する独立予後因子であった.高齢者群では重篤な共存疾患がなければ若年者群とほぼ同等な治療が可能であると考えられた.
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大渕 真男, 与芝 真, 関山 和彦, 本田 実, 滝沢 謙治, 内山 勝弘, 土合 克巳, 國安 芳夫
1999 年 96 巻 2 号 p.
147-153
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
急性肝炎重症型10例および劇症肝炎30例を対象に,肝臓と脾臓容積の経時的変化を比較検討した.生存例は26例中15例で肝容積は減少し,そのうち14例は脾容積も減少した.また,10例で肝容積は増加し,そのうち7例で脾容積も増加し,肝臓と脾臓の容積変化率との間に直線回帰で表される有意な相関が存在した(p<0.0001,r=0.82).一方,死亡例は全14例で肝容積は減少し,そのうち11例で脾容積は増加した.以上から,肝容積の減少と同時に脾容積も減少している場合は,劇症肝炎が回復している過程にあると考えるべきであり,反対に脾容積が増加している場合は,肝の萎縮が進行する危険な状態と考えるべきである.
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伊藤 史人, 須崎 真, 水野 修吾, 町支 秀樹, 梅田 一清
1999 年 96 巻 2 号 p.
154-159
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は65歳,男性.下腹部痛で受診.直腸指診で直腸壁外の表面平滑な軟腫瘤を触知.血中腫瘍マーカーに異常値を認めなかった.各種画像検査から仙骨前面嚢胞性病変と診断し,開腹手術にて直腸後面の嚢胞性病変を完全摘出.嚢胞内容液のCEA,CA19-9は極めて高値であった.嚢胞上皮は扁平上皮と円柱上皮で構成され,組織学的にtailgut cystと診断された.嚢胞内容液の腫瘍マーカーが高値を示したtailgut cystのまれな1例を報告した.
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古川 健亮, 谷 聡, 福田 昌輝, 西澤 昭彦, 坂井 誠, 森田 宗孝, 今西 築, 山下 順平, 北澤 荘平, 老籾 宗忠
1999 年 96 巻 2 号 p.
160-163
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は25歳女性.右下腹部に手拳大の腫瘤を認め入院.虫垂炎に併発した腹腔内膿瘍を疑い,右半結腸切断術を行ったが,切除標本にて腸結核と診断された.その後,抗結核療法を開始し,1カ月後には炎症所見の改善と残存潰瘍の消失を確認した.最近の結核が種々の医療基盤の変遷によって特異な形で出現することもあると考えられ,本例では腹腔内膿瘍による腹部腫瘤を初発症状とした貴重な1例として報告した.
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荻野 英朗, 橘 良哉, 米島 博嗣, 里村 吉威, 鵜浦 雅志, 三輪 淳夫
1999 年 96 巻 2 号 p.
164-169
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
潰瘍性大腸炎(UC)と再生不良性貧血の合併症例でシクロスポリンAとサラゾピリン(SASP)を投与中にUCの増悪がみられSASPをメサラジン(5-ASA)に切り換えたところ約2週間後より発熱,約4週間後からは労作時呼吸困難が出現した.胸部CTや経気管支鏡肺生検にて急性間質性肺炎と診断し,5-ASAを中止しプレドニゾロンの投与により軽快した.5-ASAによる間質性肺炎の報告はまだ少ないが,今後留意すべき副作用と考えられ報告した.
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白浜 正文, 宮本 祐一, 入江 康司, 石橋 大海
1999 年 96 巻 2 号 p.
170-175
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
患者は69歳,女性.鉄欠乏性貧血と肝障害あり,Gastric Antral Vascular Ectasia(GAVE),PBCの診断をうけた.経過中胆道系酵素の上昇を主とした肝機能とGAVE所見の増悪あり,鉄剤補給するも貧血は持続した.PBCへのUDCA投与後,肝機能は正常化し,GAVE所見の著明な改善とともに貧血も軽快した.PBCを合併したGAVEの1症例を,7年間に亘り追跡し興味ある知見を得たので,考察を加え報告する.
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石橋 一伸, 鈴木 貴弘, 磯尾 泰之, 堤 英雄, 長澤 昌史, 外山 隆, 尾崎 晋一, 内藤 雅文, 東 正祥, 柏木 徹, 米田 光 ...
1999 年 96 巻 2 号 p.
176-180
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は53歳,男性.主訴は呼吸困難,血液検査,胸水性状,画像検査より縦隔内膵仮性嚢胞と膵性胸水をともなう膵炎と診断,抗酵素療法を開始した.しかし,膵炎の改善なく縦隔内膵仮性嚢胞増大と新たに膵尾部に膵仮性嚢胞を認めた.このため膵外分泌抑制目的でソマトスタチン誘導体を投与したところ膵炎は沈静化し,両仮性嚢胞を切除できた.ソマトスタチン誘導体は膵仮性嚢胞合併難治性膵炎の有力な治療になることが期待された.
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兵頭 直子, 田代 友之, 兵頭 隆史, 山中 恒夫, 太田 雅弘, 山田 茂樹
1999 年 96 巻 2 号 p.
181-188
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は膵体尾部に10cmの嚢胞性腫瘤を認めた61歳の女性.CTで嚢胞壁は造影され,超音波内視鏡検査では,周囲臓器への浸潤を認めた.胃穿破をきたし,瘻孔を通じて嚢胞壁生検を行い膵腺扁平上皮癌と診断した.多発性肝転移を認めたが,腫瘍増大にともない著明な嚢胞性変化をきたした.本例は入院時よりPTHrPが高値で,病期進展にともないPTHrP増高,高Ca血症の出現をみた.本邦55例の膵腺扁平上皮癌において高PTHrPの証明は本例が最初である.
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平野 賢二, 片岡 英樹, 長澤 正通, 中川原 聖宜, 根本 正樹, 白井 直人, 吉田 賢一, 川村 素子, 久保 伸朗, 杉本 光繁, ...
1999 年 96 巻 2 号 p.
189-193
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は49歳の女性.検診の腹部超音波検査で肝腫瘤を認め,またCTでは肝腫瘤の他に膵鉤部にも卵殻状石灰化をともなう腫瘤を認めた.術前検査では確診に至らず,術後の検索で非機能性悪性膵島細胞腫瘍およびその肝転移と診断された.非機能性膵島細胞腫瘍が径2.0cmの時点で既に肝転移を有していた点,腫瘍の卵殻状石灰化を認めた点で本症例は興味深いと考えられた.
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松井 泰道, 伊藤 和幸, 物江 孝司, 水野 清, 伊藤 雄介, 近藤 豊, 和田 恒哉, 伊藤 誠
1999 年 96 巻 2 号 p.
194-196
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
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木村 健, 浅香 正博, 勝山 努, 川野 淳, 斉藤 大三, 佐藤 貴一, 下山 孝, 杉山 敏郎, 高橋 信一, 服部 隆則, 藤岡 利 ...
1999 年 96 巻 2 号 p.
199-207
発行日: 1999/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
第二次
Helicobacter pylori治験検討委員会が改訂した治験ガイドラインの主な内容は,以下の通りである.
I.除菌の利点と問題点: 利点は消化性潰瘍の再発抑制効果,そして低悪性度胃MALTリンパ腫の改善,かつそれらの医療経済効果である.問題点は薬剤耐性の獲得,および除菌後に新たに生じる疾患があり得ることである.
II.除菌治験の適応疾患: 除菌治験を速やかに行うべき疾患は,現在のところ,胃・十二脂腸潰瘍と低悪性度胃MALTリンパ腫である.
III.除菌薬: 酸分泌抑制薬+抗菌薬2剤の3剤併用療法をfirst-line therapyとする.
IV.存在診断と除菌判定: 存在診断は培養,鏡検,ウレアーゼ試験にて行う.除菌判定は,培養と鏡検に加えて
13C尿素呼気試験を必須とし,血清学的検査法とPCR法を削除する.除菌判定の時期は,治療終了後6~8週とする.
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