日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
110 巻 , 12 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特別寄稿―第99回総会会長講演―
  • 坪内 博仁
    2013 年 110 巻 12 号 p. 2033-2041
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    私たちは,劇症肝炎患者血漿より肝再生因子である肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor;HGF)を初めて単離精製し,そのcDNAのクローニングにも成功した.HGFは728アミノ酸残基からなる一本鎖のポリペプチドとして産生され,シグナルペプチドが外れて細胞外に分泌され,HGF activatorなどのプロテアーゼによりプロセシングを受けて活性型になる.HGFは細胞増殖促進作用だけでなく,細胞分散促進作用,腫瘍細胞障害作用,抗アポトーシス作用,抗線維化作用など多機能な生理活性を有する.HGFの特異的受容体は癌原遺伝子産物c-Metであり,細胞内にチロシンキナーゼドメインを持つ,いわゆるチロシンキナーゼ型受容体である.HGFの多機能な生理活性は,すべてこのc-Met受容体を介して発現する.HGFはD-ガラクトサミン肝炎を抑制し,Jo2誘導急性肝不全モデル動物の生存率を高める.私たちは多くの非臨床試験を実施し,HGFの薬効や安全性を確認したのち,京都大学探索医療センターにおいて劇症肝炎および遅発性肝不全患者を対象として,わが国で初めての未承認薬を用いた医師主導治験を実施した.4例の劇症肝炎および遅発性肝不全患者に組換え型ヒトHGFが投与され,限定的ではあるもののその安全性が確認された.その成果を踏まえ,現在,日本科学技術振興機構の支援を受け,急性肝不全薬としての開発が進められている.
総説
  • 佐藤 賢一
    2013 年 110 巻 12 号 p. 2042-2050
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    膵の癌化はK-ras遺伝子の変異によって始まり,p16p53Smad4などの癌抑制遺伝子の欠失や変異,さらにmicroRNAの異常発現が加わり,前癌病変のPanINを経て多段階的に発生する.遺伝子改変マウスを用いた実験からは,炎症が膵癌化を促進することも明らかにされている.膵癌の浸潤・転移には,癌と間質の相互作用や上皮間葉形質転換(EMT)といった現象が関与している.また,膵癌細胞の免疫機構からの逃避や抗がん剤耐性機構に,膵癌間質が重要な役割を果たしていることが示唆されている.
今月のテーマ:膵がん診療の現状と展望
  • 花田 敬士, 飯星 知博
    2013 年 110 巻 12 号 p. 2051-2059
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    近年腫瘍径1cm以内の膵がんは長期予後が期待されると報告されている.従来の診断は,US,造影CTを用いて"腫瘤を拾い上げる"アルゴリズムであったが,小径の膵がんを診断するには"膵管の異常"を捕捉することが重要である.USで間接所見である膵管拡張,膵嚢胞性病変を拾い上げ,次いでEUS,MRCPを積極的に介入させるアルゴリズムの構築,詳細なERCPを応用した複数回の膵液細胞診も重要である.一方,危険因子の理解・啓蒙を基軸とした地域病診連携の推進,USを基軸とした検診の整備,膵がん患者家族の登録制度,非侵襲的なメタボロニクスなどを考慮した,要精検者の効率的なスクリーニング体制の構築も求められる.
  • 古瀬 純司
    2013 年 110 巻 12 号 p. 2060-2065
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    膵がんの予後改善には薬物による化学療法が必須であり,切除後補助療法から遠隔転移例まで,広く行われている.切除後補助療法ではgemcitabine(GEM)とS-1の比較試験が行われ,S-1が新たな標準術後補助療法となりつつある.切除不能例に対する化学療法ではGEM+erlotinib併用療法がGEM単独を上回る成績を示している.わが国ではGEM,S-1,GEM+S-1併用療法による第III相試験が実施され,GEMに対するS-1の非劣性が証明された.最近,海外においてFOLFIRINOX療法とGEM+nab-paclitaxel併用療法の有用性が報告され,わが国でも導入が見込まれている.
  • 堀口 明彦, 伊東 昌広, 石原 慎, 浅野 之夫, 伊藤 良太郎, 志村 正博, 越智 隆之, 林 千紘, 清水 謙太郎, 宇山 一朗, ...
    2013 年 110 巻 12 号 p. 2066-2072
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    膵がんはがん遺残のない外科切除(R0切除)が唯一長期生存を得ることができる治療法であるが,その長期成績は十分とはいえない.しかし近年,術後補助化学療法の組み合わせにより徐々に成績が向上してきており,R0切除後に早期に補助療法に移行する戦略は膵がんの予後を向上させるとの方向性が示された.また近年,ロボット支援を含めた腹腔鏡下膵切除術の導入で,術後早期のQOLを向上させ,早期に補助療法を行う戦略も報告されている.一方,初診時に切除不能な膵がんに対してはadjuvant surgeryを念頭に治療を行うことが重要である.浸潤性膵管がんに対する外科治療の現状と展望について概説する.
  • 佐々木 良平, 宮脇 大輔
    2013 年 110 巻 12 号 p. 2073-2080
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    放射線療法は,切除可能膵がんに対しては術後の補助療法として有用との報告があり,切除不能進行膵がんに対して化学放射線療法の有用性が広く研究されている.5-FU併用の化学放射線療法が標準とされるが,近年,膵がんにはゲムシタビン塩酸塩やS-1が奏効すると報告されている背景からも,将来的にはゲムシタビン塩酸塩やS-1併用の化学放射線療法が主体となる可能性が高い.放射線治療計画では胃,十二指腸などの周囲臓器や腎臓,脊髄の線量を十分に検討することが必要であり,より線量集中性のよいIMRTなどの高精度放射線治療を活用し,化学療法の利点をうまく融合した,より治療効果比の高い併用療法が開発されることが期待される.
原著
  • 辰巳 健志, 杉田 昭, 小金井 一隆, 二木 了, 黒木 博介, 山田 恭子, 中尾 紗由美, 酒匂 美奈子, 木村 英明, 荒井 勝彦, ...
    2013 年 110 巻 12 号 p. 2081-2088
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    小児潰瘍性大腸炎(UC)25症例の術後長期経過を検討した.重症11例,難治14例に対し,全例に大腸全摘,回腸嚢肛門管吻合術を施行した.術後早期合併症は24.0%,晩期合併症は56.0%に認められたが,術後排便機能,社会復帰状況を含めたQOLは良好であった.6例で術前に-2SD以上の成長障害を認めたが,5例で術前より改善を認め,うち3例で-2SD以内への改善を認めた.成長障害合併例は有意に発症年齢が低く,病悩期間,ステロイド投与期間が長く,ステロイド総投与量が多量であった.小児UC症例の術後長期経過は良好であり,成長障害を含め手術適応のある症例には時期の遅れがなく手術を行うことが必要である.
症例報告
ITC (The 2nd JSGE International Topic Conference)
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