日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
98 巻, 9 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 急性膵炎
    下瀬川 徹
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1029-1036
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    1996年の第2回全国調査によれば,本邦における重症急性膵炎の致死率は27%と相変わらず高く,10年前と比べて改善がみられていない.重症急性膵炎の死亡原因としては膵および膵周囲の化学的炎症によって,発症早期に大量に放出される各種メディエーターを介した肺,循環器系,腎,肝など膵から離れた重要臓器の多臓器不全と,全身免疫系の障害を背景として合併し,進展・持続する重篤な感染症が発症2週以降の後期に頻度が高い死亡原因となる.これら病態の機序や病因に関しては未だに不明な点が多く,全身疾患としての膵炎重症化を阻止する特異的な治療法の開発が待たれている.
  • 急性膵炎
    伊佐地 秀司
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1037-1047
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    急性膵炎ではこれまで種々の重症度判定法や治療法が検討されてきたが,その有効性が科学的に立証されたものは少ない.1990年代に入り診断法や治療法の有効性を検証するためrandomized Gontrolled trial(RCT)が積極的に行われるようになり,これらの成績を根拠とした医療,evidence-based medicine(EBM)の観点から,1990年代後半にはいくつかの急性膵炎診療のガイドラインが作成されている.急性膵炎の重症度判定,治療法についてEBMの立場から検証すると,現時点で良好なevidenceが得られているのは,重症度判定としてはAPACHE IIと造影CTが実地臨床上有用であり,治療としては発症早期の大量輸液に加えて予防的抗生物質の投与があげられ,手術適応は感染性膵壊死であって,無菌的膵壊死は保存的治療が原則である.
  • 折笠 博史, 佐藤 由紀夫, 吉岡 良二, 斎藤 文子, 入澤 篤志, 坂 充, 宮田 昌之, 小原 勝敏, 粕川 禮司
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1048-1059
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    Heatshock protein(hsp)65に対する免疫反応が炎症性腸疾患の病因に関与することが推定されている.hsp65のcDNAをコードするプラスミドDNAをリボソームを用いて,Wistarラット大腸粘膜に導入することにより,hsp65に対する全身系の液性および細胞性免疫が誘導された.さらに糞便中の抗hsp65IgA抗体測定(ELISA法)では,導入4週(40±9U/ml)後に対照(プラスミドDNAの皮下注射群)の4週値(8±5U/ml)に比して有意(p<0.05)な上昇を示し,消化管粘膜免疫反応が誘導されることが示された.しかし,hsp65に対する粘膜免疫反応が誘導されたラットにおいて大腸粘膜組織の障害は認められず,hsp65に対する粘膜免疫のみでは大腸粘膜障害はおきないと推定された.
  • 豊見山 良作, 山城 正明, 佐久川 廣, 宮城 剛, 平良 正昭, 金城 福則, 斎藤 厚
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1060-1064
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    要旨:当施設で経験した化膿性肝膿瘍39例中6例(1596)がStreptococcus milleri(以下S.milleri)によるものであった.これら6例を対象に臨床的検討を行った.男性5例,女性1例,年齢は43歳~81歳で平均61歳であった.6例中5例が基礎疾患を有していた.全例に発熱がみられたが,腹痛は半数のみであった.6例中3例は混合感染であり,特に口腔内嫌気性菌であるFusobacteriumが3例中2例にみられた.しかし,他菌種による肝膿瘍33例との比較検討では,臨床的な違いはみられなかった.したがって,起因菌が同定されるまでの肝膿瘍に対する抗菌薬の選択の際は,口腔内常在微好気性菌であるS.milleriおよび口腔内嫌気性菌も考慮すべきであると考えられた.
  • 上杉 憲幸, 中村 眞一, 菅井 有, 赤坂 威一郎, 河田 孝彦, 松谷 富美夫, 西成 尚人
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1065-1070
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性.昭和62年8月に早期胃癌のため幽門側胃切除術を施行.嚥下痛を認めたため上部消化管内視鏡検査を施行したところ,切歯より35cmの食道胃接合部に亜有茎性の隆起性病変を認めた.内視鏡的粘膜切除術にて切除するも再発し,再度粘膜切除術を施行.病変は重層扁平上皮下を主座とする粘液産生の明瞭な異型腺上皮より成り,食道原発の高分化型腺癌と診断した.原発性食道腺癌は頻度的にも低く,比較的まれな腫瘍である.特に食道胃接合部に生じた腫瘍は胃癌の食道浸潤として扱われることが多く,その組織発生については十分な検討がなされているとはいい難い.本症例は食道胃接合部に生じた表在腺癌であり,組織化学的検討から食道噴門腺あるいは食道固有腺を発生母地とする可能性が示唆された.文献的考察を加え,報告する.
  • 橘 良哉, 竹森 康弘, 野田 八嗣
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1071-1076
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.ホタルイカを生食したところ翌日より腹痛が出現し,亜腸閉塞状態と診断のうえ入院となった.入院後,腹部CT検査にて胃前庭部の著明な壁肥厚が確認された.上部消化管内視鏡検査で胃体下部より前庭部の大彎側のなだらかな隆起性病変を認め,超音波内視鏡で粘膜下層を主体とした壁肥厚と確認された.抗旋尾線虫幼虫type X抗体が第16病日に陽性となり,旋尾線虫幼虫type Xの関与した胃壁肥厚が示唆された.
  • 三浦 英明, 近藤 健司, 山田 春木, 浜田 勉, 北村 成大
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1077-1082
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は77歳男性.下痢と血便,発熱を主訴に当院初診したが,炎症反応が高値で入院となった.入院後も大量の水様性下痢は持続し,画像で著明な大腸壁肥厚が認められ,大腸に強い炎症が生じていることが判明した.便培養は陰性であった.大腸内視鏡検査で直腸~S状結腸にかけて偽膜形成が認められたが,CD toxinは陰性であった.抗生剤,γグロプリン製剤,ステロイドパルスによる治療を施行したが,入院第7病日に多臓器不全で死亡した.剖検で全大腸は“ぼろ雑巾”状に壊死におちいっており,組織内に多数アメーバ原虫が認められ,劇症型アメーバ腸炎の診断がなされた.まれではあるがアメーバが致死的な劇症型腸炎を引きおこすことがある.原因不明の重症腸炎をみた場合には,アメーバ腸炎も念頭に入れて,外科的処置も考慮した早期治療を行うことが重要であると考えられた.
  • 西脇 学, 住本 洋之, 蘆田 寛, 中川 一彦, 山村 武平, 坂上 隆, 岡 秀男, 下山 孝, 西上 隆之, 林 秀幸
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1083-1088
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は腹水と食道静脈瘤を指摘された77歳の女性.3D-CT,MR-angiography(MRA),血管造影で下腸問膜動脈(IMA)末梢の動門脈瘻(arterioportal fistula,APF)が確認され,カラードプラUSで下腸間膜静脈(IMV)から門脈に拍動性求肝性血流が検出された.APFによる門脈圧亢進症(門亢症)の診断で病巣部を切除した.門脈圧は570mmH2Oを示し,病巣部は腸間膜の動静脈奇形(arteriovenous malformation,AVM)であった.
  • 大西 康, 矢島 義昭, 林 千恵, 佐藤 真広, 青木 千花, 高橋 信孝, 宮崎 敦史, 枝 幸基, 大平 誠一, 及川 秀樹
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1089-1094
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    右副腎転移および右門脈1次分枝に門脈腫瘍栓をともなう進行肝細胞癌に対して,リザーバー動注low dose FP療法を施行したところ,原発巣および転移巣の著明な縮小をみた.AFPとPIVKA IIは正常化し,完全寛解が得られた.8カ月後の肝内再発にはepirubicinを用いたLipiodol-TAEが著効し,20カ月経過した現在も寛解中である.本療法が副腎転移およびVp3症例に対する治療戦略の1つになる可能性が示唆された.
  • 伊藤 元博, 清水 泰博, 安井 健三, 小寺 泰弘, 山村 義孝, 渡辺 吉博, 山雄 健次, 大橋 計彦
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1095-1098
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.腹痛で近医を受診後,当院紹介入院.各種画像診断で腫瘤は描出されなかったが,造影CTで膵体尾部が頭部と比べlow densityに描出され,その境界は非常に明瞭であった.ERPでは膵体部で主膵管の途絶を認め,経口的膵管鏡では狭窄部位に一致して増殖性変化が観察された.手術は膵体尾部・脾切除を施行した.本例は随伴性膵炎のため腫瘍の同定が困難であったが,経口的膵管鏡が膵癌の診断に有用であった.
  • 上平 晶一, 吉田 行雄, 野尻 義文, 山中 桓夫, 井廻 道夫
    2001 年 98 巻 9 号 p. 1099-1101
    発行日: 2001年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
feedback
Top