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消化管免疫
名倉 宏, 大谷 紀子, 大谷 明夫, 笹野 公伸
2001 年 98 巻 4 号 p.
375-384
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
胃粘膜では,腸管粘膜と同様に一層の円柱上皮細胞層で被覆されているが,免疫担当細胞はほとんど存在せず,厚い粘液層と酸消化酵素といったもっぱら非特異的な防御機構が機能し,粘膜でありながら,粘膜免疫機構による免疫学的機序はほとんど関与していない.
H.pylori感染により,胃粘膜には強力な炎症免疫反応が惹起されるが,菌は排除されず,それによる慢性活動性炎症が持続して粘膜が傷害され,びらん,潰瘍,萎縮,場合によっては腫瘍に至る.しかし,腸上皮化生が出現し粘膜免疫機構による防御機構が確立すると,菌は排除され,粘膜傷害は消槌する.胃粘膜には,このようなユニークな生体防御機構と炎症免疫機構が観察される.
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消化管免疫
吉川 敏一, 内山 和彦, 内藤 裕二, 吉田 憲正
2001 年 98 巻 4 号 p.
385-389
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
膠原病は結合組織の障害により様々な消化管病変を合併する.代表的なものとして,強皮症(PSS)にみられる食道蠕動低下,食道胃逆流症(GERD),全身性工リテマトーデス(SLE)にみられる小腸・大腸病変,慢性関節リウマチ(RA)にみられるアミロイドーシスなどが挙げられる.特に血管炎に起因したSLE,結節性多発性動脈周囲炎(PN),リウマトイド血管炎での虚血性腸炎などは時に致死的となり、早期診断,治療が必要となる.皮膚筋炎/多発筋炎(DM/PM)に合併する消化管悪性腫瘍に対しても定期的スクリーニングが必要である.また、治療薬である非ステロイド系抗炎症薬は高率に消化管粘膜傷害を惹起する.膠原病に合併する消化管病変の把握は,膠原病の診断,治療における極めて重要な要点である.
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消化管免疫
日比 紀文, 井上 詠
2001 年 98 巻 4 号 p.
390-398
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
潰瘍性大腸炎とクローン病は,いまだその病因は不明であるが,両疾患とも免疫異常にともなう腸局所での過剰な免疫反応がその病態に大きく関与している.両疾患の病態は異なり,潰瘍性大腸炎では大腸上皮細胞の抗原提示異常やT細胞・B細胞のdysregulationが,クローン病では単球・マクロファージ系細胞の機能異常とTh1型免疫反応の関与が強く示唆される.免疫抑制剤の有効性も明らかとなり,解明された免疫異常にもとついてサイトカイン・活性化T細胞・マクロファージなどを標的とした新しい治療法が開発されている.今後,腸管内抗原の同定や病態の本質に迫る研究からの原因解明とそれにもとついた根本治療の開発が期待される.
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仁木 敏晴, 西田 和之, 本迫 洋一郎, 松村 安家, 上野 博久, 藤見 忠生, 指方 輝正
2001 年 98 巻 4 号 p.
399-404
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は49歳男性で,慢性活動型C型肝炎に対して平成10年7月よりインターフェロン-αの投与を開始した.投与後2カ月目に下痢が頻回となったので大腸内視鏡検査を行ったところ,全結腸に連続性の粘膜びらん,多発性潰瘍を認めた.またMRI,CTにて慢性期潰瘍性大腸炎の特徴像である直腸周囲の脂肪織の増生や直腸粘膜下層への脂肪浸潤がみられた.潜在性の潰瘍性大腸炎がインターフェロン投与により発症したと考えられた.
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山口 勉, 尾田 恭, 明石 隆吉, 相良 勝郎, 成田 和美, 服部 正裕, 蔵野 良一
2001 年 98 巻 4 号 p.
405-409
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は36歳男性,職場健診にて便潜血陽性を指摘され来院した.大腸内視鏡検査にて横行結腸に大きさ8mmのIIa+IIc様病変を認めた,non-lifting sign陽性であったため,患者本人と相談の上腹腔鏡下手術を施行した.病理組織学的には,粘膜筋板の欠損と粘膜下層の異型の無い大腸腺管からなり,炎症細胞浸潤は極軽度で繊維化や筋組織の増生は認められなかった.本病変はいわゆる広義のhamartomatous polypと考えられた.
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土居 忠, 本間 久登, 女澤 慎一, 茎津 武大, 宮西 浩嗣, 高田 弘一, 新津 洋司郎
2001 年 98 巻 4 号 p.
410-415
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は52歳,男性.全身倦怠感を主訴に当院を初診.大腸内視鏡にて直腸カルチノイド腫瘍を,腹部エコー,CTにて多発性肝腫瘤を認め,肝腫瘤の生検にて直腸力ルチノイド腫瘍の多発性肝転移と診断した.転移性肝カルチノイド腫瘍に対しdegradable starch microspheres(DSM)を併用したCDDP/5-FU動注化学療法を施行したところ、PRを得た.DSMを用いる動注化学療法は進行転移性肝カルチノイド腫瘍の治療選択の1つとして検討していく必要があると考えられる.
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小沢 俊文, 渡辺 秀紀, 奥山 裕子, 奥村 浩二, 土屋 豊一, 丹治 伸夫, 安斎 幸夫, 海上 雅光
2001 年 98 巻 4 号 p.
416-420
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は46歳の女性.便秘症に対し防風通聖散を内服し,13カ月後に黄疸が出現.同剤を中止し,リンパ球刺激試験を実施したところ強陽性であり本剤による薬剤性肝障害と診断した.防風通聖散による薬剤性肝障害の報告は本例を含め3例とまれである.組織学的にはリンパ球浸潤をともなう門脈域の拡大と線維化が強く回復までに62カ月を要した.肝障害の原因の一つとして漢方製剤も念頭におく必要があると思われた.
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鈴木 貴久, 鈴木 孝, 木村 昌之, 篠田 昌孝, 藤田 友康, 三宅 忍幸, 山本 さゆり, 田代 和弘
2001 年 98 巻 4 号 p.
421-425
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は58歳,男性.高尿酸血症などで当院通院中1999年6月4日より全身倦怠感あり.6月12日黄疸のため当院を受診し入院.入院時検査で肝胆道系酵素上昇,CTにて肝萎縮あり.第18病日に薬剤性劇症肝炎亜急性型と診断され,血漿交換(PE)+血液濾過透析(HDF)を施行し,alprostadil alfadex(PGE
1)を併用した.リンパ球刺激試験(LST)陰性だが,経過からbenzbromaroneによる薬剤性劇症肝炎と診断され,内科的治療により救命できたので報告する.
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白井 賢二, 溝上 裕士, 白石 貴久, 大坪 十四哉, 中村 浩, 苅谷 嘉之, 竹山 裕樹, 小又 孝之, 松岡 健
2001 年 98 巻 4 号 p.
426-430
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は82歳男性.食欲不振と右胸水の精査のため来院.腹部CT,腹部超音波検査および穿刺液検査より,気腫性胆嚢炎の波及による横隔膜下膿瘍,胸膜炎と診断した.重篤な病像であったが,横隔膜下ドレナージ,腹腔ドレナージ,抗生剤投与などの保存的治療により救命しえた.気腫性胆嚢炎に横隔膜下膿瘍,胸膜炎を合併し,保存的治療により急性期を離脱できた症例はまれであり,文献的考察を加えて報告した.
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岡 秀行, 松岡 裕士, 松木 美知子, 森田 翼, 阿河 直子, 元井 信
2001 年 98 巻 4 号 p.
431-435
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は78歳,女性.心窩部不快感を主訴に入院.再像検査で膵体尾部に境界明瞭な一部嚢胞状で径3.0cmの腫瘤を認め,膵体尾部・脾合併切除術を行った.嚢胞像を呈した部分は腫瘍内出血壊死巣で,組織学的に充実性増殖した多形細胞中に破骨細胞に類似した多核巨細胞の浸潤を認め,膵類破骨細胞型巨細胞癌と診断した.免疫組織染色で多形細胞は上皮性マーカーに陰性で,多核巨細胞はKP-1に陽性で組織球由来が疑われた.
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上野 敦盛, 小関 至, 佐々木 茂, 山口 純央, 岩田 徳和, 金戸 宏行, 伊東 文生, 遠藤 高夫, 一宮 慎吾, 佐藤 昌明, 大 ...
2001 年 98 巻 4 号 p.
436-441
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
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症例は49歳,女性.腹部膨満感・食欲不振を主訴に来院.精査にて後腹膜腔に巨大な腫瘍が認められた.腫瘍生検の結果,悪性線維性組織球症が疑われ手術が施行された.摘出した腫瘍の病理学的検討によりinflammatory fibrosarcomaと診断された.後腹膜原発のinflammatory fibrosarcomaの1例を経験し,新しい疾患概念の稀有な症例であったので報告した.
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安藤 三男, 北江 秀博, 辻口 比登美, 枝川 豪, 森田 英次郎, 吉田 隆, 田橋 賢久, 森口 暁仁, 天津 孝
2001 年 98 巻 4 号 p.
442-444
発行日: 2001年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー