日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
120 巻, 5 号
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今月のテーマ(総論):急性肝不全up to date
  • 中山 伸朗
    2023 年 120 巻 5 号 p. 369-378
    発行日: 2023/05/10
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル 認証あり

    厚労省研究班の全国調査では,急性肝不全およびLOHF症例は徐々に高齢化し,成因ではウイルス性症例の比率に漸減の傾向がみられる.B型の急性型では,急性感染と無症候性キャリア(誘因なし)の双方で,非移植例の救命率が2010年以降に低下していた.早期の治療導入で多くが非昏睡のうちに治癒し,昏睡型は難治化した症例に限られるのか検証を要する.この他,原則として肝移植の対象から外れる65歳以上の症例の治療戦略の構築,減ることのない成因不明の真の成因診断法の開発,小児急性肝不全の実態の解明,非肝硬変に生じた重症型アルコール性肝炎の分類上の取り扱いに関するコンセンサスの形成など,今後の課題は山積している.

今月のテーマ(総説):急性肝不全up to date
  • 褚 柏松, 中本 伸宏, 金井 隆典
    2023 年 120 巻 5 号 p. 379-387
    発行日: 2023/05/10
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル 認証あり

    急性肝不全(acute liver failure;ALF)はまれでかつ致死的な症候群である.異なる成因や修飾因子により多様な臨床経過を辿る.内科治療のみでの救命率は44~55%程度に止まり,緊急肝移植以外に予後を劇的に改善させる治療手段はない.観察研究から得られる急性肝不全の自然史の解明とともに,治療介入の方法やタイミングの判定に有効な臨床指標の同定が待たれる.近年,single-cell解析などの新規研究方法により多様な細胞間における時間・空間かつ機能的変化が明らかになり,急性肝障害/修復/再生の「多元的」病態概念が提唱されている.

  • 乾 あやの, 藤澤 知雄
    2023 年 120 巻 5 号 p. 388-392
    発行日: 2023/05/10
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル 認証あり

    2022年の春から数カ月にわたり,コロナ禍において,世界的に原因不明の急性肝炎が流行した.この原因は不明であり,コロナウイルスとの関連,アデノウイルス感染,あるいは両者の関連などが考えられたが,原因が究明される前に終息した.今後の再流行に備え,原因不明の肝炎・急性肝不全のモニタリングを重視する必要がある.

  • 井上 和明
    2023 年 120 巻 5 号 p. 393-402
    発行日: 2023/05/10
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル 認証あり

    急性肝不全に対する最も信頼性の高い治療は肝移植である.Non-biologicalな人工肝補助療法は,脳死臓器提供が極めて少ない医療環境で高い昏睡覚醒能力と長期間患者を安定した状態で維持し得る能力を求められ発展成立した,日本独自の治療法である.血液透析濾過は昏睡覚醒能力の低い血漿交換の欠点を補い,水溶性の小分子量物質が脳浮腫に関与し,中分子量物質が肝性昏睡に関与するとの想定のもと,透水性の高い高性能膜の開発とともに1980年代から発展した治療法である.現在では滅菌レベルの超純水給水システムを用いて,前希釈法で大量の置換液の使用が可能なonline血液透析濾過法に発展している.

  • 池上 徹, 赤岡 宗紀, 山畑 勇統
    2023 年 120 巻 5 号 p. 403-409
    発行日: 2023/05/10
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル 認証あり

    急性肝不全に対する治療として,高流量持続血液濾過透析を中心とした内科的集中治療の進歩により脳症の進行は制御可能となってきたが,いまだ肝移植が究極の救命手段であることには変わりはない.肝移植の適応に関しては新しいスコアリングシステムが提唱され活用されているが,急性肝不全の病勢の進行は個々の症例で異なることを認識し,肝移植のタイミングを逃してはならない.また,慢性肝不全急性増悪も非常に治療の難易度が高い病態である.急性肝不全に対しては,内科的集中治療,脳死および生体肝移植の準備を同時並行で進める必要があり,そのすべてが整った施設で治療されるべき難治性疾患である.

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