日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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76 巻, 8 号
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  • 武内 俊彦, 八木 英司, 宮治 真, 鈴木 邦彦, 山田 英明, 岸本 高比古, 寺尾 直彦, 横地 潔, 伊藤 誠
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1613-1620
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    高齢者における食道裂孔ヘルニア(ヘルニア)の実態を明らかにするため,愛知県下の3施設で行つた上部消化管透視でヘルニアと診断した60歳以上のヘルニア218例について検討した.発症頻度は19.6%で女性に多く,加齢と共に増加した.型別では滑出型73%,裂孔傍型27%で,脱出距離は各々32.1mm,8.4mm,であつた.有症状率は脱出距離の長いものほど高いが,症状は一般に軽微で,45%は無症状であつた.横隔膜の組織学的検索では筋線維の強い萎縮と硝子様変性が認められ,噴門括約筋機構の脆弱化が示唆された.剖検例11例中5例には組織学的に食道炎が存在した.本邦においても高齢者ではヘルニアの頻度が高く,注意すべき疾患と考える.
  • 正常人と胃癌患者における検討
    石崎 武志, 筑田 孝司, 服部 絢一, 三輪 晃一, 山岸 満, 宮崎 逸夫, 右田 俊介
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1621-1628
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胃癌のstage別,組織別,性別および術前後の血清β2microglobulinをRIAキットで測定し,β2microglobulin値に影響を与える因子を検討した.正常人(39名)の平均は1.73±0.52μg/mlであつた.stage別の検討では,stage Iから既にコントロールよりも平均値は高値を示し,stage Iを除けばほぼstageの進行に伴い,β2microglobulin値は上昇した.しかし個々の例はかなりバラついた.未分化型胃癌よりも分化型胃癌に高値傾向をみ,また,女性胃癌患者よりも男性胃癌患者により高値を示す傾向をみた.術後合併症例は,術前値より高値を示したが,stage I, IIでは術後正常値化例が多かつた.術前値と12ヵ月後の生存の有無では明らかな関係はなかつた.
  • 富士 匡
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1629-1641
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    十二指腸癌を十二指腸乳頭部癌,原発性十二指腸癌,転移性十二指腸癌に分け,X線,内視鏡検査を中心に種々の検討を行つた.
    ところで,著者は十二指腸乳頭部癌を十二指腸乳頭部粘膜に癌が存在し,しかも同部に癌が主体をおくものと定義した.また,膵頭部癌,総胆管未端部癌との鑑別困難な症例に対しては組織学的検索や切除直後の標本に造影剤を注入して撮影したレントゲノグラムにより病変の主座を判定した.このようにして,膵頭部領域癌,膨大部癌などのまぎらわしい言葉の使用を避けた.
    さて,十二指腸乳頭部21例では,X線的にはERCPとPTCの胆管像からほぼ全例が存在診断可能であつた.膵頭部癌,膵全体癌との鑑別はX線像のみで80%の症例に正診できた.
    次に内視鏡所見では,全例,乳頭部で種々な型の隆起形態を示し,この隆起の上に陥凹病変をともなつていた.このためX線と内視鏡検査を併用すれば質的診断はほぼ全例可能であつた.
    次に,内視鏡所見と切除組織の対比から癌の深達度を検討したところ,潰瘍限局型9例では癌が固有筋層にとどまる例が約半数を占め,腫瘤型5例,潰瘍浸潤型6例では固有筋層以下の浸潤や膵への浸潤がみられる症例が多く86%を占めた.
    次に,原発性十二指腸癌6例を内視鏡的に検討したところ,隆起性病変が主体となつた症例は深達度pmまでの比較的浅い時期に発見されており,癌の発育が隆起性病変から,次第に中心部に崩れをともなつて進行していくことが示唆された.
    転移性十二指腸癌13例での内視鏡的検索では病変がIIc様,IIa様,小潰瘍などの小さな比較的おとなしい病変を示すことが多いため,X線検査,内視鏡検査にあたつてはとくに注意深い読みをする必要を痛感した.
    なお,早期十二指腸乳頭部癌,早期原発性十二指腸癌をそれぞれ1例経験し報告した.
  • 桑島 士郎, 小林 絢三, 村井 雅己, 田中 吉之助, 片山 照義, 山口 勝治, 北野 厚生, 山本 祐夫
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1642-1651
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎においては,腸内細菌共通抗原に対する抗体価高値を示す例は多くなく,かえつて肝硬変症や激症肝炎において高値を示す例が多かつた.腸内細菌共通抗原及びリポ多糖は,遅延型アレルギーの成立を増強する活性を有する.同活性の発現に際しリポ多糖の構造及び動物の年齢が関連しており,通常のリポ多糖は比較的成熟したモルモットにおいて活性を示すが,幼若モルモットにおいては活性を示さない.しかし,Re型リポ多糖(リピドA+KDO)は幼若モルモットにおいてかなりの遅延型アレルギー増強活性を示す.
  • 石黒 直樹, 福島 恒男, 土屋 周二
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1652-1659
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    回腸結腸吻合症例19例において,十二指腸ゾンデ法により採取した胆嚢胆汁中の胆汁酸組成を,薄層およびガスクロマトグラフィー法で分析し,検討を加えた.
    抱合胆汁酸G/T比は上昇し,79%の症例で遊離胆汁酸が検出された.胆汁酸分画ではdeoxychol酸は12例中9例で欠如し,2例で減少した.平均組成比ではchenodeoxychol酸の増加が著明であつた.
    66.7%の症例で131 I-triolein便中排泄率の増加が認められた.その原因としては,回腸末端部およびBauhin弁の切除あるいは短絡による胆汁酸組成の変化,腸内細菌の上行感染,腸通過時間の短縮等が考えられた.
  • 大谷 宣人, 大屋 隆介, 松嶋 喬, 前久保 博士, 白井 修, 柏木 道彦, 佐藤 隆次, 白石 忠雄
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1660-1666
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    総カロリーの36%をエタノールで置換した液体飼料をラットに4週間任意に摂取させ,小腸粘膜における各オルガネラの酵素変動を観察し次の結果を得た.慢性エタノール投与によりactive transportに関与するNa+-K+-ATP aseおよびALP活性は抑制された.ミトコンドリア分画の呼吸系酵素ではsuccinate cytochrome c reductase活性は明らかな上昇を示したが,rotenone insensitive NADH-cytochrome c reductase活性には変化はみられなかつた.ライソゾーム酵素であるβ-glucuronidase, acid phosphatase活性には変化がなかつた.ミクロゾーム分画ではγ-GTP活性は著明に上昇したが,糖新生のkey enzymeであるG-6-Pase活性には変化はみられなかつた.これに対し上清におけるG-6-PDH活性は低下した.以上の結果よりエタノールは肝と同様小腸粘膜に対してもtoxicな作用を有することが示唆された.
  • 荒川 泰行, 藤田 実彦, 大藤 紘一, 勝原 徳道, 佐々木 良美, 小口 公人, 佐藤 一夫, 金田 春雄, 本田 利男
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1667-1676
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    著者らが経験した6例の劇症肝炎生存例について,意識障害発現後8週から15週の間に施行した肝生検組織を比較検討した結果,2例が亜急性肝臓壊死を示したが,他の4例では軽微な所見しか認められなかつた.劇症肝炎の生存例では,重篤な臨床像と肝生検組織像とが解離する例や壊死後性瘢痕を残して病変の進行が停止する例が存在する.もちろん,肝生検の実施時期や組織片の大きさからくる制約が問題となるが,劇症肝炎で少くとも救命されるような症例では,慢性肝疾患へ移行する頻度は必ずしも高くないように思われる.今後,可及的にpair biopsyによつて比較検討した症例の集積が必要と思われる.
  • 田中 紘輝, 迫田 晃郎, 秋田 八年, 新延 道夫, 藤井 節郎
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1677-1687
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    (1)正常15例,消化器疾患100例の血清LAPアイソザイムをディスク電気泳動法により分離した.肝•胆•膵疾患時に特異的に出現する活性帯は見られなかつた.(2)人正常組織では,胃と小腸で各々3本,肝で2本,肺で5本,直腸で4本の活性帯が見られた.(3)疾病血清中には高分子LAPが存在しており,それはブロメライン処理により,低分子化される.この事は血中LAPアイソザイムの一部には何物(恐らく膜様小片)かと結合したままの形で血中に遊離して来ており,それがブロメライン処理により,抽出されて低分子化されたものと思われる.(4)正常血清中のLAPは肝臓のそれと同一の抗原性を有している.
  • 近藤 忠亮, 本山 雄三, 有馬 暉勝
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1688-1690
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    bilirubinの抱合酵素であるbilirubin UDP-glucuronyl transferase (GT)とbilirubin UDP-xylosyl transferase (XT)活性がWistar系ratとheterozygous Gunn ratでは肝及び腎に存在した.肝に対する腎のGT, XT活性は約3:1であつた.ヒト腎ではGT, XT活性は認められなかつた.
  • とくに,肝細胞機能障害を中心とした実験的研究
    永川 宅和, 佐々木 紘昭, 浅野 栄一, 宮崎 逸夫
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1691-1701
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸では胆汁路は十分確保されていると思われるにかかわらず,黄疸軽減効果がえられず,重篤な合併症をひきおこして死に至つてしまう場合がしばしばある.
    著者らは,閉塞性黄疸における黄疸遷延因子追求を目的として,雑種成犬を用いて,実験的閉塞性黄疸犬を作成し,閉塞解除前後にわたつて,主として肝細胞機能障害を中心として,ICG 60分採血法,ビタミンK負荷ヘパプラスチンテストを行い,あわせて,他の一般肝機能検査,血中MAO値の測定,肝の病理組織学的検索を加え,次のような結論をえた.
    1. 胆道閉塞による血清ビリルビン値の上昇は,期間とは必ずしも平行せず3週目頃より横這いを示す.しかし,胆道感染が加わるとこの値は急激に上昇する.
    2. 胆道閉塞によつて,肝細胞内の機能はある程度抑制されるが,その程度はそれ程大でなく,閉塞解除によつて早期に回復する.しかし,肝細胞膜機能は閉塞によつてかなりの抑制をうけ,解除によつても相当期間その回復は遅延する.
    3. 閉塞性黄疸において,ICGテストのb値の低下およびビタミンK負荷ヘパプラスチンテストの活性値の低下は予後不良を示す.
    4. 肝の線維化は閉塞期間とともに徐々に進行し,解除によつても線維増生はなお1週間は亢進している.索引用語:黄疸遷延因子,ICG plasma transfer rate (K, a, b, h),ビタミンK負荷Hepaplastin test (K. H. P. T.),血清Monoamine oxidase (M.A.O.),肝細胞機能,肝細胞膜機能
  • 松浦 昭
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1702-1714
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    膵癌,他の悪性腫瘍,良性疾患患者と健常者とついて,基質としてpoly(C)を用い血清RNaseを測定し,膵癌は他に比較して有意に高値であつた.血清RNaseの測定は微量の血液があれば可能であり,手技も簡単で,膵癌の生化学的診断法として有用と思われる.膵癌患者における血清RNaseの上昇機転を検討する目的で,膵癌組織抽出液中のRNaseを測定したが,正常膵組織•胃癌組織の6~9倍の高値を示した.一方,膵癌患者血清中のRNaseは膵癌組織中のRNase,さらには健常者の血清RNaseと生化学的および免疫学的に同種であることが,認められた.膵癌における血清RNaseの上昇は,膵癌組織中で大量生産されたRNaseが,血中に出現することによると推論できる.
  • 東海林 茂樹, 添野 武彦, 鈴木 彰, 高橋 俊雄, 佐藤 家隆
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1715-1721
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • 二宮 冬彦, 本告 仁, 稲永 国勝, 田中 浩一, 桑原 靖道, 長田 英輔, 谷川 久一, 高木 繁男
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1722-1727
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • 中沢 三郎, 内藤 靖夫, 可知 常昭, 川口 新平, 塚本 純久, 梶川 学, 相地 正文, 木本 英三, 佐野 博, 鈴木 洋介, 浅井 ...
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1728-1734
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    回虫症は稀な疾患となりつつあるが,検便虫卵陰性にも拘らず,X線検査にて虫体が確認された症例を経験したので報告する.対象は胆道迷入例4例,腸管寄生例5例の計9例で,腹痛,悪心などで受診しているが,1例を除いて便虫卵陰性で,この時点での診断は不可能である.胆道迷入例ではERCP, PTCの直接造影で発見され,1例は明らかな黄疸がみられたが,程度も軽く,本症の特徴ともいえる.腸管寄生例では全てバリウム検査で発見された.以上,消化器回虫症は検査法の進歩のみならず社会情勢の変化とともに最近では増加する傾向がみられるので,消化器症状を訴える場合には常に本疾患の存在を念頭に置いて検索を進めるべきであると考える.
  • 清水 淳, 杉浦 玄, 高橋 秀樹, 林 充, 島田 香織, 宮崎 浩一, 西里 吉則, 渡辺 悦弘, 似内 滋, 斉藤 利彦, 芦沢 真六 ...
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1735-1741
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • 万代 恭嗣, 幕内 雅敏, 渡辺 五朗, 伊藤 徹, 神谷 喜八郎, 上妻 達也, 伊関 丈治, 村田 宣夫, 別府 倫兄, 二川 俊二, ...
    1979 年 76 巻 8 号 p. 1742
    発行日: 1979/08/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
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