十二指腸癌を十二指腸乳頭部癌,原発性十二指腸癌,転移性十二指腸癌に分け,X線,内視鏡検査を中心に種々の検討を行つた.
ところで,著者は十二指腸乳頭部癌を十二指腸乳頭部粘膜に癌が存在し,しかも同部に癌が主体をおくものと定義した.また,膵頭部癌,総胆管未端部癌との鑑別困難な症例に対しては組織学的検索や切除直後の標本に造影剤を注入して撮影したレントゲノグラムにより病変の主座を判定した.このようにして,膵頭部領域癌,膨大部癌などのまぎらわしい言葉の使用を避けた.
さて,十二指腸乳頭部21例では,X線的にはERCPとPTCの胆管像からほぼ全例が存在診断可能であつた.膵頭部癌,膵全体癌との鑑別はX線像のみで80%の症例に正診できた.
次に内視鏡所見では,全例,乳頭部で種々な型の隆起形態を示し,この隆起の上に陥凹病変をともなつていた.このためX線と内視鏡検査を併用すれば質的診断はほぼ全例可能であつた.
次に,内視鏡所見と切除組織の対比から癌の深達度を検討したところ,潰瘍限局型9例では癌が固有筋層にとどまる例が約半数を占め,腫瘤型5例,潰瘍浸潤型6例では固有筋層以下の浸潤や膵への浸潤がみられる症例が多く86%を占めた.
次に,原発性十二指腸癌6例を内視鏡的に検討したところ,隆起性病変が主体となつた症例は深達度pmまでの比較的浅い時期に発見されており,癌の発育が隆起性病変から,次第に中心部に崩れをともなつて進行していくことが示唆された.
転移性十二指腸癌13例での内視鏡的検索では病変がII
c様,II
a様,小潰瘍などの小さな比較的おとなしい病変を示すことが多いため,X線検査,内視鏡検査にあたつてはとくに注意深い読みをする必要を痛感した.
なお,早期十二指腸乳頭部癌,早期原発性十二指腸癌をそれぞれ1例経験し報告した.
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