日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
76 巻, 3 号
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  • 七海 曉男, 中島 哲二
    1979 年 76 巻 3 号 p. 653-658
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胃癌の診断法が進歩し,多数の早期胃癌が発見されるようになつた.その反面,約25%の胃癌は切除不能な状態で発見され,かつ治癒切除のできる胃癌は約50%にとどまつている.この実状を検討した結果,切除不能胃癌が約25%にみられ,治癒切除のできる胃癌が約50%にとどまつている原因は,胃癌が誤診されているためではなく,患者の自覚症状を胃癌発見の頼りとしている現在の医療体制にあることが再確認された.従つて,胃癌の治療成績を向上させるためには,患者の自覚症状の有無に関係なく,定期的な胃癌の検診を行うことであり,かつこの事を医師も一般の人々も再認識することである.
  • 第1編 臨床病理学的研究
    佐々 英達, 喜納 勇
    1979 年 76 巻 3 号 p. 659-667
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胃粘液癌切除症例115例,大腸粘液癌切除症例41例を対象とした臨床病理学的検索の結果以下の結論を得た.
    1) 胃粘液癌の出現頻度は全胃癌の4.9%であり,男女比•年齢分布とも全胃癌と同様であつた.大腸粘液癌の出現頻度は全大腸癌の7.9%であり,全大腸癌に比し女性症例の比率が高く,平均年齢は全大腸癌のそれに比し著しく低年齢であつた.2)組織学的構造異型度によつて分類し比較すると,胃粘液癌•大腸粘液癌とも低分化群ほど平均年齢が低く,殊に大腸粘液癌低分化群では33.2歳と著しく低年齢であつた.3)胃粘液癌の予後はリンパ節転移の有無,深達度および構造異型度の強弱に影響されることが確認された.大腸においては結腸粘液癌の予後は直腸粘液癌の予後に比し著しく良好であつた.
  • 加登 康洋, 西邨 啓吾, 岩田 章, 熊谷 幹男, 亀田 正二, 鈴木 邦彦, 小林 健一, 服部 信, 中村 正夫
    1979 年 76 巻 3 号 p. 668-674
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡,肝生検により診断しえたHBsAg陰性の肝障害35例,HBsAg陽性の肝障害36例,肝機能障害のみられない20歳から60歳の対照6例について,EBウイルス(EBV),サイトメガロウイルス(CMV),ヘルペスウイルス(HSV)の血清抗体価を測定した.EBV,CMV,HSVの血清抗体価が対照群より高価を示したものは,HBsAg陰性群では35例中8例,5例,1例,HBsAg陽性群では36例中1例,1例,1例であり,HBsAg陰性群でのほうが陽性群より,EBV,CMVの血清抗体価が高値を示す傾向がみられた.EBVの血清抗体価が160倍以上の高値を示した5例中4例はHBsAg陰性の肝硬変であり,EBVの血清抗体価が高値を示している肝硬変5例中3例では,CMVの血清抗体価も高値を示す症例がみられた.
    以上の成績より,EBV,CMVはHBsAg陰性の慢性肝疾患,とくに肝硬変の病態と関連を有しているものと推測された.
  • とくに肝疾患,甲状腺機能亢進症患者について
    生越 喬二
    1979 年 76 巻 3 号 p. 675-683
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    合成Substance P(以下S-Pと略す)を免疫抗原として作製した抗体を使用し,2抗体法によるラジオインムノアッセイ系を確立し,検討を加えた.この系における測定限界は120pg/mlであり,VIP, ACTH,グルカゴン,ガストリン,セクレチン,モチリン,カルチトニン,CCK-PZとの交叉反応は認められなかつた.S-Pの血中濃度は正常人では平均445pg/mlであり,300pg/mlより650pg/mlに含まれており,肝疾患,甲状腺機能亢進症,慢性腎不全,分裂病で高値が認められた.甲状腺機能亢進症では,T3,T4が高値を示す症例に血中S-Pが高値を示す傾向が認められた.肝疾患では,胆道系酵素といわれているLAP, Al-P,γ-GTP,に有意の相関が認められたが,肝実質性酵素といわれている.GOT, GPTには有意の相関は認められなかつた.イヌに機械的胆道狭索を作成した実験で,経時的に血中S-P値の上昇を認めた.この事は,胆道閉塞という機序が,何か血中S-P上昇に関与していると考えられる.
  • 病理学的予後因子の検討を主として
    金 清一, 高三 秀成, 横田 峻, 高橋 純一, 戸部 隆吉
    1979 年 76 巻 3 号 p. 684-692
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    最近13年間に経験した胆道系癌84例(肝内胆管癌15例,肝管癌18例,三管合流部癌7例,膵上部胆管癌12例,膵内胆管癌13例および膨大部癌19例)を用いて,臨床病理組織学的に予後因子を検討した.男女比は2.5対1,平均年齢59.0歳,切除率48.8%,耐術率77.4%であつた.上部に比べて下部胆道癌ほど切除率が高く,予後も良い.腫瘍の切除は組織学的分化度と必ずしも相関せず,多くの腫瘍は先端部でScirrhous typeすなわち,I.N.F.,γを呈しやすいが,膵内胆管癌や膨大部癌では解剖学的位置関係により,en bloc切除可能で,予後も良い.組織学的進展•深達因子(Ly., V., P., H.)は予後を反影する.膨大部癌での肉眼型と予後は相関するが肉眼型と組織型は必ずしも相関しない.5年生存率は,膵内胆管癌27.3%,膨大部癌10.5%に認めた.予後を高めるためには,早期診断とen blocに根治的切除を行い,adjuvant療法の必要性を感ずる.
  • 第5報 新鮮凍結超薄切片法を用いたラット膵腺房細胞のX線微小分析
    寺西 伸介, 岡島 邦雄
    1979 年 76 巻 3 号 p. 693-700
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    無固定,無染色の新鮮凍結超薄切片によるラット膵腺房細胞を中心としてエネルギー分散型X線微小分析器にて元素分析を行なつた.ラット膵の新鮮凍結超薄切片の電子顕微鏡燥は従来のエポン包埋超薄切片に比べ鮮明ではないが比較的よく構造が保たれており,核,リボソームの付着した小胞体,穎粒を有したミトコンドリア,分泌穎粒など観察でぎた.また,これらの小器官のX線微小分析の結果,核ではP,K,Cl,小胞体ではP, K,ミトコンドリア穎粒ではP, Ca, K, Sに,また成熟分泌穎粒ではS, K, P, Clにピークを示したが未熟分泌穎粒ではSのピークが低かつた.腺房腔内分泌物ではS, K, P, Si, Clにピークを示した.
  • 中沢 三郎, 内藤 靖夫, 市川 正章, 梶川 学, 木本 英三, 佐野 博, 瀬川 昂生, 今井 健二, 肥田野 等, 林 繁和, 可知 ...
    1979 年 76 巻 3 号 p. 701-709
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    膵石症8例における膵超音波断層像について,臨床経過,各種X線検査所見と対比して検討を加え,以下の結果を得た.膵影の描出は高率に可能であつた.慢性再発性膵炎の急性増悪時には,膵頭体部の腫大像を認めたが,慢性膵炎(狭義)では,頭部の腫大した例,頭部は萎縮し体部は腫大した例,変化を認めない例など,様々であつた.膵石エコーは膵影内部のstrong echoとして認めるが,音響陰影の不鮮明な例では同定が難しくなる.局在した腫大に不整内部エコーを伴う例では癌腫との鑑別は困難であつたが,びまん性に斑紋状パターンを呈する例では鑑別容易である.合併したのう胞の描出は容易で,鮮明な像が得られた.
  • 平川 秀紀, 大沼 貞雄, 柏倉 淳一, 板坂 勝良, 伊藤 英三
    1979 年 76 巻 3 号 p. 710-715
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • 渡辺 明治, 東 俊宏, 林 正作, 小畑 尚宏, 大橋 淑人, 北 昭一, 長島 秀夫
    1979 年 76 巻 3 号 p. 716-727
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胃のみに限局した家族性びまん性若年性ポリポーシスの1家系を報告する.18歳の女子で,貧血,低蛋白血症,知的発育障害,茶褐色頭髪などの臨床所見を呈した.切除胃には有茎,無茎の無数のポリープが房状にみられ,その表面には不整な小陥凹が,割面では多数ののう胞が確認された.病理組織学的には,正常腺管の強い過形成とのう胞状形成,間質の浮腫など若年性ポリープの所見であつた.長兄も知的発育障害と茶褐色調で粗な頭髪を有し,14年前の14歳ですでに胃亜全別術をうけ,びまん性胃ポリポーシスが確認され,母は胃癌にて若年死している点が注目された.本症例をfamilial juvenile polyposis of the stomachと診断し,若年性ポリポーシスにおける本例の位置づけについて考察を加えた.
  • 佐藤 誠, 増田 久之, 井上 修一, 荒川 弘道, 高橋 俊雄, 河野 研一, 石館 卓三, 笹原 秀雄
    1979 年 76 巻 3 号 p. 728-733
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    A case of the gastrojejunal fistula caused by benign gastric ulcer in a 35 year old male is reported. He was admitted to our hospital with chief complaint of epigastric discomfort during the last 10 years. Laboratoy findings were within normal limits and physical examination did not contributory. Upper GI series disclosed a fistula between the stomach and jejunum. Endoscopic examination revealed a fistula and gastric ulcer on the lesser curvature at the distal gastric body. Biopsy specimens under direct vision from the margin of fistula showed no malignancy. A subtotal gastrectomy was performed. A gastric ulcer was penetrated through the transverse mesocolon into the jejunum approximately 10cm. from the ligament of Treitz. Macroscopic finding of the resected stomach showed a fistula in diameter of 3.0×1.5cm and ulcer scars, on the posterior wall at the distal gastric body. Histological finding showed no Malignancy.
    A gastrocolic fistula and a gastrojejunocolic fistula from benign gastric ulcer are relatively common but a gastrojejunal fistula is rare. Of the 8 previously reported cases of the gastrojejunal fistula from benign gastric ulcer in literatures. This is the first case reported in Japanese literatures according to our survey.
  • 白石 正勝, 山田 哲, 鈴木 三章, 角田 了, 川上 康博
    1979 年 76 巻 3 号 p. 734-739
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • 山本 晋一郎, 堀谷 喜公, 佐野 開三, 山下 佐知子, 大橋 勝彦, 平野 寛
    1979 年 76 巻 3 号 p. 740-744
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胆管の隔壁形成は極めて稀な先天性の形態異常である.我々は総胆管結石の80歳の女性で総肝管内に隔壁形成のみられた例に遭遇した.患者は,右季肋部痛を主訴として来院し,入院後発熱,黄疸,白血球増加,胆嚢腫大を来し,PTCにて総胆管内に結石を証明したさらに総肝管内に長さ3cmの縦走する陰影を認め,総胆管切開術により,これが3cm×1mmの総肝管隔壁であることを確認した.このような先天異常は現在まで文献上の報告がみられない.
  • 久内 徹, 杉田 敏夫, 木村 和夫, 西田 研治, 安達 正夫, 前原 操, 菅谷 仁, 庵 政志, 原田 尚, 田島 芳雄, 小暮 洋暉 ...
    1979 年 76 巻 3 号 p. 745-755
    発行日: 1979/03/05
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    後腹膜腫瘍について,自験例を中心に報告し,その定義,臨床像,診断,治療,予後などについて綜説し,自験例の特徴を挙げて検討した.症例1は臨床経過が2年半の平滑筋肉腫であり,肝への浸潤が強く摘出不能であつた.組織像の上からは比較的異型性が乏しいにもかかわらず,転移や浸潤が認められた.症例2は臨床経過が12年半の脂肪肉腫であり,当初から悪性腫瘍として経過したものか,良性腫瘍の悪性化したものかが問題であり,また,巨大な腫瘍にもかかわらず手術で全摘が可能であつたことは特記すべきことである.さらに,本例はBorrmann IV型の胃癌を併発しており,重複腫瘍としても貴重な一例と考えられた.
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