胆管狭窄をともなう膵頭部腫瘍は臨床の現場でしばしば遭遇する病態であるが,“膵頭部癌の胆管浸潤”か“遠位胆管癌の膵実質浸潤”かの鑑別に悩むことがしばしばある.しかし,両者においてはその診断の進め方,治療方針,予後が少なからず異なることから,鑑別を明確に行うことは臨床的に極めて重要である.現状では血液検査,画像診断,病理診断から鑑別を行っているが,これらの所見を十分に検討しても鑑別が困難な症例も少なからずある.近年,ゲノム解析の進歩によって,その診断的役割に期待が膨らむが,その一方でゲノム医療の進歩・普及によって,組織型や由来臓器を鑑別する臨床的意義が今後薄れていく可能性もある.
浸潤性膵管癌と遠位胆管癌はいずれも大部分が腺癌であり,病理学的な特徴が共通している.したがって両者の画像所見は類似し,膵頭部~遠位胆管を侵す腫瘤を認めた場合,膵頭部癌の胆管浸潤か,遠位胆管癌の膵浸潤かの鑑別に難渋することがある.両者の鑑別には,「膵病変と胆管病変のどちらが優位な所見であるか」と「主膵管拡張の有無」に注目することが有用な可能性がある.
遠位胆管癌と膵頭部癌は同じような部位に腫瘍が存在し,どちらも閉塞性黄疸,肝機能障害,急性胆管炎などの症状を呈する.手術可能な症例は膵頭十二指腸切除術となるが,原発部位によって診断方法,腫瘍の進展度診断法,治療方針,術前のドレナージなどの方針が大きく異なる.すなわち,膵頭部癌であれば組織学的診断はEUS-FNAにて行われるが,胆管癌であれば肝門側への進展を考慮しつつ,ERCPによる経乳頭的な生検が行われる.また治療方針は,切除例においては膵癌は手術前に抗癌剤などによる術前治療が行われているが,胆管癌では術前治療は行わず切除が一般的である.術前のドレナージも術前補助療法(neoadjuvant therapy;NAT)施行の有無によりステントの選択が異なる.このように方針が大きく異なるため,正確な診断が求められる.
膵頭部癌と遠位胆管癌の鑑別が,画像診断上ならびに病理学的に困難な症例がある.膵癌と胆管癌の有用な治療法は,外科的切除と術後補助療法であることが報告されている.一方で術前治療において,膵癌では術前治療により手術先行よりも生存期間が延長できることが報告されたが,胆管癌においてはいまだエビデンスはない.すなわち,遠位胆管癌と膵癌の鑑別診断が難しい症例において,外科的切除・術後補助療法は必要な治療法であるが,術前治療の適応に関しては診断がつかなければ決定できない.現在では膵癌もしくは胆管癌の鑑別を画像診断や病理診断で行うことが一般的であるが,今後,両疾患を鑑別できる新規分子マーカーの同定が急務である.
膵頭部の胆管癌と膵癌の鑑別は,病理でもしばしば困難である.両者を鑑別する明確な病理診断基準はなく,個々の病理医によって重視する鑑別ポイントは異なる.免疫組織化学や分子生物学的手法でも厳密に両者を鑑別することは難しいが,高い特異度を示す複数のマーカーを用いた鑑別方法がいくつか報告されている.また,鑑別が困難であることから,膵頭部領域の腫瘍を包括したスーパーファミリーやPRAIO(傍乳頭領域原発特定困難腺癌)といった新たな疾患概念も提唱されている.術前診断と病理診断が乖離する場合や,病理診断でも鑑別困難な場合は,カンファレンスなどで各エキスパートが詳細に検討し,総合的に診断に近づける努力が肝要であろう.
症例は61歳女性.健診での肝障害を契機に脾動静脈瘻の診断となった.治療を検討していたが,本人都合で来院されず初診時より8カ月後より腹部膨満,下痢が出現して受診し,門脈圧亢進症による腹水,腸管浮腫を認めた.コイル塞栓を行い脾動静脈瘻は閉鎖され腹水は消失し,自覚症状も改善した.無症状の脾動静脈瘻が経過中に門脈圧亢進症を呈しコイル塞栓にて治療しえた貴重な症例と考え,ここに報告する.
症例は10歳代女性.発熱と肝障害を主訴に来院.上下部消化管内視鏡検査は胃炎変化と炎症性腸疾患(IBD)を示唆する所見であった.胆管狭窄や壁肥厚はないが,肝障害が続き肝生検を施行.門脈域の浮腫状拡大と好中球浸潤,小葉間胆管の破壊像を認め,small duct原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis;PSC)と診断した.この疾患は肝生検によってのみ診断可能であり,原因不明の肝障害の鑑別として検討する意義があると考える.
症例は15歳女性.黄疸を主訴に近医受診し,急性肝不全型Wilson病(T-bil 9.2mg/dl,PT 41.3%)と診断され,MELD 25点で脳死待機リストへ登録した.当初緊急の肝移植が必要な状況であったが,急性期の集学的治療により待機中の状態を維持しえた.待機期間18カ月で脳死ドナー発生,脳死肝移植を施行した.脳死ドナーの発生が少ない本邦においては,特に長期待機可能な全身管理が重要である.
症例は56歳,女性,肝生検で非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)stage 2/grade 3と診断した.その後14年間に,肝生検を計6回施行し臨床経過をみた.肝線維化進展を示唆するAST/ALT比の上昇や,血小板,アルブミンの低下やFIB4-Index,肝線維化マーカーの変化を肝組織像と比較することができた貴重な症例であった.