日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
96 巻, 11 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 長尾 由実子, 佐田 通夫
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1249-1257
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    C型肝炎ウイルス(HCV)は,慢性肝障害や肝細胞癌の発生要因として極めて重要であると共に,最近では肝臓以外の臓器や組織にも障害を引きおこすことが知られるようになり,これらを総称して肝外病変と呼んでいる.HCVが関係する肝外病変は多彩であるが,その主な病態として,クリオグロブリン血症,膜性増殖性糸球体腎炎,晩発性皮膚ポルフィリン症,Sjögren症候群,慢性甲状腺炎,悪性リンパ腫,扁平苔癬などがあげられている.肝炎ウイルスの感染が関与した肝外病変の研究は,原因が解明されていない疾患の概念や治療法の確立に寄与するだけでなく,まだ不明な点の多い肝障害の病態を解明する突破口になる可能性がある.
  • 橋本 英樹, 岩男 泰, 日比 紀文, 上野 文昭, 宮原 透, 杉田 昭, 櫻井 俊弘, 福原 俊一
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1258-1265
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    目的: クローン病患者の生活の質(以下QOL)に対する患者の臨床・心理・社会的特性の複合的影響を検討する.対象・方法: クローン病外来患者222名を対象に,健康関連QOL,疾患特異的症状・心理的適応状態・社会的サポートを横断的に質問票にて測定,疾患活動性などの臨床指標とともに多変量線形回帰分析にてモデル化した.結果: 自覚的症状や精神症状・社会的機能・全般的健康感は,疾患活動性などの臨床指標のみならず,心理的適応や社会的サポートととも有意な関係を認めた.結論: 患者QOLの向上には,臨床状態の改善に加え,心理・社会的要素をターゲットにした患者教育・社会的啓蒙活動が必要であることが示唆された.
  • 中澤 俊郎, 鈴木 健太, 小林 勲, 森田 哲郎, 五十嵐 俊彦
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1266-1270
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    急性胃蜂窩織炎は従来早期診断が困難なうえ,保存的治療の予後は極めて不良な疾患と考えられてきた.今回,急激な発熱と上腹部痛にて発症し,腹部CT検査で胃体部の全周性の壁肥厚を認めるほか,内視鏡検査にて胃粘膜の著明な発赤腫大や生検部位から膿汁流出を認め,採取した胃粘膜の細菌検査でもグラム陽性球菌が検出されたため,早期に本症と診断し抗生物質の投与のみによる保存的治療により治癒しえた1例を経験したので報告する.
  • 中村 英明, 川原田 信, 見田 裕章, 明石 浩史, 得能 徹也, 仲野 龍己, 垣内 英樹, 佐藤 昌明, 遠藤 高夫, 今井 浩三
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1271-1275
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性,左下腹部痛と発熱を主訴に近医受診し精査加療目的で転科となった.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に辺縁整で深い打ち抜き様の潰瘍を認め,下部消化管造影検査では同部位で,腸管外へのバリウムの漏出を認めた.手術所見と病理所見から急性虫垂炎のS状結腸穿破と診断した.虫垂炎の消化管穿破に関する報告は過去十年間で本邦3例海外1例と極めて少なく,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 尹 浩敏, 落合 利彰, 中村 和彦, 原田 直彦, 千々岩 芳春, 名和田 新, 佐々木 達
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1276-1280
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.消化管出血のために当科に入院.消化管造影検査で小腸が腹部の右側に,大腸は左側に位置し,腸回転異常症(nonrotation type)と考えられた.また99mTC RBCシンチグラフィで上部小腸に集積が認められ,小腸造影検査とあわせ,空腸憩室からの出血が疑われた.開腹手術が施行され,2個の偽性小腸憩室を合併した腸回転異常症と診断された.成人の腸回転異常症の報告は合併症をともない,偶然に発見されることが多いが,これまで空腸憩室出血を契機に発見された報告はなかった.自験例での,憩室合併の原因として,腸回転異常にともなう慢性的な上部小腸における腸管通過障害の関与が示唆され,興味ある症例と思われた.
  • 追矢 秀人, 大川 清孝, 中井 隆志, 佐野 弘治, 青木 哲哉, 森吉 靖子, 倉井 修, 木岡 清英, 根引 浩子, 岡 博子, 針原 ...
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1281-1284
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.主訴は発熱と腹痛.他院にて保存的に治療されるも症状改善せず,当院へ紹介となった.当院でのGaシンチで腹部全体に高集積,両側胸壁,両大腿部表面に淡い集積を認めた.また経過中,下腹部および上下肢に皮下硬結が出現し,生検にて脂肪織炎であった.以上より,臨床症状,画像所見と合わせてWeber-Christian病と診断した.診断後,副腎皮質ステロイドを投与し軽快した.
  • 澤井 照光, 辻 孝, 七島 篤志, 地引 政晃, 山口 広之, 安武 亨, 中越 享, 綾部 公懿, 山崎 和文
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1285-1289
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    同時性胃壁内転移をともなう上行結腸癌の1切除例を経験した.術後,肺・膵体尾部・S状結腸壁に再発を来たし,術後1年9カ月後に癌性腹膜炎のため死亡した.本症例における転移形式と大腸癌胃壁内転移の本邦報告例11例の臨床像から考えると,転移形式を説明できるのは直接大循環へ流入する血行性転移であった.
  • 宮崎 敬子, 久松 理一, 海老沼 浩利, 柏木 和弘, 矢島 知治, 高石 官均, 岩男 泰, 渡辺 守, 日比 紀文, 石井 裕正
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1290-1294
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎の治療としてはスルファサラゾピリジンおよび5アミノサリチル酸製剤に加え副腎皮質ステロイドが内科的治療の主体となるが,これらの治療に抵抗する例やステロイドの減量が困難な症例が一部に存在する.我々はシクロスポリンA持続静注療法により緩解導入に成功し,少量6メルカプトプリン投与で緩解維持に成功しているステロイド抵抗性難治性中等症潰瘍性大腸炎の1例を報告した.本療法は難治性潰瘍性大腸炎の緩解導入療法として有効であると考えられた.
  • 中馬 誠, 藤永 明, 須賀 俊博, 宮川 宏之, 長川 達哉, 後藤田 祐子, 香山 明一
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1295-1301
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    肝血管肉腫は肝原発悪性腫瘍の中でも比較的まれな疾患である.予後は極めて不良であり,生前診断も困難であることが多い.今回我々は,診断に苦慮し,経過を追い,剖検にて診断した多発性の肝血管肉腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 菅 誠, 儘田 幸貢, 水野 博, 冨永 友也, 佐藤 明, 鈴木 博, 萩原 優, 品川 俊人, 鈴木 通博
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1302-1307
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は膵腫瘍,肝転移の48歳,男性.血管造影にて腫瘍濃染を示さず,エコー下膵腫瘍生検,肝腫瘍生検を施行し,非機能性膵島腫瘍および肝転移と診断した.手術を施行したが,肝右葉の2カ所の転移が残存したため,経皮的エタノール注入療法(PEIT)にて治療し,その後約3年間再発を認めていない.腫瘍濃染を呈さない非機能性膵島腫瘍の小肝転移巣に対してPEITが有用であった症例を報告した.
  • 川島 恵, 吉岡 敏文, 澤山 智之, 清藤 哲司, 田中 盛富, 荒尾 徳三, 栗山 宗彰, 永野 拓也, 上坂 好一, 田中屋 宏爾
    1999 年 96 巻 11 号 p. 1308-1312
    発行日: 1999/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    大量の上部消化管出血を来した十二指腸迷入膵の1例を経験した.症例は74歳女性,大量の吐下血を主訴として来院,ショック状態であり著明な貧血を認めた.緊急上部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚に不整型の粘膜下腫瘍様病変を認め,その頂部よりの湧出性出血を確認した.O-ringによる結紮術にて止血を行い2日後根治目的にて腫瘍核出術を行った.病変はVater乳頭部より2cm肛門側・後壁に存在しており,中心に5mm径の潰瘍をともなう径15mm大の低い隆起を呈していた.病変のほぼ中央部の粘膜下を径1mmの動脈が走行しているのが確認され,これを結紮切離し病変部を摘出した.病理所見では粘膜下層にHeinrich II型迷入膵が存在しその近傍に破綻した動脈が存在,粘膜下出血の形態をとっていた.
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