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NSAIDsと胃病変
竹内 孝治, 田中 晶子, 宮澤 徹
2002 年 99 巻 7 号 p.
751-759
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)による胃粘膜損傷の発生は,シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害に基づく内因性プロスタグランジン(PG)の産生低下に端を発した防御系の脆弱化を背景として,胃酸の存在,胃運動元進,好中球浸潤および活性酸素などにより説明されている.一方,臨床では胃傷害性の低いNSAIDとして選択的COX-2阻害薬が登場し,胃損傷発生とCOXアイソザイムの関連性も注目されている.本稿ではこれらの因子を薬理学的に検証すると共に,特に背景要因として重要であるCOX阻害の役割についてCOXアイソザイムとの関連も含めて最近の知見を紹介し,NSAID誘起胃損傷の発生機序を再考する.
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NSAIDsと胃病変
平石 秀幸, 太田 慎一, 寺野 彰
2002 年 99 巻 7 号 p.
760-768
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
消化性潰瘍の主要な病因として,
Helicobacter pylori(
H.pylori)感染,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug;NSAID)が挙げられる.近年一般人口における
H.pylori陽性率が低下する一方,抗炎症,鎮痛,抗血小板などの目的で繁用されるNSAIDは高齢化社会の到来とともに骨関節疾患,結合織疾患,脳血管障害・虚血性心疾患の1次あるいは2次予防などのために,その使用頻度は増加すると予測される.「科学的根拠に基づく胃潰瘍診療ガイドラインの策定に関する研究」を行い,NSAID胃潰瘍に対する治療のガイドラインとして,以下のステートメント(案)を策定した.1.NSAIDは可能ならば中止し通常の潰瘍治療を行う.2.NSAIDの中止が不可能ならば,プロトンポンプ阻害薬(PPI)あるいはプロスタグランジン(PG)製剤により治療を行う.3.NSAID継続下での再発の防止には,高用量のH
2受容体拮抗薬,PG製剤あるいはPPIが有効である.4.
H.pylori除菌が潰瘍の治癒あるいは再発の防止に有効であるとの科学的根拠(evidence)はない.
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西 正孝, 森安 史典
2002 年 99 巻 7 号 p.
769-778
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
内視鏡的・外科的に切除された大腸sm癌104例について1.sm浸潤距離の測定,2.a)前立腺癌で提唱されているGleason分類を応用した組織学的分化度のスコア化(modified Gleason's grading system)による組織学的再評価,2.b)細胞接着因子であるE-cadherinの免疫組織学的検討を行った.sm浸潤距離では1000μm未満でリンパ節転移した症例は1例も認めなかった.組織学的再評価ではhigh score群がリンパ節転移と相関し,low score群には1例もリンパ節転移は認めなかった.E-cadherinの免疫組織学的検討ではdestructive patternがリンパ節転移と相関し,腫瘍全体の分化度の低下の背景には細胞接着因子の減弱が関与していると考えられた.今回の検討により1000μm未満の症例は内視鏡治療の適応と考えられ,1000μm以上浸潤した症例でも組織学的再評価を加味することで,内視鏡的治療の適応拡大の可能性が示唆された.
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太田 美樹子, 野田 愛司, 伊吹 恵里, 泉 順子, 山本 真紀子, 来海 円
2002 年 99 巻 7 号 p.
779-788
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
慢性膵炎の成因別初発症状と臨床症候について,1986年の厚生省全国調査報告をもとにしてオッズ比を用いて検討した.初発症状9項目:(1)アルコール性では非アルコール性,胆石性および特発性に比して,腹痛,背部痛,食欲不振および「やせ」が,(2)胆石性ではアルコール性および特発性に比して黄疸が,(3)特発性では胆石性に比して食欲不振,下痢,腹部腫瘤が有意に多く認められた.臨床症候25項目:(1)アルコール性では飲酒に関連すると思われる21~24症候が,(2)胆石性では胆石,胆嚢炎に起因する3ないし4症候が,(3)特発性では胆石性に比して下痢,体重減少や膵腫大を含む4症候が有意に多く認められた.
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中井 実, 白子 順子, 白子 隆志, 後藤 尚絵, 端山 暢郎, 大西 隆哉, 浅野 寿夫, 棚橋 忍, 亀谷 正明, 岡本 清尚
2002 年 99 巻 7 号 p.
789-797
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
当院にて食道癌術後早期胃管癌の2例を経験した.症例1は内視鏡的粘膜切除術およびヒータープローブによる焼灼,症例2は胃管部分切除術を施行した.本邦報告例の検討から,胃管癌は胃管下部に多く,高分化腺癌の頻度が高い傾向にあった.また早期胃管癌は食道癌術後2年以内に発見される頻度が高かった.自覚症状にて発見された症例のほとんどが進行癌であり,早期発見には年1回の定期内視鏡検査が必要であると考えられた.
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高島 英隆, 木村 浩之, 中村 英樹, 名生 諭史, 奥山 祐右, 菅田 信之, 八木 信明, 久津見 弘, 陶山 芳一, 藤本 荘太郎, ...
2002 年 99 巻 7 号 p.
798-802
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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AFPが高値を示した十二指腸内分泌細胞癌の1例を経験した.腫瘍は低分化型腺癌様の細胞からなり,クロモグラニンA染色陽性,電顕にて内分泌穎粒を認めた.索状構造を示す部分(hepatoid adenocarcinoma)も見られ,AFP染色が陽性であった.腫瘍がAFPを産生しており,このことは内分泌細胞癌の発生母地を想定する上で興味深いと考えられた.
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小市 勝之, 津川 周三, 岩根 弘明, 中積 智子, 永吉 俊朗, 北川 正信
2002 年 99 巻 7 号 p.
803-807
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は60歳男性.貧血とALP高値の精査目的入院となった.X線検査,CTにて骨硬化像を呈するびまん性骨転移癌を認めた.また,骨シンチグラフィーではsuper bone scanを呈した.原発巣は胃で,内視鏡的には分類不能型またはBorrmann4型と考えられ,組織型は印環細胞癌であった.約3カ月の経過で播種性血管内凝固症候群を併発し死亡された.一般に胃癌骨転移の予後は不良であるが,その中でも骨硬化像を呈するものは特殊な病態であると考えられた.
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村松 友義, 丸高 雅仁, 松三 彰, 渡邊 直美, 村上 和春
2002 年 99 巻 7 号 p.
808-813
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は35歳,女性.ダイエット目的でビール酵母を2カ月間服用していたが上腹部痛,右背部痛,下痢が出現したため来院した.来院時末梢血白血球9500/mm
3で好酸球が39%を占めていた.腹水および胃,十二指腸の生検で多数の好酸球を認め好酸球性胃腸炎と診断した.ステロイド投与により症状および検査所見は速やかに改善した.本症例の免疫学的所見を提示するとともに若干の文献的考察を加えた.
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富安 信夫, 光山 慶一, 都田 憲司, 鈴木 飛鳥, 高木 孝輔, 鶴田 修, 豊永 純, 佐田 通夫, 日高 久光
2002 年 99 巻 7 号 p.
814-819
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は29歳男性.15歳時に潰瘍性大腸炎と診断され,再燃と緩解を繰り返し,全大腸に連続性狭窄をきたした.経過中に強直性脊椎炎,仙腸関節炎,ブドウ膜炎,大動脈炎症候群を発症した,さらに難治性痔痩を合併し,双孔式回腸人工肛門を造設したが改善せず,肛門周囲膿瘍,直腸会陰痩を併発した.腸管病変はステロイド離脱困難で全大腸切除を行った.潰瘍性大腸炎に多彩な腸管外合併症,全大腸に連続性狭窄,肛門周囲膿瘍,直腸会陰瘻を合併した極めてまれな症例と考えられた.
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前田 直人, 満田 朱理, 香田 正晴, 孝田 雅彦, 細田 明秀, 汐田 剛史, 村脇 義和, 周防 武昭, 川崎 寛中
2002 年 99 巻 7 号 p.
820-827
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は60歳女性.貧血の精査中,腹部超音波検査にて左腎動脈下方にドプラ法で豊富な血流を示す径6cmの腫瘤を認めた.内視鏡検査および小腸透視にて十二指腸水平脚に発育する粘膜下腫瘍を認め,腹部CT,血管造影所見などから平滑筋腫と診断した.貧血の原因と考え開腹下に十二指腸部分切除を施行した.病理組織学的に腫瘍は充実性束状に増生した紡錐形細胞からなり,免疫組織化学染色にて腫瘍細胞がc-kit,CD34に陽性を示したため,gastrointe stinalstromal tumor(GIST),un-committed typeと診断された.術後経過は良好で,以後貧血の再発はみられていない.
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鈴木 克昌, 吉本 貴宣, 脇 信也, 中村 晃, 佐竹 信祐
2002 年 99 巻 7 号 p.
828-832
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は43歳男性.腹部超音波で肝腫瘤指摘され,腹部CT,MRI,腹部血管造影,CT during arterial portography(以下CTAP),肝腫瘍生検より限局性結節1生過形成(以下FNH)と考えられた.腹部血管造影の際に右肝動脈起始部に動脈瘤を認めた.FNHには,血管奇形や神経内分泌学的異常との合併が報告されているが,肝動脈起始部動脈瘤との合併は報告例がなく,文献的考察を加え報告する.
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山藤 和夫, 辻 忠男, 守瀬 善一, 林 憲孝, 小木曽 智美, 加藤 博士
2002 年 99 巻 7 号 p.
833-837
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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患者は46歳の男性.胆嚢および総胆管結石症にて入院.ERCP検査にて総肝管が本来の位置に造影されず,右肝管系の合流部付近から起始して胆嚢管に合流する胆管を認めた.胆嚢摘出を目的に手術を行ったところ,総肝管は本来の位置に認められたが内腔が閉鎖しており,ERCPで造影された右肝管と胆嚢管との間の胆管は交通枝で,これが本例における唯一の胆汁流路となっていた.
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成林 葉子, 田井 茂, 名方 保夫, 横川 修作
2002 年 99 巻 7 号 p.
838-842
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は53歳男性.健康診断にて,膵に直径1cm大の腫瘤を指摘され,本院に精査目的で紹介された.画像診断の結果,膵内分泌腫瘍が疑われたため,膵腫瘍摘出術を施行した.術前,血中ホルモン検査では明らかな異常を認めず血中活性物質の同定はできなかったが,手術標本による免疫組織化学的染色にて膵グルカゴノーマと診断した.膵内分泌腫瘍の中でグルカゴノーマは比較的まれであり,本症例のように直径1cm大でしかも術前に膵内分泌腫瘍であることが予測された症例は,さらにまれであるため,過去の報告例の検討を含めて報告する.
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岸川 浩, 西田 次郎, 中野 雅, 細江 伸央, 井口 豊崇, 田中 豊治, 寺山 清美, 田中 陽一, 石井 裕正
2002 年 99 巻 7 号 p.
843-847
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
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症例は53歳,女性.健康診断にて血小板の減少を指摘され当院を受診.腹部超音波検査にて著明な脾腫を認め入院となった.血管造影などの検査にて脾腫による血小板減少症と考えたが,血栓の原因の特定は困難であり,特発性脾静脈血栓症と考えられた.進行性の血小板減少を認め,また画像上で脾臓原発の悪性腫瘍が否定できなかったため脾臓摘出術を行い,術後血小板数は正常化した.
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井戸 健一, 穴沢 貞夫, 神澤 輝実, 工藤 進英, 鈴木 一幸, 砂川 正勝, 田中 直見, 吉川 敏一, 上西 紀夫, 松野 正紀
2002 年 99 巻 7 号 p.
850-852
発行日: 2002/07/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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