炎症性腸疾患(IBD)の発症に腸管での過度のT helper(Th)反応が関与している.Th反応はTh1,Th2,Th17からなり,正常の腸管では免疫反応を制御するregulatory T cellとの間でバランスが保たれている.IBD腸管ではその調節機構が破綻しており,クローン病ではTh1,Th17反応の亢進が,潰瘍性大腸炎ではTh17反応の亢進とIL-13発現上昇がみられる.IBD腸管のTh制御機構破綻のメカニズムを明確にすることは,治療のターゲットを明らかにし,新規治療法開発に重要である.IBDにおけるTh反応制御異常に関して最新の知見を含めて解説する.
大腸憩室出血症例において,出血憩室を同定するための大腸鏡前処置の有用性と検査の時期,止血法について,大腸鏡施行110症例にて検討した.ポリエチレングリコール(PEG)溶液による前処置施行例のほうが未施行例より出血点の同定率が高い傾向を示し(28.2% vs. 12.0%,p=0.11),最終下血から18時間以内に大腸鏡を施行した例では,それ以後に比し有意に高かった(40.5% vs. 10.5%,p<0.01).下血症例で憩室出血が疑われるものには,全身状態が許せばPEG溶液の前処置を行い,最終下血より18時間以内に大腸鏡を行うことで,出血点を同定することについて改善し得ると思われた.