日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
110 巻, 11 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
  • 中村 和彦, 井星 陽一郎, 伊原 栄吉
    2013 年 110 巻 11 号 p. 1889-1899
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/05
    ジャーナル フリー
    炎症性腸疾患(IBD)の発症に腸管での過度のT helper(Th)反応が関与している.Th反応はTh1,Th2,Th17からなり,正常の腸管では免疫反応を制御するregulatory T cellとの間でバランスが保たれている.IBD腸管ではその調節機構が破綻しており,クローン病ではTh1,Th17反応の亢進が,潰瘍性大腸炎ではTh17反応の亢進とIL-13発現上昇がみられる.IBD腸管のTh制御機構破綻のメカニズムを明確にすることは,治療のターゲットを明らかにし,新規治療法開発に重要である.IBDにおけるTh反応制御異常に関して最新の知見を含めて解説する.
今月のテーマ:潰瘍性大腸炎診療のトピックス
  • 藤谷 幹浩, 高後 裕
    2013 年 110 巻 11 号 p. 1900-1908
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎では臨床所見を指標として活動性が評価される.しかし,臨床症状が改善しても,内視鏡的,組織学的に炎症が残存している例が多く,このような例では長期の寛解が得られない.そこで,粘膜に炎症所見が認められない状態,いわゆる粘膜治癒を治療エンドポイントとすることが提唱されている.これまでの研究から,粘膜治癒症例では,長期の寛解が維持され,腸管切除の頻度も低いことが明らかにされた.しかし現状では,粘膜治癒の定義や判定時期が明確ではなく,粘膜治癒が得られない例への対応も確立されていない.今後,粘膜治癒の定義を統一し,治療法別に経時的な粘膜治癒達成率を明らかにしていくと同時に,粘膜治癒が得られない例に対する新規治療法の開発が期待される.
  • 長堀 正和, 藤井 俊光, 齊藤 詠子, 大塚 和朗, 渡辺 守
    2013 年 110 巻 11 号 p. 1909-1915
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/05
    ジャーナル フリー
    中等症から重症の難治性潰瘍性大腸炎において,インフリキシマブに代表される生物学的製剤は,有効で比較的安全な治療薬である.インフリキシマブは,寛解導入治療としてはカルシニューリン阻害薬とほぼ同等の有効性が示唆され,また維持療法としての有用性も示されている.アダリムマブや,今後登場するであろうGolimumabは,皮下投与という利便性を中心に選択肢となってくる.今後は,特に潰瘍性大腸炎重症例において,どのような症例に生物学的製剤を選択すべきか,本邦での多施設共同無作為割付試験の結果などから明らかになっていくことが期待される.
  • 仲瀬 裕志
    2013 年 110 巻 11 号 p. 1916-1921
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/05
    ジャーナル フリー
    本邦における潰瘍性大腸炎の増加にともない,難治例に対して免疫抑制剤を使用する頻度が増加している.カルシニューリン阻害剤であるタクロリムスは,難治性および重症潰瘍性大腸炎に有効な薬剤である.日本および欧米の今までの報告から,難治例に対するタクロリムス短期治療効果は約70%と考えられる.タクロリムスや抗TNF-α製剤など,潰瘍性大腸炎治療に関するさまざまな治療オプションが増加する中で,われわれはタクロリムスの位置付けを明らかにしていく必要がある.加えて,個々の患者にとってどの治療法が適切であるのかを見極めることは,患者QOLに貢献しうる.これらは,消化器医師にとって今後の重要な課題である.
最近の話題
原著
  • 水城 啓, 立道 昌幸, 鳩貝 健, 岩崎 栄典, 泉谷 幹子, 前田 憲男, 中澤 敦, 重松 武治, 塚田 信廣, 永田 博司, 日比 ...
    2013 年 110 巻 11 号 p. 1927-1933
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/05
    ジャーナル フリー
    大腸憩室出血症例において,出血憩室を同定するための大腸鏡前処置の有用性と検査の時期,止血法について,大腸鏡施行110症例にて検討した.ポリエチレングリコール(PEG)溶液による前処置施行例のほうが未施行例より出血点の同定率が高い傾向を示し(28.2% vs. 12.0%,p=0.11),最終下血から18時間以内に大腸鏡を施行した例では,それ以後に比し有意に高かった(40.5% vs. 10.5%,p<0.01).下血症例で憩室出血が疑われるものには,全身状態が許せばPEG溶液の前処置を行い,最終下血より18時間以内に大腸鏡を行うことで,出血点を同定することについて改善し得ると思われた.
症例報告
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