日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
120 巻, 3 号
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今月のテーマ(総論):機能性消化管疾患―過敏性腸症候群と慢性便秘症診療の最前線
  • 奥村 利勝
    2023 年 120 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)のガイドラインが2020年に改訂され,最新版が出版された.特に薬物治療に関しては,近年の新規便秘薬の登場により選択肢が広がってきた.IBSの病態の中心には脳腸相関があるが,この脳腸相関を調整して病態をコントロールするには至っていない.主要病態である内臓知覚過敏やleaky gutの中枢メカニズムを解明し,病態を改善してIBSの治療を目指すことは合理的である.われわれは脳内orexin神経を刺激・活性化することで,leaky gutを改善しIBSを治療できる可能性があることを提唱する.

今月のテーマ(総説):機能性消化管疾患―過敏性腸症候群と慢性便秘症診療の最前線
  • 金澤 素, 福土 審
    2023 年 120 巻 3 号 p. 209-217
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)は症状に基づいて診断するが,それは確立した診断バイオマーカーが存在していないためである.現在ではRome IV診断基準が広く用いられている.IBSはストレスなどの誘発因子によって発症あるいは増悪しやすいが,そのことから中枢機能異常と消化管機能異常が相互に関連し合って「脳腸相関の病態」を形成していると考えられるようになった.研究の進歩によって,その主要な病態生理としては①消化管運動異常,②内臓知覚過敏,③消化管粘膜・免疫異常,④腸内細菌叢の異常ならびに⑤中枢神経系プロセスの異常が示唆されている.患者の背景にあるこれらの病態概念を想定したうえでIBS診療にあたることが重要である.

  • 田中 義将, 荻野 治栄, 伊原 栄吉
    2023 年 120 巻 3 号 p. 218-230
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    過敏性腸症候群の治療は食事と生活習慣を指導した後に,薬物療法の第1段階として消化管主体の治療を行う.第1選択薬として消化管運動機能調節薬,プロバイオティクス,高分子重合体を使用する.また,IBS分類に応じて下痢型には5-HT3拮抗薬,便秘型には粘膜上皮機能変容薬を投与する.症状の改善が不十分な場合は,優勢な症状に対して止痢薬,抗コリン薬,5-HT4刺激薬,下剤を追加する.さらに,漢方薬,抗アレルギー薬,胆汁酸関連薬や抗菌薬を考慮する.これらの薬物療法が無効な場合,第2段階として抗うつ薬,抗不安薬を用いた中枢機能の調整を含む治療を考慮する.さらに改善が得られない場合,心理療法を考慮する.

  • 中島 淳
    2023 年 120 巻 3 号 p. 231-238
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    本邦ガイドラインで機能性便秘症は,結腸通過時間および直腸肛門機能検査に基づいて結腸通過時間正常型(normal transit constipation),結腸通過時間遅延型(slow transit constipation),便排出障害(outlet obstruction)に分類される.しかし,本邦における実地診療では結腸通過時間の測定などが実施困難なことが多く問題が多い.本稿では特別な検査機器を用いなくても診断ができる方法について概説を行った.また最近では高齢化社会を背景に直腸の糞便塞栓が問題になってきており,その診断に直腸エコーが活用されるようになってきた.実地診療では結腸通過時間や直腸肛門機能検査を簡単に行うことはできないが,治療方針策定のためには排便回数や便性状スケールを用いたり,直腸指診,さらには直腸エコーを用いてある程度診断できるようになってきた.

  • 水上 健
    2023 年 120 巻 3 号 p. 239-249
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

    慢性便秘症は,器質的疾患が除外され,6カ月間以上,本来排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態である.治療が難しい原因に,①複数ある病態を知る方法がないこと,②糞便量に影響する食事内容・量,生活習慣の大きな個人差,③その状態に満足するか否かが問題であること,の3つがある.患者満足度が問題となる機能性疾患として,患者自身の病態とその状態を知り,わかりやすく説明する必要がある.どこでも利用可能な腹部X線は結腸内や直腸の便量・形状を示し,病態を推測して説明するツールにもなる.病態別に腹部X線を用いた診断と治療ロジックを提示し,便秘薬の使い分けを踏まえて解説する.

症例報告
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