遺伝性消化管ポリポーシスの遺伝子異常について概説した.家族性大腸腺腫症(FAP)は
APC遺伝子に起因することが確立されて以来,APC蛋白および関連蛋白の機能や,APC遺伝子変異とFAPの多彩な臨床徴候との関係が検討されている.また,
APC遺伝子の同定により,本症の亜型であるattenuated FAPの存在も明らかとなった.一方,FAPとは独立した疾患と考えられてきたTurcot症候群は,
APC遺伝子ないしミスマッチ修復遺伝子の変異に起因する2つの病態が含まれていることが示唆されている.過誤腫性ポリポーシスの遺伝子に関する研究は1995年以降に飛躍的に進歩し,Cowden病,Peutz-Jeghers症候群および若年性ポリポーシスの原因遺伝子として,PTEN,LKB1,SMAD4などが明らかとなっており,いずれの遺伝子も細胞増殖のシグナル系に関与する腫瘍抑制遺伝子として注目されている.
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