日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
72 巻, 9 号
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  • 中村 治雄, 石川 昌子
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1069-1074
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    エタノールをマウスに投与すると肝コレステロール, とくにエステルコレステロールが著しく増加するのでこの機序を解明するために行つた. 肝コレステロールの生合成はエタノールの注射投与では減少したが, 経口投与では増加した. エタノール投与動物肝ミトコンドリアによるコレステロール-26-14Cの酸化は減少しエタノール投与動物にコレステロール-4-14C投与による糞便中への総胆汁酸-14Cの排泄, およびコール酸-24-14Cまたはヘノデオキシコール酸-24-14C投与による糞便中へのコール酸またはヘノデオキシコール酸排泄が減少した. またコレステロール-4-14Cによる小腸からの吸収には変化なかつた. これらのことからエタノールによる肝コレステロールの増加は胆汁酸生合成の抑制および胆汁酸の排泄の減少によると思われる.
  • 伊集院 一成
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1075-1094
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胆汁蛋白質は, 胆石生成論との関連において古くから研究されてはきたが, その本態ならびに意義に関しては, 今日なお明確でない. 著者は, 胆汁特有蛋白質に対する特異抗血清を用いて, α-globulin 類似の易動度を有する胆汁特有蛋白質の存在を再確認するとともに, 胆汁特有蛋白質を硫安塩析•Sephadex G-75ゲル濾過•DEAE-Sephadex A-25イオン交換クロマトグラフィー法により, 人肝胆汁から分離し, さらに, affinity chromatography による精製を行つた. 精製した胆汁特有蛋白質は, 分子量約7万 (SDS-DISC電気泳動法) の, hexose, N-acetylhexosamine, L-fucose, uronic acid, sialic acid を含有する糖蛋白質であり, 胆石形成に重要な役割をなす可能性が推定される.
  • 西村 明, 中野 喜久男, 間山 素行
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1095-1102
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
  • とくに輸血例について
    安部 明郎, 沓掛 伸二, 島野 毅八郎
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1103-1107
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    志方によつて報告されたパラフィン切片のHB-抗原染色法の1つ Aldehyde-Fuchsin 染色を用い過去の剖検例の中から輸血例を対象として形態学的にHB-抗原の検索を試みた. 昭和30年より昭和48年迄の内科入院中輸血を受けたことのある剖検例から検索可能な149例を対象とした.
    その結果, 1) 輸血剖検例の約10%に本染色陽性例をみいだした. 2) 本染色陽性例は肝疾患群に比較的多くみられ, その中には肝硬変も含まれ, 輸血以外の要因も考えられた. 3) 本染色陽性群の肝組織所見では, 肝細胞障害, 円形細胞浸潤, 結合織増生などの所見のいづれかが, すべての症例に認められたが, ウイルス性肝炎とは決定し難かつた.
  • 北島 政樹, 竹下 利夫, 米川 甫, 伊藤 三千郎, 奈良 圭司, 植松 義和, 渡部 恒也, 江口 研二
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1108-1119
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    胃癌の肝転移を術前に察知することは臨床上重要である. かかる観点から術前検査として, 対象胃癌94例に対し, 1) 肝シンチグラム, 2) 選択的腹腔動脈造影, 3) α-フェトプロティンの測定, 4) 肝機能検査 (Al-p, ICG) を行い, それぞれに対し分析を行い, 臨床的検査の意義について検討した. 肝シンチグラフィーは腫瘍が3cm以下の場合, および辺縁の読影に関し困難性を認めた. 一方選択的動脈造影では, 腫瘍血管の直接変化である血管増生像, 腫瘍濃染像が所見として存在しない場合は診断不可能な場合が多かつた. 従つて両検査の併用が重要であつた. また肝機能検査およびα-フェトプロティンは補助診断としての域を脱し得ず, α-フェトプロティンは1例 (Borrmann III型) に陽性を認めた.
  • 宮岡 孝幸, 三崎 文夫, 木本 邦彦, 川井 啓市, 加藤 三郎, 竹林 政史, 福本 圭志, 光吉 靖夫
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1120-1127
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    38例の消化性潰瘍患者と3例の健康人で double sampling test meal 法を用いて消化性潰瘍患者の胃排出機能を検討した. double sampling test meal 法は優れた再現性をもつ簡便な検査法ではあるが胃内量が50ml前後になるとばらつきがみられたため, 胃内量が100mlとなる時間を胃排出時間とした. 胃排出パターンは log scale, square root scale, unclassified pattern の3つに分類されたが, このパターンは胃の形態に規制を受け潰瘍の経過とは無関係であつた. 一方, 胃排出時間は潰瘍の部位別, 病期別での有意な差はなく, 同一例の follow up でも十二指腸潰瘍では治癒に向かうにつれ短縮傾向がみられたが, 胃潰瘍では一定の傾向がなく消化性潰瘍の病態の複雑さを窺わせた.
  • 谷 昌尚, 島津 久明, 谷 礼夫, 阿部 薫
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1128-1137
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    近年におけるガストリンの radioimmunoassay (RIA) の開発•普及によつてその測定成績がしばしば報告されるようになつているが, 諸家の測定値の間にはきわめて様々な差異が認められる. そこで今回著者らは二抗体法によるガストリンのRIAを確立し, この測定法を構成する諸因子について基礎的な検討を行なつた結果, 抗体の特異反応性, 標準ガストリンの力価, incubation damage の処理方法などが測定値に著明な影響をおよぼすことをあきらかにした. またB•F分離方法の選択や標準ガストリンの抗原性の変化についても充分な配慮を要するものと考えられた.
  • 石井 公道, 土屋 雅春
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1138-1143
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    肝傷害慢性化の機序に関して自己アレルギー機構と, アレルギー反応の際の化学的伝達物質で血管作働性アミンの一つであるヒスタミンの意義について実験的に研究した. 家兎に同種肝抗原とヒスタミンを投与するとヒトの慢性肝炎活動型に酷似する像が得られ, さらに偽小葉形成を伴う肝硬変へ進展した. また肝細胞癌, 胆管癌, 細胆管増生並びに上皮過形成を夫々1例惹起し得, 肝細胞癌例では肺, 腎, 脾への転移が認められた. これらの所見は肝傷害慢性化には自己アレルギー機序が密接に関与しており, 遷延する抗原刺激及びそれによる高ヒスタミン血症と微小循環系の擾乱が悪性化とその進展に重要な役割を担つていることが示唆された.
  • 小泉 正, 中瀬 明
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1144-1151
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    Vx2カルチノームを家兎膵管内に注入移植して, 移植膵癌を作成した. 膵管内の腫瘍細胞は膵実質内に浸潤発育したが, 膵管閉塞の存在が浸潤を促進した. これには, i)膵管末端の変性崩壊部からの腫瘍細胞の実質への逸脱, ii) 腫瘍の膵管壁への直接の着床破壊と実質への浸潤, の2つの機序がある. 膵実質内へ浸潤した腫瘍は, 膵内血管, 膵内リンパ管を介して膵内を非連続性に浸潤した. 即ち, 膵管, 膵内血行路, 膵内リンパ路は膵悪性腫瘍の膵内浸潤路と考えられる. 腫瘍からかなり離れた部位の膵内脈管内にも腫瘍細胞が発見されるから, 膵悪性腫瘍の根治手術施行にあたつては, 膵内における腫瘍の非連続性浸潤の存在を念頭に置く必要がある.
  • 小泉 正, 中瀬 明
    1975 年 72 巻 9 号 p. 1152-1160
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    Vx2カルチノーを家兎膵管内に注入移植して移植膵癌を作成した. 人の膵頭部癌を想定して膵頭部に限局移植した場合, 癌は膵尾部に向つて連続性, 拡大性に浸潤発育を行なうとともに主腫瘍より膵尾側に非連続性の娘腫瘍を多数生じた. 一方, 膵体尾部癌を想定して膵体尾部に限局移植した場合, 癌は膵頭部に向つて連続性, 拡大性に浸潤発育したのみで, 主腫瘍より膵頭側には娘腫瘍の形成はなかつた. この相違には, 膵管閉塞の有無とリンパの流れとが関係していると思われる. 膵癌の根治手術施行の際, 少なくとも主腫瘍より尾側の膵は切除すべきであり, 従つて, 膵頭部癌, 膨大部癌に対しては膵全切除術を行なうのが合理的であると思われる.
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