IgG4関連疾患の膵病変である1型自己免疫性膵炎を中心に最近の知見を述べた.1型はIgG4陽性形質細胞浸潤,花筵状線維化,閉塞性静脈炎などを全身臓器に認める原因不明の疾患である.免疫遺伝学的因子を背景に環境因子,自然免疫系,獲得免疫系が病態形成に関与している.疾患特異抗原は不明であるが,3種類の結合組織関連蛋白(laminin 511,annexin A11,galectin-3)が疾患特異抗原候補として報告された.わが国では,国際コンセンサス基準(ICDC)に基づく1型を対象とした診断基準が2018年に改訂された.治療法は未確立であるが,最近国際コンセンサス治療ガイドラインが提唱された.
自己免疫性膵炎の病因は,血清IgG値やIgG4値が高値であることや,B細胞特異的治療薬の効果があることから,自己抗体の関与が考えられていたが,その詳細は不明であった.われわれは,自己免疫性膵炎患者のIgGをマウスに投与することにより,病原性自己抗体の存在を明らかにした.さらに,自己免疫性膵炎患者がラミニン511-E8に対する自己抗体を有すること,同自己抗体の陽性例と陰性例とでは臨床像が異なること,ラミニン511-E8のマウスへの免疫により,自己免疫性膵炎と同様の膵病変が誘導されることを明らかにした.これらの結果から,ラミニン511-E8が病因を成す自己抗原であると考えている.
長年の研究と多数例の経験から自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis;AIP)の診断能が向上した.特に,画像診断における進歩はめざましく,腹部超音波検査,CT,MRI,FDG-PET,超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography;EUS),内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangio-pancreatography;ERCP)などを用いたAIPの診断に関する報告が多数認められる.超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-fine needle aspiration;EUS-FNA)による病理組織学的診断の精度も向上しつつある.これらの進歩を踏まえ,わが国のAIP臨床診断基準が2018年に改訂され,さらなる診断能の向上が期待される.
自己免疫性膵炎は全身にさまざまなIgG4関連疾患を合併する.下垂体炎,眼疾患,甲状腺炎,唾液腺炎,肺病変,硬化性胆管炎,腎疾患,後腹膜線維症などが代表的な病変である.自己免疫性膵炎の診断に参考となる膵外のIgG4関連疾患として,従来はIgG4関連涙腺・唾液腺炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症が記載されていた.2018年に自己免疫性膵炎の診断基準の改定が行われ,腎臓病が追加された.IgG4関連硬化性胆管炎の診療ガイドラインが作成されたので診断,治療のアルゴリズム,画像診断の特徴,治療方法を中心に概説した.
自己免疫性膵炎(以下AIP)の多くは閉塞性黄疸・糖尿病を合併するため,胆道ドレナージと血糖コントロールが原則となる.その上でステロイドの寛解導入を行う.ステロイドの維持療法は,最近の国内コホート,およびRCTの結果より3年間を目安に行い,ステロイド総投与量6~8g以上では重篤な副作用に注意する.再発はおよそ30%に認める.再発例にもステロイド投与が有効である.自然寛解はAIPの一部の疾患活動性の低い症例で認めるが,再燃することが多い.予後はおおむね良好である.再燃を繰り返す症例で,膵石をともない慢性化することがある.癌化はまれであるが,膵癌はAIP診断3~6年後に散見されている.また,paraneoplastic syndromeとしてのAIP発症も注目されている.
Utekinumab投与中の活動期クローン病症例がギランバレー症候群を合併した.症例は23歳,男性.11歳で発症し,翌年,幽門狭窄で胃空腸吻合術を受けた.20歳で再燃しAdalimumabを開始したが,二次無効になった.2017年6月からUstekinumabを開始した.翌年6月,食欲不振,両下肢の脱力,しびれが出現し,ギランバレー症候群と診断され,immunoglobulin大量療法を行った.
44歳男性.大腸内視鏡の前処置薬ニフレックⓇの内服直後にアナフィラキシーショックを発症,エピネフリン投与を行い症状は改善した.ニフレックⓇとニフレックⓇに含まれるマクロゴール4000を用いたプリックテストを行い,陽性反応を得たためマクロゴール4000によるアナフィラキシーショックと診断した.マクロゴールを含有する経口腸管洗浄剤によるアナフィラキシーショックは非常にまれであるが,認識しておく必要がある.
症例は69歳男性.吐血精査での上部消化管内視鏡検査で進行胃癌を指摘され,胃全摘術(D2)を施行.最終診断はpT3N0M0 fStage IIAであった.退院後S-1内服を行ったが認容性に乏しく3コースにて終了となった.術後10カ月目の造影CTにて脾臓に再発を疑う腫瘤を認め,孤立性脾転移の診断で脾臓摘出術を施行.病理結果では胃癌の脾転移と診断された.脾臓摘出後化学療法を施行し,約1年間無再発経過した.
症例は40歳代男性.入院当日朝から増強する心窩部痛を主訴に当院受診後,上腸間膜動脈付近の動脈瘤破裂による巨大後腹膜血腫と診断した.緊急血管造影検査を施行して後上膵十二指腸動脈の仮性動脈瘤からの破裂と診断し,経カテーテル動脈塞栓術にて救命し得た.血腫圧排による一過性の腹痛を第6病日に認めるのみで術後経過は良好であり,第18病日に退院となった.退院後外来経過観察を行っているが再発は認めていない.
患者は60歳代,女性.アデホビル(ADV)投与中のB型慢性肝炎例で,アルカリフォスファターゼ(ALP)上昇で紹介.血清リン2.6mg/dL,尿中β-2MG 49635μg/L.ADVによるFanconi症候群と診断し,テノホビル・アラフェナミド(TAF)に変更したところ,ALP,尿中β-2MGは低下した.ALP上昇を契機に診断されたADVによるFanconi症候群に対する,TAF変更での改善例を経験した.