日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
116 巻, 4 号
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今月のテーマ(総論):自己免疫性膵炎 最近の進歩
  • 岡崎 和一, 内田 一茂
    2019 年 116 巻 4 号 p. 265-278
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    IgG4関連疾患の膵病変である1型自己免疫性膵炎を中心に最近の知見を述べた.1型はIgG4陽性形質細胞浸潤,花筵状線維化,閉塞性静脈炎などを全身臓器に認める原因不明の疾患である.免疫遺伝学的因子を背景に環境因子,自然免疫系,獲得免疫系が病態形成に関与している.疾患特異抗原は不明であるが,3種類の結合組織関連蛋白(laminin 511,annexin A11,galectin-3)が疾患特異抗原候補として報告された.わが国では,国際コンセンサス基準(ICDC)に基づく1型を対象とした診断基準が2018年に改訂された.治療法は未確立であるが,最近国際コンセンサス治療ガイドラインが提唱された.

今月のテーマ(総説):自己免疫性膵炎 最近の進歩
  • 塩川 雅広, 児玉 裕三
    2019 年 116 巻 4 号 p. 279-285
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    自己免疫性膵炎の病因は,血清IgG値やIgG4値が高値であることや,B細胞特異的治療薬の効果があることから,自己抗体の関与が考えられていたが,その詳細は不明であった.われわれは,自己免疫性膵炎患者のIgGをマウスに投与することにより,病原性自己抗体の存在を明らかにした.さらに,自己免疫性膵炎患者がラミニン511-E8に対する自己抗体を有すること,同自己抗体の陽性例と陰性例とでは臨床像が異なること,ラミニン511-E8のマウスへの免疫により,自己免疫性膵炎と同様の膵病変が誘導されることを明らかにした.これらの結果から,ラミニン511-E8が病因を成す自己抗原であると考えている.

  • 菅野 敦, 正宗 淳
    2019 年 116 巻 4 号 p. 286-295
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    長年の研究と多数例の経験から自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis;AIP)の診断能が向上した.特に,画像診断における進歩はめざましく,腹部超音波検査,CT,MRI,FDG-PET,超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography;EUS),内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangio-pancreatography;ERCP)などを用いたAIPの診断に関する報告が多数認められる.超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-fine needle aspiration;EUS-FNA)による病理組織学的診断の精度も向上しつつある.これらの進歩を踏まえ,わが国のAIP臨床診断基準が2018年に改訂され,さらなる診断能の向上が期待される.

  • 中沢 貴宏, 清水 周哉, 内藤 格
    2019 年 116 巻 4 号 p. 296-304
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    自己免疫性膵炎は全身にさまざまなIgG4関連疾患を合併する.下垂体炎,眼疾患,甲状腺炎,唾液腺炎,肺病変,硬化性胆管炎,腎疾患,後腹膜線維症などが代表的な病変である.自己免疫性膵炎の診断に参考となる膵外のIgG4関連疾患として,従来はIgG4関連涙腺・唾液腺炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症が記載されていた.2018年に自己免疫性膵炎の診断基準の改定が行われ,腎臓病が追加された.IgG4関連硬化性胆管炎の診療ガイドラインが作成されたので診断,治療のアルゴリズム,画像診断の特徴,治療方法を中心に概説した.

  • 窪田 賢輔, 細野 邦広, 佐藤 高光
    2019 年 116 巻 4 号 p. 305-313
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    自己免疫性膵炎(以下AIP)の多くは閉塞性黄疸・糖尿病を合併するため,胆道ドレナージと血糖コントロールが原則となる.その上でステロイドの寛解導入を行う.ステロイドの維持療法は,最近の国内コホート,およびRCTの結果より3年間を目安に行い,ステロイド総投与量6~8g以上では重篤な副作用に注意する.再発はおよそ30%に認める.再発例にもステロイド投与が有効である.自然寛解はAIPの一部の疾患活動性の低い症例で認めるが,再燃することが多い.予後はおおむね良好である.再燃を繰り返す症例で,膵石をともない慢性化することがある.癌化はまれであるが,膵癌はAIP診断3~6年後に散見されている.また,paraneoplastic syndromeとしてのAIP発症も注目されている.

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