日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
112 巻, 8 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総説
  • 古川 徹
    2015 年 112 巻 8 号 p. 1457-1463
    発行日: 2015/08/05
    公開日: 2015/08/05
    ジャーナル フリー
    膵臓癌の前癌病変として,通常型の浸潤性膵管癌と関連する膵上皮内腫瘍性病変(PanIN),多彩な組織型を呈し,組織型により管状腺癌あるいは粘液癌と関連する膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN),管状腺癌と関連する粘液性嚢胞性腫瘍(MCN)が知られている.さらに,主として遺伝子改変マウス膵癌モデルにおける解析を基に,腺房細胞が導管様に変化した腺房導管化生(acinar-ductal metaplasia),また,平坦ながら異型の強い細胞よりなる腺管で,周囲の同心円状の線維化が特徴的な平坦型異型上皮病変(atypical flat lesions)が前癌病変の候補として注目されている.
今月のテーマ:膵臓癌のリスクファクター
  • 正宗 淳, 濱田 晋, 下瀬川 徹
    2015 年 112 巻 8 号 p. 1464-1473
    発行日: 2015/08/05
    公開日: 2015/08/05
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎が膵癌のリスクファクターであることは,疫学研究により確立されている.メタ解析によると,慢性膵炎の膵癌リスクは一般人口に比べて13.3倍,慢性膵炎の診断2年以内の膵癌症例を除いた場合でも5.8倍とされる.特に遺伝性膵炎では69倍と非常に高い.発癌メカニズムとしてK-ras変異の重要性や間質細胞との相互作用,細胞老化(senescence)回避機構の関与が明らかとなりつつある.一方,実臨床において慢性膵炎に合併した膵癌を早期発見することは容易ではない.慢性膵炎に合併した膵癌に特異的な所見はなく,断酒や禁煙などによる炎症のコントロールが,膵癌予防という点からも重要である.
  • 多田 稔, 高木 馨, 川久保 和道, 白田 龍之介, 石垣 和祥, 武田 剛志, 藤原 弘明, 梅舟 仰胤, 齋藤 圭, 斎藤 友隆, 渡 ...
    2015 年 112 巻 8 号 p. 1474-1478
    発行日: 2015/08/05
    公開日: 2015/08/05
    ジャーナル フリー
    IPMN,膵嚢胞は,膵癌高危険群の中で最も効率のよい指標である.IPMNは進行が緩徐で比較的予後のよいIPMN由来浸潤癌がよく知られているが,予後不良の通常型膵癌の発生もともなう.最適な経過観察方法は定まっていないが,EUSがいずれの発癌形態にも最も感度のよい検査方法である.ただし,スクリーニングのための最適な検査方法については検討事項である.
  • 高折 恭一
    2015 年 112 巻 8 号 p. 1479-1483
    発行日: 2015/08/05
    公開日: 2015/08/05
    ジャーナル フリー
    「膵癌に罹患した一対以上の第一度近親者がいる家系で,既知の家族性癌家系を除いたもの」を家族性膵癌家系と定義する.家族性膵癌家系における膵癌発生リスクは,一般家系の約9倍と有意に高い.膵癌発生リスクは,第一度近親者の膵癌患者数とともに上昇し,2人の第一度近親者に膵癌患者がいる場合には一般家系の約6.4倍であるが,3人以上の場合には約32倍となる.膵癌のうち5~10%が家族性膵癌であることが判明している.したがって,家族性膵癌は,膵癌のリスクファクターとして非常に重要である.しかし,家族性膵癌を引きおこす遺伝子異常などのメカニズムには不明な点が多く残されている.
  • 祖父尼 淳, 糸井 隆夫, 土屋 貴愛, 辻 修二郎, 鎌田 健太郎, 池内 信人, 田中 麗奈, 梅田 純子, 殿塚 亮祐, 本定 三季, ...
    2015 年 112 巻 8 号 p. 1484-1491
    発行日: 2015/08/05
    公開日: 2015/08/05
    ジャーナル フリー
    膵癌は近年,増加している癌の1つであり,本邦における癌の死因において,全体で第4位となっている.しかし膵癌早期発見・診断はいまだ困難な状況にあり,従来の診断法のみならず,新たな早期発見・診断法の開発や工夫が急務とされている.その中でも近年,血液,唾液によるトランスレーショナルリサーチや,内視鏡を用いた早期診断の検討も行われている.現状においては,「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン」による診断アルゴリズムに基づき,消化器病の患者のみならず広く危険群を絞り込み,それらに対する画像診断および病理組織検体の採取を普及させることで,今後早期発見率の向上につながると考えられる.
原著
症例報告
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