医療機器・医療技術の開発に当たり重要な点として,ニーズを常に捉えることと,知財の管理,開発のステージに応じた出口戦略が挙げられる.これらの開発機器や手技の最終目標は臨床現場で広く利用できるようにすることであるが,その過程で有効性・安全性の評価は必須である.有効性・安全性の評価は,ほとんどの場合で臨床研究として実施される.臨床研究を実施するに当たり,その種類とそれらに関連する規制を理解しておく必要がある.2018年4月から臨床研究法が施行されており,十分な理解が必要である.
近年の内視鏡イメージング技術の発展により,大腸病変の内視鏡診断は飛躍的に発展した.しかし同時に,高精度の診断はエキスパート内視鏡医しか実現できないという,ジレンマが明らかになりつつある.このような内視鏡診断能力の限界に対する,革新的な解決策として注目をあびているのが人工知能による内視鏡診断支援システム(computer-aided diagnosis;CAD)である.本稿では内視鏡CADの研究開発の現状について概観した後,医工産官連携プロジェクト(代表研究者:工藤進英)として研究を進めているEndocyto(=520倍ズームの超拡大内視鏡)を用いた内視鏡CADの発案・医師主導研究・薬機法承認申請の取り組みについて紹介する.
近年の内視鏡技術の進歩は著しく,500~1000倍の倍率によってリアルタイムに組織を観察し得る“optical biopsy”の時代に突入しつつある.共焦点レーザー内視鏡による診断学は消化管・胆膵領域ともにいまだ確立されてはいないが,今後の症例蓄積と病理学的解析が進めば生検の代替法として十分成立すると考える.今後は,欧米で盛んに行われはじめている分子イメージングの研究に期待が寄せられている.さらに最近のトピックとして“間質”という新しい臓器の存在と,共焦点レーザー内視鏡による“間質”の観察が癌転移,組織浮腫および線維症を含む多くの病態の解明に光をもたらすかもしれないと期待されている.
超音波内視鏡(EUS)ガイド下治療は,EUSガイド下に対象病変に経消化管的アプローチをする画期的な方法である.その中でドレナージ手技は最も行われているが,これまで汎用の胆管メタルステントが用いられており,誤留置やステント迷入・逸脱の危険性があった.こうした手技にともなう偶発症を防ぐためにEUSガイド下治療専用のステントの開発は必須とされていた.最近Binmoellerらによりlumen-apposing metal stent(LAMS)が開発され,EUSガイド下治療手技の安全性および確実性が図られている.本稿ではLAMSのコンセプトから実際の臨床成績,そして今後の展望について解説した.
Endoscopic ultrasound(EUS)ガイド下治療の発展は目覚ましく,最近では胃静脈瘤治療も行われている.本治療法は,EUS画像をガイドとして胃静脈瘤およびその流入路を穿刺後血管塞栓用コイルを留置し,必要に応じてcyanoacrylate系薬剤も追加注入することで,胃静脈瘤塞栓化を図るものである.カラードプラにより治療効果もリアルタイムに把握できるため,追加穿刺治療の要否の判断も容易である.また,あらかじめEUSで測定された静脈瘤径よりも大きなコイルを用いるため,留置後に大循環に流出する可能性はきわめて低い.EUSガイド下胃静脈瘤治療は今後の発展が期待できる新たな治療法である.
症例は皮膚筋炎の65歳女性.貧血精査目的の腹部単純CTで小腸壁肥厚を指摘され,当科を紹介受診した.腹部造影CTおよびバルーン小腸内視鏡で空腸原発の低分化腺癌と診断し,小腸切除術が施行された.病理組織所見および免疫染色にて,chromogranin A陽性,MIB-1 index 60%の神経内分泌癌と最終診断された.皮膚筋炎と小腸神経内分泌癌との合併例の報告はなく,貴重な症例と考え報告した.
76歳女性.腹部CTで肝門部に7.5cm大の腫瘍を指摘され,経皮的肝腫瘍生検にて混合型肝癌(subtypes with stem-cell features)と診断された.切除不能と判断されTACEを施行したが,腫瘍の増大を指摘されたためGEM全身化学療法を追加したところ,腫瘍の縮小を認めた.現在もTACE+GEM全身投与を繰り返しており,治療開始より17カ月経過するが腫瘍の増大は認めていない.
症例は73歳女性.腹部造影CT検査にて早期相で濃染,平衡相で濃染が遷延する10mmの腫瘍を認め,肝血管腫と診断した.腫瘍は16カ月後に18mmに増大し,肝細胞癌を疑い手術を施行し,病理より細胆管細胞癌と診断した.腫瘍のDoubling timeは177日であった.本腫瘍は肝血管腫と類似の画像所見を呈し,鑑別が重要である.腫瘍の特徴を知る上で,今後さらなる症例の集積が必要である.
症例は59歳男性.アルコール性肝硬変にて当院に通院中であった.腹痛をともなわない血便が出現したため救急受診した.下部消化管内視鏡検査にて,上行結腸静脈瘤破裂を認めたため,ヒストアクリルによる内視鏡的静脈瘤硬化療法を行った.治療後は合併症を認めず,腹部血管造影にて回結腸静脈瘤の完全閉塞を確認した.肝硬変患者で消化管出血をきたした際は,異所性静脈瘤の発生も念頭に置き検査を行う必要がある.
37歳女性,思春期まで中国湖北省に,34歳時より日本に在住している.健診にて肝機能異常を指摘され,紹介受診.腹部超音波検査では尾状葉の腫大,門脈の数珠状変化を,腹部造影CTでは肝表に線状の石灰化,門脈側副血行路を認めた.問診により中国の日本住血吸虫症流行地の出身であり,父に住血吸虫症の治療歴があることが判明.日本住血吸虫血清抗体価は高値を示した.プラジカンテルの投与後,血清抗体価の低下を認めた.