日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
104 巻, 5 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総説
  • 畠山 昌則
    2007 年 104 巻 5 号 p. 635-643
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/07
    ジャーナル フリー
    胃癌は全世界部位別癌死亡の第2位を占め,年間約70万人が胃癌で命を落としている.近年の研究からヘリコバクター·ピロリ(ピロリ菌),中でもcagA陽性ピロリ菌の持続感染が胃癌発症に重大な役割を果たすことが明らかとなり,胃発癌プロセスにおけるピロリ菌の役割を分子レベルで解明する研究が現在活発に展開されている.cagA遺伝子産物であるCagAタンパク質はピロリ菌体内から胃上皮細胞内へと直接注入され,発癌プロセス進行に関わるさまざまな細胞内シグナル伝達異常を引きおこす.本研究では,初の細菌由来癌タンパク質と考えられるCagAの細胞内標的分子ならびにその下流シグナルの本態,さらにはCagAが示す分子多型と発癌活性に関する最新の知見を概説する.
今月のテーマ:肝細胞癌に対するインターフェロンの効果
  • 矢野 博久, 神代 正道
    2007 年 104 巻 5 号 p. 644-653
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/07
    ジャーナル フリー
    C型慢性肝炎の治療に使用されている5種類のI型インターフェロン(IFN-α, IFN-β)製剤の肝癌細胞の増殖に対する作用を検討した.In vitroの細胞増殖抑制作用は,IFN製剤により異なり,IFN-β製剤が最も強かった.IFNの増殖抑制の主な機序は,アポトーシス誘導や細胞周期進行停止誘導であった.ヌードマウス皮下移植ヒト肝癌組織を用いてin vivoにおけるIFN製剤の抗腫瘍作用を検討したが,臨床投与量に相当する量のIFN投与により最大50%程度腫瘍の縮小を認めた.In vitroで増殖抑制効果が低いIFN製剤でも,PEG化によりin vivoでは増殖抑制作用が増加した.C型慢性肝炎患者へのIFN製剤投与は,ウイルス駆除や肝機能の改善効果のみではなく,極初期のまだ不顕性な段階の肝癌細胞に対して直接的に増殖抑制作用を示し,発癌抑制に寄与する可能性も考えられる.
  • 永野 浩昭, 左近 賢人, 門田 守人
    2007 年 104 巻 5 号 p. 654-659
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/07
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌に対するインターフェロンの抗腫瘍効果は,報告によるとIFN単剤での肝細胞癌に対する抗腫瘍効果は否定的であるが,抗癌剤との併用療法についてはこの効果と有用性が期待される.たとえば,門脈内腫瘍栓をともなう難治性進行肝細胞癌に対しては,期待される治療法はなかったが,最近では諸家の報告とあわせ,有意な抗腫瘍効果と生存率の改善を認めることが明らかになってきている.また,その作用機序としては,p27Kip1による細胞周期調節,IFNARからのシグナル伝達の関与,TRAIL/TRAIL-receptor pathwayやFas-FasLなどの免疫学的機序や抗血管新生作用などの関与が推察されている.
症例報告
feedback
Top