日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
117 巻, 9 号
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今月のテーマ(総論):急性肝不全up to date
  • 持田 智
    2020 年 117 巻 9 号 p. 739-749
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    正常肝ないし肝予備能が正常の慢性肝疾患に肝障害が生じ,8週以内にプロトロンビン時間INRが1.5以上になる病態が急性肝不全である.厚労省研究班の全国調査によると,ウイルス性症例が減少し,自己免疫性と薬物性症例が増加しているが,免疫抑制・化学療法によるB型肝炎再活性化例は根絶できていない.また,on-line HDFなど人工肝補助の登場で昏睡覚醒率は向上したが,救命には肝移植に依存せざるを得ないのが現状である.一方,類縁病態として,肝硬変症例に急性増悪要因が加わり,28日以内にINR 1.5以上かつ総ビリルビン値5.0mg/dL以上になるACLFが注目され,その全国調査も開始された.

今月のテーマ(総説):急性肝不全up to date
  • 熊谷 公太郎, 馬渡 誠一, 井戸 章雄
    2020 年 117 巻 9 号 p. 750-755
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    急性肝不全は致死的な疾患であり,肝移植以外に有効な治療法がない.急性肝不全の発症機序を知ることは新たな治療法を開発するためには不可欠である.今回われわれは急性肝不全の発症から肝再生まで中心的な役割を果たす単球,マクロファージに着目し,機序について概説する.発症から肝再生・修復までの過程は,肝細胞死の誘導,クッパー細胞の活性化,単球の肝組織への遊走・分化・増殖,炎症性マクロファージから抗炎症性マクロファージへの機能的リプログラミング,肝細胞増殖という経過で説明できる.またその過程にはさまざまな分子が関わっており,その発症機序に基づいた新規治療法が近年報告されており,今後の展開が期待される.

  • 柿坂 啓介, 滝川 康裕
    2020 年 117 巻 9 号 p. 756-762
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    昏睡型急性肝不全は,急激な肝生理機能低下による意識障害と凝固検査異常で特徴付けられる.急性肝障害の1~2%に見られるが,内科的救命率は低くその予後は不良である.昏睡型急性肝不全への進展を予知し集学的治療を行うことで,劇症化阻止および救命率改善を目指している.劇症化予知式を用いた病診・病病連携ネットワークを構築し,その集積データから成因特異性の解析や治療開始基準の提案を行っている.さらに,重症化が懸念された患者に対する精密な重症化予知指標の確立を試みている.ネットワークに集積したデータを解析することにより明らかとなった,急性肝障害・肝不全の病態・治療基準・重症化指標について概説する.

  • 玄田 拓哉
    2020 年 117 巻 9 号 p. 763-771
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    急性肝不全は代謝中心臓器である肝臓の急激な機能喪失を契機として,複数の臓器不全が併発する短期予後が極めて不良な症候群である.急性肝不全に対する内科的治療では,成因に対する治療,肝障害進展を抑制するための治療,そして合併する多臓器不全に対する治療など,多角的な集中治療が必要となる.本邦では血漿交換と血液濾過透析を組み合わせた治療が人工肝補助として急性肝不全に対する内科的治療の主体をなしてきたが,近年では高効率の血液濾過透析が肝性脳症の覚醒率の高さから注目を集めている.現在,肝不全に陥った肝臓を積極的に再生させ得る内科的手段はないため,救命困難と判断された場合は肝臓移植が必要となる.

  • 後藤 邦仁, 小林 省吾, 江口 英利
    2020 年 117 巻 9 号 p. 772-778
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    急性肝不全に対する内科的治療は進歩してきているものの,有効性が示されている治療法は肝移植のみである.2010年に改正臓器移植法が施行され,脳死肝移植数は増加傾向にあるが,急性肝不全に対して行われた肝移植数は40例前後で変わらず,そのうち脳死移植は30%程度で,依然として生体肝移植が主体であることに変わりはない.内科的治療で救命困難な場合は,迅速かつ的確に肝移植の適応を評価し,移植のタイミングを計る必要があるため,急性肝不全患者発生の段階から多職種によるワーキングを組織することが重要である.慢性的なドナー不足が引き続き最大の課題であり,ドナーアクションによる脳死肝移植の普及が期待される.

原著
  • 世古口 悟, 廣瀬 瞳, 池田 佳奈美, 山根 慧己, 濱田 聖子, 國枝 佳祐, 堀田 祐馬, 山田 展久, 磯崎 豊, 長尾 泰孝, 小 ...
    2020 年 117 巻 9 号 p. 779-787
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    主治医制を採用している病院勤務の消化器内科医師は,重症患者の診療や緊急検査の呼び出しなど,主治医として夜間・休日の時間外労働に従事する機会が多い.当院当科では主治医の業務軽減策として,2019年10月より夜間・休日の入院診療に対して,主治医制の代わりにオンコール体制での診療を開始している.オンコール体制導入前後における,時間外労働時間の推移,業務上のストレスについて検証を行った.オンコール体制の導入後,時間外労働時間,休日出勤回数ともに減少しており,業務上のストレスも小さかった.業務の効率化および現場で働く医師の満足度も高いことから,主治医制に代わるオンコール体制での診療は有用と考え報告する.

  • 楠本 聖典, 中井 喜貴, 糸川 芳男, 青木 謙太郎, 河村 柾仁, 菊地 三弥, 寺村 茉利, 大岩 容子, 日下 利広, 國立 裕之, ...
    2020 年 117 巻 9 号 p. 788-795
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    【目的】ERCP前後の血清アミラーゼ(amylase;AMY)値をどう比較すればERCP後膵炎(post ERCP pancreatitis;PEP)発症の有効な予測因子となるかを検討する.【方法】‘差:ERCP 2時間後AMY値-前AMY’と‘倍率:ERCP 2時間後AMY/前AMY’でPEP予測のROC曲線を比較した.【結果】解析対象1029例(PEP:118例)で,PEP予測のcut-off値,AUC,感度,特異度は‘差’:56,0.861,80.5%,81.0%,‘倍率’:1.897,0.847,77.1%,81.2%で,‘差’が有効であった(P=0.011).【結語】ERCP 2時間後の56IU/L以上のAMY上昇が,PEPの早期予測因子となる.

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