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利胆から免疫調整作用まで, そして現在
牧野 勲
2002 年 99 巻 10 号 p.
1163-1172
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
本稿では本邦の胆汁酸療法の展開について略述するが, とりわけ, 難病に指定されている原発性胆汁性肝硬変に対しursodeoxycholic acidが果たした臨床領域の貢献について言及する. さらに胆汁酸の作用メカニズムとして免疫調整作用が重視されているので, それについての分子生物学面からの展開を紹介する. そして最近の胆汁酸研究は細胞情報伝達系への影響 (とりわけ肝細胞アポトーシスに係わるNF-kBなど) や核内オーファンレセプターでコントロールされている輸送系トランスポーター機構が話題になっていることを紹介する.
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大槻 眞
2002 年 99 巻 10 号 p.
1173-1185
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
遺伝性膵炎は原因遺伝子が同定されたことだけではなく, 急性膵炎発症機序の少なくとも1つが解明されたことから, 注目されている. 家族性膵炎 (familiai pancreatitis) は, アルコール性膵炎や高脂血症による膵炎など, 遺伝子異常の有無に関係なく膵炎患者が多数存在する家系に対して用いられるが, 遺伝性膵炎 (hereditary pancreatitis) は, 家系内の膵炎患者全ての症例で確認されている一定の遺伝子異常と関連している.
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税所 宏光, 山口 武人, 石原 武
2002 年 99 巻 10 号 p.
1186-1190
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
慢性膵炎全体の約4096に認められる膵石は膵管内に形成され, 膵液のうっ滞助長を介して疼痛発症とともに膵炎の増悪因子となる. 最近, 体外衝撃波結石破砕療法 (ESWL) が開発されて以来, 膵石の除去と膵管減圧が内科的にも積極的に取り組めるようになった. 適応があれば, ESWLと内視鏡による膵石治療は安全であり, 中期的には疼痛の緩解によりQOLを保つ上で優れた治療法といえる. しかし, 再発症は治療後5年以内に20-4096にみられる. その限界を理解すれば, アルコール多飲など原因の回避・除去をはじめ, 食餌療法, 膵消化酵素製剤などによる基本的な内科療法とともに膵石症の疼痛対策に新たな展望が開かれてきた.
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稲葉 博之, 津田 享志, 宮崎 彩, 渡邊 嘉行, 中谷 信一, 小板橋 優, 荻原 恭子, 原 威史, 加藤 尚之, 小林 祐太郎, 中 ...
2002 年 99 巻 10 号 p.
1191-1196
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
現在, 食道癌に対する放射線化学療法がQOLを維持できる治療として注目されている. 放射線化学療法の標準的治療はCDDP/5FUであるが, CDDPの誘導体であるCDGPは腎毒性消化器毒性が低く食道癌に対する単剤での効果はCDDPを上回るといわれている. 今回我々はCDDPに代わりCDGPを使用した少量CDGP/5FU放射線併用療法を施行し, 臨床的検討を行った、結果は総合評価で奏効率8096, CR率5096, 主な副作用は白血球減少, 好中球減少, 血小板減少, 貧血であった. 今後, 投与量, スケジュールを考慮する必要はあるが, 食道癌治療の選択肢に十分なりうるものと考えられた.
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Helicobacterpyloriおよび再発率からみた検討
阪口 正博, 岡 博史, 飴本 完二, 本多 正彦, 中島 章貴, 気比 茂子, 李 喬遠, 島田 守, 谷口 一則, 山本 紀彦
2002 年 99 巻 10 号 p.
1197-1204
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
過去5年6カ月の間に本院を受診した穿孔性十二指腸潰瘍38例, 非穿孔性十二指腸潰瘍154例を対象に,
H. pyloriおよび再発率の面から穿孔性十二指腸潰瘍を臨床的に検討した. 穿孔性十二指腸潰瘍症例の
H. pylori陽性率は42.1%であり, 非穿孔例の92.9%に比べ有意に低値で, 穿孔性十二指腸潰瘍の発症に
H. pyloriの関連性は少ないと考えられた.また, 穿孔性十二指腸潰瘍の再発率は, 非穿孔例に比べ有意に低率であった.特に, H
2RAで維持療法を行った群では穿孔性十二指腸潰瘍の再発は認められず, 穿孔性十二指腸潰瘍の再発予防には胃酸分泌抑制剤による維持療法が有効と考えられた.
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内科・外科連携の重要性
山岸 由幸, 斉藤 英胤, 島津 元秀, 星野 健, 小林 央, 中本 伸宏, 堀江 義則, 加藤 眞三, 森川 康英, 北島 政樹, 石井 ...
2002 年 99 巻 10 号 p.
1205-1212
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
当院における急性肝不全症例につき, 特に生体部分肝移植を施行された症例を中心に問題点を検討した, 対象となった急性肝不全症例15例中, 内科的治療のみを施行した症例は6例で3例が生存. 9例に生体部分肝移植を施行し7例救命し得た. 移植後死亡した2例のうち, 1例は術前より脳浮腫著明で, 移植後も改善せず死亡し, もう1例は術後真菌感染を併発, 術前からの感染症の存在が示唆された, 急性肝不全の移植適応評価には術前の脳障害評価, 感染症のコントロールが非常に重要であると考えられ, 移植成績向上のためには内科医と移植外科医の術前からの緊密な連携が必要であり, それは術後管理となっても継続されるべきと考えられた.
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本多 敬和, 藤山 重俊, 近沢 秀人
2002 年 99 巻 10 号 p.
1213-1219
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
23例のB型慢性肝炎に対して24週間のIFN長期投与を行った結果, 著効・有効が47.8%(脱落例を含めた総投与例を分母としても40.796) と高い有効率が得られた. この際高感度法によるHBV-DNAの推移の検討より, IFN投与中にHBV-DNAが4×10
2copy/ml以下に減少することが, 有効以上の治療効果を得るための必要条件であると考えられた. 強力な抗ウイルス剤であるラミブジンが使用に供された今後も, とくに比較的若年で線維化ステージが軽い例ではIFNの長期投与は有用である. さらに, 高ウイルス量例やラミブジン投与中のbreakthrough hepatitis例でのIFNとラミブジンの併用など, 更なる治療の展開が期待される.
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豊田 穣, 杉本 憲治, 下村 哲也, 藍田 潔, 福知 工, 西出 智博, 高橋 元, 永松 良介, 橋本 可成, 安積 靖友, 裏川 公 ...
2002 年 99 巻 10 号 p.
1220-1225
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
患者は52歳, 男性.大腸X線検査にて下行結腸に陥凹面をもつ扁平隆起を指摘され, 生検にて印環細胞癌を認め当科に紹介. 諸検査の結果, 深達度sm2のIIc+IIa型早期癌と診断, 腹腔鏡補助下左半結腸切除術を施行. 病理組織学的には同-巣内に高分化型腺癌と印環細胞癌が共存し, 主に印環細胞癌の部分で粘膜下層へ浸潤していた. 高分化型腺癌と印環細胞癌の境界部には粘液を含む分化型癌腺管や印環細胞癌への移行像が認められた. 印環細胞癌の発育進展過程を考える上で興味ある症例と考え報告する.
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西澤 文子, 徳光 陽一郎, 谷口 修一, 松浦 隆志, 加藤 雅人, 瀬尾 充, 白浜 正文, 橋口 一利, 山本 一郎
2002 年 99 巻 10 号 p.
1226-1230
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
症例は18歳男性.縦隔の悪性リンパ腫に対する化学療法後の骨髄抑制中に腹痛, 発熱, 多量の水様下痢を発症し, ショック状態となった. 便中に小腸粘膜の脱落も認めた. MRSA腸炎と診断し加療にて改善した. しかしその後もイレウス症状が続き, 小腸二重造影にて小腸に求心性管状狭窄を認めたため手術を施行.虚血性小腸狭窄と診断した.虚血の原因としてMRSA腸炎と全身の急性循環不全が考えられ貴重な症例と考え報告した.
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和田 かおり, 城谷 昌彦, 岡本 朋子, 橋本 晃, 猪熊 哲朗, 上尾 太郎, 柴峠 光成, 井谷 智尚, 三村 純, 小森 英司, 藤 ...
2002 年 99 巻 10 号 p.
1231-1235
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
症例は23歳女性. 神経性食思不振症にて神経科通院中. 過食発作後, 嘔気, 心窩部痛が出現し来院した. 腹部超音波検査で胃から十二指腸下行脚にかけて著明な拡張があり, 上腸間膜動脈性十二指腸狭窄疑いで入院. MRアンギオでは大動脈と上腸間膜動脈とのなす角度の狭小化を認めた. 治療は保存的治療のみで軽快した. 過食発作を契機とした上腸間膜動脈性十二指腸狭窄の1例を報告する.
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多田 俊史, 瀧本 和雄, 冨田 一成, 森 潔, 湧谷 純
2002 年 99 巻 10 号 p.
1236-1239
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
症例は57歳, 男性. 下血と慢性的な貧血の精査のため当院へ入院. 大腸内視鏡検査で横行結腸に形態の異なる2カ所の大腸動静脈奇形が認められた. 腹部血管造影で確認後, 大腸切除術が施行され, 病理組織学的にも大腸動静脈奇形と診断された. 大腸動静脈奇形は診断が困難な場合もあり, 長期間出血源不明とされている例もある. 今回, 術前に形態の異なった多発性大腸動静脈奇形が診断され, 示唆に富む症例であると考えられる.
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権藤 和久, 神代 龍吉, 江森 啓悟, 松山 幸弘, 古賀 研志, 今村 賢一郎, 佐田 通夫
2002 年 99 巻 10 号 p.
1240-1242
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
症例は16歳から20歳までの男性8例, 女性2例で外来受診日の24ヵ月から5ヵ月前より覚醒剤の回し打ちをしていた. 2例が急性肝炎として発症, genotypeは3例が2a, 5例が2bであった. 5例にインターフェロンを投与し著効した. 全員顔見知りで, 9例に症例間での同-注射器の使用がみられた. 今回の若年者にみられたC型肝炎には交友関係や発症時期などから覚醒剤の回し打ちが関連したことが疑われた. 医療従事者はこのような新たな患者発生の解析と適切な治療を通じてC型肝炎の撲滅に努めるべきと考えられた.
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崔 仁煥, 須山 正文, 窪川 良廣, 田所 洋行, 佐藤 信紘, 飯田 義人, 松本 浩次, 児島 邦明, 信川 文誠, 須田 耕一, 槙 ...
2002 年 99 巻 10 号 p.
1243-1246
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
フリー
症例は62歳, 男性.腹部CTにて胆嚢腫瘍を認めた. ERCPでは正常の膵胆管合流部を示し共通管の長さは4mmであったが, セクレチン負荷MRCPにて膵液胆汁逆流現象を認めた. 術中採取した胆嚢内胆汁のアミラーゼは43092IU/L, リパーゼは140632IU/Lと高値を示した. 病理組織所見は高分化型腺癌であった. 正常の膵胆管合流部においても膵胆管合流異常と同様の病態が起こりうる可能性が示唆された.
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辻本 達寛, 飯岡 弘伊, 浪崎 正, 豊川 泰勲, 鶴薗 卓也, 松村 吉庸, 吉治 仁志, 栗山 茂樹, 福井 博
2002 年 99 巻 10 号 p.
1247-1253
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
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症例は49歳, 男性.3合30年間の飲酒歴がある. 近医で感冒として治療を受けるも改善せず. 呼吸困難, 前胸部痛も出現し当院受診. 胸腹部CT, ERPにて蛋白栓による膵管閉塞に起因した膵性胸水をともなう縦隔内膵仮性嚢胞と診断した. 蛋白栓による縦隔内膵仮性嚢胞の本邦報告例は2例のみでERPで確認しえたのは初めてであった. 本例が保存的治療にて速やかに改善したのは, check-valveのように膵管を閉塞していた蛋白栓が何らかの原因で外れたからではないかと考えられた.
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熊代 尚記, 櫻林 真, 高橋 秀和, 西村 秀司, 鈴木 剛, 吉野 克正, 平野 正憲, 長谷川 俊二, 小川 真紀, 鈴木 恒道
2002 年 99 巻 10 号 p.
1254-1257
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
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症例は26歳女性, 検診で指摘された膵嚢胞性病変の精査目的で当院受診. 精査の結果, 典型的なSolid-pseudopapillary tumor (SPT) of the pancreasと診断し切除した, しかし切除後の病理診断は膵仮性嚢胞であった. 膵SPTは加齢と共に出血・壊死・石灰化などの退行性変化が優位になると考えられており, 病理診断がSPTでなかった理由として腫瘍が完全に退行性変化を遂げたことが推測され, 極めて珍しい症例と思われた.
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豊見山 良作, 金城 福則, 川根 真理子, 外間 昭, 又吉 亮二, 與那嶺 吉正, 金城 実男, 下地 英明, 佐村 博範, 武藤 良弘 ...
2002 年 99 巻 10 号 p.
1258-1260
発行日: 2002/10/05
公開日: 2011/06/17
ジャーナル
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