日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
96 巻, 5 号
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  • 田伏 克惇, 辻 毅
    1999 年 96 巻 5 号 p. 493-501
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌は肝炎ウイルスの持続感染による多中心性発癌が術後再発の主な要因とされ,切除療法に限らず単独療法では無再発,生存率を向上できないとされている.そこでマイクロ波凝固療法の適応と選択について,最近9年間の当施設で診断治療した症例の治療法別に背景因子,再発率,生存率の分析結果から,マイクロ波凝固療法は腫瘍凝固壊死効果に加えて,手術より手技が簡便で合併症も少なく,肝切除やエタノール局所注入療法に比べ生存率も劣らないので,再発後の治療のみならず,小肝癌では初回治療としても有用であるとの結論を得た.マイクロ波凝固療法は,さらに小肝癌の発見率が高くなれば,開腹手術だけでなく経皮的・鏡視下手術とともにless invasive surgeryとして肝細胞癌の治療戦略の重要な役割を果たし得るものと考える.
  • 竹山 泰守, 松井 敏幸, 八尾 恒良, 本村 明, 有田 正秀, 岡田 光男, 田中 啓二, 今村 達也, 畠山 定宗
    1999 年 96 巻 5 号 p. 502-510
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    H2-receptor antagonist(以後,H2-RA)とproton pump inhibitor(以後,PPI)を用いた前向き無作為比較試験による胃体部潰瘍患者の,治癒率の比較とその影響因子の解析を試みた.また24時間胃内pHモニタリングによる酸分泌抑制程度を比較した.その結果,両群の背景因子,潰瘍局所所見に差はなくH2-RA,PPI両群は比較可能であった.4週治癒率,8週治癒率は両群に差がなかった.また自覚症状の有無および消失期間にも差はなかった.胃内pHパターンについては投薬時の胃内pHパターンは両群で差が認められた.以上より,胃体部潰瘍の治療においては,H2-RAは酸分泌抑制の程度はPPIに比較すると劣るものの,治療効果においてはPPIに匹敵するものと考えられた.
  • 鯵坂 秀之, 吉光 裕, 礒部 芳彰, 竹下 八洲男
    1999 年 96 巻 5 号 p. 511-517
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    根治手術を施行したリンパ節転移陽性胃癌患者121例を対象とし,リンパ節転移程度(n),リンパ節転移個数,転移リンパ節の大きさ,微小リンパ節転移,リンパ節転移巣の組織型,節外浸潤およびリンパ節周囲リンパ管侵襲による予後の検討をretrospectiveに行った.リンパ節転移程度が大きいものほど有意に予後不良であり単独でも予後を反映していた.リンパ節転移個数が7個以上のもの,転移リンパ節の最大径が15mm以上のものは有意に予後不良であり,転移リンパ節の定量的評価が必要であると考えられた.また節外浸潤陽性群,リンパ節周囲リンパ管侵襲陽性群は有意に予後不良であり,転移リンパ節の病理組織学的評価が必要であると考えられた.多変量解析では転移リンパ節の最大径>リンパ節転移個数>リンパ節転移程度の順に予後を反映していた.
  • 大島 隆志, 宮崎 修一, 鎌村 真子, 田中 洋一, 井上 徹, 山崎 柳一
    1999 年 96 巻 5 号 p. 518-523
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    典型的なCronkhite-Canada症候群(CCS)の男性例(57歳).CCS発症5年前,胃内視鏡所見および病理組織学的に慢性胃炎であったが,発症時CCSに特徴的な内視鏡像および病理組織像を示した.ステロイド剤投与2カ月後大腸ポリポーシスは消失したが,胃病変は遅れて6カ月後に消失し,病理組織学的変化の改善にはさらに2カ月を要した.この所見を確認後ステロイド剤を中止したがCCSの再発はみられていない.
  • 増谷 学, 高橋 公平, 松田 知己, 大平 浩司, 野村 昭嘉, 定岡 邦昌, 道鎮 明晴, 鈴木 潤一, 川上 義和
    1999 年 96 巻 5 号 p. 524-529
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    mesalazine(5-ASA)による本邦初の急性心筋炎を経験した.症例は24歳男性.潰瘍性大腸炎に対し5-ASA 1500mg/日を投与したところ,胸痛が出現した.心肥大,T波平低化,心筋逸脱酵素より急性心筋炎と診断した.薬剤中止にて改善した.患者はsulphasalazine不耐性であった.5-ASAによる心筋炎はまれな副作用であるが,sulphasalazine不耐患者には注意を要する.
  • 佐藤 直夫, 國土 典宏, 関 誠, 三木 陽二, 石原 省, 斎藤 光江, 高橋 孝, 浅原 新吾, 高野 浩一, 亀井 明, 佐藤 栄一 ...
    1999 年 96 巻 5 号 p. 530-534
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.多発肝嚢胞のうち後区域の嚢胞が,画像上,腫瘍性病変と鑑別困難であった.嚢胞液CEAが3300ng/ml,CA19-9が12000000U/mlと著明に上昇していたため,腫瘍性病変を疑い,肝部分切除をおこなったが,良性単純性肝嚢胞であった.文献的には,嚢胞液CEA高値を示す肝嚢胞性病変は悪性が多いと報告されているが,良性でも非常に高値をとることがあり,注意を要すると思われた.
  • 宮尾 直樹, 芹澤 宏, 熊谷 直樹, 高石 官均, 渡辺 憲明, 濱田 慶城, 土本 寛二, 竹内 修, 豊田 元, 倉持 茂, 石井 裕 ...
    1999 年 96 巻 5 号 p. 535-539
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.トランスアミナーゼ持続高値を呈するC型肝炎のため肝生検を施行,CAH 2A(F1A2)が確認された.IFN療法によりHCV-RNAは陰性化しトランスアミナーゼも正常化し1年後肝組織像はF1A1に改善した.トランスアミナーゼ持続正常であったが,約3年半後AFP高値とともに肝癌が確認された.手術標本で組織中HCVもPCR法で陰性で,ウイルスの残存は否定的であった.C型慢性肝炎のIFN療法著効後数年での肝癌発生はまれであり示唆に富む症例と考えられた.
  • 谷 聡, 古川 健亮, 福田 昌輝, 前田 みちる, 坂井 誠, 森田 宗孝, 山下 順平, 北澤 荘平, 老籾 宗忠
    1999 年 96 巻 5 号 p. 540-544
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は27歳女性.アセトアミノフェンを含む薬剤を自殺目的に大量服用し昏睡状態で入院した.直ちに血液浄化を施行し,併発した肺水腫に対しては人工呼吸管理下に治療し第10病日に意識が回復した.経過中,PLA2等の膵酵素が著明に上昇,腹痛はなかったがCTで膵の浮腫を認めナファスモスタット投与にて改善した.薬剤性急性肝不全に膵障害をともなった報告はまれであり興味ある症例と考えられた.
  • 道免 和文, 長井 良憲, 松石 英城, 宮本 祐一, 笹富 英三郎, 入江 康司, 石橋 大海
    1999 年 96 巻 5 号 p. 545-549
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.近医にて貧血と高LDH血症を指摘され,紹介入院となった.大球性貧血,VitB12の低値,骨髄所見,胃壁細胞抗体陽性,抗内因子抗体陽性,萎縮性胃炎,病理学的胃壁細胞の消失所見などより悪性貧血と診断された.また胆道系酵素の上昇,抗ミトコンドリア抗体陽性,抗PDH抗体陽性所見より原発性胆汁性肝硬変(PBC)の合併例と診断された.悪性貧血はVitB12の補充療法により改善を認め,PBCに対してはウルソデオキシコール酸の投与にて胆道系酵素の低下を認めた.悪性貧血はVitB12の吸収不全を主因とする巨赤芽球性貧血でその本態は胃壁細胞を標的抗原とした自己免疫性胃炎である.胆管上皮細胞を標的抗原とするPBCを併発した本症例は外分泌腺上皮に共通する抗原の存在も示唆され,貴重と考えられたため報告する.
  • 宮崎 純一, 中澤 三郎, 芳野 純治, 乾 和郎, 奥嶋 一武, 中村 雄太, 高島 東伸, 鵜飼 宏司, 三戸 隆, 松本 純夫, 鈴木 ...
    1999 年 96 巻 5 号 p. 550-557
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    膵リンパ上皮嚢胞はまれな膵嚢胞性疾患であり,今回経験した一例について報告する.症例は68歳男性,主訴は背部痛,血液生化学的検査で異常はなかったが,精査の結果,膵尾部にだるま状の腫瘤を認め,自覚症状がみられることと腫瘤が大きいことから手術を実施し,膵リンパ上皮嚢胞と診断した.術前の確定診断は困難であったがEUS,CT,MRI等の画像診断が有効と考えられ,本症例に文献的考察を加えて比較検討した.
  • 早崎 直行, 三宅 忍幸, 高橋 宏尚, 中村 栄子, 山岸 誠司, 久野 裕司, 森 紀樹, 篠田 昌孝, 木村 昌之, 鈴木 孝, 田代 ...
    1999 年 96 巻 5 号 p. 558-563
    発行日: 1999/05/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.腹部CTで膵腫瘍を指摘され入院.画像診断では,膵尾部に径約4cmのhypervascularで主膵管と交通のない境界明瞭な充実性腫瘤を認めた.摘出された腫瘍は,弾性軟で薄い被膜があり割面は乳白色・充実性であった.病理組織学的には,扁平上皮様小体が散在し類器官構造を呈する膵芽腫の所見であり,免疫組織化学的にも証明された.成人膵芽腫として世界で12例目の報告にあたる.
  • 1999 年 96 巻 5 号 p. 565
    発行日: 1999年
    公開日: 2008/04/21
    ジャーナル フリー
    『日消誌』掲載論文(96(3)305-309, 1999)の著者より, 以下のような訂正依頼がありました. (誤)(誤)メチル酸ナファモスタット (正)(正)メシル酸ナファモスタット
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