日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
111 巻, 5 号
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総説
  • 上本 伸二
    2014 年 111 巻 5 号 p. 875-879
    発行日: 2014/05/05
    公開日: 2014/05/05
    ジャーナル フリー
    わが国においては肝癌に対するファーストライン治療は肝切除やRFAの根治的治療であり,肝移植はセカンドラインの根治治療である.したがって,ファーストライン治療からセカンドライン治療へのタイミングが問題となるが,ミラノ基準やKyoto基準,Tokyo基準内の比較的早期の肝癌であれば肝移植の再発率は10%以下であり,良好な長期成績が期待できる.肝移植の保険適応は肝不全に合併したミラノ基準内の肝癌に限定されているが,現状に合わせた保険適応拡大を目指すためには各施設での独自の適応基準における良好な成績の積み重ねだけでなく,オールジャパンで症例を検討して新たな保険適応基準を構築していく必要がある.
今月のテーマ:肝癌に対する肝臓移植の適応拡大と制限
  • 河口 義邦, 菅原 寧彦, 國土 典宏
    2014 年 111 巻 5 号 p. 880-884
    発行日: 2014/05/05
    公開日: 2014/05/05
    ジャーナル フリー
    肝移植におけるDownstagingとは,ミラノ基準外の肝細胞癌に対し,肝動脈化学塞栓術(TACE),経皮的ラジオ波焼灼術,肝切除を行うことで,腫瘍条件をミラノ基準内に移行させ,肝移植を施行する治療法である.最も施行されているDownstagingはTACEである.Downstaging施行後肝移植の全生存率は,1年で90%前後,3年で70%前後,無再発生存率は,1年で80%前後,3年で70%前後となっている.ミラノ基準外の肝移植においても良好な長期成績が報告されていることを考えると,Downstagingそのものが長期成績の改善に有効であったのかに関して,慎重な判断が必要である.
  • 調 憲, 吉屋 匠平, 吉住 朋晴, 内山 秀昭, 副島 雄二, 川中 博文, 池上 徹, 山下 洋市, 池田 哲夫, 前原 喜彦
    2014 年 111 巻 5 号 p. 885-891
    発行日: 2014/05/05
    公開日: 2014/05/05
    ジャーナル フリー
    ミラノ基準内の肝癌に対する肝移植成績は良好である.腫瘍径3 cm以内3個以下あるいは5 cm以下単発というミラノ基準は,わが国の肝癌に対する肝移植の保険適応基準であるが,ミラノ基準を超えた肝癌患者でも肝移植によって肝癌が治癒する症例の存在が知られている.肝癌以外の疾患に対する肝移植とミラノ基準内の肝癌に対する肝移植成績の比較では,ミラノ基準内肝癌に対する肝移植成績が有意に良好であった.肝癌以外の症例への肝移植が保険収載されていることから,肝癌に対する適応拡大は合理的である.各施設による複数の拡大基準が提唱されているが,適応拡大により利益を受ける患者数と再発の頻度を考慮した利益の最大化が重要である.
  • 江川 裕人, 嶋村 剛, 藤堂 省
    2014 年 111 巻 5 号 p. 892-898
    発行日: 2014/05/05
    公開日: 2014/05/05
    ジャーナル フリー
    本邦の生体肝移植の10%強が血液型不適合である.抗体関連拒絶を予防するため脱感作療法が工夫されてきたが,近年,リツキサン術前投与が広く行われるようになり,適合症例と遜色ないところまで成績が改善した.一方で,リツキサンの肝癌再発に対する影響はいまだ報告がない.今回,日本ABO血液型不適合移植研究会データベースと北海道大学全国集計肝癌肝移植データベースを融合させ,2009年末までに日本で実施された肝癌肝移植1106例(不適合66例)を解析した.リツキサン予防投与は再発を増強することなく生存率を適合症例と同等に改善した.リツキサン併施血液型不適合肝移植は,肝癌肝移植に対して有効な治療である.
原著
症例報告
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