日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
120 巻, 10 号
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今月のテーマ(総論):胃・十二指腸潰瘍の時代的変遷
今月のテーマ(総説):胃・十二指腸潰瘍の時代的変遷
  • 小野 英樹, 沖本 忠義
    2023 年 120 巻 10 号 p. 795-802
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/11
    ジャーナル 認証あり

    H. pyloriの発見以前の消化性潰瘍治療は,1980年代から開発されてきたH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)による的確な胃酸管理を中心とした治療法が主体であった.21世紀初頭になり,H. pyloriの除菌による潰瘍治療が主流となった.一次・二次・三次除菌治療や,薬剤アレルギーに応じた個別化治療の進歩も著しい.除菌治療は潰瘍治癒や再発抑制においてきわめて有用であり,医療経済学的にPPI単独治療戦略よりも高い効果が期待される.除菌治療を選択できない場合は非除菌治療を考慮する.

  • 杉本 光繁, 河合 隆
    2023 年 120 巻 10 号 p. 803-815
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/11
    ジャーナル 認証あり

    非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は,消化性潰瘍の主因である.Helicobacter pyloriの感染率が減少する中で,超高齢化社会にともない薬剤起因性潰瘍の比率が年々増加している.NSAIDsにより消化性潰瘍や消化管出血の危険性は増加するため,特に潰瘍の有病者はNSAIDsの単独投与は禁忌であるが,臨床の現場では潰瘍を発症しても原因薬剤を中止できない場合は多い.近年,消化管粘膜傷害を引きおこす薬剤が多数報告され,その粘膜傷害の予防にはH. pyloriの除菌治療とともに,酸分泌抑制を適切に行うことが必要と考えられており,個々に応じた治療戦略の立案が重要となる.

  • 中嶋 紀元, 竹内 利寿
    2023 年 120 巻 10 号 p. 816-826
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/11
    ジャーナル 認証あり

    消化性潰瘍の二大要因は,Helicobacter pyloriH. pylori)と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)である.これらを要因としない原因不明の消化性潰瘍は特発性潰瘍(idiopathic peptic ulcer disease;IPU)と一般的に称されており,単純なH. pylori陽性潰瘍と比して基礎疾患の合併が多いこと,難治で再発率が高いことが指摘されている.近年H. pyloriの除菌が進むにつれ,消化性潰瘍におけるIPUの割合が増加している.IPUの治療は消化性潰瘍と同様にプロトンポンプ阻害薬(PPI)が主であるが,前述のとおり難治性・再発性が指摘されており,問題となっている.

  • 飯島 克則
    2023 年 120 巻 10 号 p. 827-836
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/10/11
    ジャーナル 認証あり

    消化性潰瘍の治療には,基本的に酸分泌抑制剤が使用されるが,その成因をもとにH. pylori感染の有無,NSAIDs(アスピリンを含む)服用歴の有無によって4群に分けることが,治療反応性,その後の再発リスクを予測するのに有用である.H. pylori単独潰瘍は,4群のなかでは最も治療反応性が高く,除菌治療によって再発はまれとなる.NSAIDs潰瘍(H. pylori陽性,陰性にかかわらず)は,治療抵抗性を示すことがあるが,原因薬剤の休止によって再発を抑制できる.H. pylori陰性,NSAIDs陰性のものは,原因が特定されず特発性潰瘍とも呼ばれ,治療抵抗性を示し,再発も多い.特発性潰瘍は世界的に増加傾向にあり,本邦でも今後臨床的に問題となってくると予想される.

原著
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