バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を施行した胃穹窿部静脈瘤併存巨大短絡路症例24例を対象に, 肝機能の推移と門脈血行動態の変化について検討した. 1)短絡路を閉塞しても, WHVPおよびHVPGの有意な変動は認めなかった. 2)上腸間膜動脈造影静脈相で遠肝性血流を認め, かつ短絡路径10mm以上の症例では, 治療1年後にはAlb値の有意な上昇(p<0.005)とICGR
15の有意な改善(p<0.05)を認めた. 3)治療後平均23.3カ月後の血管造影では, 短絡路の再疎通を認めた症例はなく, また治療前に上腸間膜動脈造影静脈相で遠肝性血流を認めた症例のうち, 43%は上腸間膜静脈血流がすべて求肝性に変化した. 4)平均観察期間32.5カ月の間に胃静脈瘤の再発を認めた症例はなかった. また, 巨大短絡路以外に他の側副血行路も存在する症例での累積RC陽性食道静脈瘤出現率(治療前26.7%, 2年61,1%, 4年74.1%)は,他の側副血行路を認めない症例(治療前0%, 2年0%, 4年16.7%)に比べ, 有意に(p<0.05)高率であった. 以上から,1)上腸間膜静脈血流が胃腎短絡路あるいは胃下横隔静脈短絡路に流入する症例では, 短絡路閉塞により, 門脈血流の増加と肝機能の改善を期待できる. 2)巨大短絡路以外に他の側副血行路も認める症例では, 短絡路閉塞により食道静脈瘤の増悪を来す頻度が高いのに対して, 非併存例ではその頻度は低い, と考えられた.
抄録全体を表示