日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
109 巻, 6 号
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総説
  • 岡崎 和一, 内田 一茂
    2012 年 109 巻 6 号 p. 875-887
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/05
    ジャーナル フリー
    わが国より発信された新規疾患の自己免疫性膵炎とIgG4関連疾患に関する最近の知見について述べた.自己免疫性膵炎は,アジアに多い1型と欧米に多い2型に分類され,1型はIgG4関連疾患の膵病変と位置づけられる.IgG4関連疾患はIgG4形質細胞浸潤,線維化,閉塞性静脈炎などを全身臓器に認める特異な疾患群である.高齢者に多く,病因は不明であるが,免疫遺伝学的背景に自然免疫系,Th2にシフトした獲得免疫系,制御性T細胞などの異常が病態形成に関与する可能性がある.診断法や治療法はいまだ確立されていないが,ステロイドの有効なことが多い.今後の研究による病因病態解明が望まれる.
今月のテーマ:自己免疫性膵炎の診療の現状と問題点
  • 五十嵐 久人, 伊藤 鉄英, 藤森 尚, 大野 隆真, 高柳 涼一
    2012 年 109 巻 6 号 p. 888-896
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/05
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎(AIP)の概念が初めて報告されて10数年が経過したが,この間各国からそれぞれの疾患概念や診断体系に合わせて診断基準が提唱された.日本は世界に先駆けて診断基準を提唱したが,主にLPSPと呼ばれる組織型を膵癌と誤診することなく確実に診断することが基本的理念であった.一方欧米ではIDCPと呼ばれる別の組織型も報告されており,国際的なコンセンサスを作る必要性が生じてきた.2011年国際コンセンサス診断基準(ICDC)が提唱され,AIPはtype 1,type 2に大別された.ICDCに齟齬をなくすべく日本の診断基準も最近改訂された.今後新しい診断基準の問題点について検証していく必要がある.
  • 川 茂幸, 渡邊 貴之, 丸山 真弘, 伊藤 哲也, 村木 崇, 浜野 英明, 新倉 則和
    2012 年 109 巻 6 号 p. 897-904
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/05
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎は多彩な膵外病変を合併し,その検索過程で全身諸臓器に及ぶIgG4関連疾患の存在が明らかとなった.構成疾患としては下垂体炎,涙腺・唾液腺炎(Mikulicz病),甲状腺炎,間質性肺炎,硬化性胆管炎,肝病変,後腹膜線維症,尿細管間質性腎炎,前立腺炎などが報告されている.腫瘤性もしくは壁肥厚性病変,血中IgG4値の上昇,病変局所にIgG4陽性形質細胞の著明な浸潤,ステロイド治療に対する良好な反応性,などが特徴である.しかし,疾患範囲,発症機序,IgG4の役割など病態の詳細はいまだ不明であり,精力的な研究が始まっている.Mikulicz病,腎病変,胆管病変など病態が詳細に検討されたものもあり,独立した疾患単位として診断基準が作成されている.
  • 神澤 輝実, 原 精一, 田畑 拓久, 来間 佐和子, 千葉 和朗, 藤原 崇, 江頭 秀人, 桑田 剛, 小泉 浩一, 藤原 純子, 荒川 ...
    2012 年 109 巻 6 号 p. 905-909
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/05
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎はステロイド治療が標準治療法である.その適応は原則として有症状例である.治療開始前に,可能な限り膵癌や胆管癌を否定し,黄疸例では胆道ドレナージ術を,糖尿病合併例では血糖のコントロールを行う.経口プレドニゾロンを0.6mg/体重kg/日から投与を開始し,2~4週間の投与後1~2週間ごとに5mgずつ減量していく.ステロイドの反応が悪い場合,悪性腫瘍を念頭に置いた再評価が必要である.再燃防止のために小量プレドニゾロンによる維持療法を行う.再燃例ではステロイドの再投与や増量が有効であるが,免疫抑制剤やrituximabも用いられている.膵石発生や膵癌の合併など,長期予後は不明である.
原著
  • 大花 正也, 美馬 淳志, 園山 浩紀, 菊池 志乃, 岡部 誠, 森澤 利之, 塩 せいじ, 宮島 真治, 木田 肇, 岡野 明浩, 沖永 ...
    2012 年 109 巻 6 号 p. 910-920
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/05
    ジャーナル フリー
    小腸造影,カプセルおよびバルーン内視鏡を用いても評価不能,あるいは受容性の問題でフォロー困難なクローン病小腸病変に対し欧米ではCT enterography(CTE)による評価が確立されつつある.日本人クローン病患者にもCTEが有用か,日本で利用可能なPEG-ES(ニフレック®)飲用による腸管拡張にて検討した.クローン病確定例(n=18)と疾患コントロール例(n=14)では,壁肥厚,偏在性壁肥厚,偏在性壁濃染などにおいて前者が有意に高率で,偏在性の壁肥厚,濃染はクローン病に特異的であった.被検者の受容性も良好で,PEG-ESを用いたCTEは日本人クローン病患者においても比較的低侵襲な検査として有用である.
症例報告
Letter to the Editor
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