日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
117 巻, 6 号
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特別寄稿
今月のテーマ(総論):胃癌検診の時代的変遷
  • 山道 信毅
    2020 年 117 巻 6 号 p. 454-462
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    わが国の対策型胃がん検診は長く胃X線検査のみが認められてきたが,2016年に内視鏡検査の推奨が決まり,変革期を迎えている.血清検査によるリスク層別化診断は公的な推奨はないものの,低侵襲で安価な胃がん検診として全国に広がっている.また,最大の危険因子H. pyloriの保菌率低下によってリスク層別化が可能になり,画像検査における感染診断が胃がん検診に反映されるようになった.今後,任意型検診も含め,さまざまな胃がん検診の使い分けが予想されるが,正確な全国統計の欠如,医療資源の地域格差,X線読影医の不足,AI(人工知能)活用への整備,胃がん検診の将来に関する議論の遅れなど,解決すべき問題が山積している.

今月のテーマ(総説):胃癌検診の時代的変遷
  • 宮原 良二, 古川 和宏, 廣岡 芳樹
    2020 年 117 巻 6 号 p. 463-468
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    胃がんX線検診は,1950年代から本邦において研究が開始され,1960年代には対策型検診として全国に普及した.現在は,対策型検診として内視鏡検診と併用されている.これまで,胃がん対策型検診の中心として活用され,胃がん死亡者数低減に貢献してきた胃X線検診について,時代的変遷を含めて概説する.胃がんによる死亡率減少を目的とした対策型検診に活用されてきた胃X線撮影法は二重造影法を中心とした基準撮影法に統一され,粘膜の微細な凹凸を描出することにより,早期胃がんの発見を可能としている.われわれの検討では,胃X線検診で発見された胃がん症例の5年生存率は90%を超え,胃がん死亡の低減に貢献できたと考えている.

  • 古川 和宏, 中村 正直, 藤城 光弘
    2020 年 117 巻 6 号 p. 469-476
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」の2019年がん統計予測によると,胃がんの罹患数は第2位,死亡者数は第3位を占めており,依然本邦におけるがん対策において,最重要がん腫の1つに位置付けられている.「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版」において,胃内視鏡検診の胃がん死亡率減少効果が認められ,対策型・任意型検診としての実施が推奨されるようになった.胃内視鏡検診の精度管理を行うためには,がん検診受診率,要精検率,がん発見率,陽性反応適中度といったプロセス指標や感度・特異度の算出が必要である.本稿では胃がんの内視鏡検診の現状と今後の展望について概説する.

  • 井上 泉, 岡 政志, 一瀬 雅夫
    2020 年 117 巻 6 号 p. 477-484
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    H.pylori感染胃炎を中核とする胃癌発生の自然史に関する理解がすすみ,癌発生リスクの把握が可能になって来た.その結果,胃癌検診効率化を視野に,血液検査によるH.pylori感染胃炎ステージ診断・胃癌リスク評価に基づくリスク検診が検討されている.いまだ理論的な段階に留まるものであるが,今後,安定したシステムの登場が期待される.“いわゆるABC検診”に関しては,受診者の不利益を回避する上で,現状のシステムの導入には慎重であるべきで,実施可能なシステム・責任ある体制の構築のために,充分な検討が必要である.その他,本稿では血液検体による胃癌診断の現状・検診導入の可能性について概説する.

  • 中島 健
    2020 年 117 巻 6 号 p. 485-493
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    がんゲノム医療中核拠点病院が整備され,がんの遺伝子パネル検査が保険診療として開始された.がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院の指定案件の1つとして,遺伝カウンセリング部門の整備がある.遺伝カウンセリングとは,対象者(クライエント)の既往歴・家族歴などから考慮すべき遺伝性腫瘍やその確定検査(遺伝学的検査)についてクライエントとともに考える臨床の場である.個人のがんリスクを診断する重要なツールの1つとして,遺伝性腫瘍の遺伝学的検査がある.残念ながら多くの遺伝性腫瘍の遺伝学的検査は本邦では保険未収載であるが,近年では商用ベースで利用可能な遺伝子パネル検査も揃ってきた.本稿では,遺伝性腫瘍の診療について消化器病専門医に期待される役割について概説する.

総説
  • 廣田 衛久, 下瀬川 徹
    2020 年 117 巻 6 号 p. 494-503
    発行日: 2020/06/20
    公開日: 2020/06/20
    ジャーナル フリー

    蛋白分解酵素阻害薬膵局所持続動注療法(動注療法)は,重症急性膵炎に対する特殊治療として1990年代より全国で実施されてきた.最近になり,その有効性を疑問視する臨床研究の報告が相次ぎ,さらに動注療法が保険未収載であるため,急性膵炎診療ガイドライン2015[第4版]では推奨されなくなった.そのため,動注療法の有用性を検証し保険収載を見据えた多施設共同ランダム化比較試験が計画され,医師主導治験として実施された.その結果,動注療法の静注療法に対する優越性は証明されず,むしろ安全面の問題が指摘された.現在の重症急性膵炎診療の中で,侵襲的な動注療法を行うメリットはないと考えるべきであろう.

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症例報告
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